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国の森林環境譲与税試算 和歌山県田辺市へ毎年1億円配分 

以下、2018年12月31日紀伊民報記事より

 

 国が2019年度に森林管理を目的に導入する森林環境譲与税の和歌山県田辺市への配分額は、21年度までの3年間、各年1億421万円と県が試算した。全国屈指の多さという。手入れが不十分な人工林を再生し、いかに山村振興につなげるか。市の手腕が問われる。

 

 

県がスギやヒノキなどの私有人工林の面積や自治体の人口、林業就業者などの指標を使って試算した。年間の配分額は(和歌山)県が9620万3千円、(和歌山)県内市町村合計が3億8477万3千円。全国の約1700市町村への配分額が160億円で、田辺市の額は平均の10倍近い。配分額は4年後には1・5倍になる見通し。

 

国が19年度から始める森林経営管理制度では、森林所有者自身で伐採や植林ができない場合、市町村が経営管理の権利を得て、意欲と能力のある林業経営者に間伐などを再委託する。一度に伐採や間伐をする森林を集約できれば、作業効率も高まる。

 

ただし、実行段階では課題も多い。田辺市でも所有者に意向調査をするが、相続人がどれだけいるかなどの把握はこれからだ。

 

林業経営に適さない森林は、市が管理する。ただ、直接管理は難しく、委託するにしても担い手不足の中、対応できる経営者がいるか分からない。県の協力、広域連携も必要になる。

 

 

熊森から

昨年、国会で成立した林野庁提出「森林経営管理法」は、日本の森林所有制度を根底からひっくり返す大転換法でした。
しかし、この法案は、パブコメも採らず、突然、国会に出たため、ほとんどの国民が、そんな法案が国会に出たことすら気づいていないのではないでしょうか。

 

(法案通過後、施行令と施工規則については、パブコメがとられましたが、パブコメを寄せたのはそれぞれ2名と0名でした。熊森はこのようなパブコメが取られていたことにも気づきませんでした)

 

昨年末、紀伊民報さんが、この問題をタイムリーに記事にしてくださったことに感謝します。

 

熊森がこの法案に気づいたのは、林野庁が、手入れが不十分な人工林(=放置人工林)を所有している山主は、意欲と能力が低いと決めつけたことに、一部の自伐林家が反論した時です。
人工林を放置しているのは、ありにも奥地過ぎたり急斜面過ぎたりして、伐り出せない、無理して伐り出しても赤字になるからです。こんなところは天然林に戻すべきなのです。どうしようもないものがあるのに、
山主の意欲と能力が低いとして、山主に責任を負わせるのは、私たちもひどいと思いました。

 

この法律では、放置人工林や所有者不明の山林は、川下の素材生産会社などが山主に代わり伐採して林業利用するか、市町村が50年の管理下に置くかすることになっています。

個人所有の山が公有林化されていくことに議論は必要かもしれませんが、熊森としては、あまりにも放置人工林が多過ぎて、第1次被害者の野生鳥獣、第2次被害者の地元の人々、第3次被害者の花粉症国民などの大変な被害を思うと、もう一刻の猶予もない状況にあると思います。日本の水源の森を再生させるためにも、林野庁の一大発想をうまく活用したいと思います。

 

 

2018年西日本豪雨災害死者200人

 

赤色:スギヒノキの単一造林1030万ヘクタール 7割~8割が放置されている

 

手入れ不足の放置人工林の内部(和歌山県)

 

天然林内部

ただ、戦後の拡大造林政策によって造林し、現在50年生となったスギ・ヒノキの放置人工林を伐採した後、再びスギ・ヒノキ苗を植えたのでは何をしていることかわかりません。

 

今春から配当される森林環境譲与税は、放置人工林を多く抱える地元市町村には多大のお金が配当され、使い道は市町村に任されます。とりあえず積み立てておくではなく、まず天然林再生のための人材を確保し、直ちに有効活用を図っていただきたいものです。当協会を呼んでいただければ、使い道はいくらでも提案できます。

都市部は、その町の水道源となる山を有する町の放置人工林を天然林化するために、森林環境税をそこに寄付するなどしていただきたいです。

 

速報:森林環境税・譲与税法案 衆議院総務委員会可決

附帯決議に「放置人工林の広葉樹林化」と体制整備が入りました!

2018年3月1日深夜、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案が、衆議院総務委員会で可決されました。

その際、自由民主党、立憲民主党、無所属フォーラム、国民民主党、無所属クラブ、公明党、日本維新の会及び希望の党の6派の共同提案による附帯決議も可決されました。附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものです。

 

森林環境税・譲与税法案の付帯決議では、「放置人工林の天然林化」とそのための体制をつくることといった熊森が訴えてきた条項が入りました!

放置人工林の天然林化(広葉樹林化)を国会に出向いて訴えていたのは、私たちだけでしたが、本部支部あげて国会議員にアタックした結果です。

 

衆議院総務委員会の国会議員の皆さま、本当にありがとうございます!

審議は、参議院に移りますが、引き続き放置人工林の天然林化を訴えていきます。

 

(衆議院総務委員会での付帯決議の抜粋)

政府は本邦の施行にあたり次の事項に対して適切に処置すべきである。

 

12 私有人工林において、荒廃し、保水力低下、土砂災害の発生、野生鳥獣の生息地の破壊、花粉症罹患者の急増など、深刻な問題が生じていることがわが国の森林における重要な課題であると鑑み、豊かな水源の森再生のために、森林環境譲与税で地域の自然条件に応じて放置人工林の広葉樹林化を進めること

 

13 広葉樹林化の施業は実践例が乏しく、森林環境譲与税の交付を受ける自治体にその技術がなく、人材も不足していることから森林環境譲与税で放置人工林の広葉樹林化が進むように具体的な指針を示し、必要な支援を行うこと。

 

14 既存の森林整備に係る補助金等は放置人工林の広葉樹林化に利用が難しく、自治体独自の補助事業もほとんどないことに鑑み、放置人工林の広葉樹林化が各地で進むよう必要な取り組みを行うこと。

 

15 森林環境税及び森林環境譲与税制度について各自治体における使途及び豊かな森林の公益的機能増進への効果を検証しつつ、必要がある場合には豊かな森林環境の生のために森林環境譲与税の使途や譲与基準を始め、所要の見直しを行うこと。

 

熊森から

放置人工林の天然林化を誰よりも待っているのは、有害獣のレッテルを張られ、無残にも大量捕殺され続けている日本の野生動物たちでしょう。

彼らは、人間のところに出て来たくて出て来たのではなく、荒廃した広大な放置人工林によって山で生きられなくなり、生きるために食べ物を求めて里に出てきたのです。

 

 

熊森は、今回の付帯決議を、誰よりも、彼らと喜び合いたいです。

 

動物たちに帰れる森を、地元の人たちに安心を。

熊森は、今後も必死で天然林を復元・再生していきます。

 

今、日本の山野にはおびただしい数の捕獲罠が仕掛けられています。

罠にかからないように気を付けてください。

なんとか野生動物のみなさんに、生き伸びていてほしいです。

 

 

民間林業会社等に国有林の人工林伐採権を長期間与える「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会に 

2月26日、上記法案が閣議決定されて、農林水産委員会に提出されました。

 

この法案は、2018年に成立した「森林経営管理法」で新たな民有林管理システムの要となる、意欲と能力のある民間林業経営者(森林組合、素材生産業者、自伐林家等)に、10年~50の長期にわたり、数百ヘクタール、年間数千立方メートルの国有林の伐採権を与える法案です。(現在も民間が国有林を伐採していますが、現行は3年までという制限がついています)

伐採後は、伐採林業者が再造林を行い、造林経費は国が支出します。

Wクリックで大きくなります。

 

これによって、民間林業経営者が収入を確保し、長期的な経営計画が立てられるようにするとともに、安定的に木材を供給できる仕組みをわが国に創設し、川上・川中・川下の連携による木材需要拡大をはかるものです。

 

林野庁経営企画課に電話をして問い合わせました。

くまもり:国有林の多くは最奥地にあるので、伐採跡地は、天然更新させて天然林に戻してください。伐採後は林業をせず、水源の森・生物多様性保全の森に再生させて、全生物のため、子や孫のため、永久保全すべきです。

林野庁:今回の法案は、林業として成り立つ場所での伐採しか考えていませんから、そのような奥地の人工林には手を付けません。

くまもり:じゃあ、伐採跡地には、またスギ・ヒノキを植えるのですか?

林野庁:地元の森林管理局や森林管理署に任せます。もし、造林するのなら、費用は国が持ちます。

熊森:国有林伐採に外資が参入するのではないかと心配している人がいますが、その恐れはありますか。

林野庁:伐採権を得られるのは、地元で実績のある林業会社と決められていますから、外国人が入ってきて国有林を伐採することはありません。ただ、その林業会社に外資が投入されることはあるかもしれません。

 

熊森から 

林業振興のためだけの法案であることがわかりました。これからはどんどん人口が減っていく時代ですから、材の需要が増えることは考えられません。無理に木材需要を拡大しなくても、身の丈に合った林業規模でいいのではないでしょうか。人間の利益ばかり考えるのではなく、生息地を人間に破壊されて苦しんでいる野生動物たちに、森を返してやることも考えていく人間でありたいです。

 

熊森宮崎が51団体を代表し、宮崎県河野知事に無人ヘリによる森林への薬剤散布の中止を求める

以下は、宮崎日日新聞2019年2月19日の報道記事です。

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以下は申し入れ書です。

熊森本部から

無人ヘリで山に除草剤をまくなんて、とんでもないです。

宮崎県の担当部署には、水源汚染、生物多様性低下(山の生き物たちが死んだり病気になる)に思いをいたす人がいなかったのでしょうか。早急に方向転換していただくよう願います。

京都市 自然の意思は、放置人工林の天然林化

以下は、くまもり京都府支部の報告からです。

2019年2月24日、昨年の台風以降はじめて京都市西山(ポンポン山)に行きました。

登山道の最初のほうはまだ倒木も少なく、台風による被害はあまりなかったのかと思ってしまいましたが、尾根に着く頃には人工林のスギやヒノキが折れたり根っこごと倒れたりしてすごいことになっていました。

カシ、コナラなどの広葉樹も根ごと倒れているのがあって、改めて自然の力を見せつけられた思いでした。

京都市西山 2018年2月24日 wクリックで拡大できます。

 

主原先生も、台風被害を調べて来られました。人工林が折れたり倒れたりして、大変なことになっていとそうです。

ただし、ここでは上の方の広葉樹は、倒れていません。

 

京都市左京区 2019年2月 wクリックで拡大できます。

 

この場所の倒木は、もう建材にならないそうです。

これまで膨大な費用をかけてきた人工林が、一瞬にして消えてしまいました。

放置されるとヒバノキクイムシ、マスダクロホシタマムシ、スギカミキリなどが材につく可能性があるそうです。

 

 

熊森から

自然の意思に逆らうことはできるだけしない方が、無駄なエネルギーも使わず楽です。

いずれ放置人工林は、このように自然界が処理していくと思います。

しかし、それでは手遅れになってしまうのが、水源確保、生物多様性保全、防災などです。

防災と言っても、コンクリートで山を固めてはなりません。自然の意思に反します。

天然林に戻す方が国土は強靭化するのです。

日本学術会議・兵庫県共催「野生動物と共に生きる未来」は、ごまかし・隠蔽のオンパレード、科学の名に値しない異論封じの仲間内発表会②

シンポジウムの後半に移ります。

今回のシンポジウムの発表者のみなさんは、博士号を持つなど、一流大学を出たそうそうたる肩書きの方ばかりです。

 

兵庫県森林動物研究センター研究部長の横山真弓氏が、「兵庫県に於ける野生動物管理システム」という題で発表しました。

 

大荒廃している兵庫県の森を、豊かな森と見せかける

 

兵庫県の植生図が提示されました。右上に濃い緑がスギ・ヒノキ人工林、黄緑色は広葉樹林とあります。

1980年植生図

 

あれえ?兵庫県の森ってこんなに広葉樹林が多かったかしら?

何度も訪れ、どこにスギ・ヒノキ人工林があるのか大体わかっている町の一つ、但東町に注目してみました。

嘘ーッ、人工林が、もっとあちこちにあるはずだよ。

 

 

熊森が、環境省生物多様性センターが出している環境保全基礎調査の最新版を使って、スギ・ヒノキ・サワラ植林を赤く塗った植生図があります。

但東町部分だけを比べてみました。

 

横山氏提示 濃い緑が人工林         熊森提示 赤色が人工林

 

ずいぶんと兵庫の山のイメージが違ってきます。スギ・ヒノキの人工林内では野生動物は生きられません。

 

 

この後、横山氏は、但馬地域に於けるある集落の1950年と1980年の植生の変化という図を提示されました。隠す必要などないと思いますが、集落名は不明にされていました。

1950年          1980年

 

左図の灰色部分が荒れ地だそうです。30年後、集落の周辺には、森林が再生してきて、無立木地が消え、野生動物の生息環境はとても良くなったということを言いたいようです。このデータだけでそのようなことが言えるのでしょうか。

 

兵庫の森が豊かなら、そこから人里に出て来る野生動物たちはけしからんということになります。

 

しかし、実態は正反対なのです。

一部だけ出して全体イメージを作るのはごまかしです。人工林にせよ自然林にせよ、木が生えていても、内部が大荒廃していて野生動物の餌などほとんどないところがたくさんあります。

 

兵庫県は下層植生が消えている場所などの全県データを持っているのですから、そちらこそを提示すべきです。

 

野生動物が生きていくために必要なのは、ねぐらと食料です。そこを保障してやらないと棲み分け共存などできません。

熊森は兵庫県に対して、有害捕殺や頭数調整捕殺された多数のクマの胃内容を情報公開請求していますが、胃の中は全て空っぽだったとして、兵庫県は公開しません。

他県に同様の資料提供を要請すると、ちゃんと全頭分教えていただけます。

頭数調整捕殺する前にまず、彼らが何を食べているのか、生息地は保障されているのかが大切です。

 

兵庫県のクマ、サル、シカ、イノシシは、どこにおればいいのですか。

どこにいても殺されるというのが現状です。

 

兵庫県の山は、里山も奥山も、今、内部が大荒廃しています。これまで横山氏は、兵庫の森は絶好調、これまでで一番豊かと、国の戦後の森林政策の失敗を覆い隠す発言を続けて来られました。

行政のみなさんには非常に使いやすい研究者だと思います。しかし、最近、あの林野庁でさえ、人工林の7割が放置されて、内部が荒れていると発表する時代です。もう隠せなくなっています。人工林率や放置人工林問題にふれない野生動物管理発表は、やめるべきです。

 

 

このブログでもこれまで何度も兵庫県森林動物研究センターを批判してきました。

数字や図表を多用したところで、ごまかし、隠蔽があれば科学ではありません。

誰もが納得できるデータでなければ、科学的ではないのです。

指摘し出したらきりがないので、個々の指摘はもうやめます。

熊森のように、現場を歩き続けている者たちは、ごまかし、隠蔽にすぐ気づきますが、一般県民は、おそらく行政も含めて、誰も、まず、気づかないでしょう。

 

今回のシンポジウムの開催趣旨に、参加者の皆様と活発な意見交換を行いますとありました。大事なことです。しかし、結局は、質問や意見は前もって紙に書いて提出させ、自分たちに都合のいいものしか取り上げませんでした。これではシンポジウムではなく、単なるワイルドライフマネジメント派の発表会に過ぎません。

 

熊森はいつでも受けて立ちますので、ワイルドライフマネジメント派のみなさん、本当の討論会をしましょう。初めに殺すありきだと、日本中が物言えぬ弱者を強い者が迫害する恐ろしい国になっていくと感じます。もうなっていますが。

 

私たちは、野生動物たちを害獣視するような反自然的なこと、非倫理的なことが、兵庫県の周りの府県に広がって行くことを、今、真剣に恐れています。

 

人間の人間による人間のためのワイルドライフマネジメントは、必ず破綻します。人間社会もゆがめられていきます。

 

「王様は、裸だ!」と、誰かが大きな声で叫び、人々に目を覚ましてもらう時だと感じました。(完)

 

「鳥獣被害防止特措法」の苦い経験から、森林環境税の使途に「人工林の天然林化」の明記を願う

熊森が、「森林環境税」の使途に、「人工林の天然林化を進めること」という言葉を入れていただきたいと訴えて回っているのは、2007年の「鳥獣被害防止特措法」の苦い経験があるからです。

 

この法案は最初、「有害鳥獣特措法」という名前でした。「有害鳥獣」などこの世にいないのだから、「有害鳥獣」という言葉を法律名に使うべきではないとして、熊森顧問の赤松正雄当時衆議員議員が、当時、国会でひとり必死に闘ってくださいました。

 

そして、法律の名を、「鳥獣被害防止特措法」と変えてくださっただけではなく、赤松議員は、第十八条に

 

国及び地方公共団体は、人と鳥獣の共存に配慮し、鳥獣の良好な生息環境の整備及び保全に資するため、地域の特性に応じ、間伐の推進、広葉樹林の育成その他の必要な措置を講ずるものとする。(生息環境の整備及び保全)

 

という条文まで入れ込んでくださったのです。

 

熊森が、泣いて喜んだのは言うまでもありません。

この法案に対して、年間96億円程度の予算が国から出ることになったのですが、鳥獣を捕殺することに予算を使うだけではなく、鳥獣が人里に出て来なくてもいいように、鳥獣の奥山餌場づくりにも予算を使っていいことになったのです!

 

ところが、毎年予算の使われ方をチェックしましたが、鳥獣の餌場づくりには1円も使われませんでした。

 

鳥獣の餌場となる広葉樹林の育成にも使うことという明記がなければ、実際上は使われないと、私たち熊森は学習しました。

 

こういう経緯があったため、今、熊森は、森林環境税を使って人工林を天然林化することという文言を、法文に入れてほしいと訴えて回っているのです。

税は森林整備に使ってくださいという法文だけでは、人工林の天然林化が進むとはとても思えません。

2007年版「豊田市の100年の森づくり構想」の天然林目標が2018年版で下方修正された訳

熊森はこれまで、豊田市森林課の取り組みを高く評価してきました。

2005年4月1日に藤岡町・小原村・足助町・下山村・旭町・稲武町の7 市町村と合併し、広大な森林を持つことになった豊田市は、まず森林課を、本庁ではなく、足助町という現地に移転します。

そして、2007年に「豊田市の100年の森づくり構想」を発表しました。

 

その中で、林業採算性が見込めない場所や環境保全上天然林である方が望ましい場所においては、人工林を針広混交林を経て天然林化することにより、およそ 100 年後には、現状約 50%を占める天然林を 70%程度まで増加させる構想が描かれていました。

 

「豊田市の100年の森づくり構想」 wクリックで図が大きくなります。

 

しかし、2018年度版「新・豊田市100年の森づくり構想」では、100年後の天然林の割合が下方修正されています。

「新・豊田市の100年の森づくり構想」 wクリックで図が大きくなります。

 

いったい何があったのでしょうか。

担当課に問い合わせてたところ、山主さんたちが予想外に人工林の天然林化を渋るので、下方修正せざるをえなくなったということでした。

 

戦後、造りすぎた人工林の天然林化を急がないと、この国は21世紀を生き残れないと、大変な危機感を抱いている熊森の前に大問題が立ちはだかったのです。

 

確かに、山主さんとしては、税金で持ち山の人工林を天然林化してもらったところで、金銭的な利益が生じるわけではなく、将来にわたる水源の確保や、野生鳥獣との共存、災害に強い山などの明確な意志を持ち合わせていない限りは、うれしくも何ともありません。

もし、間伐にとどめておいてもらって人工林を維持しておけば、いつか材が売れてもうかる時がくるのではないかという淡い期待があるのでしょう。

 

今は、政治も経済も社会も文化も、全てお金が支配する時代です。今だけ、金だけ、自分だけの刹那的利己的な病的社会にあっては、山を経済性でしか見られなくなっている山主さんを責めることもできません。

 

こんな時代に、人工林の天然林化を進めるには、持ち山の天然林化に同意してくださった山主さんには、毎年わずかであっても森林環境税から水源税や生物多様性保全税が入るなどの、金銭的インセンティブが必要なのではないでしょうか。

他にもいい知恵が浮かんだ方は、ぜひ教えてください。

 

 

 

 

 

「森林環境税で放置人工林を天然林へ」室谷悠子会長が国会議員を訪れ、精力的にロビー活動中

「森林環境税法案」は2月8日に閣議決定されたので、ネットでも法文を読めるようになりました。「森林環境税法案」

ただいま、衆議院総務委員会で審議中です。本会議で採決後、3月には、参議院総務委員会で審議される予定です。

法文第34条に、森林環境税の使途として、

1 森林の整備に関する施策

2    森林の整備を担うべき人材の育成及び確保、森林の有する公益的機能に関する普及啓発、木材の利用の促進その他の森林の整備の促進に関する施策

となっていますが、これだけでは税が林業用整備や間伐に使われるだけになることが考えられます。間伐では、天然林は再生しません。

法文に、この税で、放置人工林を順次計画的に天然林へ移行していくという文言を入れてください!

熊森は動きに動いています。

 

2018年

12月4日

総務省市町村税課担当職員に (総務省)

12月4日衆議員議員に訴える室谷悠子会長(国会議員会館)

 

2019年

2月5日参議院議員に訴える室谷悠子会長(国会議員会館)

2月20日衆議院議員に(国会議員会館)

これまで約20名の国会議員に会って、訴えを聞いていただくことができました。

 

地元でも、地元選出国会議員にアタック

 

2月23日

石田真敏総務大臣の和歌山県地元秘書に訴える(和歌山県岩出市)

和歌山県北野久美子支部長・真造賢二和歌山県みなべ町議会議員

 

「森林環境税で放置人工林を天然林へ」の署名27000筆は、3月上旬に、石田真敏総務大臣に提出予定です。

<2019年は、、日本の林政大変革期です>

私有林に関する法律

「森林経営管理法」2018年国会成立、

森林環境税法案」2019年国会審議中

「森林バンク法案」2019年国会提出予定

 

yahooニュースに、「森林環境税」(現在衆議院総務委員会で審議中)が登場2

以下、yahooニュース2019年2月22日

住民税に1000円加算される森林環境税とは何か?

 

国会答弁で登場した「森林環境税」

2019年2月15日、衆議院本会議で、高井崇志議員(立憲)が、放置人工林問題を取り上げ、森林環境税で広葉樹林化を図るという内容の議論を行った。

高井崇志議員:

森林環境税・譲与税について伺います。今、日本の森林は保水力を失い、危機的状況にあります。その最大の要因は、戦後、拡大造林政策により、天然林を伐採し、植えられたスギ・ヒノキの人工林が放置され続け、荒廃していることです。

放置された人工林は、保水力が低下し、昨年の西日本豪雨災害や、北海道胆振東部地震でも、土砂崩れの大きな原因となりました。

クマなどの野生動物が山で生きられなくなって、里へ出て来て捕殺される事例も相次いでいます。農家の被害が深刻ですが、動物たちも放置人工林の被害者です。

さらに、国民の3割が、スギ・ヒノキの花粉症に悩まされているという弊害もあります。

今回の森林環境税・譲与税を活用し、放置人工林を、保水力豊かな天然林に戻すことを進めるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

安倍晋三内閣総理大臣:

高井崇志議員にお答えします。森林環境税と森林林業についてお訊ねがありました。わが国の森林は、戦後植林されたものが本格的な利用期を迎えていますが、十分に利用されず、また、適切な森林管理も行われていないという課題に直面しています。

このため、森林バンクも活用し、森林整備をしっかりと加速させてまいります。その際、地域の自然条件等に応じて、針葉樹だけでなく、広葉樹が混じった森づくりも進めます。

新たに創設する、森林環境税・譲与税も活用し、こうした政策を推し進め、次世代へ豊かな森林を引き継いでまいります。

議論の中で、森林環境税、放置人工林など、馴染みのない言葉が出てきている。これらについて解説してみたい。

森林環境税とは?

森林環境税という新たな税が創られたことを知っている人は、どれくらいいたのだろうか。

森林環境税は、2024年度から住民税に1000円上乗せされる。現在、個人住民税を納めている人は約6200万人いるので、年間約620億円の税収となる。

なぜ2024年度からか。それは復興特別税の徴収が終了した後に導入されるからだ。復興特別税とは、東日本大震災の復興増税の一環として納めていたもの。全国の自治体が行う公共施設の耐震化や避難路整備などの費用として、2014年6月より、個人住民税に1000円加算された。その1000円が目的を変えて徴収されることになる。

いったん国に納められた森林環境税は、市町村と都道府県に対し、森林環境譲与税という名称で配られる。森林環境譲与税は今年(2019年)から配られる。2024年に森林環境税の徴収が始まるまでの5年間は借入金で賄われる。

分配方法は、自治体の森林面積、林業従業者数に応じて決まる。そして森林整備、間伐、林業に携わる人材の育成、公共建築物への木材利用促進などに使われるとされている。

次に放置人工林について考えてみたい。

小学校4年生の社会科の教科書には、次のように書かれている。

「日本は、水が手に入りやすい国と言われています。その理由の1つに、豊かな森に恵まれていることがあげられます」

この単元では「水がどこからくるのか」を学ぶ。家庭の水道の蛇口から出る水は浄水場から来る。さらに遡ると水源は川の水や地下水であり、最終的には森に降った雨が水の源であるとされ、この説明が登場する。こうした教育の効果からか、子どもたちは「森が水を育む」のは常識と考えているようだ。

さらには水と森について、こんなふうに語られるのを聞いたことはないだろうか。

「森に雨が降る。大部分の水は森の土にしみこむ。スポンジのように柔らかな森の土は水を蓄える。地面に浸透して地下水となり、その地下水はやがて湧水となって川に流れ出す。このため森は、天然の浄水場と呼ばれる」

ペットボトル水のCMなどでおなじみのフレーズだ。こうした宣伝文句によって「森は豊か」と思っている人は多い。

 

多くの人がイメージする森(著者撮影)

多くの人がイメージする森(著者撮影)

ところが実際に出かけてみると、森の様子に驚かされる。下草のないむき出しの地面にやせ細ったスギ、ヒノキがぎっしり立ち並んでいる。見上げると枝葉が傘を広げたようになっていて、晴天でも薄暗い。スギ、ヒノキの直径は細く、切り株を見ると年輪は外側ほど窮屈になっていて、あまり成長していないことがわかる。

 

実際にはこのような放置人工林がある(著者撮影)

 

1950年代、それまであった広葉樹の森を伐採したり、畑を潰したりし、資材として利用しやすいスギやヒノキが盛んに植えられた。これを拡大造林という。

苗木はほぼ同じ早さで成長する。だが、狭い土地にすし詰め状態では、枝葉が重なりあって地面まで日光が届かない。土の栄養もすべての木には行き渡らない。大きく育てるには、適当な間隔で木を伐採しなくてはならない。これを間伐という。マキとしての需要があるうちは間伐材も高値で取引されていた。

ところが1960年代に木材の輸入が始まった。国産の木材は安い外国産の木材との価格競争で敗れた。さらに新建材(石膏ボードや合板を使った工業製品)も出回るようになると国産の木材の需要は減り、熱心な林業家をのぞくと、間伐も行われなくなった。

日本は国土の7割が森林だが、そのうちの多くが放置された人工林。太陽の光は重なり合った枝葉に遮られて昼でも暗く、光合成が行われないために下草はなく、裸の土がむき出しになっている。光を失った大地は生命の息吹を失う。草のない地面のうえに、やせ細ったスギ、ヒノキがお線香のように立っている光景は異様だ。

放置された木が倒れ始めた

昨年を表す漢字は「災」だった。2018年に世界で発生した自然災害による経済損失は2250億ドル(約25兆円)だった(米保険仲介大手エーオン)。

台風や大雨などの気象災害が約96%(2150億ドル/23兆6500億円)を占め、個別の災害では、日本の台風21号の損失額が世界第4位(130億ドル/1兆4300億円)でアジア太平洋地域最悪。西日本豪雨が世界第5位(100億ドル/1兆1000億円)だった。9~10月の台風24号の被害も45億ドル(4950億円)とかなり大きい。

 

崩れてしまった山(著者撮影)

 

なかでも9月4日に徳島県南部に上陸した台風21号は、1993年の台風13号以来「非常に強い」勢力のまま上陸。強風によって各地で大量の倒木が発生し、いまだにそのままになっている場所がある。多額の税金をかけて植林され、長年育てられてきたスギやヒノキが根をむき出しにしたまま無残に倒れている。

昨年10月、台風21号で被災した京都北部の山を歩いた。倒木が山道をふさぎ、周囲の山林を見渡せばおびただしい数の木がなぎ倒されたままになっていた。鞍馬寺と由岐神社のある京都市左京区の鞍馬山には、暴風の生々しい傷痕が残る。

京都府内最大の木材市場「北桑木材センター」では、取り扱う木材量が急増した。台風21号で倒木した地元の木が大量に持ち込まれているためだ。扱い量は例年の5~6割は多い。搬入される倒木材はほとんど京北地域のもので、民家や一般道路そばの木は早くに処理されたが、山中では林道が倒木や土砂崩れで通行できない箇所が多く、放置されたままの倒木は相当量が残っている。倒れなかった木も民家近くのものは被害を防ぐために伐採する所有者が増えている。

災害時に流れ出す木

豪雨災害の被災地を歩くと流木の多さに驚く。2017年の9州北部豪雨の際、朝倉市杷木志波(はきしわ)を流れる北川の下流域では、筑後川に注ぎ込む約200メートル手前の本陣橋に無数の流木が引っかかり、勢いを蓄えた濁流が周囲の民家をのみ込んだ。日田市でJR久大線の鉄橋が流失したのも、押し寄せた流木が原因とされている。水が引いた後、残った流木は道路をふさぎ、多くの集落を孤立させた。住民や消防隊員ら数十人がスコップで泥をかき出したり、チェーンソーで丸太を切ったりしながら、懸命に捜索を続けていたが、土砂と流木に阻まれ難航していた。このように被災したすべての河川で大量の流木が発生し、国土交通省の調べでは、9州北部豪雨に伴う大分・福岡両県の流木発生量は約21万立方メートル(17万トン)に上る。

いったいこの木はどこからきたのか。地元の林業者は、

「周辺の林内には間伐後に放置された木々が転がっていた」

「林業経営の悪化で搬出費を捻出できないために林地に転がっていた間伐材が流れ出した」

と言う。

しかし、それだけではない。朝倉市や隣の東峰村の山あいは、地表の近くに花こう岩が風化した「まさ土」が堆積しており、大量の水を含むと崩れやすいのだが、そこに植えられていたのは、根を深く張らない針葉樹のスギやヒノキだ。それらが土砂崩れの際、立木のまま流れ出した。針葉樹は比重が軽く水に浮きやすいため、濁流を滑るように加速していったのだろう。

地元の人は、

「流木化したのは大半がスギだった。自然の広葉樹は、山肌をがっちりつかんで、まわりのスギが流されても島のように残り、ちっとも動じていなかった」

「根の深い広葉樹林と挿し木苗の杉の根の違いが歴然とした」

と、浅くてまばらな根しかない挿し木苗のスギが流れ出したことを指摘していた。スギは種子から成長する場合は、深く密集した根を張るが、挿し木の場合、根は浅く、密度も低いため、深い層や基岩の隙間まで伸びて土を縛るという「くい打ち効果」は期待できない。

急性的な被害、慢性的な被害

豪雨災害、猛暑、台風被害は今後ますます激しくなるだろう。仮に災害がこれ以上起きないとしても、森や林が健全な状態で維持できる可能性は著しく低い。山の災害は、台風や豪雨に襲われた時の急性的な被害だけではなく、慢性的な被害もある。何年もかけて根が腐り、土が緩み、雨の翌日に突如崩れる。都会に住む人たちは、この現実を見る機会はまずないだろう。未来のさらに拡大する災害の姿、死にゆく生物の姿を想像することも困難だろう。

森を守れれば幾分かはその災害は軽減できるだろう。

しかしながら、そのための十分な制度はなく、人材も資金も不足している。

被災地の林業者も「木材の価格が安すぎる」と口をそろえる。スギ(中丸太)の価格は、1立方メートル(直径50センチの材木4メートル分)当たり1万円強。ピークだった80年の3割程度まで下がった。価格の低迷は、林業者の減少に拍車をかけた。国勢調査によると、60年は44万人だったが、2015年は5万人を割っている。ましてや高齢化も進んでいる。間伐や枝打ちなど手入れが行き届かない人工林が急増しているのだ。

こうしたことの対策を打つために、森林環境税が創設された。その使用法は自治体が決めていくことになる。いかにきちんと税金が使われるかが大切なのだが、「新しい森林管理システム」は効果を発揮するのだろうか。それについて次回お話しする。

 

 

橋本淳司 水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表

水ジャーナリスト、「水と人の未来を語るWEBマガジン”aqua-sphere”」編集長として水問題や解決方法を発信。アクアスフィア・水教育研究所を設立し、自治体・学校・企業・NPO・NGOと連携しながら、水リテラシーの普及活動(国や自治体への政策提言やサポート、子どもや市民を対象とする講演活動、啓発活動のプロデュース)を行う。近著に『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る 水ジャーナリストの20年』(文研出版)、『水がなくなる日』(産業編集センター)など。

 

 

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