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2020-04-20
C.W.ニコルさんの死を悼む 作家・ナチュラリスト 79歳
自らをウェールズ系日本人と呼ぶC.W.ニコルさんは、1995年に日本に帰化され、自然に生かされていることが全く分からなくなってしまって自然を守ろうとしない私たち日本人に、クマの大切さ、森の大切さ、生物多様性を守ることの大切さを語り続けてこられました。
熊森は生前つながることができませんでしたが、4月3日にご逝去されたとの報に接し、心から哀悼の意を捧げます。
クマが大好きでクマのすばらしさを知っているC.W.ニコルさんによって、クマの棲む森を守り残すことの大切さを知るようになった日本人が多くおられると思います。
ニコルさんのすごいところは、森の再生を口で語るだけではなく、長野県北部の黒姫にある34ヘクタールの荒廃した里山を買い取り、アファンの森と名付け、実際に森再生を実践されたことです。
34年目の今、アファンの森は生物多様性に溢れる森となっているそうです。「豊かな森は人の心も豊かに育む」と言われていたそうですが、まさにその通りだと思います。ニコルさんと熊森は、すべて考えが一致していたわけではありませんが、一致点は多かったと思います。
奇しくも、4月1日、2日、4日と神戸新聞にニコルさんの「猟を語る」という取材記事が連載されていました。
狩猟者であったニコルさんが最後に応じられた取材だったかも知れません。
この記事はクマ狩猟を始めようとする記者がインタビューしたもので、ニコルさんが狩猟や罠猟について語っています。
以下、抜粋
「私はわなは大嫌い。ものすごく嫌いです。アフリカの国立公園長をしていた時、わなを使う人たちを逮捕していたから。わなは密猟者の道具。動物に恐怖と苦しみを与えてはいけない。大半の国でわなは違反です。特にワイヤロープ(くくりわな)。あれは無差別です。シカ以外の生き物もかかってしまう。でも(日本)政府はわなを勧める。それは日本の恥です。
ハンターの誇りはすごく奥深い。一発の弾で即死させられる腕がないとだめ。痛みを与えないよう一瞬で命を奪う。そうでないと動物虐待になる。散弾銃はとんでもない。一発に弾が9個入っていて、どこに当たるか分からない。シカの数を管理しないと森の生態系が変わる。自然を守るのが本当のハンターの仕事です」
熊森から
昨年熊森が話を聴いた猟師は、一人で罠を100個かけていると言われていました。かかった動物は、槍や包丁で何度も突いて殺すそうです。罠があれば、銃など不要と言われていました。銃を持って山の中を動物を追って走り回るより、罠の中に誘引物を入れておいて、動物がやってくるのを待っていた方が楽に決まっています。銃と違って罠は野生動物を大量に捕獲できるのです。
くくり罠の場合は、シカやイノシシを獲るという名目で許可を得たものであっても、キツネ、タヌキ、クマ・・・、もういろいろな動物がかかります(シカやイノシシなら、くくり罠で獲っても良いと言っているのではありません)。
くくり罠で錯誤捕獲された場合、罠を外してやろうと思って近づいても、動物たちは殺されると思って必死に暴れるため、罠を外してやれません。そこが、鉄格子でできた箱罠と違います。結局、くくり罠にかかった動物は、みんな殺すしかないのです。しかも、罠にかかった動物は、強力なワイヤーで締め付けられて、苦しみと痛み恐怖のうちに殺されていきます。
日本は今、環境省の指導により、無数の罠で毎年野生動物を大量に殺処分しています。山の中は罠だらけ。全国民にこの実態を知っていただきたいです。国民が地元の人たちや野生動物たちの悲鳴に無関心だから、こんな残虐なことが許されていると思います。環境省の担当者は、野生動物の捕獲許可権限は都道府県に全て移譲してしまっており、現地に出向くことはないと言われていました。法律を作るのは環境省ですから、環境省の担当者は部屋から出て、現地を見て回っていただきたいと思います。
罠猟は日本の恥、ニコルさん、よく言ってくださいました。
熊森は今、罠の規制を求める署名を開始しています。
くくり罠のような残虐な罠は使用禁止にするようにと、以前、熊森は環境省に何度も必死で働きかけたことがあります。
しかし、数が少なすぎて、ほんの一部の者の声であるとされ、環境省を動かすことができませんでした。
とりあえず、無差別捕殺となる「くくり罠は日本の恥」を使わせてもらおうと思います。
今度はたくさんの署名を集めたいです。
罠捕獲に強力な規制を!
みなさん、どうか署名の件、拡散をよろしくお願いします。
クヌギが花盛り 雌花と雄花がわかりますか
4月17日、庭のクヌギが花盛りなのに気づきました。
あまりにもきれいなので、見に来ませんかと熊森スタッフに声をかけた次第です。
ところが、2日後の19日に見ると、もう花期が終わってしまったようです。
自然界の移ろいのあまりのはやさに驚きつつ、あわてて写真に撮りました。
クヌギは風媒花だからいいものの、虫媒花だったら、こんな花期の短い花は困りますね。
ちょっと昆虫の訪花の日がずれたら、もう受粉できなくなってしまいます。
4月19日のクヌギの雄花
無数に垂れ下がっている紐のようなものに雄花がびっしりついています。
クヌギは、花と言っても、めしべとおしべがあるだけで花びらはありません。
手前の茶色っぽい雄花はもう花粉を出し終わった感じです。
2日前には写真奥の雄花のようにきれいな黄緑色でした。
雄花をアップで撮影しました。
一つの雄花に、おしべが4本付いています。
びっしり咲いた?雄花
雌花は小さすぎて撮れないので、ネットから写真を探し出しました。
新枝の葉の根元についている2ミリのものが雌花です。
雌花と言っても3つに裂けた柱頭があるだけです。
今年の雌花
クヌギは2年成のドングリなので、今春受粉した雌花がドングリになるのは、来年の秋です。
去年受粉した雌花は、この時期3ミリぐらいになっています。
下の写真が去年受粉した雌花です。
今年の秋には大きなドングリに成長していますよ。
去年の雌花
このクヌギは、熊森協会ができる前の年の秋、山に行った時、あまりにも大きなドングリを見つけて一つ持ち帰り、庭に植えたものです。
数年後には実をつけ始めました。
17年後、胸高直径18センチにまで育ちました。
2013年撮影17年目のクヌギ
この年、このクヌギの木から落ちたドングリの2分の一量の重さを図ってみました。
スーパーのビニール袋がいっぱいになりました。
重さは5キログラムありました。
1本のクヌギから合計10キログラムのドングリが落ちたことになります。
クヌギのドングリ
現在保護飼育中のツキノワグマ「とよ」も、クヌギのドングリは大好きです。
秋の食い込み期には、「とよ」は1日に10キロのドングリを平らげますから、このクヌギの木1本で1日分の食料を得ることができます。
冬ごもりに備えてのツキノワグマの食い込みは、7月末から始まります。
もし、この大きさのクヌギのドングリだけで、1頭のクマが冬ごもりしようと思ったら、このような木が山の中に150本点在していることが必要です。
クマが生息するために、どれだけ広い山が必要か想像すると、気が遠くなりそうです。
クマが生息する自然が残されているということは本当はすごいことで、自慢すべきものなのですが・・・
クヌギの樹液はカブトムシやクワガタ、オオスズメバチなど、葉はウラナミアカシジミ(チョウの一種)の幼虫など、ドングリにはゾウムシなど、もう数えきれないほどのいろいろな動物が、クヌギの木で命をつないでいます。
狭い庭に、クヌギの大木は無理なので、2015年に植木屋さんに伐ってもらいました。
しかし、10日後には切り株から青々とした新芽が出てきて、今また元の大きな木に戻ってしまいました。
切り株から新芽(伐採後50日目に撮影)
クヌギは、青森を除く本州と九州、四国に分布しています。
クヌギは昔から、炭やシイタケのほだ木などに広く利用されています。
古文書を読まれた先生によると、祖先が摂津などから苗木を取り寄せて各地にクヌギを植えて回ったことがわかるそうです。
よって、分布は全国に連続しており、クヌギに地域固有の遺伝子はありません。
皆さんの所では、ドングリの花は終わりましたか?
それともこれからですか?
日本にドングリの種類は21種あります。
クヌギ以外のドングリも春に花が付きます。
ドングリの雌花や雄花をまだ見たことがない人は、ルーペでいつか見てください。
命の不思議さを感じますよ。(完)