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2020-04-27
NHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見て
以下、会員からのメールです。
昨晩のNHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見ました。
老漁師が大声でコラッとかこの野郎とか言ってヒグマを遠ざけながら漁をしていました。
見ていてヒグマと共存というより、私にはヒグマを虐待しているように見えました。
なぜなら、ヒグマは人が見えるところに来ただけで、大きな声で追い払われているのです。何も悪いことはしていません。
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番組のなかで、ここまでヒグマと共存できているのは、この知床だけだというようなことを言っていましたが、そうではありません。
ロシアでは(場所は記憶していませんが)、猟師のすぐそばで何頭もの大きなヒグマが、漁師から捕った魚を分け与えてもらって食べている場所があります。
漁師たちもヒグマも、どちらも互いを恐れてはいませんでした。
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しかし、この知床では漁師が捕った魚は1匹たりともヒグマには与えないと言っていました。
だから飢えてやせ細ったヒグマの親子は弱り果て、子熊は死んでしまいました。(多分あの母熊も死んでしまうでしょう)
そんな状態のどこが共存なのでしょう。
人間がまるで海の幸は自分たちだけのものだと言わんばかりに独り占めして、ヒグマを見殺しにする自然遺産なんて変です。
NHKは、ヒグマと人が共存しているこの場所は何と素晴らしいのかと称賛しているようですが、違うと思いました。
別の方法で共存する方法があると思います。
ユネスコ自然遺産の調査団は、漁師の都合で作った道路とダムを撤去するように要請しました。
熊森から
番組は見ておりませんが、あの場所は有名です。
あの場所は特別保護区で、普通の人は入れません。
入れるのは許可を得た特別な研究者と環境省のレンジャー、番屋の漁師だけだと思います。ああそれと、NHKのカメラマン。最果ての地です。
残念ながら、日本でヒグマが殺されないのは、あの場所だけです。
北海道に行って驚くのは、海にびっしりと張り巡らさせた定置網が延々と続いていることです。
これでは、戻ってきたサケやマスが、川を上る前にほとんど人間に捕獲されてしまうのではないかと危惧します。
それでも、ヒグマを殺さないという一点だけで言えば、知床のあの場所は、ヒグマにとっては奇跡のような唯一の天国だと思います。
その点では、ヒグマを殺すことを止めて50年という老漁師さん(84歳)はすごいと思います。
しかし、人間も含めた全生物のために、入らずの森や開かずの森を取り戻したいと考えている熊森としては、あのような最果ての場所は、将来的には海岸の定置網を除去して、漁業も撤退して、人間が入らないヒグマの国に戻すべきだろうと思います。
林野庁「森林・林業白書」の目標とする森林の状態を見て絶望です 熊森の見解を知りたいです
(以下、会員からの手紙)林野庁の「森林・林業白書」を読んでみました。「森林・林業基本計画」における森林の有する多面的機能の発揮に関する目標を見て、国が今後、天然林をますます減らそうとしていることを知り、絶望的になりました。これでは日本の野生動物たちは生き残れません。熊森の見解を教えてください。
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以下の表は、令和元年林野庁「「森林・林業白書」から
<林野庁の回答>
奥山原生林に手を入れることは今後もうありません。今残されている奥山天然林は、今後も手つかずで保全します。
天然生林というのは、原生林だけではなく、放置された里山や竹林も含まれます。要するに人の手が入っていないということです。
この表が示しているのは、放置されて密生している里山を、昔のような野生動物との緩衝帯になるように間伐したり、広がり過ぎた竹林を伐採するなどして、里山整備を行っていきますという意味です。その結果、すっきりした広葉樹林が誕生します。人の手が入って様々な年代の木が育っていれば、全て育成複層林です。
複層林というと、一般的には、林業用に年代の違うスギやヒノキを植林した人工林のことと思われますが、このような広葉樹だけの里山の育成複層林もあるわけです。
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この計画で今後、我が国の広葉樹林面積が今より減ることはありません。
荒れた里山に人の手が入るんだな、育成単層林(スギやヒノキだけの一斉植林)がどんと減って、年代が違うスギ・ヒノキの複層林や針広混交林、または広葉樹の複層林を増やそうとしているのだなと読み取ってください。
熊森から
熊森もかつて、この資料を見たとき、ぎょっとして林野庁に説明を求めました。
お役所言葉は、一般国民には本当にわかりづらいです。「森林・林業白書」の中に、将来の森林想像図が出てきますが、その絵は林業が前面に出ており、将来もスギやヒノキの人工林でいっぱいです。
熊森としては、説明と絵が一致していないとして、林野庁に改善を求めているところです。
熊本県在住の平野虎丸氏(熊森顧問82歳)もずっと指摘してこられたように、森林保全と林業は全く別物なのです。戦後、林野庁が林業に乗り出したことで、森林保全作業と林業整備作業をごちゃまぜにしてしまった。これが、わかりにくさの原因です。森林整備と言いながら、実際に林野庁がやっているのは林業整備であることがほとんどです。きちんと分離して書くべきです。
ちなみに、平野氏は、林野庁は一刻も早く林業から撤退すべきであり、日本の森や野生動物を守るためには、他の省庁のように行政機能一本に戻るべきであると主張されています。