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2021-02-25
2020年の東北地方クマ大駆除の嵐の中で
東北地方のクマ生息地に住む方と、電話でお話ができました。以下は概要です。
去年の秋はとてもつらかったです。たくさんのクマたちが次々と山から出てきました。よほど山に餌がなかったんだと思います。あっちでもこっちでもクマを撃つ銃声が身近に聞こえて、胸騒ぎし通しでした。おなかがすいてたまらなくなって出てきているだけなのに、行政の人は何も感じていないようで、罠を仕掛けてはクマを獲り続けていました。何回クマを撃ち殺す鉄砲の音を聞いたかわかりません。報告しているよりずっと多くのクマを殺していると思います。
11月、我が家から50メートルぐらい離れたところにあるカキの木の枝がボキボキに折られて柿の実が食べられていました。クマかもしれない、撃たれるといけないと思って、証拠隠滅のためにすぐ枝を片付けに行ったら、根元に大きな糞がありました。クマだと確信しました。こんな家のそばまでクマが来たことはこれまでありません。よほど餌に困っているんだなと思いました。見回してみるも、明日からの食料になるようなものはもう何もありません。かわいそうになって、米ぬかを運んでやったらどうかと思いつきました。
もっと奥に雑草が生い茂っている空き地があるので、そこの地面に一輪車いっぱいの米ぬかを運んでやりました。次の日見に行ったら、ぬかがなくなっており、よくぞここまでと思うくらい地面がなめ尽くされていました。かわいそうに、飢えて冬眠できないんだと思って何度もぬかを運んでやりました。東京の友達にこの話をしたら、ドングリをあげたらいいと言って、すぐに段ボール2箱のドングリを送ってくれました。中を開けたら、3分の1はマテバシイのドングリであとはクヌギのドングリでした。マテバシイは食べないだろうと思ったけれどぬかの跡に運んでやりました。次の日見に行ったら、一粒の殻もなくきれいになくなっていました。マテバシイでも食べるんだとわかりました。今年のクマは飢えすぎて、殻も食べてしまったんだろうと思いました。
ドングリがなくなったので、また米ぬかにもどしました。米ぬかばかりだとかわいそうなので、米ぬかの中にカキの実を3つぐらい忍ばせてやりました。12月になって、やがて雪が降りだしました。ある日見に行くと、与えたエサがそのままになっていました。無事冬ごもりに入れたんだと思いました。私は去年1頭だけだったけどクマの命を助けたと実感しています。集落の人たちは、私がクマに餌を運んでいることを感づいていると思いますが、誰も役場に届けないでいてくれました。地元の人たちは、かわいそうに、クマは餌がないんだという感情を持っていますから。
しかし、行政の人たちは違います。行政は、クマが出たときくと、罠かけて殺すことしか考えていません。。早くことを片付けて終わりたいだけです。行政で、クマは餌がない、山に実のなる木を植えて餌場を作ってやろうというようなことを考える人は一人もいません。柿の木を伐れ、実をもいで捨てろ。行政が言うのはこれだけ。クマの絶滅を止めようと思えば、この行政を何とかしなければならないと思います。
2年前からイノシシが出だしました。みんな、田畑に電気柵を張ったり、いろいろと防除し始めています。大変です。サルは前から多い。シカはまだだけど、これでシカが登場したらどうなるのかと思います。過疎化高齢化した集落に子供たちが帰ってくることはありません。私たちの集落はこれからどうなっていくんでしょうか。
1年間に生息推定数の1割以上を殺すと、絶滅に向かうと言われています。
この2年間に殺されたクマ数を、wクリックして見てください。
実際はもっと多く殺されていると思われます。
小泉大臣にすぐ動いてもらわないとだめですね。
推定生息数の真偽は不明です。
熊森から
東北の人たちが、いくら何でもここまでクマを殺したらクマが絶滅するのではないかと感じていることが伝わってきました。生きとし生けるものへの畏敬の念こそ、日本人の自然観であり、保水力抜群の豊かな水源の森を残すことに成功した奇跡の日本文明なのです。
それが今、行政付き研究者や行政が、生き物の命をものとしてしか見ない西洋の自然観を地域に持ち込んで、日本を変えてしまおうとしていると感じます。熊森は、危機感でいっぱいです。このような人間中心主義は種の大量絶滅をもたらし、人類をも滅ぼします。
日本でクマの大駆除が可能になったのは、1999年に当時の環境庁が、西洋手法のワイルドライフマネジメント(個体数調整捕殺)を導入したからです。行政から予算を付けてもらった研究者が、クマが増えていると言えば、何の被害も出していないクマでもどんどん殺せるようになるのです。
当時、熊森は、こんなものを導入したらクマが滅びるとして、この「鳥獣保護法改正案」を廃案にするために国会に一番乗りして国会議員に何度もレクチャーし、命を懸けても阻止しようと闘いました。日本野鳥の会、日本自然保護協会、WWFジャパン、アライブなど、日本中の自然保護団体、動物愛護団体が一致団結してみんなで個体数調整捕殺の導入に猛反対しました。賛成したのは、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏らです。
西洋のクママネジメントというのは、東ヨーロッパでは狭い自然界にクマを高密度で放し、給餌して増やし、ハンターに高額料金でハンティングさせてやってもうけ、その収益でクマの餌を買うやり方です。西ヨーロッパはわずかな孤立個体群しかもういない。
(参照「世界のシカ・クマ保護管理の現状と北海道の将来方向」1990年野生動物情報センター発行)
現在、日本は、この西洋型共存を最良として真似しようとしています。しかし、このような共存より、祖先の棲み分け共存の方がずっと優れています。残念ながら、政治的な圧力が働き、この法案は成立してしまい、今日に至っています。熊森は、個体数調整捕殺の導入の撤回をめざし、とりあえず、狩猟と有害駆除以外はクマを殺せないというところまで制度を戻そうと考えています。
クマが滅びる前に、何度でも言う。環境省は、個体数調整捕殺の導入を撤回せよ。
熊森はこれまで都道府県の鳥獣行政担当者に会報を送り続けてきましたが、熊森をもっと大きくして、1000以上ある市町村の鳥獣行政担当者にも会報を送ることができるようになりたいです。戦後わたしたち人間が破壊した奥山自然林を早急に再生させて、大型野生動物たちとの棲み分け復活をめざすよう、行政担当者のみなさんに伝えて歩かねばならないと思いました。
みなさん、ぜひ熊森会員を増やして、熊森をもっと大きくしてください!行政はクマが増えているという行政付き研究者たちの言うことばかり信じていますが、山の餌がなくなっているのに、増えられる要素など何もありません。クマの絶滅を止められなくなってきたと熊森は感じてあせっています。
現在、熊森のHPが故障しており、回復のめどが立っていません。
当面の簡易版ホームページを作りました。しばらくはこちらをご利用ください。