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2024-03-05

以前の山を知らない若い人たちに、今のクマ問題の根本原因は山にあることを知ってもらいたい

以下は、2024年3月2日の河北新報投書欄です。

投稿されたのは、奥羽山脈のふもとで自然農をされている船形山のブナを守る会の創設者である小関俊夫さんです。
長期に亘り奥羽山脈の山を見続けてきた小関さんは、人間活動によって、現在の山が、クマにとってどれだけ生きづらい環境に変えられてしまったのかをよく知っておられます。

今のクマ問題を正しく解決するには、過去数十年間にわたる山の変化がわかっていなければなりません。

クマ問題に取り組む若い人たちには、歴史的なこともぜひ勉強していただきたいです。

 

■クマとの共生 方策考えて 小関 俊夫 75歳(大崎市・農業)

 

クマによる人的被害防止のため、捕獲に国の支援が受けられる鳥獣保護法上の指定管理鳥獣にクマが追加されます。山の神だったクマが邪魔者にされました。

 

クマが里に出没するようになったのは、昭和50年代に始まった林野庁による拡大造林施業でブナ林が伐採され、クマのすみかを奪ってからです。それにリゾート開発が拍車をかけました。クマは安住の地・ブナ林を追われたのです。

 

登山仲間によると、最近、山でクマに出合うことが少なくなってきた、クマの生態に異変が起きているのではないかということです。人とクマのすみ分けを図るゾーニング管理が言われていますが、人がクマの領域を侵していることを念頭に議論してほしいです。

 

ブナの伐採は止まりましたが、自然再生エネルギーの名の下に、宮城、山形両県にまたがる船形連峰にも風力発電事業が計画され、森や山が破壊される恐れがあります。また、低周波音や騒音によるクマの健康被害も懸念されます。開発事業の前に、クマへの畏敬の念が大切なのではないでしょうか。

 

昨年はクマの大好きなブナの実が大凶作でした。クマは妊娠しても食物不足だと冬眠中に流産するそうです。今年はクマの個体数は減少するでしょう。クマの指定管理鳥獣追加の前に、人とクマが共生できる方策が必要だと思います。

 

母を探して走り回るくくり罠で左前足切断の子グマ、みなし子グマたちを作らず保護する社会に

今年1月9日のTVニュースによると、ある町のショッピングセンター入り口付近に、子グマが猛ダッシュで走り込んできました。本来なら、母グマと一緒に冬眠しているはずの時期にです。

なんだか走り方が変です。前足の左手首がないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショッピングセンター入り口付近に、3本足で猛ダッシュで走り込んできた子グマ

 

入り口を通り過ぎて、ショッピングセンター前の隅っこに行ったので、人々がその辺にあったいすなどを使って包囲し、逃げないようにしました。2時間後、警察と猟友会がやってきて鉄製の箱罠に移し、山に返したということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箱罠に捕獲された子グマ。左前足手首がちぎれている

 

 

この子グマに関するマスコミの報道論調には驚かされました。

報道文中の太字は、とんでもないと思われる言葉です。

 

 

<以下、報道文>

1月9日、昼下がりのショッピングセンターに体長およそ50センチの子グマ1頭が出没し、店内が一時騒然としました。

この後始まる大捕物、その一部始終をカメラが捉えていました。

冬眠しないこの子グマは、来店客が行き交う入り口に2時間居座りました。

子グマはその後捕獲され、客などにけが人はいませんでした。

市では子グマは山に返す方針ということです。

 

 

熊森から

 

地元の方の話では、クマが出た!というと、記者のみなさんは大喜びで飛んでくるとのことです。怖いもの見たさ故か、クマニュースは視聴率アップ間違いなしになるからだそうです。

その辺の犬と同じくらいの大きさのやせてガリガリの小さな子グマに人身事故を起こす危険性など全くないことを、熊森は多くの人に伝えたいです。

冬眠しないのではなく、こんなガリガリでは、冬眠できません。(食い込みができていないと冬眠中に死ぬ)
第一、母グマがいないので、大地が雪で覆われる前に、どこでどうやって冬眠しておけばいいのか、この子グマにはわからないでしょう。

 

居座ったのではなく、周りを囲われて動けなくされていたのです。

けがをした人はいませんでしたと言うけれど、けがというなら、子グマの前足首切断という大けがにはなぜふれないのでしょうか。

 

山に返すと言われても、何の餌もない真冬の山で、この子グマは100%生きていけません。

 

この子グマ、どこにいるのか。

熊森は、緊急保護の必要性があると判断し、警察と行政に次々と電話しました。

警察:県に聞いてください。

県庁:市に任せているので市に聞いてください。

市:保健所が対応したので、保健所に聞いてください。

保健所:猟友会に任せているので猟友会に聞いてください。人混みがすごかったので、子グマの前足首がないかどうかは、見ませんでした。

 

行政と違って、電話番号が公開されていない猟友会の方には連絡のしようがありません。個人情報だからと行政も教えてくれません。

 

私たちが保護することを申し出ましたが、飼育許可は降ろせないと言われました。

私たちは胸がつぶれそうになり、どこに放されたかわからないこの子グマのことを思って、何日間も苦しみました。

 

後日、地元の方に聞くと、この子グマは、河川敷を母グマともう一頭の兄弟と3頭で歩いている時に、河川敷に設置されていたくくり罠に左前足がかかってしまったんだそうです。なんとか、罠を外そうとこの子は必死にもがいていたが、何をしてもワイヤーは外れません。早くこの場を立ち去らないと、人間に見つかったら皆殺されると判断したのでしょう。母グマは子グマを助けようと必死でしたが、やがて不可能と悟ったのか、もう1頭の子グマを連れて去っていったようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地元では、シカやイノシシ無制限捕獲用の無差別くくり罠が、至る所に仕掛けられている。
強力バネでワイヤーが足を締め付けるため、様々な野生動物たちが足を失っていく。
日本は先進国です。こんな残酷な罠は、使用禁止にすべきです。

 

残された子グマは、自分の前足の手首を引きちぎり、狂ったように母を探し求めて走り回わっていたということです。ショッピングセンターに何かの物を狙って来たわけではなく、自分を置いていかないでほしいと必死で母を探していたんだろうということでした。

 

昨年、人身事故が相次いだこともあって(過去最多年の1.3倍)、食料を求めて山から出て来て有害獣のレッテルが張られた大量のクマたちは、ハチミツ入り罠に次々と誘導されて駆除されました。(2023年度のクマ捕殺総数は前代未聞の9028頭)その結果、冬が来てもどうしていいかわからず、各地で孤児グマたちが雪の中をさまよっていました。いずれ死ぬだけですが、誰も助けようとしない日本社会です。こんな人間社会でいいのでしょうか。

 

我が国がクマに無慈悲でクマを憎む社会に変化したのは、権威のある人たちやマスコミが、臨界距離内(一般的に12m)で人間に出会ってしまったクマが、人間が怖くて人間から逃げたいあまりに起こす人身事故を、クマが人を襲ったと一斉表現して、まるで一方的にクマが意図して人間に傷害事件を起こすかのような誤情報を出し続けているからだと思います。クマは本来、大変平和的な動物です。

 

日本は水道の蛇口をひねるといつでも水が出て来ます。しかも飲める水です。こんなめぐまれた国は、世界にまたとありません。
これは祖先が奥山水源の森を、森づくりの名人クマたち以下全ての森の生き物たちの聖域として、手つかずで残していたからです。平成になるまで、クマが奥山から出て来ることなどまずなかったのです。

この奥山生態系の仕組みを、熊森は全ての国民に伝えたいです。

 

その奥山を、わたしたち人間が、拡大造林、さらに今、地球温暖化、再生可能エネルギーなどで破壊し続けたから、クマたちは山から出てこざるを得なくなったのです。

人間活動の被害者であるクマたちをさらに殺し尽くそうとしている私たち人間、どうかしています。
人間の倫理観や道徳観はどうなってしまったのでしょうか。

 

野生動物対応の権限は都道府県にありますから、軌道修正するには、各都道府県庁に一般都道府県民が改善を求めて声を上げていくしかありません。

 

私たちは、この県の地元の皆さんのためにも、クマ問題の真の解決に向けて声を上げ行動しようという熱い方々が現れるのを心待ちにしています。(完)

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