ホーム > アーカイブ > 2024-11-01
2024-11-01
9月24日奥山保全トラストと熊森が三重県大台町大森正信町長らを訪問
三重県の人工林率は64%と高率です。
そんな中、大台町の広大な山林676ヘクタール(池ノ谷:一部人工林を含む、父ケ谷:全山自然林)が売りに出され、当時のNPO法人奥山保全トラスト(現在:公益財団法人 奥山保全トラスト)は、何とか三重県に残された自然の森を守りたいと、全国民に寄付を訴え、2010年に見事、トラスト地としての購入に成功しました。
当時、ご寄付くださった方の多くは、地元を初め東京や名古屋など都市市民の皆さんで、都市の力が中心となって守った森と言ってもいいかと思います。
三重県大台町池ノ谷トラスト地
今回、本部は公益財団法人 奥山保全トラストの職員や、トラスト地の整備を毎年続けている熊森三重県支部の方たちと、久しぶりに大台町役場を訪問しました。
町長は大森正信さんという方になっていました。
大森町長は、「みなさんに大台町の水源の森をトラストしてもらって、本当にありがたかったです。中国が買いに来てたんです。」と、大喜びで私たちを迎えてくださいました。
あれから14年たっていますが、地元の皆さんに今もこんなに感謝されているのだとわかり、うれしかったです。
大森町長が私たちの訪問を喜ばれて、くまもりの森山名誉会長と固く握手(中央)
この日、大森町長、西尾副町長と共に、林野庁近畿中国森林管理局三重森林管理署の皆さんにも入っていただき、大台町の奥に広がる広大な久豆(くず)国有林と大杉谷国有林(どちらもスギやヒノキの人工林になっている)の今後について話し合いました。
大台町、奥山保全トラスト、三重森林管理署、熊森協会のみなさん
大森町長さんは、大台町としては全部元の天然林に戻してほしいと思っていると、森林管理署に強く申し入れられました。
昔の山や川をよくご存じの町長さんは、「昔は山から大量の清らかな湧水が湧き出し、宮川はすばらしく豊かな川だった。魚をはじめ生き物がいっぱい溢れていた。今は水量も激減。もっと水を流してくれと下流から言われるが、うちも水が必要だから、全てに応じられない。
宮川にダムを造ったことも失敗だった。ダムを造ってから、川の豊かさがすっかり失われてしまった。
宮川ダムを撤去したいと思って調べたら、ダムの部分の土地は今や大台町のものではなく中部電力のものになっており、できないことが分かった」と残念そうに言われていました。
広大な国有林に造ってしまった奥山人工林を今後どうするかは、林野庁の本庁が判断されるそうですが、林野庁としても地元の意向は無視できないとのことです。当面、林野庁としては国有林に至るまでの奥山道路の補修をしたいそうで、この予算が下りるのに5年ぐらいかかると言われていました。
大森町長さんに、「捕殺に頼らないクマ対策の提案書」を手渡して別れました。後から思うと、大森町長さんは私たちが提案書に書いたことを全部わかっておられたので、手渡す必要はなかったです。昔の大台町の山や川をを知っておられる町長さんの存在は大きいと思いました。
熊森から
「捕殺に頼らないクマ対策の提案書」について
<三重県のクマは保護対象>
広大で最高に豊かな森があって初めてのクマの生存が可能となります。戦後の林野庁の拡大造林政策によって、大半の山を人工林にしてしまった紀伊半島では、クマの生息は難しく、環境省は残り少ない紀伊半島のツキノワグマを絶滅の恐れのある地域個体群に指定しています。これを受けて三重県ではクマは保護対象であり、ずっと捕獲が禁止されてきました。
<今年、人身事故発生>
今年の8月14日夕方、音のする物を持たずに三重県の熊野古道をひとりで下山中の大阪の70代の女性がクマとばったり出会い、人身事故が発生しました。(クマに襲われたのではなく、事故です)
<三重県知事がクマを駆除対象にすると言い出す>
これを受けて、三重県の一見勝之知事は8月22日の記者会見で、県内のツキノワグマを「駆除の対象」に改めるよう、環境省に申し入れることを明らかにしました。知事に当選されるほどの方ですから、立派な方なんだろうとは思いますが、自然生態系の方の知識は不足のようです。
<知事や三重県議会議員の皆様に、三重県のためにもクマやクマの棲む森の保全・再生の必要性を伝えたい>
この日の午前中、私たちは三重県議会の大物議員を訪れ、クマのためにも人のためにも、クマを駆除するのではなく、奥山の自然再生が急務であると申し入れ、「捕殺に頼らないクマ対策の提案書」手渡しました。知事や議員の皆さんに自然界の仕組みについて伝える機会を作っていただきたいです。(完)