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2025-02-27
福島市その4 吾妻山メガソーラー 住民団体が林地開発許可に関して市と県に質問状
福島市吾妻山の先達山太陽光発電所(事業面積約60a)は、造成工事などの進行に伴い、山肌の露出が顕著に。景観の悪化、災害発生を懸念する声が市に多く寄せられるようになっています(福島市HP先達山太陽光発電施設 特設ページ)。
令和6年6月2日には、県道(主要地方道 福島吾妻裏磐梯線)へ土砂流出また金堀沢へ濁水流入という災害もすでに発生しています。
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あづま山の景観と自然環境を守る会と全国再エネ問題連絡会は、市民の多くの皆さんが大変憂慮されている景観面のみならず防災の観点からも同事業計画に問題があることから、令和7年2月20日福島県と福島市に質問状を提出し、県・市からの回答を求めました。
【質問の概要】
・昨年6月のNo.2、No.3調整池下流の濁流流出によって、下流河川が未整備であることが露呈されましたが、どのような認識をもっているのか。
- No.2 調整池の下流河川の流下能力、調整池からの許容放流量の算定に重大な誤りがありました。他の調整池についても、同様の誤りがある可能性があります。福島県には遊水池ならびに下流河川の設計の見直しを求めますが、見直しをされますか。
- このまま工事が進められると、下流で重大な災害が発生することが予想されます。その認識はありますか。
- 本設工事に先行させて防災工事を行うという原則にしたがって、設計を見直し、防災工事を終えるまで、本設工事を中止することを求めますが、どう対処されますか。
- 防災対策の内容を見直し、希望する住民に住民説明会を開催してください。
以上、専門家の意見や調査に基づき、具体的に問題提起し、計画の見直しなどを求めます。
公開質問状を提出後、福島県庁で記者会見を行いました。
熊森から
春からパネル張りが予定されている先達山メガソーラー事業に関して、今回、専門家が事業計画書の調整池の下流河川の流下能力、調整池からの許容放流量の算定に重大な誤りを見つけ、指摘しました!
工事を止めて、まずこの問題を解決するのが先でしょう。
全国の心あるみなさん、市や県の回答に注目してください。
保安林の解除事務迅速は消せたが風力更に推進、第7次エネルギー基本計画2月18日閣議決定
2月18日、資源エネルギー庁が作成した「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。今後3年間、わが国はこの計画に沿ってエネルギー政策を進めていくことになります。(注:法律ではないので国会での審議なし。)
この計画は、資源エネルギー庁(エネ庁)が原案を作り、審議会等で学識経験者たちが審議した結果です。
2050年カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量ゼロ)をめざしてまっしぐらに、再生可能エネルギーや原子力発電を増やしていく内容になっています。これまであった「原発依存度の可能な限りの低減」との文言が削除されていました。
今や欧米では、脱炭素政策に対する弊害にも着目し、脱炭素だけを追求する方向性は見直されてきていますが、日本は見直さずに今後も猛進するようです。遅れ過ぎです。
以下、図表はクリックで大きくなります。
エネルギー基本計画案自体には、様々な問題があります。その中でも奥山水源の森の保全・再生活動に取り組んできた熊森が最も強い危機感を持ったのは、陸上風力の項の、「保安林の解除にかかる事務を迅速に実施する」という1行です。これは、保安林解除を迅速に進めるための規制緩和に着手することを意味しているからです。
一方、風力発電事業者の業界団体である一般社団法人日本風力発電協会は、昨年12月に「第7次エネルギー基本計画に向けたJWPAの提言」を公表し、その中で風力発電事業について、森林法の「公益上の理由」による保安林解除を認めるよう要請していました。
保安林は、水源涵養をはじめとする大切な役割を持つ森林故に、伐採や開発に一定の規制がかけられています。大規模風力発電建設の計画地は保安林であることが多く、これによって森林伐採に歯止めがかかり、計画が止まったり、大幅に遅れているものがたくさんあります。
熊森を初め、全国再エネ問題連絡会に参加している団体や住民は、各地で、保安林では風力発電事業を進めないようにと大奮闘中です。
こんな中、保安林解除手続が規制緩和されると、事業が一気に進んでしまいます。
環境影響評価(環境アセスメント)手続中の陸上風力発電が次々と着工するようになれば、日本国民は大切な水源の森を失ってしまいます。山から土砂が流出します。クマを初めとする野生動物たちはもう山で生きられなくなります。
私たちは、保安林の解除の迅速化、この1行だけは絶対に基本計画に入れないでほしいと、エネ庁に文書で申し入れたり、各地方の経産局での説明会に出かけて行って訴えたり、パブリックコメントで意見を出したり、もう、必死でした。
私たちと共に声を上げてくださったみなさん、本当にありがとうございました。
室谷悠子会長らは何度も東京まで出向き、経産省、環境省、林野庁の担当者や国会議員のみなさんたちに会って、必死に訴え続けました。
全国再エネ問題連絡会のメンバーと「真の地産地消・地域共生型エネルギーシステムを構築する議員連盟」代表の古屋圭司衆議院議員にもお会いして訴えました。
省庁担当者に、なぜ保安林を解除してはならないか説明する室谷会長(左奥)
閣議決定された第7次エネルギー計画を読むと、「保安林の解除にかかる事務を迅速に実施する」は消えていましたが、「国土保全及び環境保全の観点を前提としつつ、保安林について、ポジティブゾーニング推進の方向性を踏まえた対応を進める」という新たな文言が入れられていました。
陸上風力を増やしていくために、今後、事業者は、市町村を巻き込んで、再生可能エネルギー開発の促進区域を設定し(ポジティブゾーニング)、保安林解除をめざしていこうとするでしょう。すでにそのようなことになっている地域もあります。水源の森を守るためには、保安林解除が進まないよう国民がもっともっと大きな声を上げていくことが必要です。国土保全及び環境保全の観点を前提にすれば森林破壊を伴う風力発電事業などできないはずです。
エネ庁の皆さんや審議会の先生方には、一度陸上風力の工事現場を視察していただきたいです。現場を見られたら、あまりの環境破壊・自然破壊に空恐ろしくなられるのではないでしょうか。現場を見ずに頭の中だけで考えるから、今回のような計画になってしまうのだろうと思います。
熊森は今後も国会議員や都道府県や市町村の首長さんたち、地域のみなさん、全国民の皆さんに、風力発電による国土破壊・環境破壊がどんなに取り返しのつかないものか訴え続けて行きます。皆さん応援してください。
宮城県で地域の風力発電白紙撤回運動に取り組んでおられる方が、ふるさとの森を守るには、国任せ、行政任せ、政治家任せではだめで、今後は日本国民も住民自治という意識をしっかり持っていく必要があると語られていました。その通りだと思いました。(完)