くまもりNews
【くまもり本部】イノシシがクマ用カキ園の金網柵内に侵入 電気柵設置へ
平成のクマ止め林を造ろうと、2年前兵庫県宍粟市で、熊森と地元がカキ苗を植樹しました。ここに、イノシシが入ったという連絡が、地元から入りました。こんなことは初めてです。
この現場は、広さ約1800㎡に約50本のカキの木が植えられています。
シカが入らないように、周囲を高さ2.5m程の金網で囲っています。
平成のクマ止め林
イノシシは、金網の下を掘って柿園へ侵入していました。
植樹した柿の苗木は、ほとんど無事でしたが、苗木の盛り土が全て崩されていました。
柿の木の盛り土が崩されている
地元の方の話では、イノシシはカキの木の盛り土に繁茂したカズラ(つる草)の一種であるクズ(葛)の根を掘り起こして、食べているのだということです。くず餅からもわかるように、クズの根には良質のでんぷんが蓄えられています。
地面を這って広がって行くクズの根
イノシシがあの鼻で土を掘り返すのは大変なことだと思います。(どうやって土を掘るのか見たことがありませんが)しかし、カキの苗木の盛り土に生えたクズなら、土が柔らかいので簡単に掘り起こせます。
ここに目を付けたイノシシは賢いです。
大きくて真っ黒なイノシシの糞に交じって、いくつもの小さな糞が散乱していました。子供を何頭か連れて侵入しているのでしょう。
イノシシ糞(写真右下)
この時期、イノシシの親子のえさ探しの大変さを思うと、同情を覚えます。しかし、カキの苗木を枯らされたら困るので、この日は地元の方と、イノシシが入った金網の下の穴をふさぎ、植えたカキの木の盛り土を直して、電気柵を設置しました。
組み立て
つなぐ
がいしに線を掛ける
通電テストをして、電気柵張りは完了しました。
最後に、手袋をはいた手でワイヤーを触ってみたら、手首にバンと電気が来ました。
参った。
電源は乾電池8個の12ボルトですが、それを数千ボルトぐらいに高めて流しているのだろうと思います。しかし、電圧は高くても、流れている電流自体は微弱なので、イノシシの鼻に電線が当たっても、心臓をやられて死ぬようなことはありません。
兵庫県では、年間15000頭ものイノシシが狩猟や有害駆除で殺されています。
しかし今回のように、イノシシによる被害が出ても、殺さずに電気柵を張ったり、侵入経路を塞ぐなどの対策で、被害をなくしていくことができます。
祖先は昔から、こうやって被害防止に汗を流して、野生動物たちと共存してきました。
その根底には、同じ生きとし生けるものとしての共感がありました。
この共感を子々孫々、民族の文化として伝えていくことが、人間の生息環境でもある自然を守ることにつながるのです。
これでもう、イノシシは入らないよと、地元の方が保証してくださいました。
電気柵張り作業に初めて参加してみて、祖先が石や泥を積んでシシ垣を造ったことを思うと、今は、各段に簡単に被害防止柵が張れる時代だと思いました。
もちろん、夏に草が茂ってくると、漏電が起きますから、電気柵の下の草刈りが必要です。
その時は、会員のみなさん、ボランティア草刈り隊をお願いします。
この日、地元のみなさんに教わって、電気柵張りをマスターでき、うれしかったです。
クマの生息地でイノシシ被害に困っておられる地元があれば、電気柵張りの応援をしていきたいです。