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「兵庫県第3期ツキノワグマ保護管理案」パブコメ  ③計画案の根拠となっているツキノワグマの推定生息数計算は市民検証ができない状態にある

今回の計画案は全て兵庫県のツキノワグマが、推定313頭~1651頭(中間値649頭)に激増したという前提で作られています。

計画案には、生息数推定に用いたのはマルコフ連鎖モンテカルロ法で、推定方法の詳細は、ワイルドライフモノグラフ3号第3章を参照のことと、脚注に小さな字で書かれています。

しかし、ワイルドライフモノグラフ3号第3章を読んでみても、【目撃数、捕獲数、捕殺数、放獣数、再捕獲数などのデータに、ブナ科堅果類の豊凶の影響を補正した】となっており、研究者がどの数字を用いたのか、その数字採択は妥当だったのか、また、などには具体的に他に何が入れられたのか、補正と言われてもどのように何を補正したのか書かれていないため、市民検証が不可能です。熊森は県当局に対して、313頭~1651頭という数字が出てくる全過程を検証したいので、目の前で算出過程を見せてほしいと要望していますが、コンピューターが長時間かけて出すものだから無理という回答です。

国立大学で教えておられる数学者に第3章を読んでもらったところ、幾様にでも生息数は算出でき、この記述では検証不可能との回答を得ました。しかも、検証以前に、マルコフ連鎖モンテカルロ法が、人目を避けてひとりひっそりと生きている大変知能の高いクマという生物の生息推定数を出すのにふさわしい方法なのかどうか、そこからして議論されるべきだろうということでした。

群れを作って生活するサルやシカなどと比べると、群れず、しかも人に姿を見せないようにして暮らすクマの生息数の推定は、困難を極めます。人とクマが棲み分けて共存する社会を取り戻すために、今後も、捕獲、全身麻酔、発信機装着などとクマたちの体と心に耐えがたい負担をかけている生息数の推定に全力をあげるべきかどうか、熊森は疑問に思います。

●熊森の考える兵庫県内ツキノワグマの生息推定数

兵庫県は、2010年に約140頭のツキノワグマを放獣したそうです。その時点で140頭いたことが確かなのだから、推定生息数は140頭~とすべきでしょう。2010年は山に実りがないというありえない異常年であったため、すべてのクマたちが人里に近づき、ハチミツ入りの罠に次々とかかったと考えられなくもありません。2011年に無標識のクマが罠にかかったのであれば、何頭がどこで罠にかかったのかなど、学術捕獲も含めてすべてデータを公表していただかないと、私たちには県発表の推定生息数が妥当かどうかの判断がつきません。

大事なことは、このように困難な生息数推定に、多くの人・金・時間を使うよりも、クマが何頭いてもいいから、以前のように集落に出て来ないようにすることではないのでしょうか。そのためには、奥山にもう一度、クマたちが生息できる豊かな森を復元してやらねばなりません。兵庫県のツキノワグマ保護管理案は、誰の目にもはっきりと検証できるクマたちの奥山餌場復元にこそ、対応策の重点をシフトすべきであると思います。

もし、兵庫県のツキノワグマ推定生息数313頭~1651頭(中間値649頭)が、現実とかなりかけ離れていたならば、今回の保護管理計画案はすべてひっくりかえってしまうのではないでしょうか。

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