ホーム > 支部・地区・地域
カテゴリー「支部・地区・地域」の記事一覧
新潟県クマ生息地調査でわかったこと
6月20日(木)、自然保護団体として久し振りに新潟県庁を訪れました。
もちろん、「第2期新潟県ツキノワグマ管理計画」を熟読した上でのことです。
事前に、県民生活環境部・環境企画課・鳥獣保護係に電話を入れておきました。
できれば、森林環境税のこともあるので、林政課の担当者ともお会いしたいなと思いました。
兵庫県西宮市にある熊森本部から飛行機で新潟空港へ、新潟駅からはバスに乗って県庁前で降りました。
えらく立派な県庁ですが、外にも内にも人影がほとんどありません。
新潟県庁
新潟県の人口は約222万人。人口が少ないからなのでしょうか。
知る人ぞ知るですが、明治初期、新潟県の人口は東京都よりも多くて全国一位でした。(第一次産業全盛時代の明治21年、新潟県人口166万人全国一位)
鳥獣保護係の方には会えましたが、クマの担当者は不在でした。
新潟県のツキノワグマの推定生息数は1574頭(平成28年計算)です。
どうやってこの生息推定数を算出したのか訊ねたら、「新潟大学に頼んで出してもらった。どうやって計算したのか、県としては知らない」ということでした。
新潟県のクマは、①狩猟、②残雪期の予察駆除、③年中可能な有害駆除の3種によって、命を奪われます。
「第2期新潟県ツキノワグマ管理計画」の内容は、なかなかすばらしいものです。
(1)生息環境整備 (2)被害防除対策 (3)個体群管理の順に、論じられています。
一番に生息環境整備が位置付けられているのはその通りで、他県でも見習ってほしいです。野生動物は生息環境さえあれば、人間などに何もしてもらわなくとも生き抜いていけるのです。
有害捕獲された個体でも、場合によっては、県と市町村が連携して学習放獣を試行的に実施することになっています。
今回の訪問で聞きたかったことの一つに、いつからどうやって学習放獣を開始したのか、効果はどれくらいあるのかがあります。
たずねてみたところ、県は学習放獣に関しても何も把握しておらず、文面はすばらしいが、実際には実施しているところがないように感じました。
鳥獣のことで環境省に電話すると、鳥獣関係の許認可は都道府県に全て降ろしたので関知しませんという反応が返ってきます。
一方、都道府県にたずねると、県は把握していないので出先機関や市町村に聞いてくださいと言われるところも多く、都道府県がどこまで日本の鳥獣保護に責任を持っているのかというと、はなはだ不安になります。
人権の方は、戦後、虐げられてきた人たちが声を挙げだしたのでずいぶんと進歩したと思います。しかし、物言えぬ野生動物の生存権に関しては、声を挙げる人間がこの国にはまずいないので、生息地は破壊され、何の罪もない動物が無駄に大量捕殺されており、無責任極まりないことになっているような気がします。
鳥獣保護係の担当者には、ていねいに対応していただきました。ありがとうございました。林政課の担当者は不在でした。ちゃんとアポを取っておくべきだったと反省しました。新潟のナラ枯れは終息したようでした。
翌6月21日、新潟県のクマ生息地を研究者と調査しました。
阿賀野川の豊かな水
米どころだけあって、道中は広大な田んぼ風景が続く
今回の新潟県の山の調査には、熊森協会の第一顧問である宮澤正義先生の娘さん(新潟県在住)も同行してくださいました。
山に入る前に、ぜひ見ていただきたいと言われたのが、娘さん推薦の阿賀野町の人工湿原「たきがしら湿原」です。
生物の多様性が保たれた100点満点のたきがしら湿原
湿原には様々な花が咲き誇っていました。昆虫の種類も豊かで、研究者によると、生物相も自然湿原そのもののすばらしさだということでした。湿原の奥には当然ですが、クマもいるようです。人工湿原というものの、ここは山から湧き出た滋養豊かな湧き水を湿原に導入していますから、自然湿原のようなものではないかと思いました。木道や東屋、トイレなども良く整備されており、地元の人たちによる訪問者へのおもてなしの心が随所に見られました。観光地としては最高だと思いました。
お昼に、熊森新潟県支部の結成を考えてくださっている新潟県の大企業の社長さんと会食しました。
お蕎麦が本当においしかった
この後、いよいよ、みんなで新潟県のクマ生息地の調査です。
奥山調査後、室谷悠子会長を中心に記念撮影
会津に通じる山塊には、崖が点在していました。ここの地質は、火成岩の上に硬度の低い砂岩が堆積したもので、急斜面には植生を欠いた崖が多くみられます。植物相は、もちろん豪雪地帯のものです。ここは標高帯としては日本海側のブナが出現する場所ですが、なぜかブナが見当たりません。伐採された過去があるのだろうと思われます。
林分は、自然スギやアカマツの他に、亜高木層のオニグルミ、ケンポナシ、アズキナシ、ミズキ、カエデ、シデなどで構成されていました。ミズナラ、コナラが稀なのは、ナラ枯れで枯れてしまった跡なのかもしれません。スギの人工林は生育が悪く、放置されており、もはや林業的価値のないものでした。
立派な林道が造られていましたが、通る車もほとんどなく、ここでは、クマたちの生息が保たれているように感じました。
林内に入ると、谷川が流れていて、カジカガエルのオタマジャクシがたくさんいました。
きれいな谷川を見る室谷会長と宮澤先生の娘さん
豪雪と狩猟でシカが姿を消してしまった新潟県ではありましたが、最近は、シカの生息が各地で確認され始めてきました。しかし、爆発増加しているような状況ではありません。新潟県内の山林の下層植生はまだ豊かで、昔よりは減っている可能性がありますが、野生動物たちの食料もそれなりにあるようでした。
まだ赤い段階のヤマグワの実(黒くなるとおいしい)
熊森から
行きの飛行機からではわかりにくかったのですが、帰りは新幹線だったので、新潟県の山をまじまじと車窓から見続けることができました。
新潟県の人工林率は23%と低く、しかもスギを植えた場所は奥山ではなく里山がほとんどです。市街地のすぐ後ろが、もうクマの棲む豊かな森です。
兵庫県で見られるような山間部の高速道路開発や長距離トンネル工事など、生息環境が人為的開発によって大きく損なわれるような場所は、ほとんど見当たりませんでした。同行してくださった研究者によると、新潟県には、月山や糸魚川流域、妙高山、奥只見方面に、今も良好な森が数多く残されているということです。自然保護団体としては、是非そのような場所の森を数100ヘクタール規模でトラストして、永久保全しておきたいです。売ってくださる山主さんがおられたら、当協会にお声かけください。
西日本と違って、当分、新潟県のクマの生息に危機的な状況は起きないように感じましたが、①狩猟、②残雪期の予察駆除、③年中可能な有害駆除はもちろん、地球温暖化や酸性雪による森林劣化などに、今後も、注目していきたいです。
クマなどの野生動物や森に親しむ新潟県民が増えてほしいので、熊森新潟県支部が結成できる日を願っています。
出没阻止対策を全く講じずに、札幌市街地徘徊の羆を銃殺したのは動物倫理に反する 門崎允昭博士
以下は、日本熊森協会顧問で北海道野生動物研究所所長の門崎允昭博士が発行しておられる<北海道熊研究会 会報>第91号のコピーです。行政、マスコミ、各方面に拡散してください。(熊森本部)
北海道熊研究会」Hokkaido Bear Research Association
ご意見ご連絡は本紙送信emailではなく、下記の email へお願い致
します e -mail: kadosaki@pop21.odn.ne.jp
<北海道熊研究会 会報> 第91号 2019年 8月 17日
北海道熊研究会事務局 北海道野生動物研究所内(Tel. 011-892-1057)
代表 門崎 允昭
事務局長 Peter Nicholsピーターニコルス氏
幹事長 藤田 弘志 氏
既報会報の1~90号はWebsiteに「北海道野生動物研究所」と入力しご覧下さい
「北海道熊研究会」Hokkaido Bear Research Associationの活動目的
熊の実像について調査研究し、熊による人畜及びその他経済的被害を予防しつつ、人と熊が棲み分けた状態で共存を図り、狩猟以外では熊を殺さない社会の形成を図るための提言と啓発活動を行う。 この考えの根底は、この大地は総ての生き物の共有物であり、生物間での食物連鎖の宿命と疾病原因生物以外については、この地球上に生を受けたものは生有る限りお互いの存在を容認しようと言う生物倫理(生物の一員として人が為すべき正しき道)に基づく理念による。
<札幌市南区で、人の存在を無視しながら、時に農作物や果樹を、食害しつつ(マスコミ報道による)、市街地を、徘徊していた羆を、出没を、阻止する、対策を全く講じずに、銃殺したが、これは動物倫理に反する行為である(門崎允昭の見解)>
生物倫理とは、(生物の一員として、人が他種生物に対し、為すべき正しき道)の義。
羆がなぜ、札幌市の市街地にまで、出現するように、なったか。その理由を、私が1970年から現在まで、継続調査して得た、資料を基に述べる。先ず、羆は強烈な爆発音がする銃での殺戮を嫌い恐れ、致命所傷とならず助かったものは、銃で撃たれた場所に出て来なくなる。そのような事が続くと、その場所から人里方面には、羆は出て来なくなる。ところが、銃での殺戮を止めると、徐々に、また出て来るようになる。
札幌市での実情を言うと:私が札幌圏での羆の実態調査を始めた、
1972年から1988年,10月迄の17年間、札幌圏での羆の捕殺は<銭函川上流部~奥手稲山~手稲山~永峰沢川上流部~砥石山~砥山ダム>を結んだ西部地域一帯と、<滝野~常盤~焼山~夕日岳~朝日岳(定山渓)>を結んだ南西部地域一帯から山側でのみ、銃で行われていた。札幌圏での羆の捕殺資料は、1964年からあるが、前記と同じである。従って、それより東部と北部と南部の山林に、羆が来る事は無かった(下記に地図)。ましてや、人里や市街地に、羆が出て来る事など、考えられなかった。
しかし、1989年~1998年の、10年間、札幌市管内では、羆を1頭も捕獲しなかった。その結果、羆が、生息域を人の居住圏方向に拡張し出し、10年後の、2008年頃には、人の日常的生活圏近傍の山林地域に、羆が出没するようになった。そして、現在に至ったと言うのが、市街地に羆が出没するに至った経緯である。
羆の行動には必ず「目的と理由」が有る事、市街地に出て来る羆の目的は4大別される。
<出没の①> 若羆(母から自立した年の子の呼称)が検証に出て来る事がある。母羆から自立した(自立させられた)若羆が、独り立ちして生活する為の行動圏を確立するための探索徘徊過程で、
<出没の②> 道路を横断する目的で出て来る事が有る。
<出没③> 農作物や果樹や養魚を食べに出て来る。
④ その他、力のある個体に弱い個体が襲われて逃げ出る。子が里や市街地に出てしまい母が心配し出て来る。などがある。この場合には、出て来る個体については、性別や年齢は関係無い。
<今般の羆への対応策>
この個体が山林から出て来る場所は、羆の生態をたゆまず真摯に調査研究していれば、およその位置場所は特定し得るはずである。なぜ、そこに、電気柵を張って、出て来る事を阻止しなかたのか。電気柵に触れ、刺激を体験すれば、例え、それを幾日か体験すれば、あの羆は、市街地に出て来なくなった可能性が強いと、私は確信する。
それを、為さず、銃殺した事は、あまりにもひどい。これを、対応規範に基づいて、殺したとか。仕方がなかったとか。この殺す事に関与した連中は・・・・・だろう。自然界がどう言うものか。人と自然界の有り様・・・分かっていないし、分かろうともしていない。その尊大な態度には、しっぺ返しが、来るだろう。
<今回の羆について>
北海道新聞2019年8月14日によると、この羆は、体長(鼻先と肛門間の直線距離)1.4m、推定年齢8歳とある。報道された行動様態と頭吻部の形からすれば、8歳では有り得ない。より若いはずである。年齢は、犬歯と最奧歯の歯肉との関係を見れば、2歳3歳、4歳以上(歯のセメント層に見える年輪で分かる)の、判別が着く。当局は、正確はdataを、公表すべきである。
1998年時の札幌圏の羆の生息圏(赤線の内側)。
赤丸は1972年~2001年間の羆の捕殺地点(48地点)。
7月19日発生の宮城県気仙沼市でのクマによる死亡事故について
気仙沼の山中でクマに襲われ男性死亡 河北新報 2019年7月19日より
クマと人間との事故が発生した場合、センセーショナルで一方的なマスコミ報道がなされると、本来、人間よりずっと平和愛好者であるクマという動物が、まるで狂暴動物でもあるかのように誤解されたり、地元にお住いの方々に必要以上の恐怖心や不安を与えたりしてしまいます。
そこで、熊森本部は可能な限りいち早く事故現場へ出向いて、事故原因の究明と再発防止対策を行っています。遠方などの理由で出向くのが無理な場合は、担当部署に電話で聞き取りを行っています。
7月19日に宮城県気仙沼市で発生した死亡人身事故について
事故現場は、集落の中心から2kmほど離れた、岩手県との県境に近い場所です。
市の担当者:今回亡くなられた男性は、シカの有害駆除の委託を受けていた捕獲者で、親族の方のお話によりますと、19日は早朝5時か6時頃に、罠の見回りに行くと家を出られました。
一向に帰ってこないのでご家族が市や警察に電話しました。猟友会と警察と市の担当者で探したところ、くくり罠の近くに倒れていた男性が見つかりました。男性は顔をクマにぼこぼこに叩かれたようで、引っかかれた傷もついていましたが、体を食べられたりはしていませんでした。猟友会が近くを探したところ、罠から100m離れた所に、足首にくくり罠をつけたまま歩いているクマがいたため、その場で射殺しました。
くくり罠の周りは、草がはだけて地肌が露出していたので、クマは脱出しようとかなりもがいていたんだと思います。おそらく、男性は、罠の見回りをされていた時に、クマがくくり罠にかかっているのを発見して、様子を見ようと近づき、恐怖感でいっぱいになったクマが全力で暴れてくくり罠を引きちぎり、男性の方に向かってきたんだと思われます。
熊森:くくり罠の12cm規制はなされていましたか?
担当者:いいえ。
熊森:クマとシカが生息する地域では、くくり罠を使用禁止にするか、輪の直径を12cm以下にしていただかないと、クマの錯誤捕獲が後を絶ちません。
以前、気仙大島にクマが泳いで渡ってきた時、島内に罠が設置されましたが、当時の気仙沼市の担当の方は、捕獲したら山へ持って行って放獣する。
気仙沼の人はクマを滅多に見ないので恐れるが、山の人は昔からクマと一緒に暮らしてきたから、クマに寛容で放獣を受け入れてくれると言われていました。
担当者:県から、箱罠にかかったクマは放獣するように言われていました。クマなんかいたっていいじゃないかという人は確かに多いですね。
熊森:箱罠であれば放獣もできますが、くくり罠にかかったクマの放獣には麻酔が必要で、獣医さんや熟練放獣者が必要です。再発防止のために、今回の場所は、くくり罠12センチ規制か使用禁止が必要です。
熊森から
亡くなられた方、ならびにご家族の方々には、慎んでご冥福をお祈りします。
そして、射殺されてしまったクマにも、手を合わせます。
なぜ、クマと人の不幸な事故が発生してしまったのか、どうしたら防げるのか。
以下、参考文献
「兵庫県で発生したツキノワグマによる人身事故の検証ー2016年、2017年の事故例」
日本奥山学会誌 vol7 水見竜也(1) 2019 pp34-49
※クリックすると読めます。
事故を防ぐには、1件1件の事故例を分析して、その地域の実態に合った対策を行う必要があります。
行政担当者の皆さんにがんばっていただきたいです。
国民は、リニア中央新幹線と南アルプスの森と動植物の生存、どっちを取るのか 第15回口頭弁論
熊森は、毎回上京して、ストップ・リニア訴訟の口頭弁論を傍聴し続けています。
<7月19日第15回口頭弁論>
(1)原告適格についての陳述(関島弁護士)
ストップ・リニア訴訟では、800名ほどが原告として登録しているが、行政訴訟で、原告として認められるためには、リニア建設によって直接的な不利益を被ること示す必要がある。
しかし、被告である国交省とと参考人であるJR東海は、詳細の工事計画(ルートや建造物、残土置き場の地図)を提出しないため、いまだ原告適格を定めることができない。リニアがどこを走るのか、2500分の1の縮尺の地図を次回、提出するよう求める。
(2)環境影響評価アセスメントについての陳述(横山弁護士)
いまだにJR東海が、どこにどのような建造物を造るのか、残土はどこにどう置くのか、確定できていないものが多々ある。国は一体JR東海が行ったリニア環境アセスのどこを見て妥当と認可したのか。
(3)口頭弁論後、衆議院第2議員会館でシンポジウム
県民の水源である南アルプスを守るため、JR東海との議論を重ねている静岡県から
リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク共同代表の林克氏
南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク共同代表の松谷清氏が報告
静岡県は、JR東海の無謀で不誠実な計画に対抗し、2014年より中央新幹線環境保全連絡会議を設置。
難波静岡県副知事が国土交通省出身ということもあり、JR東海が行っている環境影響評価の問題点を指摘し、徹底した評価と対策を求めている。
大井川の流量減少問題で、静岡県と流域の8市2町11の利水団体が2018年に「大井川利水関係協議会」を発足させ、川勝平太静岡県知事に大井川の流量確保と水質保全対策の徹底をJR東海に働きかけるよう要望書を提出。
これが、静岡県がリニア問題に力を入れるきっかけになった。
ストップ・リニア訴訟の橋本事務局長のことば
リニア工事により各地で水枯れが起きている。JR東海は、南アルプスに生息する希少生物は“移植する”から大丈夫といっている。
リニア問題は、南アルプスを守ることを目的として活動を進めていくことが重要である。
熊森から
南アルプスは、太平洋側で唯一まとまって残された最後の原生林であるため、クマをはじめ多種多様な生物たちが生息しており、わたしたち人類の生存と全産業を支える水源の森です。
リニア大深度トンネル工事による谷川の水涸れ状況の報告を聞いて、私たちは子供たちに南アルプスとリニアのどちらを残すのか、もう決断しなければならない時だと思いました。
日本熊森協会としては、南アルプスの貴重な野生動物であるクマが、森の乾燥化によって南アルプスで生きられなくなった場合、JR東海はどこに移住させてくれるのか、公開質問状を出して、言質をしっかりととっておきたいと思います。
日本に、野生動植物を移住させられる生物空白地帯など、どこにもないのは明らかですが。
今回のシンポジウムに韓国からの留学生が出席。リニア問題のドキュメンタリーを制作するとのこと。「私は日本の自然が大好きです。それがリニアによって失われるのがとても悲しい。」と言っていました。
札幌南区の住宅地に出没を繰り返していたヒグマの射殺に思う ヒグマに街・人間恐怖体験が必要
8月に入って札幌南区の住宅街に入り込み、家庭菜園のトウモロコシなどを食べ歩いていたヒグマが、14日早朝、山林に戻ったところを、行政から射殺依頼を受けていた猟友会員たちによって射殺されました。
研究者の鑑定によると、体長1・4メートル、体重128キロで、推定年齢8歳程度のメスのヒグマだったそうです。
熊森から
全てケースバイケースなので、一概に言えませんが、このケースでは、もっと早めに、勇気ある人たちが防護マスクを着けて、車でこのヒグマに近づき、窓からトウガラシスプレーをヒグマにめがけて噴射し、車で逃げ去ることを繰り返せばよかったのではないでしょうか。噴射実験に立ち会ったことのある者としては、あれは強烈です。二度と味わいたくありません。ヒグマも、そう思うのではないでしょうか。
街に出て行ったら人間にとても嫌なことをされる殺されるかもしれないという人間忌避感人間恐怖感を、ヒグマに抱かせるしか、このヒグマの命を救う方法はなかったのではないかというのが、熊森の感想です。(山奥の集落では、仲良く共存もありでしょうが)
くまもり顧問の門崎允昭博士に伝えると、同じことを感じたねと言われました。捕獲して奥地放獣では、クマは賢いので、すぐまたおいしいものがある住宅地に戻ってくると思われます。
遠軽で、オオカミ犬を使って、ヒグマが山から出て来ないように追い戻しておられる岩井氏も、ヒグマが出てきたら、心を鬼にして、殺されるのではないかと恐怖を感じるほど目をむいてオオカミ犬と一緒にヒグマを追いかけまわすと言われていました。岩井氏は、これによって、ヒグマは教育できると言われています。
今回、連日のテレビ報道を見ていて、熊森が感じたのは、最初はおっかなびっくりで出てきたヒグマでしたが、パトカーやマスコミ、市民や猟友会員、多くの人間に会ううち、このヒグマは、人間に認められていると誤解し始めたのではないかということです。
現場で見ていたある方が、このヒグマは人間と友達になりたいと思っているのではないかと感じたと言われていました。勇気を出して人間の所に出てきたら、みんなが見に来て、怖くもなんともない大きな音を立てて見物に集まってくる。人間は脅したつもりでも、このヒグマにとっては人間の脅威を感じなかったのだと思います。まして、命を奪われることになるなど、想像もできなかったのだと思われます。
ヒグマのような大型動物が街に出ていると、ヒグマにはその気はないでしょうが、やはり突発的に人身事故が起きる可能性があります。次回、このようなことが起きた場合は、街全体住民全体マスコミも含めてみんなで心を鬼にして、町に出ていったら人間に殺されるかもしれないと感じるような恐怖感を、ヒグマに与えてみてほしいです。それが、ヒグマへの教育になります。
それにしても、札幌市内で銃によるクマの駆除は2013年以来6年ぶりとのことで、以前の札幌市なら、また、他の町なら今でも、すぐに射殺してしまっていたケースです。。
札幌市担当者は随分と長く見守ってくださったと思います。担当課は、その名も、札幌市環境局環境都市推進部環境共生担当課 で、共生をめざそうという心意気が見てとれます。
電話番号:011-211-2879 ファクス番号:011-218-5108
日本の行政担当者は、普通3年ごとに部署替えがあり、なぜか行政内に専門家が育たないようなしくみになっています。よって、判断は外部の専門家と呼ばれる学者にゆだねられます。
今回も、このヒグマの殺処分を決定したのは、研究者ではないでしょうか。新聞報道によると、ーーークマの生態に詳しい道立総合研究機構環境科学研究センター(札幌)の間野勉自然環境部長は「市の基本計画に基づき、駆除という適切な選択肢を取ったと考えている」とコメントした。---と、ありますから。
クマも他の野生動物もみんな、畏敬の念をもって私たち人間が接するべき相手であり、愛すべき生き物同士です。私たちは研究者の皆さんに何度かお願いしているのですが、クマの研究者を名乗るには、駆除や解剖や遺伝子研究だけではなく、私たちのようにクマを飼って触れ合ってほしいということです。人間と深く心が通じ合うやさしい動物ですから、飼えば、何とか殺処分せずに生かそうという気持ちが起こってくるはずです。
今回札幌市役所には、このヒグマを殺さないようにという声と、早く殺してほしいという声が、数にして半々で届いたということです。
北海道新聞によると、12日朝に自宅前でクマを目撃した無職鈴森仁さん(70)は「(クマが)かわいそうという気持ちもある。こうなる前に山に帰ってほしかった。行政はクマと共生するいい方法を打ち出してほしい」と訴えた。とあります。
また一方では、「駆除されてほっとした」という声もありました。実感かもしれませんが、これには、ちょっと残念です。短絡的というか、あなたはほっとしたかもしれませんが、相手は一つしかない命を失ったのです。全生物との共生を、学校でももっと教えていくべきでしょう。
今回のことで、本部からも札幌市役所担当者に電話してみました。バカにせずに丁寧に聞いていただけたと感じました。次回は、何とか殺さず、生命尊重第一で問題解決していただきますよう、お願いしておきました。
札幌の町にヒグマが近寄ってきたという報道は誤りで、札幌は、元々、ヒグマの生息地に、後から人間が入って行って住まわせてもらっている街です。(完)
速報:とよが四足で立ち上がり、少し歩きました!
- 2019-08-14 (水)
- 大阪府 | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
西日本は台風接近で大変です。こんな中、申し訳ございませんが、とよの病状を心配してくださっている全国のとよファンのみなさまに、速報ニュースを流させてください。
本日8月14日、とよが四足で立ち上がり、少し歩いたのです!
こんなことってあるのでしょうか。
動画をお見せできなくて残念ですが、以下、その時の写真です。
四足で歩くとよ 8月14日
とよのこんな姿を見たのは1か月ぶり。最初は目を疑いました。
何かのまちがい、ぬか喜びの可能性がありますが、とにかく事実につき、みなさんにお知らせします。
今回きりかもしれませんが、喜んでください。
とよは、8月7日から1週間ステロイド剤を投与してみたものの、後肢の改善は全くなく、昨日8月13日、ステロイド剤の投与を打ち切ったところです。
安静にするため、このところ、とよを閉じ込めております。
イライラするのか不安なのか、せっかく作ってやったバルコニーを、とよは毎日、壊してしまいます。
熊森職員とお世話隊は、毎日床板を買いに出かけて、修理に追われてきました。
とよにかじられたバルコニーの床
以前、とよが囚われの身であった時、気分転換のために与えていた樹木スライスを思い出しました。
とよはこの板を、毎日、粉々になるまで齧り続けて精神を保っていたのです。
チェンソーを使える会員のボランティアさんにお願いしたところ、すぐに昨日、たくさんのスライスを作って持ってきてくださいました。
幹のスライスの匂いを嗅ぐとよ
また、本部が熊本県の上田支部長に、投薬がスムーズにいくように蜂蜜を頼んでいたところ、こちらのほうも昨日、重くて持てないほど大量の蜂の巣を送ってきてくださいました。
お盆返上で連日出動の熊森職員やお世話隊のみなさんと言い、ほんとうにみなさん、ありがとうございます。
おかげて本日獣舎に出向くと、バルコニーの床は初めて無事でした。
代わりに、樹木幹のスライスは、見事に粉々になっていました。
もう一生、とよは下半身マヒで生きるしかないと誰しもが思い、身体障碍グマのための獣舎改築を考えていた私たちの前で、本日、バルコニーに出ていたとよがゆっくり立ち上がり、四足で歩いて獣舎に入って行ったのです。
今回限りかもしれませんが、みなさん、一緒に喜びあいましょう。
今飲ませている薬は、抗生物質と胃の保護剤だけです。
とりあえずのお知らせでした。
台風直撃下の皆さん、お気を付けて下さい。
本部はこの後、台風にみまわれます。
とよの治療経過を報告
- 2019-08-11 (日)
- 大阪府 | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
7月16日、大好きなブドウも大好きな山菜のミズも食べず、立てなくなっているとよを発見。犬のような格好で寝ていた。お腹が激しくけいれんしていた。尋常ではない。
とよを診に来てくれる獣医さんを必死に探し続けたけれど、なかなか見つからなかった話など、この後のことは、8月3日のブログに書きました。
とよは、寝室に寝たきりで4日間出て来ず、与えたものも食べようとしませんでした。
びっくりしたのは、後肢2本が動かなくなって、アザラシやトドのように、後肢を引きずって歩きだした姿です。
この歩き方は骨折ではなく、椎間板ヘルニアかなんかで脊髄が何らかの炎症を起こしている可能性があるというのが、獣医さんたちの一致した見解でした。
とにかく炎症を抑えて、痛みを取ってやらねばなりません。
第1週抗炎症剤投薬開始
抗炎症剤プレビコックス1日1回2錠+胃保護アルジオキサ(粉末)1日2回
7月25日(木)~7月31日(水)
投薬2時間後、寝室から出て来て排泄し、プールに入った。
抗炎症剤が効いて痛みが取れたのかもしれない。
〇旺盛な食欲が戻る。排泄も順調。
〇表情が穏やかになり、くつろいだ感じになる。
痛みが消えたのか、くつろいだ表情に
おぼれ死なないように水位を下げたプールに入る、とよ
×後肢の足の甲を付けて(脊髄損傷サイン?)、前足2本の力だけで歩く。
第2週抗炎症剤投薬続行
抗炎症剤プレビコックス227を1日2錠+胃保護サイトテック朝夕1錠ずつ
8月1日(木)~8月6日(火)
〇旺盛な食欲。排泄も順調。
以前のようにペロリと平らげるようになった
〇引き続き、表情は穏やか、くつろいだ感じ。
×後肢の動きが、ますます悪化してきた。
ここで、室谷会長以下本部スタッフたちは、獣医師から詳しい説明を受けた。
脊椎骨、椎間板、脊髄、神経のモデル
後肢2本が動かなくなったのは、脊髄に腫瘍ができたか、はみ出した椎間板などが脊髄を圧迫して脊髄に炎症が起きているから。
犬なら、採血して白血球が正常である(=菌に冒されていない)ことを確かめ、ステロイド剤を投与する。菌に冒されていた場合、ステロイド剤投与で菌が活性化するため良くない。また、ステロイド剤は副作用があるため長期間投与すべきではない。
治る場合は3日間で劇的に回復する。
治療期間中は、脊髄を刺激しないよう、出来るだけ背骨を動かさないように安静にする必要あり。
上下運動が一番脊髄に負担をかけて炎症を拡大させるため、プールに出入りするのは厳禁。
3日間で治らなければ、犬ならレントゲンではなくMRIで炎症部位を調べ、即手術すれば治る。
しかし、クマにはクマ用MRIなどないので、手術不可能。
2本の後肢とお尻を引きずって歩いている間に、やがて皮膚が擦り切れ、感染症を起こして死亡する。
第3週最後の賭け:ステロイド剤投与
寝室とバルコニーにとよを閉じ込め安静とし、8月7日~8月9日まで3日間、ステロイド剤と胃の保護剤を投与。
キウイにステロイド剤などを埋め込む
大好きなキウイに14錠のステロイド剤を埋め込んで与えると、一気にとよが丸飲みしてくれ、投薬完了。
引き続き、〇食欲排泄、
しかし、×後肢の改善兆候なし。
8月10日~8月12日あと3日間、ステロイド剤と胃の保護剤投与延長、及び、いちかばちかで抗生物質を投与。
〇食欲排泄、
△狭い場所に閉じ込められたり、暑いのに好きなプールにも入れないことによるのか、とよはイライラしてきたもよう。
以前、誤捕獲されて狭い檻に入れられていた時に、不安解消のためか毎日していた木齧りを再開し始めた。
8月11日、一瞬だが、右足を踏ん張って、お尻を持ち上げた。
お尻を持ち上げられるようになれば、生き延びられるのだが・・・
(8月11日記)
とよを愛してくださる皆様に、治療過程を公開することにしました。
どこまでも希望を捨てずに、とよを見守ってやりたいと思っています。
もし、椎間板ヘルニアなら、人間はもちろん、犬や猫なら治せる病気のようです。
日本には野生動物病院がないため、クマを連れて行くところがなく、残念です。
病状深刻につき、安静中の「とよ」
- 2019-08-11 (日)
- 大阪府 | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
多くのみなさんに愛されている「とよ」は、現在、病状が深刻です。
体をできるだけ動かせないようにと獣医さんに言われており、安静が必要な状態です。
といって、とよに動かないように伝える手段がありません。
放っておくと、プールが大好きなとよは、プールに入ってしまいます。
そこで、8月7日、本部職員とお世話隊メンバーで、とよが寝室から少ししか出られないように、寝室前にバルコニーを造って閉じ込めようと突貫工事を行うことになりました。
バルコニー部分を設けようと思ったのは、とよが糞尿は寝室外でする習慣があるので、排泄時はバルコニーに出てきてトイレを済ませられるようにとの配慮からです。
もう最近は毎日の日課になってしまいましたが、この日も、本部職員は朝9時に高代寺に向けて、本部事務所を出発。
獣舎に到着すると、プールに入ってはいけないと獣医さんに言われているのに、やっぱりとよはプールに入っていました。
背中にはこのプールに住みついているカエル君が乗っかっていました。
プールに入って気持ちよさそうにしているとよ まつ毛が長いです。
餌を見せると、プールから上がろうとしました。しかし後肢が動かないため、なかなか上がれません。
前足の力だけで動いているとよ
この日は夜9時までかかって、みんなでバルコニーを造りました。電気をつけながらの作業です。
ついに完成したバルコニー 外は真っ暗
翌朝8月8日に行ってびっくりしました。バルコニーから出ようとして、とよが暴れたみたいです。床材を持ち上げてバルコニーの入り口に立てかけており、これでは、バルコニーにも出られません。あわててみんなでとよにつぶされないよう、バルコニーの補強工事を施しました。
ところが、次の日8月9日の朝行くと、またまた、とよがバルコニーの木の床を持ち上げて噛んで壊していました。
みんなで今度こそとよにつぶされないようにと、補強工事をさらに追加しました。
バルコニーに出られるようにしてやると、とよはあわててバルコニーに出てきて、2回分の多量ウンチをしました。きっと、寝室でしたくないと、がまんしていたのだと思います。
次の日8月10日の朝行くと、やれやれ、バルコニーはやっと無事です。
賢いとよは、学習したのだと思います。
バルコニーに顔出ししたとよ
獣舎がある場所は山の上ですから、夜は涼しくなりますが、日中はさすがに暑いです。
お世話隊の皆さんが、扇風機や冷風機を獣舎に持ち込んで、寝室とバルコニーに閉じ込められたとよが熱中症にならないように、日中は寝室内に風を送り続けてくださっています。
寝室前に、扇風機や冷風機の持ち込み
食べものも至れり尽くせりで、人間でも食べられないいい物を与えています。
寝室内で食事するとよ(食欲は旺盛)
本部スタッフとお世話隊は、毎日高代寺に詰めており、日中ずっと、とよの見守りを続けています。
住職さんたちも毎日のぞいてくださっています。
ボランティアさんの中には、仕事を休んでまで駆けつけてくださる方々もおられ、みんなとよが心配で、とよの回復を祈り、連日涙ぐましい努力を続けているところです。
一体、あの元気すぎるほど元気だったとよの身に何が起きたのでしょうか。
次ページに、経過を報告させていただきます。
推定918頭のクマに春~秋、誘引物入り捕殺罠2311基常設の異常性 和田副会長 兵庫県議会で質問
・去る6月20日、くまもり副会長の和田有一朗兵庫県議会議員(神戸市垂水区選出)が、兵庫県本議会でいくつかの質問をしました。
・その中から、兵庫県のツキノワグマが3年前から一大捕殺強化されている問題について質問した部分について、以下に紹介させていただきます。
【質問2:ツキノワグマの保護管理について】
和田 有一朗議員:
次に適正な野生鳥獣の保護・管理についてお伺いいたします。
近年、人と野生動物との軋轢がメディアを賑わせることが多くなってきています。シカやイノシシは人身事故はあるものの、農業被害が中心である一方で、クマの場合は人身事故の問題が中心となっているところであります。
兵庫県においても本県に生息するツキノワグマは平成8年度から狩猟禁止、追い払い活動や学習放獣などの保護対策を進めた結果、推定生息数が絶滅することが当面ないレベル800頭まで回復し、直近の推定生息数の中央値が830頭となっていると推定した県(注:推定したのは兵庫県森林動物研究センターの研究員)は、ツキノワグマ管理計画に基づき狩猟を含め野生鳥獣の被害対策の強化を進めてきたところであります。
しかし、注意をしておかなければならないのは、推定生息数はあくまでも統計に基づく推定であって、実際の生息数は推定より多い可能性もはるかに少ない可能性もあるということであります。
日本ではクマをはじめ野生動物は(今や)害獣として扱われ、個体数調整という名のもとに、本来の生息地である山の中まで人が入り捕殺をしており、本県でも出没を確認しない段階で推定生息数をはるかに超える罠を必要以上に仕掛け、捕獲されたクマを放獣せず、害獣駆除しているという声を私は聞いております。
乱獲は野生動物の絶滅の大きな原因であり、兵庫県でもツキノワグマが絶滅の危機に陥った過去からしても、捕獲が過剰となっていないか、十分な検証が必要であると思います。
そもそもクマは基本的には人を避け、森の奥深くに生息する動物であります。しかし、突発的に出会うと防御的な攻撃を招き危険な場合があります。また、クマによる人身被害、農業被害の発生は必ずしも、実はクマの個体数の多さに比例しているわけではありません。
クマの本来の生息地である森を開発、利用してきた人間が、季節や年によって食べ物を柔軟に変化させるといったクマの生態を知り、例えば奥地の放置人工林を天然林に戻すなど、本来のクマの生息地である奥山のクマの生息環境を整え、棲み分けを実施していくこと、藪の刈り払いをすること、庭の果実を除去すること、事故が起こった場所には立ち入らないようにすること、クマの餌場となる場所にはできるだけ近づかないようにすること、また、近づく必要がある場合は十分に注意すること等、地道な取り組みを続けていけば、当然クマ生息地の住民の不安を解消することは重要でありますが、私はクマを殺さずとも共存していくことはできると考えます。
そこで、誘因物、それは放置果樹であったり廃棄農作物であったり、生ごみなどがありますが、こういったものを除去、農耕地等への電気柵等の設置と管理、クマの集落周辺への侵入や一時的な定着を防止するための耕作放棄地等の整備や藪の苅りはらい等によって、出没を確認しない段階で罠を必要以上に仕掛け、捕獲されたクマを放獣せずに害獣駆除するといった方法によることなく、適正なクマの保護・管理ができると考えますが、当局の誤所見をお伺いいたします。
【答弁:ツキノワグマの保護管理について】
田中基康 環境部長:
本県では森林動物研究センターの知見に基づき、生息数推定の精度を向上させながら、個体数管理、生息地管理、被害管理を総合的に推進するワイルドライフマネジメントを行っております。
近年ツキノワグマの推定生息数が狩猟解禁基準の800頭を超えたため、平成28年度から1か月の制限付きで狩猟解禁しております。
また自然増加数を上限に、集落やその周辺地域に出没する個体に限定して必要な有害捕獲を従来から行っておりますが、これに加えまして、シカ罠等に誤って入り込む、これは当然放獣するわけですけれども、個体までを含めた捕獲総数は3年連続で100頭を超えております。これは過去にはございませんでした。
人身被害が発生する中で、残念ながら危険度がより身近になっている有害罠の設置など確実な対策が必要な状況にあると考えておりますので、どうぞご理解を賜わりたいと思います。
もとより、先ほどより答弁にありましたように中長期的な生息地管理として広葉樹の植栽を行っております。
何より、集落にクマを誘引しないよう被害管理として放置果樹、生ごみなどの誘因物の除去を進めておりますけれども、啓発呼びかけにとどまらないよう、本年度からは民間専門家(株式会社野生動物保護管理事務所や 元兵庫県森林動物研究センター研究員坂田宏志氏が設立した株式会社野生鳥獣対策連携センターなどを想定)による集落ごとのきめ細やかな実地指導も展開してまいります。
GPS行動追跡等も進めて引き続き進めてまいります。
今後とも市町はもとより近隣府県とも十分に連携しながら人身被害の防止を最優先にしつつ、クマと共生できる科学的・計画的な保護管理を着実に進めてまいりますのでどうぞよろしくお願い致します。
熊森から
和田副会長の質問、完璧です。ありがとうございました。
2018年を例にとると、兵庫県では、県内推定生息数918頭のツキノワグマに対して、まだクマが出てきていない春の時点で、609頭のクマ捕殺許可書が県から発行され、シカ・イノシシ捕獲檻のうちの2311基にクマ札が付けられてクマ捕獲共有罠とされ、春から10月末まで、集落200メートルゾーン内に罠を常設。入ったクマは狩猟と合わせて137頭までという上限数があるものの、全頭殺処分。
兵庫県がこのようなクマ捕殺体制をこっそり敷いていたことが、昨年の熊森の調査で発覚しました。
その結果、人里に出て行きたかったわけではない多くのクマが、誘引物の匂いに誘引されて罠に向かったのです。
2019.7.23現在までの、兵庫県庁資料より
地元で聞くと、このようなクマの捕殺方法は、平成29年(2017年)の7月から始まり、平成30年(2018年)と今年の2019年は、春から開始されたとのこと。
上記グラフから、大量の常設クマ捕獲罠によって、集落200メートルゾーンになど出ていく気がなかったクマを、山から呼び出して罠にかけ、殺処分していることがはっきりとわかります。
初めに殺したいありきであり、これはもはや有害捕獲ではなく、完全に、クマの個体数調整捕殺なのです。クマの個体数調整はしませんと協議会で宣言された兵庫県の言葉が嘘になっています。
熊森は26年間兵庫県の奥地を見て参りましたが、熊森がささやかながらも奥山に餌場を復元してきたことと比べて、兵庫県のクマの餌場復元事業は掛け声ばかりで復元実態はゼロだと思います。それどころか、奥山観光地化や奥山道路建設、シカの食害など、クマの生息環境は劣化の一途です。生きるために、過疎化した集落周辺に移動したクマたちを、人は責められないと思います。
奥山をクマたちが棲めないようにしたあげく、人間の所に出て行かないように踏ん張っているクマまで誘引剤で里に誘引して、有害駆除名目で個体数調整捕殺をする。もう、人間をやめたくなります。人間の残酷さや嘘に、クマたちは泣いていることでしょう。
なぜか、新聞社は、兵庫県の実態を県民に全く伝えようとしません。
地元の皆さんの何人が一体、兵庫県のしていることを知っているのでしょうか。
地元の皆さんの何人が一体、兵庫県のクマ捕殺法を支持しているのでしょうか。
くまもりは、集落周辺でクマの被害や人身事故が起きたら、山中にいるクマを集落周辺に呼び出した兵庫県が責任を取るべきだと思います。みなさんはどう思われますか。
みなさんの住んでおられる都府県でのツキノワグマ捕殺体制は、どうなっているでしょうか。みなさんも調べてみてください。
政治も司法も不在の長崎県石木ダム 反対派住民「強制執行で古里奪わないで」と県庁に乗り込む
以下、長崎新聞7月18日より
川棚町に石木ダム建設を計画する県と佐世保市に、反対住民らが工事差し止めを求めた訴訟の第12回口頭弁論が7月17日、長崎地裁佐世保支部(平井健一郎裁判長)であり、水没予定地の住民ら原告7人が当事者尋問に出廷し「力づくで古里を奪わないでほしい」と訴えた。
長崎県収用委員会は今年5月、反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地の明け渡しを求める裁決をし、家屋の撤去や住民の排除などの行政代執行が現実味を帯びる重大局面に入った。明け渡し期限は、家屋などの物件がない土地が9月19日、物件がある土地が11月18日。
住民の岩本宏之さんは「崖っぷちに立たされ、眠れない夜もある」、
石丸勇さんは「大変な人権侵害だ」と怒りをあらわにした。
岩下すみ子さんは「地域の人たちとのつながりを長い年月をかけて築き上げてきた。失いたくない」と声を詰まらせた。
石丸穂澄さんと松本好央さんは、イベントや会員制交流サイト(SNS)などを通じて、事業への疑問や反対の声に対する共感が全国で広がっていると主張した。
水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表と市民団体「石木川まもり隊」の松本美智恵代表も出廷。
嶋津共同代表は、石木ダムの治水効果は川棚川下流域にしか及ばず、上流域には氾濫のリスクが残っているとし「費用対効果が小さい」と強調。松本代表は人口減少による水需要の低下などを指摘し「誰のための公共事業か。県と佐世保市は現実を直視してほしい」とダム以外の利水対策を検討するよう求めた。
以下、長崎新聞7月31日記事より
石木ダム建設事業に反対する地権者や市民団体などの約200人が7月30日、約6時間にわたり長崎県庁内で抗議活動を実施し、庁内は一時騒然となった。家屋を含む土地の明け渡しを地権者に求める県収用委員会の裁決が出た中で、地権者らの不満が爆発した形となった。
県庁の担当者らに詰め寄る地権者ら(長崎新聞より)
熊森から
ダムは百害あって一利なし。
川は流れていてこそ価値があるのです。ダムでせき止めると、水は腐り、ダム湖にはヘドロがたまり、大自然破壊となります。
多くの生き物が死に絶えます。
このようなムダなダムを、なぜ我が国は造り続けるのか。
日本熊森協会顧問の京都大学今本博健先生が書かれた「ダムが国を滅ぼす」を読まれたら、答えは一目瞭然です。
ただただ、建設利権だけなのです。
建設会社と口利き政治家(報酬相場は、ダム建設事業費の5%)を潤すことだけのために、愛する故郷を失わねばならない。
50年間ダム建設に反対し続けてきた地元住民のみなさんの無念ぶりはいかばかりかと思いやると、胸が苦しくなります。
土建業の公共事業で経済を発展させようという戦後の経済政策から、もういい加減に脱却しないと、国が破滅してしまいます。
建設会社のみなさんは、これからはダム建設ではなく、放置人工林の広葉樹林化・天然林化を公共事業にする時代です。
乗り遅れないようにして下さい。これだと、誰も泣かすことなくもうけられます。精神衛生にもいいですよ。
7月30日、反対し続けてきた地元住民のみなさんは長崎県庁を訪れ、強制収用の取り下げを求める中村法道知事宛ての要請書を提出しようとしたようですが、知事は出張中で不在。副知事は「公務中」を理由に姿を見せなかったそうです。
長崎県側のコメントは、「大騒ぎになってしまい非常に残念」というものだったそうです。
なんだこれ???ふるさとを奪わないでほしいと全身全霊、体を震わせて訴えている地元住民に対する県側の思いやりのなさ、まるで他人事には、唖然とします。完全に、政治も司法も人権も不在です。私たち国民はこのような状況を認めてはならないと思います。やがて我身にも、この生きづらさが襲ってきます。
熊森は自然保護団体としてはもちろんですが、人間としても、おかしいことにおかしいと勇気をもって声を上げ続けてきた地元住民のみなさんに、心から連帯の拍手を送ります。
ダムは100%、自然破壊以外の何物でもありません。
わたしたち国民は、建設会社と口利き政治家の嘘にだまされないように、もっと勉強しなければなりません。
権力の暴力である強制収用は、今も昔も、絶対にあってはならぬものです。
<石木ダム問題について書いた2019年3月30日のブログを、もう一度以下に再掲させてください。>
たとえ、どんなに意味のあるダム工事計画であったとしても、50年間も住民が立ち退きたくないと断り続けているのですから、完全に行政の負けです。
行政が最後まで残っている13家族を説得できなかったのです。
そんなところにダムを造る権利は国にも県にも市にも誰人にもありません。
もはや基本的人権を認めるかどうかの問題です。
いくら自分がいいと思っても、相手が絶対嫌だということは、してはならないのです。
これは、人間社会に於ける最低限のルールだと思います。
私たちも長崎県知事に、石木ダム建設地を強制収用しないようお願いしましょう。