くまもりNews
2020年の東北地方クマ大駆除の嵐の中で
東北地方のクマ生息地に住む方と、電話でお話ができました。以下は概要です。
去年の秋はとてもつらかったです。たくさんのクマたちが次々と山から出てきました。よほど山に餌がなかったんだと思います。あっちでもこっちでもクマを撃つ銃声が身近に聞こえて、胸騒ぎし通しでした。おなかがすいてたまらなくなって出てきているだけなのに、行政の人は何も感じていないようで、罠を仕掛けてはクマを獲り続けていました。何回クマを撃ち殺す鉄砲の音を聞いたかわかりません。報告しているよりずっと多くのクマを殺していると思います。
11月、我が家から50メートルぐらい離れたところにあるカキの木の枝がボキボキに折られて柿の実が食べられていました。クマかもしれない、撃たれるといけないと思って、証拠隠滅のためにすぐ枝を片付けに行ったら、根元に大きな糞がありました。クマだと確信しました。こんな家のそばまでクマが来たことはこれまでありません。よほど餌に困っているんだなと思いました。見回してみるも、明日からの食料になるようなものはもう何もありません。かわいそうになって、米ぬかを運んでやったらどうかと思いつきました。
もっと奥に雑草が生い茂っている空き地があるので、そこの地面に一輪車いっぱいの米ぬかを運んでやりました。次の日見に行ったら、ぬかがなくなっており、よくぞここまでと思うくらい地面がなめ尽くされていました。かわいそうに、飢えて冬眠できないんだと思って何度もぬかを運んでやりました。東京の友達にこの話をしたら、ドングリをあげたらいいと言って、すぐに段ボール2箱のドングリを送ってくれました。中を開けたら、3分の1はマテバシイのドングリであとはクヌギのドングリでした。マテバシイは食べないだろうと思ったけれどぬかの跡に運んでやりました。次の日見に行ったら、一粒の殻もなくきれいになくなっていました。マテバシイでも食べるんだとわかりました。今年のクマは飢えすぎて、殻も食べてしまったんだろうと思いました。
ドングリがなくなったので、また米ぬかにもどしました。米ぬかばかりだとかわいそうなので、米ぬかの中にカキの実を3つぐらい忍ばせてやりました。12月になって、やがて雪が降りだしました。ある日見に行くと、与えたエサがそのままになっていました。無事冬ごもりに入れたんだと思いました。私は去年1頭だけだったけどクマの命を助けたと実感しています。集落の人たちは、私がクマに餌を運んでいることを感づいていると思いますが、誰も役場に届けないでいてくれました。地元の人たちは、かわいそうに、クマは餌がないんだという感情を持っていますから。
しかし、行政の人たちは違います。行政は、クマが出たときくと、罠かけて殺すことしか考えていません。。早くことを片付けて終わりたいだけです。行政で、クマは餌がない、山に実のなる木を植えて餌場を作ってやろうというようなことを考える人は一人もいません。柿の木を伐れ、実をもいで捨てろ。行政が言うのはこれだけ。クマの絶滅を止めようと思えば、この行政を何とかしなければならないと思います。
2年前からイノシシが出だしました。みんな、田畑に電気柵を張ったり、いろいろと防除し始めています。大変です。サルは前から多い。シカはまだだけど、これでシカが登場したらどうなるのかと思います。過疎化高齢化した集落に子供たちが帰ってくることはありません。私たちの集落はこれからどうなっていくんでしょうか。
1年間に生息推定数の1割以上を殺すと、絶滅に向かうと言われています。
この2年間に殺されたクマ数を、wクリックして見てください。
実際はもっと多く殺されていると思われます。
小泉大臣にすぐ動いてもらわないとだめですね。
推定生息数の真偽は不明です。
熊森から
東北の人たちが、いくら何でもここまでクマを殺したらクマが絶滅するのではないかと感じていることが伝わってきました。生きとし生けるものへの畏敬の念こそ、日本人の自然観であり、保水力抜群の豊かな水源の森を残すことに成功した奇跡の日本文明なのです。
それが今、行政付き研究者や行政が、生き物の命をものとしてしか見ない西洋の自然観を地域に持ち込んで、日本を変えてしまおうとしていると感じます。熊森は、危機感でいっぱいです。このような人間中心主義は種の大量絶滅をもたらし、人類をも滅ぼします。
日本でクマの大駆除が可能になったのは、1999年に当時の環境庁が、西洋手法のワイルドライフマネジメント(個体数調整捕殺)を導入したからです。行政から予算を付けてもらった研究者が、クマが増えていると言えば、何の被害も出していないクマでもどんどん殺せるようになるのです。
当時、熊森は、こんなものを導入したらクマが滅びるとして、この「鳥獣保護法改正案」を廃案にするために国会に一番乗りして国会議員に何度もレクチャーし、命を懸けても阻止しようと闘いました。日本野鳥の会、日本自然保護協会、WWFジャパン、アライブなど、日本中の自然保護団体、動物愛護団体が一致団結してみんなで個体数調整捕殺の導入に猛反対しました。賛成したのは、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏らです。
西洋のクママネジメントというのは、東ヨーロッパでは狭い自然界にクマを高密度で放し、給餌して増やし、ハンターに高額料金でハンティングさせてやってもうけ、その収益でクマの餌を買うやり方です。西ヨーロッパはわずかな孤立個体群しかもういない。
(参照「世界のシカ・クマ保護管理の現状と北海道の将来方向」1990年野生動物情報センター発行)
現在、日本は、この西洋型共存を最良として真似しようとしています。しかし、このような共存より、祖先の棲み分け共存の方がずっと優れています。残念ながら、政治的な圧力が働き、この法案は成立してしまい、今日に至っています。熊森は、個体数調整捕殺の導入の撤回をめざし、とりあえず、狩猟と有害駆除以外はクマを殺せないというところまで制度を戻そうと考えています。
クマが滅びる前に、何度でも言う。環境省は、個体数調整捕殺の導入を撤回せよ。
熊森はこれまで都道府県の鳥獣行政担当者に会報を送り続けてきましたが、熊森をもっと大きくして、1000以上ある市町村の鳥獣行政担当者にも会報を送ることができるようになりたいです。戦後わたしたち人間が破壊した奥山自然林を早急に再生させて、大型野生動物たちとの棲み分け復活をめざすよう、行政担当者のみなさんに伝えて歩かねばならないと思いました。
みなさん、ぜひ熊森会員を増やして、熊森をもっと大きくしてください!行政はクマが増えているという行政付き研究者たちの言うことばかり信じていますが、山の餌がなくなっているのに、増えられる要素など何もありません。クマの絶滅を止められなくなってきたと熊森は感じてあせっています。
現在、熊森のHPが故障しており、回復のめどが立っていません。
当面の簡易版ホームページを作りました。しばらくはこちらをご利用ください。
ご参加ください! くまもり オンラインシンポジウム
- 2021-02-19 (金)
- くまもりNEWS
「クマとの共存のために、今、何が必要か」 3月6日 15時~
2019年、2020年とクマの捕殺数は2年連続で過去最多となりました。出没や人身事故は連日ニュースになりましたが、クマの生息地の奥山が急速に劣化していることが背景にあることは報道されません。
クマなどの大型野生動物のつくる森は私たちの水源の森です。現状を知り、手遅れになる前に、共存へ向けて動き出しませんか? 豊かな自然を守り、全ての生きものとの共存を願う方、ぜひ、お集まりください!
【日時】2021年3月6日(土) 15:00~17:00
【参加費 】無料 (定員100名)
Zoomウェビナーにてオンライン開催
【参加申し込み)】お名前、お住いの都道府県を記載の上、下記までメールをお送りください。
E-mail:event@kumamori.org
【プログラム】
(挨拶)「今、共存へ舵を切らなければ手遅れに」
質疑・意見交換 |
東北猟友会員の訴え 大駆除現場は違法だらけ クマが絶滅する 山にすぐ餌になる物を植えよ
クマ猟期最終日の2月15日、ネットでクマの保護団体を探して熊森協会を見つけたという猟歴25年の東北地方の猟友会員から、2時間に及ぶ長い告発電話が熊森本部にありました。以下に、彼の話をまとめます。
現場では皆殺し
自分は駆除隊の隊員だが、熊森に電話したのは、もうこれ以上、クマを駆除するのが嫌になったから。いくらなんでもひどすぎる。うちも農家だが、農作物を守るというのだったら、追い払うとか電気柵を張るとか、殺す前にまず人間としてしなければならないことがあるはず。そういうことは一切せず、クマが山から出てきたら、みんなで大騒ぎして即、箱罠やドラム缶檻をかける。クマはすぐかかる。去年は、殺しても殺してもクマが出て来た。だからといって、いくらなんでも殺し過ぎだ。日本人のしていること、おかしくないか。もう、クマが絶滅するぞ。
届け出があっただけでも、2年間にこれだけ膨大な数のクマが殺された。海外では考えられない。
(グラフは熊森資料:作成熊森協会)
ツキノワグマ捕殺数、5位まで (ダブルクリックで拡大してご覧になってください。)
1、福島県 2、秋田県 3、新潟県 4、山形県 5、群馬県
山にクマの餌がない
どうしてこんなに多くのクマが山から出てくるようになったのかというと、山に餌がないの一言に尽きる。東北はどんぐりの種類も少なく、昨年はブナ大凶作、ミズナラはナラ枯れで大量に枯れてしまっているから、豊凶発表など意味がない。実がなっていたのはクリだけだった。冬ごもり前の食い込み用の食料が山にないのだ。生き残るためには、クマは里に出てきて集落のカキやクリを食べるしかなかった。ハチも減っているから、虫媒花も実らない。
本当はもっと殺している
環境省に届けられた自分の県の有害駆除数を見て、本当はもっと多いのにと思った。届け出ない駆除が結構あるから。駆除したクマは土に埋めることになっているが、誰もそんなことはしない。解体してみんなで肉を分け合って持ち帰り、食べている。
違法だらけの現場
最近は山にシカやイノシシを獲るためのくくり罠が無数にかけられている。一番多くかかるのはイノシシ。罠に掛かったイノシシは逃げようとして大暴れする。そのうち、罠のワイヤーが関節にはまって、そこを強力ばねで締め上げるから、足先が壊死する。足先のないイノシシがいっぱい誕生している。
クマが誤捕獲されないよう、くくり罠12センチ規制は守っているが、真円12センチではない。横にはいくら長くてもいいとして緩和されているので、子グマはもちろん、成獣グマも結構かかってしまう。
法律では誤捕獲された野生動物は放獣するとなっているが、くくり罠に掛かった動物には、麻酔をかけない限り危なくて近寄れない。
クマを放獣できる人など県内に誰もいないから、誤捕獲されたらみんな黙って撃ち殺している。県内で1頭だって放獣された誤捕獲グマはいない。
キツネやタヌキも誤捕獲される。めんどくさいから、みんな撃ち殺している。誤捕獲放獣の法律なんか誰も守っていない。日本には監視人がいないし、行政も何も注意しないから、現場は違法だらけ。これが日本の実態だ。
(環境省や小泉大臣は、この現実を知らない。地元では野生動物を守ってやろうという声がだしづらい)
クマの餌場づくりを(山中編)
戦後、山にスギばかり植えた、あれ失敗だった。クマの餌が山にもうない。ブナは近年実を付けないし、ミズナラはナラ枯れで枯れている。山奥にクマのえさ場を造ってミズナラにかわる木を植えてやるべき。しかし、木の実は実るまでに何年もかかるので、去年クリを食べて生き残ったクマが今年もう殺されないようにするには、木だけでは間に合わない。今年、すぐ食料になる物を植えることが必要だ。
クマの餌場づくりを(山裾編)
山裾と集落の間には、クリやカキをびっしり植えて、クマが山から出て来ないようにすべき。人とクマの棲み分け境界をはっきりさせることが必要。
亡くなった父親の言葉
これまで猟で40頭ぐらいのクマを獲ってきた。でも、もう今年からはクマは獲らないと決めた。最近、亡くなった親父の言葉がやけに思い出される。親父は自分が猟をしていることを嫌がっていた。「せっかく山で喜んで遊んでいるクマやヤマドリをなぜ撃つのか」と、いつも言っていた。最近なんだか、親父の言っていたことが分かるようになってきた。
クマは怖い動物ではない
自分は元々山歩きが好きだった。ある時、猟をしないかと人に誘われて、猟師になった。ヤマドリでも撃ってやろうかと初めて山に入ったら、クマの足跡を見つけた。跡をつけて行ったら、穴の中にクマがいた。無抵抗のクマを撃ち殺した。子グマが穴の中にいたので、これも撃ち殺した。あの後、何頭もクマを撃ってきたけど、一番最初に撃ったあの親子グマのことが今もなぜか目に浮かぶ。
みんなはクマが出たら怖い怖いという。しかし、クマは、本当は怖い生き物ではない。すごく臆病。いくらクマが力が強いと言っても、人間の銃の前には勝ち目なんかない。完全に人間の勝ち。これまで何回も山の中でクマに会ってきた。自分はいつでもクマを撃つわけではない。1年に1~2頭。その年は、それでやめる。クマは、人間に会った時、撃たれるか撃たれないかとっさに運命がわかるようだ。今日はクマは撃たんと決めていると、自分に会っても何もしない。
キツネやタヌキは撃ったことがない。近くに稲荷神社があって、ここらではキツネは神様だから。
国民が力を合わせる
駆除現場は違法だらけだけど、行政は絶対動かん。みんな自分の保身しか考えてないからね。あの人たちはそういう人たち。誰がこの国を変えていくのか。自分たち国民しかない。国民みんなが力を合わせないとだめだ。でも、日本人は動かん。オリンピックの会長の問題のように、海外からバッシングしてもらわないと、日本人て自分たちでは何も変えていけないのかな。「クマを駆除するなんてなんと野蛮な、恥を知れ」と外国から言ってもらわないとだめなのかな。保護の声が全くあがらない国、日本。遅れ過ぎ。日本人は自然を守ろうと思わんのかな。
熊森から
個体数調整捕殺の導入を白紙撤回すべき
クマの駆除は、今や、例外県以外は大虐殺になっています。こんなことになったのは、学生たちの就職口を確保したかった当時の大学の動物学教授たちの主張を信じて、1999年に環境庁が鳥獣保護法を改訂して<個体数調整捕殺>を導入したからです。これによって被害が出ていなくても、<個体数調整>という名で、簡単に野生動物が殺せるようになりました。これを白紙撤回して、狩猟と有害駆除以外に野生動物は殺せないというところまでまず戻さなければ、絶滅は止められません。
くくり罠の使用禁止を!
トラばさみ同様、くくり罠はこの上もなく残虐な猟具です。最近、3回くくり罠に掛かったらしく、足が一本になってしまったニホンカモシカを見たという情報が入りました。(見てしまったら、くまもりは余りの哀れさに号泣してしまいそうです)
熊森はこれまで、くくり罠の使用禁止を求めて運動してきました。くくり罠が廃止されるまで、訴え続けていきます。このような残虐な殺し方を認めていたら、人間がダメになってしまうと思うのです。
増えたり減ったりが自然
毎年、研究者が行政から多額の予算を取って野生動物の生息数を推定計算しています。目撃数や捕獲数などを行政が伝えれば、研究者たちは一回も山に入らなくても生息推定数が計算できるそうです。群れで動くサル以外は、こうやって出された生息数が、どこまで信頼できる数なのか誰にもわかりません。増えているか減っているか、数ばかりが議論の対象になっています。研究者が増加傾向にあるというので、今、どこでもクマ駆除を促進しているのです。研究者の責任は誠に大きいです。野生動物の捕殺がゲームになっています。奥山生息地を人間に破壊されたため、生きるために仕方なく人前に出てきただけで、増加傾向にあるように見えるが実は絶滅寸前だったということも十分考えられます。
野生鳥獣の数は、増えたり減ったりするのが自然で、山から出て来なければ、増減など実はどうでもいいのです。(個体数調整のための捕殺利権に群がっている人達にとっては、増減が大事です)
奥山再生国家プロジェクトを
戦後、人間が動物が棲めないまでに荒らしてしまった山を、もう一度人間が再生する義務があります。林野庁は至急、このための国家プロジェクトを提示すべきです。奥山の道路を閉鎖して人間が一歩下がり、野生動物たちに生息地を返す。祖先がやってきたことを復活すればいいだけのことです。
日本の野生動物たちは泣いている
こんな子供でもわかることをしないで、残虐な駆除を大暴走させている日本。国民の無関心さに、日本の野生動物たちはみんな泣いていることでしょう。
水源の森は野生動物たちが造っている
自然界からすっかり離れて暮らすようになってしまった現代人は、近い将来、山からの湧き水が消えたとき、はじめて慌てふためくのだと思います。その時初めて、他生物に畏敬の念を持ち、かれらと共存しなければ人間も生き残れないという自然界のしくみに気が付くのでしょうか。あまりにも愚か過ぎます。
猟師と熊森の共通点
熊森協会の初代副会長は兵庫県の猟師でした。熊森と話が合う猟師が意外と多くいます。共通点は、どちらも、現場を見ていることです。狩猟の狩とは、獣へんに守ると書きます。本当の猟師は、熊森の奥山えさ場復元に協力していただけるものと信じます。優しい文明が一番優れており、持続可能なのです。(完)
くまもり協会公式LINE誕生!
- 2021-02-16 (火)
- くまもりNEWS
2月13日 会員10万人をめざす会員拡大ズーム会議を開催しました
- 2021-02-13 (土)
- くまもりNEWS
2月13日(土)、本部主催の「会員拡大zoom会議」に全国から70名を超える会員のみなさんが参加してくださいました。
室谷会長あいさつ
熱く語る室谷悠子会長
欧米には会員数数十万人を超える自然保護団体が多数育っており、それらの団体が、自然や生き物を守る制度を次々と作っていっています。会員数が400万人を超えるイギリスのナショナル・トラストの場合、提出した法案6000本がすでにイギリス国会を通っています。
日本を自然保護大国にするためには、熊森ももっと大きな団体になって、国を動かす力を持たねばなりません。
熊森本部は今年から「10年後に会員数10万人!」をめざして、会員拡大に取り組むことにしました。
近年、本州ではナラ枯れや昆虫の消滅が一気に進み、猛スピードで山が劣化しています。食料を求めて山から出てきたクマたちは、熊森の必死の駆除阻止活動にもかかわらず、片っ端から駆除されてしまいました。
2012年の国内ツキノワグマ生息推定数1万2000頭。山の実り大凶作の2019年と2020年の2年間で、合計1万1000頭を有害駆除。
生態系の頂点に位置するクマの絶滅を何としても止めたいと思います。そのためには、法整備が必要です。国会議員を動かせる大きな団体になるために、今年中に会員数2万人をめざします。
本部の拡大実行委員5名から
会員を増やすための5つのツールについて、それぞれ目標や利用の仕方を発表しました。
1,講演、イベント、メディア
2,友人や知人
3,ネット
4,LINE
5,小冊子「クマともりとひと」
ここまでで50分
この後、参加者を2つのグループに分け、約1時間、自由に発言していただきました。
多くの方から、会員拡大につながるアイデアや現在の問題点などが発表されました。
これからも2か月に1回程度、会員拡大ズーム会議を開き、本部と支部でも連携して、今年中に会員2万人を達成したいと思います。
会員拡大本部実行委員たち
参加してくださったみなさん、ありがとうございました。(完)
クマに餌やりで罰金30万円の「自然公園法改正案」と、くま森のドングリ運びは全く無関係です
2月10日(水)10:00ヤフーニュースを見て、ドングリ運びは罰金30万円の対象なのかと不安になった会員から、問い合わせが相次ぎましたが、全く関係ありません。
そもそもこの法改正は、知床でヒグマなどの野生動物たちと写真を撮りたい人たちが、エサ投げをすることを禁止するためのもので、国立・国定公園における利用ルールやマナーの向上をめざすために、30万円以下の罰金を課す案です。
この記事の途中、クリックするとどんぐり運びの写真が出て来ます。なぜこんな場所に全く無関係のドングリ運びの写真が入ってくるのか関係者に問い合わせたところ、直ちに削除されました。削除はされましたが、熊森のドングリ運びが、まるで30万円の罰金対象かと勘違いさせるような表示をしてしまった関係者の責任は大変重いと思います。
この法案は、近々閣議決定されて、その後、世に出てくる予定です。熊森も、しっかりと追っていきたいと思います。
オンライン全国クマ部会 環境省のガイドラインを、捕殺を抑止してクマと共存できるものに
1月30日に開催された、本部主催2021年度第1回オンライン全国クマ部会に、全国から50名が参加しました。
2019年、2020年と全国のクマ駆除数は6000頭を超え、過去最多を更新しています。狩猟による捕殺以外に、この2年間で、1468頭のヒグマ、1万1078頭のツキノワグマが許可捕獲により殺処分されたのです。このような捕殺を続けていたら、クマが絶滅する地域が出てくるのは時間の問題です。
熊森は、2020年11月、全国の皆さまからいただいたクマの捕殺に規制をかける署名約27000筆を、環境大臣政務官と農水大臣政務官に提出し、放置人工林を早急に広葉樹を主体とする水源の森に復元し、大型野生動物との共存・棲み分けを復活してほしいと要望しました。
環境省は、2021年前半に、全国のクマ生息都道府県に策定させている特定計画のうち、クマ保護計画及びクマ管理計画についてのガイドラインの改定を予定しています。熊森は、この2年間の大量捕殺でクマ絶滅の引き金が引かれたと危機感でいっぱいになっています。今回のガイドライン改訂を、クマ大量捕殺に歯止めをかけるガイドラインにしてもらうため、環境省や国会にさらに大きく働きかけていこうと思います。
今回のオンライン会議は、環境省に何を訴えていくべきかを会員のみなさんに伝え、ご意見を求めるために開催しました。ガイドラインができて、パブコメが募集されてから変更してもらうことは難しいため、今のうちに早めに環境省に声を届けてください。
環境省〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館 TEL 03-3581-3351(代表)小泉進次郎環境大臣
【以下、学習会の内容要旨です】
第1部「クマと共存するため、2021年熊森はこれをする!」
日本熊森協会 会長 室谷 悠子
制度をつくるのは環境省、クマの捕獲権限を持っているのは都道府県で、都道府県が権限を市町村に降ろしている場合は、市町村です。
制度を変えるには時間がかかりますし、それだけでは解決しません。都道府県や市町村に、できる限りクマを捕殺をしないように訴えることが重要です。
地元が捕殺をしなくてもクマ問題を解決できるよう、本部・支部をあげて、地元を回り、地元の皆さんと力を合わせて、クマと棲み分け、共存できるように自分たちでもできることを次々と進め、それを全国に広げていきましょう。
第2部「クマを絶滅から救うために環境省に提言したいこと」
日本熊森協会 野生動物保全担当 水見 竜哉
去年、一昨年と、日本のツキノワグマは前代未聞の年5000頭を超える駆除が続き、地域絶滅が起こりうる危機的な状況です。現行のクマガイドラインの内容では、クマ生息数の調整ばかりで、生息地が荒廃し、クマたちの食料が激減している最大の問題にふれていません。(奥山を調査している人はほとんどいないので、このような現実が国民に知られていません。)冷温帯である生息地がクマを養える環境でなければ、いくら捕殺を繰り返してもクマは里に出て来ます。
【奥山がクマを養えなくなっていることを前提に、
できる限り捕殺を抑えるガイドラインに】 1 クマの個体数調整捕殺は行わない。実際の農作物被害や人身事故の恐れを前提とし、限定的にしか捕獲許可を出さない 2 出没≠被害のため、出没しただけでは、捕獲許可を出さない 3 具体的な被害がない中での、長期かつ大量のクマ捕獲罠の設置は認めない 4 誘因物の除去、被害防除、追い払いをまず行う ここに十分な予算をつけること! 5 親子グマ、子グマは原則捕獲禁止 6 捕獲後は、できる限り放獣をする 7 シカやイノシシ罠に錯誤捕獲されたクマが、法に反して大量に殺処分されているが、放獣を徹底させること 錯誤捕獲が生じた場合、有害捕獲へ切り替えてクマを殺処分するのは違法であることを明記 8 錯誤捕獲が生じないように、クマがいる都道府県では、シカ・イノシシ捕獲用檻を、囲いわなかクマスルー檻にする。くくりわなは真円12㎝以下のものしか認めない 9 山の実りが凶作で大量出没した年は、過剰捕獲にならないように特に注意する 10 生息環境の復元、山菜・昆虫・木の実などの食料激減問題の解決が必要なことを明記し、解決策を具体的に進めていく 11 集落の被害防除、棲み分け対策に十分な予算をつけ、徹底すること
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第3部「推定生息数の出し方とその問題点について」
日本福祉大学 教授 山上 俊彦 氏(統計学)
クマが何頭いるのか、正確な数を出すことは不可能ですし、どんなやり方でも誤差は必ずあります。全国の自治体のクマの生息数推定の計算方法を検証していますが、計算過程を非公開としている科学的検証にたえないものや、目撃や捕獲数が増えれば数が増える数理モデルとなって生息数が過剰に推定されていると考えられるものが多くあります。
生息推定数は、それを使う人がどう使うかが大切で、あくまでも推定で、真実はわからないことを前提に使うべきです。どのような指標をもとにどのようなモデルで計算しているのかの外部検証が不可欠です。生息数推定に用いたデータ・モデル式・プログラミングを全て公表すべきです。
【参加者の感想より】
●水源の森確保の提案も: 殺生禁止令が出ていた1200年間の間、日本にはオオカミも棲んでいました。棲み分けは重要ですが、四国では山が荒れて、特に餌のない冬場に谷の水が枯れています。その昔は水があったのでそこに魚や植物資源も少なからずあり、餌場になっていたとも考えられますが、餌場復元と同時に、水源の森確保も同時に提案してください(徳島県Iさん)。
●日本はクマをすぐ捕殺しすぎ: 私は、昨年夏に自宅近くの山の中でクマとばったり遭遇し、引っかかれたり噛まれたりして軽傷を負いました。直近でその近くでコグマを見ましたので、恐らく母グマがコグマを守るために行った行為だったのだと思います。私は、事故当時、クマ鈴などを持たずにいましたので、原因は自分にあるのだと反省しました。役所に報告をしたところ、すぐにクマを捕獲すると言って罠を現場に設置しました。私は、今回の事故の責任はクマではなく自分だから、捕獲しても殺処分しないでほしいと伝えました。しかし、役所はクマを捕まえて殺処分してしまいました。
私は20年前にアメリカから日本に移住してきた者ですが、母国ではこんな簡単にクマを捕獲して殺処分することなんてなかったです。捕まえても山に返していました。日本は、クマなど動物を簡単に駆除しすぎです(群馬県Cさん)。
●絵本などで子どもたちにも伝えたい: 野生動物との共存を子供にも伝えるものとして、絵本や説明文を作家や著作家とタイアップして作るのはどうでしょうか。教科書に載ることがあれば、かなり多くの子供たちに何年にもわたって読まれるので、これからの世代へ考え方のもとになっていくと思います。
●都市に住む人へのアピールを:自分は関係ないと思っている都市住民に、水源の森を守ることを意識してもらえるようなアピールを考えていきたいものです。「水源の森を訪ねる、守る、造る、美しくする、楽しむ」というような方向に発展させていくような活動はどうでしょう。地方の重要な河川、関東なら多摩川上流や丹沢、利根川などの源流にたどり着くような、楽しい企画にするのです。支部は独自にいろいろなことができますが、活動づくりのひとつとして例示したり、他支部のおもしろい源流ツアーを紹介したりするのも、いいかもしれませんね(兵庫県Mさん)。
くまもりの会員数が増えればもっと多くのクマが守れます!
ぜひ、会員に! |
尼崎市公立小学校3年生に、熊森職員になって初めての環境教育 「わたしたちに森は必要か」
わたしは、昨春、環境教育担当として熊森に就職したものの、いきなりコロナで、これまで学校で授業させていただく機会がなく、学校外でくまもり紙芝居をさせていただいたことが少しあっただけでした。
1月14日、遂に初授業の日がやってきました。なんと熊森は、この小学校で20年間連続、環境教育をさせていただいているのです。
兵庫県も今、コロナ第3波のまっただなかですが、何とか例年通りのイベントを子供たちに体験させてあげたいという学校側の意向で、コロナ対策を強化しながらの環境教育となりました。例年は、1、3、5年生を1学年ずつ3クラス教室に集めて3時間の授業するのですが、今年は密にならないよう、子供の間を離して、3年生のみ1クラスごとに3回実施です。
まず初めに、自己紹介。
おねえさんが大学4年生の時、研究室にクマが入ってきたのです。こわくなって、クマのことをネットで調べてみて、日本熊森協会を知りました。このことがきっかけで、日本熊森協会に就職し、野生動物や森を守る仕事をしていますと話すと、全員の子供たちの目が私を見ているのを感じました。
次に森の写真を見せて、森はどんなところか発表してもらいました。
明るい、虫がいる、木がいっぱい生えている・・・板書が間に合わないほど次々と子供たちが発言してくれます。
次に、スギの放置人工林の写真を見せて、これも森かな?木がいっぱいあるよというと、子供たちは比較することにより、森とはなにか認識しなおします。
森=いろいろな植物+いろいろな動物+いろいろなび生物
尼崎市には今や森はゼロです。森がどういうものかわかってもらってから、私たちに森は必要かという投げかけをしてみました。
この日は4つの観点を提示して子供たちに考えてもらいました。
時々、ぬいぐるみのツキノワグマの「つっきん」が登場して、情報を提供してくれます。
「昔はね、森にいっぱい食べ物があったんだけど、去年もその前の年も、森のドングリの木が大量に枯れちゃって木の実は実らず、大好きな昆虫もほとんどいなくなっちゃったんだ」
と語ると、子供たちから、一斉に
「どうして」
の疑問が飛び出します。3年生の子供たちにどう説明すればいいのか、一瞬たじろぎました。
「地球温暖化とか酸性雨とかいろいろ言われているけど、まだよくわかりません。どっちにしても人間が原因を作っているようです」フーッ。
ツキノワグマの「つっきん」が、
「ぼくたちおなかがすいてね、食べ物を求めて次々と山から出て行ったんだ。そうしたら、人間が大勢やってきて、みんな鉄砲で撃ち殺しちゃったんだ。ニュースで見たでしょう」
というと、
「かわいそう!」
の声が、子供たちの中から反射的に上がりました。子どもたちにとって、こういうことは理屈ではなく、本能的にかわいそうなのです。
授業も終盤にさしかかりました。
1400万人もの人が毎日水道水を使うのに、どうして琵琶湖の水はなくならないんだろう。実は460 本の川の水が一年中、琵琶湖に注がれています。
滋賀県の全ての川をていねいに熊森スタッフが色塗りした地図を見せると、子供たちはびっくりする前に、
「川はいっぱい分かれてたりするのに何本かわかんない!」という反応。
何のことを言っているのかよくわからなかったので、前に出てきて説明してもらいました。
「(川の)こことかくっついてたり離れてたりしてるよ」と教えてくれる児童
確かにこれはどう数えてるの?と一瞬、私も考えこんでしまいました・・・。
(後で調べたところ、琵琶湖に注ぎ込んでいる川の数というのは、琵琶湖に面している川の本数のみを数えたもので、支流の本数は数えていないとのことでした。)
子どもたちから出る発言は予想外の連続でした・・・
子どもたちの視点はいつも鋭いです。おかげで大変勉強になりました。私も子どもたちのような目で見れたらなぁと思います。
私は初めての授業でドキドキだったのですが、コロナもなんのそのビックリするくらい元気いっぱいな子どもたちに助けられ、なんとか初授業を乗り越えることができました。
3年生だけでもこんなに勉強になったので、他の学年の授業もしてみたくなりました。
コロナの中、子どもたちにすこしでも幅広い体験をと、熊森を呼よんでくださったこの小学校に、心から感謝します。
●熊森協会本部では環境教育部員を募集中!!
これまで、日本熊森協会では、多くの大学生たちが、今、日本で起きている森や野生動物の危機的状況について学び、保育園、幼稚園、小学校に出かけて、後輩たちに環境教育を実施してきました。
学生の皆さん、若者が教える子供たちへの熊森環境教育、学外サークルとして、一緒に取り組みませんか?
関心のある方は、ぜひご応募ください!
電話0798-22-4190
メールconntact@kumamori.org
まだの方急いでください 環境省シカ・イノシシガイドライン改定に対する意見提出、1月12日まで
今春、環境省は、シカやイノシシ、クマ、サルなどの大型野生動物を今後どのように保護管理していくかについて、ガイドラインの改定を行おうとしています。現在、それに向けて、パブリックコメント(意見募集)を募集しています。
全国都道府県保護管理計画は、環境省が策定するガイドラインに基づいて作られますから、今回のガイドラインの改定は大変重要です。
しかし、今回の改訂内容は、これまでと同様で、捕殺することにより野生動物の数をいかに低減させるか一辺倒であり、生態系保全上も人道的にも非常に問題です。このような内容を策定したのは、3年ごとに入れ替わる環境省の担当官ではなく、委員を務める学識経験者たちです。
中央環境審議会自然環境部会 鳥獣の保護及び管理のあり方検討小委員会名簿
(ワイルドライフ・マネジメント派だけで委員を独占しており、これでは改革が期待できません。小泉環境大臣は、委員会にぜひ熊森を入れるべきです。)
我が国は1999年に全国の自然保護団体の猛反対に耳を貸さず、ワイルドライフマネジメント派の大学教授らが提案した西洋思考のワイルドライフ・マネジメント(個体数調整)を導入しました。それ以来、この20年間に膨大な数の野生動物を捕殺してきましたが、殺生を嫌うという日本人の美徳を壊した罪は計り知れなく大きいと思います。また、いつまでたっても捕殺数が減らず大量殺害が続いており、残酷過ぎます。
ワイルドライフ・マネジメントは完全に破たんしているので、生息地を保障する祖先の棲み分け共存法に転換すべきです。そもそも人間が野生動物の生息数を人間が考えた適正数にコントロールしてやるなどという発想自体が全く自然を理解しておらずクレイジーな自然観です。野生動物にも地元の人たちにも、昔の棲み分け共存の方が良かったと思います。棲み分けさえできれば、野生動物など何頭いてもいいのです。
熊森は、大型野生動物の生息数を極限にまで減らして野生動物と人との軋轢をなくすのではなく、棲み分け共存を復活させるための環境づくりを進め、野生動物たちを殺さずに、野生動物たちの命の尊厳を守る計画にしてほしいと願っています。
個体数調整の名の元、殺処分対象となっている野生動物たちには、声をあげる力がありません。声をあげられる私たちが、環境省に声を届けましょう。
野生動物対応として、膨大な予算と人員を要するワイルドライフマネジメントではなく、野生動物たちの生息地を保障する祖先の棲み分け共存法を採用すべしという声をだけでも届けてほしいです。
◆以下、環境省のパブリックコメント募集要項
1、意見募集している内容
(1)第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(ニホンジカ編)改定案(添付資料1)
ガイドライン策定者
岩城 光 千葉県環境生活部自然保護課
梶 光一 東京農工大学農学部 教授
小泉 透 独立行政法人森林総合研究所 研究コーディネータ
坂田 宏志 株式会社 野生鳥獣対策連携センター 取締役
濱崎 伸一郎 株式会社 野生動物保護管理事務所 代表取締役WMO
平田 滋樹 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業研究センター 上級研究員
山根 正伸 神奈川県自然環境保全センター 研究連携課 主任専門員
(2)第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(イノシシ編)改定案(添付資料2)
ガイドライン策定に関わった専門家一覧(50 音順、敬称略)
浅田 正彦 合同会社 AMAC 代表
小寺 祐二 宇都宮大学 雑草と里山の科学教育研究センター准教授
坂田 宏志 株式会社 野生鳥獣対策連携センター 代表取締役
平田 滋樹 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業研究センター 上級研究員
藤井 猛 広島県農林水産局農業技術課 事業調整員
横山 真弓 兵庫県立大学自然・環境科学研究所 教授
クリックすると、内容を見れます。
クマは、このあとになるそうです。
2、意見のお送り方法、お送り先
○ 郵送の場合
〒100-8975 東京都千代田区霞が関1丁目2番2号
環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室 宛て
○ FAX の場合
FAX 番号:03-3581-7090
○ 電子メールの場合
電子メールアドレス:shizen-choju@env.go.jp
3、期日
令和2年12月14日(月)~令和3年1月12日(火)17:00まで
※郵送の場合は同日消印有効
※詳細は、意見募集要項 環境省HP(クリック)より
パブリックコメントを書かれる方は、以下の熊森の意見・提案をご参考にしてください。
<熊森のコメント>
1、錯誤捕獲を減らすために以下のことを徹底してほしい(p32② クマ類、カモシカ及びその他哺乳類の錯誤捕獲)
①例えば標高800m以上の奥山には捕獲罠を一切設置しないなど、野生動物のコア生息域に罠を設置することを厳禁する。
②シカ・イノシシ罠にクマなどが錯誤捕獲されないように、糠などのツキノワグマを強力に誘因する誘因物を使用しない、くくり罠の輪の直径は真円12cm以下を徹底させるなど、様々な処置を施すこと。もし、錯誤捕獲が発生した場合は、放獣を徹底させるとともに、今後、その場所に罠を設置しないようにすること。
2、シカの生息地を確保すべき。(p41-42上段「(9)生息地の保護及び整備に関する事項)
シカは本来、草原や湿原の動物だったが、戦後、ほとんどの生息地を宅地や農地に転用され、生息地を失ってしまった。四国や九州、西日本などは山全体が放置人工林に覆われ、今や林内に下層植生がない。この様な状態では、シカは残された僅かな自然林の下草か里の農作物に依存しなければ生きられなくなっている。放置された人工林を伐採して草原や湿原を再生したり、使われなくなったゴルフ場やスキー場をシカの保護区とするなど、安心して棲める生息地を人間の責任でシカたちに保障してやるべきである。
3、被害防除対策主軸の保護管理計画にすべき(p42-43「(10) 被害防除対策に関する事項)
シカの被害が深刻な地区は年間100頭から200頭のシカを捕殺している。このような場所で考えてみると、シカの有害駆除にかかる費用は、シカの有害駆除費の相場である15000円/1頭で計算すると、年間:150万~300万円である。
しかし、シカ防除のために1kmのワイヤーメッシュ柵を作るのに、工事費1000万円くらいが相場。ワイヤーメッシュは対応年数が10~15年ほどといわれているので、長期で見てみると、以下のようになる。
(10~15年のスパンの場合)
有害捕殺費:1500万~4500万円
金網柵設置保全費:1000万~1200万円(この期間の補修代などを考慮)
兵庫県シカ管理計画(資料編 平成29年3月)では、ワイヤーメッシュ柵設置による集落、田畑全体を囲う被害防除対策後の評価を各地区の農会にアンケートした結果、実に80%以上の地区で被害減少の高評価を得ている。
尚、シカの捕獲数もそうした地域では年間数頭にとどまっている。捕獲ではなく被害防除対策に重点を置く方が、長期的にみると個体数調整よりもローコストで確実に被害減少できる結果が出ている。
野生動物を殺さずに被害防除で野生動物に対応するやり方は、そもそもわが国が明治になるまで1200年間貫いてきた「殺生禁止令」の中で発案された「シシ垣」のアイデアである。野生動物との棲み分け・共存・被害対策は、野生動物を殺すことによって人間が決めた適正頭数に低減させ続ける西洋流のワイルドライフ・マネジメントを導入するのではなく、私たちの祖先が野生動物たちに生息地を保障して棲み分けてうまく共存してきた非捕殺対応こそを踏襲すべきである。以上。
コンコンさまにさしあげそうろう
(絵本「コンコンさまにさしあげそうろう」から)
何日も何日も雪がふりつづいて、山も畑もまっしろです。
「かあさん、さむいよう、おなかがすいたよう」
ふるえる子ギツネをのこし、
母ギツネは食べものをさがしにそとに出ました。
そのとき、おいなりさんの森から、
「チーン、チーン、ドン、ドン」と、
かねとたいこの音が聞こえてきました。
・
かねとたいこの音は、山に餌のない一番寒い大寒の晩に行われる野施業の音で、「こんこんさまにさしあげそうろう」と言いながら、村人みんなで野の者たちに与える食料を持って雪山に入る行事です。
子供たちはさんだわらに、キツネの好きなあずきめしとあぶらげとかわじゃこをのせて、あちこちに置いてまわります。
餌のない時期の野の者たちを人間が思いやると共に、彼らが人間の所に来なくていいようにする知恵でもあるのです。
・
作者の森はなさんは1909年、兵庫県但馬地方の和田山というところで生まれました。
32年間、小学校の先生を務めた後、作家に。知的障害を持つ心優しい男の子を、村人みんなで守り育てた代表作「じろはったん」はとても有名です。
但馬地方の人々のやさしさが、胸に温かく伝わってきます。人間ていいな、人間が好きになってくるお話です。
野施業: 寒中に餌をさがすことのできない野の狸や狐などの鳥獣に餌を施すこと。近畿一帯から山口県にかけての地方で広く行なわれてきた行事。
この絵本を読んだ人の感想(ネットから)
「のせぎょう」という、えさが最も乏しくなる大寒の夜に、キツネやタヌキなどの山に住む動物に食べるものを施し、動物達が村の鶏を盗むなどの悪さをしないよう考えられた昔からの年中行事を題材にした本です。
何日も雪が降り続いて、食べ物が底をついたキツネの母と子。寒くてお腹がすいた子ギツネは、泣きながらお母さんキツネの胸の中で眠ってしまいます。母親にとって、これほど辛いことはないと思います。母ギツネは村の鳥小屋を襲おうと決心しますが、犬にほえられて断念。池も凍っていて魚も取れない。諦めて母ギツネが穴に戻って見たのは、枯れ葉をくわえ、泣いて眠ってしまった子ギツネの姿。切なすぎます…。
でも、そんな時、村はずれのお稲荷様から、「こんこんさまにさしあげそうろう」という子供達の声が聞こえてきます。丁度、のせぎょうの日だったのです。母ギツネは「ありがたい」とお稲荷様に手を合わせ、お供え物のあずきめし、あぶらあげ、かわじゃこを持って帰り、子ギツネに食べさせます。母ギツネの目に涙が一杯たまります。私も涙が出てしまいました。
この本を読んで、最近、民家まで下りてきて畑を荒らし、射殺されるクマ、捕獲される鹿や猿などを思い出しました。昔の人達は、動物達の生を尊重することが自分達の生活を守ることだと判っていたので、こういった行事をしていたのでしょう。
今、地球温暖化、樹木の伐採など、彼らのえさを取り上げているのは私達人間。自然、野生の動物、人間がどう共存していくのか、改めて考えさせられる一冊でした。(東京都40代ママ 2010年)
熊森から
子供を巻き込んでの昔からの野施業は、山に住む動物たちと人間との共存方法を、現地での実践を通して子々孫々に体得させていくすばらしい環境教育です。
私たちは今一度、クマ、サル、シカ、イノシシ、明治になった時にはこの国にまだオオカミも残っていましたが、このような大型野生動物たちを一種もほろばさなかった奇跡の日本文明の元となる、祖先の動物観や自然観に学ぶべきだと思います。西洋文明と違って、私たちの祖先はこうやって、人間も動物たちも、みんな一緒にこの国で暮らしてきたのです。
西日本で生まれ育ってきた私たちには、飢えに耐えかねて山から次々と出て来るクマたちを今のように皆殺しにするのではなく、都会の公園で集めたドングリを獣道に運んでやって、山から出てこなくてもいいようにし、人身事故が起きたりクマが射殺されたりしないようにする緊急避難措置の「どんぐり運び」に、何の違和感もありません。
もちろん、私たちが熊森が23年間全力を注いできたのは、クマ問題の根治療法である奥山での広葉樹林再生と里山でのクマ止め林造り、すなわち、棲み分け再現事業であることはいうまでもありません。