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島根県浜田市 いとも簡単に連続2頭の若グマ捕殺 メディア報道にも大問題 熊森本部厳重抗議

浜田市内ではこの2週間余りで、JR下府駅周辺や石見海浜公園、それに県立大学周辺などの広い範囲でクマの目撃が23件相次いでいたそうです。
警察などがパトロールを強化する一方、石見海浜公園を一部を立ち入り禁止にして、捕獲おり2基を設置していたところ、

①5月30日に体長1メートル13センチ、体重36キロで2歳から3歳のオスがかかり、直ちに殺処分されました。

 

テレビニュースから

 

親から離れたばかりの若グマです。殺処分が速すぎて、熊森が放獣してくださいの声を挙げる暇もありませんでした。

 

この件に関するマスコミの報道のひどさには、絶句です。

 

テレビニュースでは、檻にかかったクマに記者が近づき、「カメラに向かって、威嚇してきました!」と、それが重大問題であるかのように伝えていました。クマがどんなに狂暴であるか人々に伝わるようにしたら面白いニュースになると思ったのでしょうか。

罠にかかってしまい、人間に殺されるのではと恐怖でいっぱいになっているクマに人が近づいたら、クマは人間を必死で追い払おうとします。クマの行為は、当然です。こんなことすらわからない記者さんがおられるのでしょうか。

クマが捕殺された後、「捕まって一安心です。良かった」と、いうようなコメントをばかりを取り上げていました。

他生物との共存本能を失っていない子どもたちは、このニュースを見たらショックで胸がつぶれただろうと思います。

 

捕まえるのは仕方がないとしても、相手は、まだこの世に生まれて2~3年しかたっていない、何もわからない若グマです。

このクマがやったことは、公園にたくさん実るサクラの実を食べに来たことだけです。

殺してしまうのではなく、山へ逃がしてやろうという声は、島根県民から起きなかったのでしょうか。

信じられないほど一方的なニュースでした。

記者の不勉強には、あきれるばかりです。

 

 

目撃数が多いことから、クマは他にもいるのではないかということだったので、熊森本部としては、次回クマが捕獲されたら、今度は山に放獣してやってくださいとお願いしようと思いました。

6月5日、行政の連絡先をネットで探し始めたところ、体長130センチメートル、年齢は5歳か6歳、体重45キロのオスの若グマが、浜田市国分町の住宅の近くに仕掛けたおりにかかったので、すぐに殺処分したという新しいニュースが入っていました。またしても、罠にかかるのと殺処分が同時なので、声を挙げる時間がありませんでした。

 

今、日本国は、一部の研究者たちが広めた、「大切なのは人間の命だけ」という、とんでもない誤った思想に覆われてしまっています。

西中国山地のクマは、環境省が絶滅の恐れがある地域個体群に指定しており、島根県の保護動物でもあるのです。これまで島根県は、日本一のクマの保護先進県として名をとどろかせてきました。罠にかかったクマの放獣体制も整備されています。殺さなくてもいい命を殺すのは、犯罪だと思います。

 

いったいどういうことなのか、石見海浜公園の管理責任者に電話をしてみました。

 

責任者によると、自分たちはこの件にノータッチで、自分たちが殺処分してくれと言った訳ではないということです。次回からは、山に逃がしてやってくれるよう県に頼んでほしいとお願いしておきました。

 

次に、浜田市の農林振興課に電話をすると、自分たちは捕獲申請はしたが、捕獲されたクマを殺処分してほしいとも、山に逃がしてやってくれとも、何も言っていない。全て、権限は県にあり、県が決めたということです。

そうかもしれませんが、若いクマが、人間の恐ろしさも知らずに、桜の木の実や住宅のビワの実を食べたからと言って、即死刑は行き過ぎです。県にクマをどうするかの権限があったとしても、市の職員として、山に逃がしてやってくださいとお願いはできたはずです。ここでも、次回は、人間としての倫理観から、山に逃がしてやったらどうかと県に頼んでほしいと、お願いをしておきました。

 

最後に、島根県庁の鳥獣対策室の担当者に電話しました。今回クマが出た場所は、人が多く訪れる場所で、島根県ツキノワグマ保護計画のゾーニングでは、クマ排除地域だったということです。それはわかりますが、それと捕獲後殺処分するのとはつながりません。島根県は放獣技術を持っているのですから、次回から、放獣してやってほしいとお願いしておきましたが、なんだか歯切れの悪い対応でした。どうされたのでしょうか?

 

電話を切ってから、みんながクマという動物をあまりにも悪く誤解し過ぎていることに気づきました。さっそく、石見海浜公園と浜田市に、くま森小冊子「クマともりとひと」を郵送しておきました。人々が、野生動物に共感を持てなくなり、害獣としか見なくなったのは何故だろうと思うと、やはり、メディアの報道姿勢に問題があるからだと思いました。あす以降は、メディアの記者たちにも、アタックしてみようと思います。くま森小冊子「クマともりとひと」を読んでいただければ、クマがどんな動物か、クマたちが棲んでいた山を、人間がいかに破壊し続けてきたかが、短時間でだいたい伝わると思います。

 

クマを初めとする野生動物の本当の姿や、彼らが置かれている悲惨な状況を知っていただくために、行政やマスコミのみなさんを筆頭に、くま森小冊子「クマともりとひと」を、生涯をかけて、全財産をつぎ込んで、全国民に配布して回りたいです。心ある皆さん、ご協力ください。

野生動物たちの存在意義を知ることは、とりもなおさず、私たち人類が、この地球上で生き残る道なのです。(完)

 

p.s 島根県のクマと森の状況をお知りになりたい方には、日本熊森協会発行の、田中幾太郎著「西中国山地からクマを失うことの意味」500円(送料別)をおすすめします。

益田市在住の田中先生は、幼少の頃より、猟師だったおじい様と、中国山地を駆け巡られてきた方で、「中国山地の主」と、呼ばれています。

地元の方々に、中国山地の生き証人の声を、ぜひ聞いていただきたいです。

 

お奨め本

国有林管理経営法改正、参院農林水産委で可決 

 付帯決議に「広葉樹林化」の言葉が入る

 

上記法案は、5月22日から週2日ペースで5日間、計約13時間30分にわたるに参議院での審議を終え、本日2019年6月4日に農林水産委員会で採択されました。明日本会議でも採択の予定。

日本熊森協会は、国有林でこそ、天然林化を率先して進めてほしいと訴えていました。

参議院農林水産委員かでの採決の際、附帯決議で、

「木材の安定供給・造林・保育・間伐等の施業の効率化、森林の有する多面的機能を持続的に発揮していくために必要不可欠な路網整備、鳥獣被害対策、立地条件等に応じた広葉樹林化及び針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するとともに、所要の予算を確保すること」(第10項)

という条項がつき、衆議院の附帯決議では入っておらず、私たちが求めていた「広葉樹林化」という文言が入りました!

みなさん本当にありがとうございました。

 

その他にも、附帯決議の前文で「昨今、頻発している自然災害への対応や、地球温暖化防止に対する国民の強い関心等も踏まえ、国有林野の有する公益的機能は、より一層十全に発揮されることが求められている」と指摘し、「生物多様性の保全や災害防止等の森林の公益的機能を重視した管理経営を一層推進していくこと」(第1項)、企業に長期に亘る大面積の伐採権を与える「樹木採取権」の指定にあたっては、国有林の「公益的機能の維持増進に悪影響を及ぼさないよう、森林の特性に応じたゾーニングを踏まえ、樹木採取区の指定を行うこと」(第4項)といった、災害防止、水源保全、野生動物たちの生息地としての国有林の役割を重視し、大規模な伐採が、こういった機能を阻害しないように求める条項が入りました。

 

この間、インターネットで審議の様子を見続けているうちに、吉川農林水産大臣や牧元林野庁長官をはじめ、質問に立ってくださった国会議員の方々、表には出ないけれど、裏で一生懸命質疑応答を支えられたみなさんに、すっかり親近感を抱くようになりました。心からご苦労様でしたと、今は労をねぎらって差し上げたい気持ちでいっぱいです。

 

国会審議を見ていて、国会議員は大変だなあとつくづく思いました。これだけ専門性の高い議論を人前できちんとした言葉で短い時間内に語ろうと思ったら、特別高い知性と猛勉強が必要です。改めて、なんだか、国会議員のみなさんが、すごく偉く思えてきました。

 

どの意見もそれなりに一理あります。議員のみなさんが自由に発言されているのを見ていると、日本はやはりいい国だなあと思わざるを得ません。政治はここまで進歩したのですね。

 

本当は、5月中に採決してしまう予定だったようですが、日本熊森協会、自伐型林業推進協会、東京パルシステムなどが、この法案に対して声を挙げたためか、理事のみなさん(堂故委員長、上月議員、田名部議員、紙議員)の叡智で審議日程が1日加算されたようです。超多忙な国会なのに、国民としては感謝です。うれしいです。

 

団体の要望

●日本熊森協会

国有林内の人工林は232万ヘクタール。一方、戦後の拡大造林政策によって皆伐された奥山原生林の面積は628万ヘクタール。自然保護団体である日本熊森協会としては、豊かな森を造るクマなどの大型野生動物が棲める水源の森を取り戻したいので、国がこの度、民間企業に頼んで国有林内の人工林を皆伐するのであれば、伐採跡地にはまたスギやヒノキを植えるのではなく、原則として、植えない森造りで全てを天然林に戻してもらいたいと願っています。

広葉樹林化及び針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するという言葉が付帯決議に入ったことは、室谷悠子会長らによるロビー活動の成果だと思います。

 

●自伐型林業推進協会

皆伐と再造林のサイクルでは一時的な収益確保にしかならず、不足している林業人材の育成は極めて困難である。大規模山林分散型の多間伐林業を推進すべきである。(熊森も全く同感です)

 

これはおもしろい、読み応え十分、一気に読破 林将之著「葉っぱはなぜこんな形なのか?」

図鑑分野でベストセラーとなった「葉で見分ける樹木」など、樹木図鑑を次々と世に出される一方、今や講演など各方面で大活躍されている日本熊森協会顧問でもある林将之先生(1976年山口県生まれ)が、上記名の初エッセイ集を5月に講談社から出されました。

 

「葉で見分ける樹木」図鑑は大変優れもので、熊森本部スタッフたちも山行き時に必携となっていますが、今回の、「葉っぱはなぜこんな形なのか?」の内容に関しては、中身が予測できず、日本熊森協会本部に送られてきたものを、とりあえず読んでみることにしました。

葉っぱはなぜこんな形なのか? 植物の生きる戦略と森の生態系を考える

表紙の葉っぱの絵の中に、クマとシカの小さな絵が入っています。なぜかな?読んでみてのお楽しみ。

 

感想の前に、まずこの本で、林将之先生が24歳の2000年に「このきなんのき」という樹木鑑定サイトを主管して立ち上げておられることを知りましたのでご紹介しておきたいと思います。樹木の写真を送って名前を尋ねると、先生をはじめ、いろいろな市民ボランティアがかかわって、無料ですぐに名前を教えてもらえるのです。すばらしい市民サービスですね。

さっそくサイト内をのぞいてみました。大変利用しやすくなっています。こんなサイトを作ってくださっていたのか。林先生らしいなあと思いました。みなさんも大いに利用してください。

 

さて、この本の感想ですが、私たち熊森はこれまで最高の研究者についてもらって、ずいぶんいろんな樹木について勉強してきましたが、この樹木の葉っぱが、なぜ不分裂葉、なぜ分裂葉、なぜ全縁、なぜ鋸歯縁、なぜ単葉、なぜ羽状複葉など1回も考えてみたことがありませんでしたので、大変新鮮でおもしろかったです。

 

知識偏重の世の中ですが、先生が言われるように、自然界はわからないことだらけだけれど、まず、固定観念なしに自分で考えてみるという姿勢が、とても大切だと思うようになりました。先生は、本書に書いたことは筆者の知識を基にした主観であり、科学的な根拠をしっかり確かめた訳ではないと断られています。もちろん集めた葉っぱの枚数は10万枚に上るということで、膨大なデータがバックにあってのこと。単なる無責任な思い付きではありません。

 

どうしてこの本が楽しいのかというと、指導教官の顔色や所属学会の評判、他人の指摘やバッシングなど気にしてカチカチにならざるを得ない学問の世界の中で、林先生がそのようなことを一切気にせずに全く自由に考え自由に発言されているからだと思います。先生の中に強さや自信があってのことでしょうが、本来学問はこのように自由に意見交換されるべきものだろうと改めて思いました。論文ではなくエッセイなら思い付きでいいのだと思いました。一読者として、先生と一緒になって考えながら読み進められました。もちろん、読み終わってから、樹木の葉っぱを見る目が変わってきたのは言うまでもありません。世界がまた新しく大きくなりました。

 

林先生ありがとうございましたと終わりたいところですが、実はこの本、題名からはわかりませんが、約5分の2のページが、クマ、シカ、オオカミの問題や自然と人間の関係について述べられているのです。先生の知見がどんどん広く大きくなっていっておられるのを感じます。ここでも先生は、この本は、論文でもなければ知識を紹介する本でもなく、僕の考えを紹介するエッセイと断って、これまた林先生の自由闊達な所見が述べられているのです。ふーん、そのような考え方もあるのかと、妙に感心したり影響を受けたりしてしまいます。自然界のことは、神のみぞ知るの世界なので、神でない私たち人間としては、全く普通の一市民として、正直に思うまま自由な議論を気楽に出し合えばいいのだと林先生の初エッセイ集から教わりました。林先生のさわやかで正直な人間性が伝わってくるエッセイ集でもありました。今回の出版を心からお祝い申し上げます。

 

今後、日本熊森協会としては、林先生の講演会を企画していきたいですし、その時には、この楽しくしかも考えさせられる本をたくさん仕入れて、おすすめ本として販売しようと思いました。

 

 

 

 

参議院で「国有林の天然林化」を訴える その2

天然林化が具体的に実行される施策を!

現在、参議院で審議中の、国有林管理経営法の一部を改正する法案。

私たちは、国有林こそ、民有林のお手本となるように、率先して、天然林化を進めてほしいと訴えています。

5月29日、室谷会長は、参議院の農林水産委員会委員の小川勝也議員にお会いしました。

室谷悠子会長(左)と、小川勝也議員(右)

もう20年も前のことになりますが、小川勝也議員は、野生動物の個体数調整を導入し、現在の野生動物の大量捕殺の道筋をつくることになった1999年の鳥獣保護法改正に、熊森も他の自然保護団体も大反対をしたときに、私たちの声を代弁してくださいました。鳥獣保護法改正時は、室谷会長は大学生だったことをお伝えすると、「あの時は、国会が止まったもんねぇ」と懐かしそうにおっしゃられました。

当時から、環境や自然に対し、熱意溢れる議員でしたが、その後、民主党政権時代の農山漁村地域活性化担当の内閣総理大臣補佐官や参議院農林水産委員長などを務められ、熱意はそのままに、森林や林業に対する知見も深めておられ、「何倍もパワーアップ」されているように感じました。

1999年当時は、会員数300人しかいなかった日本熊森協会が、その後、各地で「天然林化」「広葉樹林化」に取り組み、どのようにすれば放置人工林を野生動物たちが棲める天然林に戻していけるか、わかってきたことを実践例としてお伝えすると、たいへん喜んでくださり、林業に適さないような場所を天然林化するための技術や知見を集め、実行する仕組みをつくることがとても重要だとおっしゃられました。

参議院農林水産委員会で、熊森作成の資料を基に質問される小川議員

 

5月30日、小川勝也議員が農林水産委員会での質問で、国有林でも公益的機能を重視し、災害に強い国有林、広葉樹や混交林をつくることが重要で、林野庁の方針が計画だけに終わらず、山が険しく機械が入りにくい場所や急斜面、条件が悪いところでも、しっかりと天然林化を進めていくのかと林野庁に質問をしてくださいました。

林野庁は、人工林の伐採跡地で、天然更新を促すなどしていく、森林整備事業も使って進めていくと答弁しました。

小川議員の指摘のとおり、実際に天然林化が進むかどうかが一番重要です。国有林で、天然林化が実際に進むよう、私たちも今後の動きを注視し、国会や林野庁へ声を届け続けなければなりません。

 

国有林管理経営法案の参議院での審議もいよいよ大詰めです。

石川県羽咋市・宝達志水町で4日間目撃され続けている子グマ、両行政は、捕獲後山へ放獣の方針

5月27日あたりから、石川県羽咋(はくい)市や宝達志水(ほうだつしみず)町で、目撃され続けている子グマがいます。この子グマが、川を泳いだり水田の畦を走ったりして捕獲隊から逃げる様子が、テレビでも放映されています。

 

日テレニュース24、2019年5月29日より

29日午前7時に目撃された子グマ(クリックすると動画再生)

 

石川県ツキノワグマ管理計画では、市街地や田畑をクマ排除地域と決めており、ここに出てきたクマは「全て殺処分」することになっています。(熊森は、やりすぎだと思う)

何とか命を助けてやってもらいたくて、日本熊森協会本部は羽咋市の担当者に電話をしました。

 

担当者:

このクマは、親離れをして間もないクマのようで、単独で行動しています。川や繁みを伝って山から出てきたのではないかと思われます。昨日29日には、田んぼの畦や市街地近くの川を泳いでいるのを目撃され、市や警察、消防が駆けつけました。現在は羽咋市内での目撃も落ち着いていますので、パトロールも一旦やめました。看板設置や防災無線での呼びかけもしました。基本的に山に戻ってもらえるように見守る方針です。捕獲罠は3基設置しています。

私たちも子グマまでは殺処分したくはないので、もし捕獲されたら麻酔をかけて山に放獣する予定です。

 

熊森から

この子グマのことを心配してくださっている全国のみなさん、ご安心ください。行政担当者も、子グマまでは殺処分しようと思っていないようでした。日本熊森協会石川県支部も行政に電話をし、もし捕獲されたら山に返すよう頼んでくださっていました。支部のみなさん、ありがとうございます。

テレビニュースでは、人間たちがみんなで子グマを追いかけまわしていました。子グマは恐怖心でいっぱいになっていると思います。この様な対応は、クマによる人身事故を誘発します。クマが人間の生活場所に出て来た時は、クマもとまどっています。人間側が冷静になって、そっと見守ることが大切です。クマは自分から山に帰っていきます。親から離れたばかりの若グマは、どこが危険でどこが安全か、今、学んでいるのです。なんとかクマを刺激せず、見守ってやってください。

 

 

 

 

祝 環境新聞5月29日号に、室谷悠子会長の寄稿文が大きく掲載されました!

今年3月、森林環境税・森林環境贈与税法の件で国会回りをしているときに、室谷会長らで環境新聞社を訪れ、お話を1時間聞いていただきました。

当協会が、22年間、奥山の天然林化に取り組んでいることを話すと、大変興味を持ってくださり、ぜひ記事にしたいと言っていただきました。

以下は、室谷会長が寄稿した記事が掲載された環境新聞です。

みなさんもぜひ読んでみてください。

 

クリック後、拡大してお読みください。

 

大阪の法人会員である豫洲短板産業株式会社のみなさんが、保護飼育中のクマ「とよ君」を訪問

5月26日(日)、日本熊森協会を長年応援してくださっている豫洲短板産業株式会社の森社長と大阪本社社員から8名、ベトナム支社のベトナム人研修生16人の計25名が、高代寺山をハイキング。その途中、とよ君を訪れてくださいました。

この日、とよ君はとてもフレンドリーで、お腹がすいていたのか旺盛な食欲でエサを食べていました。

 

すっかり人間にフレンドリーになった元野生グマ「とよ君」

 

ベトナム人研修生たちからは、

「クマは何を食べますか」→「果物やドングリです」

「肉は食べますか」→「魚は少し食べますが、肉は食べません」

「体長と体重はどれくらいですか」→「体長は132cmくらい、体重は推定100kgくらいです」

などの質問が出ました。

逆に日本熊森協会本部スタッフが、

「ベトナムにクマはいますか」

と尋ねたところ、

「マレーグマもツキノワグマも非常に数が減っていて、動物園でしか見たことがない」という返事でした。

 

獣舎前で記念撮影

 

豫洲短板産業株式会社は、ステンレス鋼板を取り扱う会社で、これまで、とよ君の水飲み容器やエサ入れの引き出し、フンを分解するコンポストなどにステンレス材料を提供してくださっています。

 

冬ごもり中に、とよ君がエサ入れのステンレス製引き出しにおしっこを何回かためていたことから、クマは冬ごもり中に排泄を一切しないという通説が間違っていたことが分かった話は、今年3月のブログに書きました。

森社長さんは、「これが例のとよ君が冬ごもり中トイレにしていた引き出しですか」と、豫洲短板製ステンレス引き出しに見入っておられました。

 

みなさんとても楽しかったようで、また来たいと言ってくださいました。

ぜひ、また来てください。

この日、クマファンが新たに多数誕生しました。良かったです。

 

四国クマ生息地ツアー参加者唖然 徳島県の奥山にクマの生息環境なし 天然林までもが大崩壊 

2019年5月26日、日本熊森協会は、人工林率63%の徳島県のクマ生息地を見に行くツアーを組みました。

午前9時、徳島県那賀町の四季美谷温泉(標高400m)に集合。

 

四季美谷温泉駐車場。この谷の奥が剣山。

 

うれしいことに、徳島新聞のツアーお知らせ記事を読んで7名の方が、外部から参加してくださいました。

熊森協会からは、会長、名誉会長、本部職員2名以外に、赤松正雄顧問、元徳島県木頭村村長の藤田恵顧問をはじめ、徳島県・高知県・愛媛県の熊森会員が参加、その他那賀町の知人たちも参加してくださり、総勢35名のツアーとなりました。

 

一車線の剣山スーパー林道を車で走り、四国第二峰の剣山(1955m徳島県)をめざします。

剣山スーパー林道は9割が舗装されており、地道の1割も平らに整備されていました。

徳島県は、こんな山奥にまでと、信じられないぐらい人工林が多い県です。

崩れている人工林もありました。

 

上の人工林が崩れている

 

標高1200mまで来たところで、剣山が見えてきました。

待望の針広混交林が現れました。広葉樹はブナやミズナラなど、針葉樹はシコクシラベ(シラビソの変種)やモミなどです。

 

標高1500mの奥槍戸山の家に到着。車はここまでです。

藤田顧問が怒りを込めて語られました。

石の上に立って語る藤田顧問

 

「ここは、クマが高密度に住んでいた地域で、かつて直径1メートルを超すブナやミズナラの巨木の原生林だったんです。50年ほど前に、戦後の拡大造林政策で、ここから見える全ての山々の木が、尾根まで二束三文のパルプのために皆伐されました。伐採後、スギを植えたけれど、山が崩れたりして根付きませんでした。山の保水力が失われ、川の水量も川魚の種類や数も激減してしまいました。とんでもないことになってしまったのです。放置していたら、そのうち今のように一見、針広混交林に一部は戻りました。しかし、全て2次林であり、原生林ではありません。細い木ばかりです。内部には下層植生がありません。とうとう森に戻らなかったところもあります。奥山は急斜面な上、土壌も脆弱で、気候条件も悪い。何千年何万年と気が遠くなるような長い年月をかけて形成されてきた原生林をいったん伐ってしまうと、もう元の森には戻らない。全て元凶は拡大造林政策です。」

 

 

昼食後、徳島の方が、かつての天然林がわずかに残っており、クマの冬眠穴もあったと言われる山に、みんなで入って行きました。山の中に入ってびっくりしました。シカのお口が届くところまで、緑が全くありません。ブナ、ダケカンバ、ツツジ、ヒメシャラ等の木はところどころに残っているのですが、下層植生がほとんど何もないのです。15年前までは、2mを越えるスズタケで一面が覆われていて、やぶ漕ぎをしないと進めなかったそうです。何という変わりようでしょうか。スズタケは完全に消えており、背の低いミヤコザサにとってかわられていました。山全体が乾燥してカサカサです。あちこちで木が枯れています。

 

ディアラインがくっきりと出ている山の中

 

1時間ほど山を登り続けましたが、歩けども歩けども、クマが生息できそうな森もクマの痕跡も皆無です。この山は大崩壊しつつあると感じました。四国の山に詳しい方に聞くと、ここだけではなく、四国では一見、針広混交林のいい森に見える山の中も、今や全てこうなってしまっているということでした。四国の山は元々海底で形成された岩石の山です。雨が降るたびに表土が流れ落ちているようで、岩盤がむき出しになってきていました。たとえ植林しても、もう元の森に戻すことは無理なのではないかと感じました。

 

次郎笈(1930m)の森林限界となっている頂上が見渡せる標高1700mまで登りましたが、かつての原生林は、完全に消えていました。こんな隠れ場所のない山に、怖がりのクマがいるわけありません。今回は、クマの痕跡や巣穴を見ることができると地元の方から聞いて、ツアーを組みましたが、結局、ご参加いただいた皆様にお見せすることができず、申し訳ございませんでした。四国のクマの最後の生息地といわれている剣山周辺までもが、いかにクマが棲めない場所になってしまっていたかが分かりました。

 

四国の奥山は、クマの食糧にならないスギやヒノキの植林で埋め尽くされているだけではなく、残された自然林も大荒廃していることが分かりました。

 

森が消え芝生のようになったミヤコザサの上で最後の記念撮影

 

熊森から

絶望的な、四国のクマの生息地を見てしまいました。5年前に、このあたりの山に来られた方が、1200mより上のササは死んでいなかったと証言されていましたので、ササ枯れが猛スピードで進んだ結果だと思われます。犯人はシカということにされていますが、地球温暖化で昼夜の気温差が大きくなったことも、ササ枯れを引き起こした原因だと言う研究者もおられます。ならば、人間も原因です。

兵庫県でも京都府でも、同様の奥山大荒廃が進んでおり、クマを初めとする野生動物たちは生きられなくなり、奥山を出て、里山に集結しています。里山の植物は、地球温暖化の影響を受けにくいため、里山には豊富な食料があるからです。

私たち人間は、日本の山が、奥山から大崩壊していっていることを知って、かつての保水力豊かな山をどう取り戻すのか、奥山の動物たちの絶滅をどう止めるのか、真剣に考えねばなりません。(完)

5月25日 徳島県美波町、スギ人工林伐採跡地の自然回復状況を視察

2019年5月25日、日本熊森協会本部スタッフ4名と赤松正雄顧問は、美波町にお住いの方を訪れました。

 

この方は、30年前にUターンしてみて、子供の頃あんなにうじゃうじゃいた川や海の生き物が消えたり激減したりしているのにびっくり。

山をスギやヒノキに変えたからだと気づかれたそうです。

日本熊森協会としては、川や海の生き物が消えたのは、「森が消えれば海も死ぬ」(北海道大学松永勝彦教授著)で、スギやヒノキの植林が原因でフルボ酸鉄が山から十分供給されなくなったからだと科学的にも証明されていることを伝えました。

 

この方が、3年前に裏山の人工林を自力で伐採し、放置している場所を見せてくださいました。

 

中央が、伐採跡地

 

徳島の温暖湿潤の気候が、植物の成長に合うのでしょう。結構シカがいるというのに、シカ防除などしなくても、クマイチゴやタラノキなどトゲげのあるものを中心に、みるみる多様な植生が回復してきていました。徳島県はなんと恵まれた県なんだろうと、うらやましくなりました。

お会いした地元議員さんも、「戦後のスギ・ヒノキノの拡大造林は完全に失敗だった。森林環境税を使って、人工林を天然林にもどしたい」と、強く望まれていました。

 

ここは若者も入って地域おこしに取り組んでおり、裏山にアスレチック施設を造るなどいろいろとおもしろいことをされていて、いろんな人たちが訪れているようでした。

この日は、民宿に泊めていただきました。

台風襲来時の雨と風は恐ろしいそうですが、それ以外はとても暮らしやすくていいところだとわかりました。

 

 

 

 

5月24日 元農林水産大臣政務官に面会

「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」について

 

衆議院の審議では、<立地条件等に応じた針広混交林化の多様な森づくりを推進する>という付帯決議を付けていただきました。

 

日本熊森協会としては、もう一歩踏み込んで、国有林内の人工林伐採跡地の広葉樹林化(ベター)又は天然林化(ベスト)を進めてもらえるように訴えています。

なぜなら、自然界では、気候や標高によって、自然状態が広葉樹林であったり、針広混交林であったり、針葉樹林であったりします。よって、熊森のめざす森林を一言で表すには、「天然林化」という言葉が最適なのです。

 

  

広葉樹林         針広混交林           針葉樹林

 

・戦後、皆伐した奥山原生林の面積628万ヘクタール

(民族の大失敗、近い将来水源枯渇の恐れ)

・国有林内の人工林面積232万ヘクタール

・造りすぎたためなどの理由で針広混交林に戻す国内人工林の面積343万ヘクタール(林野庁発表)

→ (熊森の主張)ならば、国有林内の人工林面積から、まず天然林に戻すべき

 

5月23日夕方、自民党農林水産委員会理事の上月良祐議員事務所から、お会いできるという連絡をいただき、森山まり子名誉会長が急遽、上京しました。

 

参議員議員会館

 

上月良祐議員と森山熊森名誉会長

 

上月議員は、茨城県選出で農林水産大臣政務官をされていたことがわかりました。「これから人口も減っていく一方ですから、使わなくなった山や田畑は、自然に戻していけばいいと個人的には思っています。」と、言われました。熊森の主張を誠実に聞いてくださったことに心から感謝します。

記念写真を撮ってもいいですかとお聞きすると、天然林化を訴える熊森の資料をさっと手に持って、これと一緒に撮りましょうと言われ、うれしかったです。

この法案に関する審議時間は少ししかないようですが、引き続き、審議を見守っていきたいと思います。

 

参議院農林水産委員会議員への配布物第2弾

 

①国有林内では林業をせず、天然林にもどす要望書

②植林ではなく植えない森造り(=天然更新)を

 

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