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室谷会長、親子グマが逃げ込んだ秋田の作業小屋を視察、その後、秋田のみなさんと懇談 12月3日

室谷会長は連日、全国を飛び回っており、超多忙。しかし、年内に、何とか秋田県を訪れたいとスケジュールを調整していました。

 

12月3日(日)秋田空港着。この日は雪で、あたり一面すっかり雪景色と化していました。

会員のお迎えが、ありがたかったです。

まず、美郷町の親子グマが逃げ込んだ現場である畳屋さんに行きました。

 

親子グマが逃げ込んだ畳屋さんの作業場

 

ちょうどご家族が外におられたので、お話を伺うことができました。

畳屋さんは、「昔からクマがいる町なのだから別にびっくりもしないが、知らずに戻ってきたら騒ぎになっていて、びっくりした。孫は町の送迎バスで送り迎えだから何も心配していない。しかし、こんなところにまでクマが出て来るのは初めてのこと。たいていは、山の中にとどまり、出てきても山の下までだったから、驚いた」とおっしゃっていました。

 

どのようにして親子グマがここまでやってきたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

親子グマの移動経路をみんなで推察

 

山から続く川ですが、この辺りは護岸ブロックが垂直に積まれ、川面にはアシがびっしり生えていました。子グマを連れた母グマが餌を求め川を下ってきたものの、川から陸へ上がることができなくて、ようやく上がれた場所がこの集落だったのではないかと皆で推察しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

両岸に護岸ブロックが積まれた川

 

この後は、山裾まで行き、クリの木にできたクマ棚を見たり、クマが出てきた場所を数か所視察したりしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪の中のクマ棚

 

最後は、近くの集会所で、秋田の皆さんと話し合いました。

お父様が猟師の方、栗林を再生されている方、秋田に移住して2年目という方、林業をされていた方や農業をされている方など、様々な方がお集まりくださいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会長の話に聞き入っておられた秋田の皆さん

 

参加されていた皆さんも、今年のクマ大量出没について心配されていて、いったい山で何が起きているのか、この状況を何とかしたいとおっしゃっていました。

 

来年になったら、お怪我された方や、被害農家のみなさんを訪れる予定です。

 

クマ問題に27年間取り組んできた自然保護団体として、熊森は秋田の行政や県民の皆さんに精一杯寄り添って、来年からはクマを殺さず、クマと共存できるよう、これまで培ったノウハウを提供していこうと決意しています。(完)

 

熊森本部が秋田県のクマ出没現場と背後の山を顧問研究者と視察② 11月20,21,22日

20日、秋田空港に着くと、秋田県のクマ情報を熊森本部に長年送り続けてくださっている秋田県会員の方が、出迎えてくださいました。会員のみなさんは本当にありがたい存在です。

 

マスコミは、今年の秋田のクマの異常出没は、去年、ブナの実りが良かったため(並作)、メスグマがたくさん子を産んで増え過ぎたからというクマ原因説を報道しています。しかし、過去、ブナが並作どころか豊作の年もありましたが、次の年、今年のような異常出没は起きていません。熊森は、クマが増え過ぎたのではなく、今夏の異常な暑さによって、山の中でありえないような餌不足が発生したことが原因であると考えています。

 

参照  第5次ツキノワグマ管理計画(資料編)

 

まず最初に、今年、集落に初めてクマが出たと本部に電話をくださった秋田県民の方の家を訪れました。とても喜んでくださいました。長年、雄物川の西側(日本海側)に住んでいるが、これまでクマなどいなかった。親子グマが雄物川を泳いで渡ってくるのを見た人がいると言われていました。この日は雄物川の水量が多くて、とても泳いで渡れない感じでした。集落からかなり離れたところで、主原先生がクルミを食べたあとのクマの糞を見つけられました。

 

次に、秋田県庁自然保護課にご挨拶に伺いました。これまで何度も訪れてきた課ですが、しばらく行かない間に、担当者がすっかり新しい方になってしまっていました。

 

この後、今年熊森本部に電話くださった奥羽山脈のふもとで農業を営む秋田県民の方のお計らいで、秋田の鳥獣の専門家を訪れ、長時間お話を聞かせていただくことができました。

 

秋田の海岸近くは風車がとても多くて、慣れない私たちはクラクラしました。このあたりは、植林されたマツの松枯れがものすごかったです。

海沿いは風車でいっぱい

 

夜、奥羽山脈の山沿いの集会場に向かいました。十数名の方が手作りの晩御飯を用意してくださっており、遅い時間まで食べずに私たちが来るのを待っていてくださいました。お茶は、野草茶でした。いただいているものの原料がよくわからなかったのですが、おそらく山里のものだと思います。どれもとてもおいしかったです。

 

食べながら、秋田の皆さんと長時間お話ししました。集まってくださった方々は、今年どうしてこんな大変なことになったのか、とても知りたがっておられました。

 

私たちが接する報道では、秋田県民はクマの大量捕殺に異論なしという感じでしたが、来てみると、人身事故への恐怖はあるものの、空腹に耐えかねて人間のところに出て来ては駆除され続けているクマたちに胸を痛めている方々もそれなりにおられることがわかってきました。しかし、秋田では、行政のすることには声を上げられない雰囲気があるようでした。

 

翌21日、地元の皆さんと秋田の山に入りました。今年、クマに会った時の様子など詳しく話していただきました。山裾のあちこちの栗の木に、クマ棚がびっしりできていました。クリには凶作年がないので、このクリを食べることができたクマたちは冬ごもりに入れるのではないかと思いました。

このあたりの家の横の柿の木には実が鈴なりについていましたが、なぜかクマが来た形跡はありませんでした。(秋田の柿はすべて渋柿、寒いので甘柿は育たない)

知事は、来年、柿と栗を全部切ってしまえと言われているそうですが、栗の木は残しておかないと、クマがさらに下に降りていくと思います。

冷温帯のドングリであるブナやミズナラが弱ってきているのなら、今の温かくなった気温に合わせて、山にクヌギなどのドングリを植えたらどうだろうかと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

クリの木にびっしりできたクマ棚

 

 

 

 

 

 

 

 

クリの木の下にたくさん落ちていたクリの枝。母グマが子グマに落とし与えたか。

 

田んぼや畑も見せていただきました。この辺りは、田畑と山がつながっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマが稲穂を食べていたという現場も見せていただきました。

 

この時期、ブナやミズナラはもう落葉していますから、山の上の方は灰色っぽい樹皮の色です。

黄色に色づいているのはまだ落葉していないコナラです。

秋田に来て、やはり人工林が多いなと思いました。(人工林率50%)

 

 

 

 

 

 

 

 

秋田でもこのあたり人工林は放置されており、林内にはシダ植物ぐらいしかありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

スギの人工林の中

 

最後に、この山の尾根まで登りました。尾根はブナの純林でしたが、どれも木が細かったです。

拡大造林時に山裾から尾根まで雑木林を皆伐して、山の下半分にスギを植林、上半分は放置したのでブナ林に戻ったのだと思います。ブナの幹を丁寧に調べて歩きましたが、クマの爪痕は、古いのも新しいのも皆無でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

尾根の細いブナ林

 

地元の80歳を超えた長老が、山からの湧き水が昔の1割!にまで激減していると言われているそうです。雑木林を伐ってスギを植えたことや、田んぼ整備が原因だそうです。山がどんどん荒れて保水力が失われてきているということは、このあたりに住んでいる方は皆さん知っていることだそうですが、どうしたらいいかというところまでは、いっていないようです。

 

2日目の夜も、秋田市やその他の地域から秋田県民の皆さんが集まってきてくださいました。みなさんは、熊森の話を食いいるように聞いて下さいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

集まってくださった皆さんとの語らい

 

集会後、10名くらいで横手まで行って夕食をとりました。森の再生、人身事故防止、田畑の被害防除etc、個人の活動には限界があります。

里や集落に出てきたクマを山に押し返すには、当面、犬や花火などで脅すことも必要ですが、何と言っても根本解決は秋田の山にクマを養えるだけの餌のある森を再生して、昔のように棲み分けを復活させることが必須です。秋田にも支部を作って活動したいという話をすると、皆さん次々と会員になってくださいました。

 

何とか秋田でも、組織的な活動ができるようにしていきたいです。支部づくりにご協力をいただける方は、ぜひ本部までお知らせください。

 

22日は、横手盆地の西側にある山間部で暮らしておられる方を訪れ、周りの山や秋田での暮らしをじっくり見せていただきました。

 

今回は駆け足でしたが、やはり現地を訪れ、山や田畑を見せてもらって、地元の皆さんと語り合えたことの収穫は大きかったです。

 

最後になりましたが、横手市で泊まったホテルの窓から見た雪をかぶって真っ白になった鳥海山の神々しさが今も頭に焼き付いています。あとで写真に撮ろうと思ったら、雲に覆われてしまい、いい写真が撮れませんでしたが、一応パチリ。

 

 

 

 

 

 

 

 

雲に覆われてしまった、はるかかなた山形・秋田県境の鳥海山

 

クマなどの森の動物と棲み分け共存することは、日本文明を支えてきた水源の森を未来にわたって確保することであり、地球環境面からも精神面からも秋田に住む子供たちをはじめとするすべての人間の幸せにつながると私たちは思います。

 

今後、秋田県各地で集会を持って、クマ問題をどう解決していくか、皆さんの叡智を出し合う機会を作っていきたいです。

 

3日間、秋田の皆さんに大変お世話になりました。心からお礼申し上げます。(完)

 

熊森本部が秋田県のクマ出没現場と背後の山を顧問研究者と視察① 11月20,21,22日

今年の夏の記録的な猛暑も関係していると思われますが、東北地方の今年の山のドングリ(ブナ、ミズナラ、コナラ)の実りは前代未聞の大凶作となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東北地方のブナの実り(林野庁東北森林管理局)

 

 

中でもブナは元々豊凶が激しいのですが、昨年度の並作と打って変わって皆無に近い状況です。(ブナには、よくあることです。秋田では2019年も2021年もブナが大凶作)

 

冬ごもり中の数か月間、飲まず食わずで暮らす生態を持ったクマは、ブナなどのカロリーの高いドングリを食べて、冬ごもり前までにおなかの周りに分厚い脂肪層をため込んでおかないと、生き残れません。柿やリンゴでは命は繋げても冬ごもりはできません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊森本部作成

 

冬ごもり前の食い込み用ドングリが得られない多数のクマが必死になって、里や時には市街地にまで餌を求めて出て来て、過去最多の人身事故が発生しました。もちろん、クマ捕殺数も過去最多となっています。

 

東北地方の山の状況は、山に入り続けている各県の方々から電話でそれなりに情報を得ていましたが、東北6県の中でもクマ生息数が最も多いと思われる秋田県では、11月末現在の人身事故件数69件、クマ捕殺数2000頭以上(秋田県クマ生息推定数4400頭)という最も大変な状況です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クマ目撃情報

秋田県庁 HPから(2023年11月29日現在)

 

これまで熊森本部は2012年に経営破綻した秋田県の八幡平クマ牧場に残された29頭のクマたちの救命に立ち上がったことで、鹿角市や北秋田市の阿仁などを何度も訪れ、マタギの方に秋田の山を案内していただくなど、それなりに秋田の山のクマの餌事情を見てきました。

 

しかし、近年、まして今年の史上最大のクマと人の異常事態には、ただただ驚くばかりで、何とかできないかとやきもきしてきました。残念ながら、秋田県にはまだ支部がないので、新潟県支部長が10月4日、朝帰りが遅れ人に早朝見つかって作業小屋に逃げ込んだ秋田県美郷町の親子グマの救命に駆けつけた以外、実践活動ができていませんでした。

 

事務所が連日パンク状態のため遅くなったのですが、やむにやまれぬ思いで、熊森本部は11月20日21日22日の3日間、森山名誉会長、職員の吉井で秋田県を訪れました。本部クマ担当の職員たちは、近場のクマによる人身事故防止対策などに連日走り回っており、「気持ちは秋田ですが、残念ながら今は秋田までは無理です!」という悲鳴状況でした。

 

今回、数十年間全国各地の山を歩かれ、現場で研究されてきた森林生態学者の主原憲司先生にご同行いただきました。秋田の地元の皆さんのご尽力で、3日間びっしりつまった現地視察を、次に簡単にご報告させていただきます。

 

 

熊森は奥山水源の森の保全・再生活動に取り組んでいる実践自然保護団体です 

マスコミのみなさん、この国を救うために、どうか勇気を出して日本熊森協会を取材してください。

 

どうして近年、クマがこんなに山から多数出て来るのか、自然界のことは、地域差も大きく、調べても調べても人間にはわからないことだらけなのですが、私たちは長年クマ生息地の山を歩き続けて調べてきた稀な者として、記者さんたちが知っておかねばならないことを、全て語ります。当協会の顧問研究者は、北海道を除く全国のクマ生息地を歩いて動植物を調査し続けて63年になります。

 

目撃数が増えたなどの現象を見て、クマ数が増えたと思う人たちもいます。地域によって様々ですが、しかし、クマ本来の生息地である奥山が人間活動によって荒廃し続け餌がなくなっている場所で、クマ数が増えたりするのでしょうか。山形県の深山ガイドに聞くと、今年、本来のクマ生息地はクマの姿どころか糞さえないと言われていました。彼は、クマが増えているというマスコミ報道について、あり得ないと思うと言われています。マスコミはこんな声も取り上げてほしいです。

 

 

熊森は全国を飛び回っている会長以下、全理事が無報酬で活動しています。

だから、利権ゼロの会です。

これだけでもすごい会だと思われませんか。

私たちは、真実を語ります。

 

また、国から1円ももらわずに27年間、会員の会費と寄付だけで会を運営してきた完全民間団体でもあります。

だから、自分たちの徹底した現地調査に基づいて、国の政策に対してもなんの遠慮もなく、正義感と良心だけで、こうしたらどうでしょうかと提案できるのです。研究費や活動費欲しさに、国に迎合したり、真実を語らなかったりしたことなど、一度もありません。きちんとした政策提言型団体です。

 

1992年1月のことです。私たちは、残り60頭絶滅寸前と言われた兵庫県のツキノワグマの絶滅原因を調べていて、日本の奥山が戦後の拡大造林政策や奥山開発によって動物が棲めないまでに内部が大荒廃していることに気づき、大きな衝撃を受けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

奧山に延々と続く人工林。地元の方たちが緑の砂漠と呼ぶ光景。

山の外観は緑ですが、内部は荒廃して茶色一色の死の世界。

この人工林内に野生動物の餌は皆無で野生動物は棲めない。

 

31年前、私たちはこの国の人と全生物を守るために立ち上がったのです。

 

一番初めに兵庫県庁の林務課に行って「スギやヒノキの植林にストップをかけてください!いくらなんでも植え過ぎており、大変な弊害が出ています」と訴えました。係官は、「何を馬鹿なことを言い出すんだ、兵庫県はこれからますますスギやヒノキを植えていきます」と、怒りをあらわにされました。

 

<行き過ぎた拡大造林政策の弊害>

1、平成になると人工林の苗木も大きく成長し、人工林内は餌が全くない所になる。すると、生きられなくなった野生動物が餌を求めて山から次々出て来るようになり、地元は悲鳴。クマは有害獣として多数駆除されていくようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

兵庫県豊岡市1998年

 

2、林業不振により多くの人工林が放置され益々荒廃、山の保水力は年々低下。各地で湧水が激減。

 

 

 

 

 

 

 

 

谷川で泳ぐのが夏休みの子供の遊びだったのに、もう泳げる所なんかどこにもないと地元の高齢者
兵庫県宍粟市

 

3、大雨の度に放置人工林が崩れ出し、災害が多発する国になっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

2004年兵庫県朝来町 山崩れで放置人工林のスギが流出し、橋げたに引っかかって洪水に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兵庫県の人工林分布 人工林率42%

赤色部分がスギやヒノキの人工林。多くは放置されて内部は大荒廃している。

南部の緑の●はゴルフ場 クリックで地図拡大。

 

現状を放置していたら山はどんどん荒れて、年々保水力が低下していきます。かつて森を破壊し過ぎて水源を失い滅びた多くの文明と同じ道を、日本がたどっています。

森の再生には長い年月がかかるので、一刻も早く森林政策の方向転換が必要です。

私たちは兵庫県庁に行って怒られただけでしたが、めげませんでした。奥山荒廃問題にはこの国の運命がかかっています。がんばって声を上げようと決意しました。

 

私たちが国の拡大造林政策に問題ありと正直に言うと、国や行政からにらまれ、マスコミは国や行政の顔色を見て私たちを取材しようとしなくなりました。

 

後年、林野庁の偉い方に私的にお会いした時、私たちは開口一番「奥山水源の森が大荒廃しています!」と訴えました。その方は、「戦後の森林政策、大失敗しちゃいました。どこもかしこも、奥山を大荒廃させちゃいました。もうどうしたらいいのかわかんないのです」と、正直に言われました。

 

私たちは、「すぐに国策の方向転換をしましょう」と呼びかけました。水源の森を失った文明は過去すべて滅びているからです。しかし、この方は、「私たちは組織の人間なので、この事実は、口が裂けても国民には言えません」と答えられました。

 

仕方なく、私たちは自分たちで団体を作り、地元の皆さんと連携して、まず自分たちで汗まみれ泥まみれになって、各地でボランティアとして、奥山の人工林伐採跡地に実のなる木を植え始めました。場所によっては命がけの危険な活動ですが、みんな使命感でいっぱいなので、未だ無事故です。

 

 

 

 

 

 

 

2002年兵庫県但東町 実のなる木の植樹会

 

国には、一刻も早く食料いっぱいの奥山広葉樹林再生運動に国を挙げて取り組んでいただき、野生動物たちが以前のように奥山に帰れるようにして、祖先がしてきた棲み分け共存を復活させなければならないと訴え続けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

兵庫県がある中国山地のかつての棲み分けラインは標高800m。
これより奥は野生動物たちの聖域として、日本文明を支える水源の森として、人間が入れない入らずの森でした。

 

奥山は巨木の原生林で、この原生林があった時、クマたちが里に出て来ることなどなかったそうです。この棲み分けラインを戦後、一方的に破ったのは人間の方です。

 

私たちは片っ端から国会議員を訪ね、奥山全域、尾根筋、山の上3分の1、急斜面、沢筋の5か所は祖先がしていたように天然林に戻すよう、法整備をお願いしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

この5か所は、天然林のまま残さねばならないと祖先が言い伝えてきた場所に重なります。

熊森に賛同して強力に支援してくださったのが、当時、国会議員だった赤松正雄議員や鳩山邦夫議員、石井登志郎議員(現西宮市市長)らでした。

 

 

 

 

 

 

 

2010年、奥山天然林再生のための法整備に向けて、64名のすばらしい超党派の国会議員たちによる議連が誕生

しかし、3か月後に、東北大震災と福島原発事故が発生し、議連は解散に

法整備のチャンスを失う

 

国産林業が不振の上、もう植えられるところは植え尽くしたこともあって、新たなスギ・ヒノキの植林にはブレーキがかかるようになりました。しかし、荒廃した放置人工林は今もそのままです。(林業は大切な産業なので、林業に向いた場所はしっかりと林業用の整備を行い、他は森林環境譲与税などを使い、早急に天然林化すべしと、熊森は何度も国会に訴えに行きました)

 

まさか・・・残された天然林内まで大劣化し始める

 

この後、とんでもないことが起き始めたのです。地球温暖化が原因と思われるのですが、残された天然林までもが猛烈に劣化しだしました。下草が消え、昆虫が消え、虫媒花は実らなくなり、野生動物たちの餌はますますなくなってきました。

 

 

 

 

 

 

 

地球温暖化で、天然林の内部まで大荒廃 餌が何もない森に

兵庫県豊岡市のクマ生息地 熊森協会自動撮影カメラによる撮影

 

さらに現在は、国内外の投資家たちが、再生可能エネルギー事業推進と称して日本の水源の森を大破壊しだしました。熊森は、森林伐採を伴う再生可能エネルギー事業にストップをかけようと、日々、奔走しています。国民のみなさんも、子や孫のため、全生物のため、声を上げてほしいです。

 

 

 

 

 

 

 

再エネ事業が広大なクマの生息地を大破壊

宮城県仙台市

 

これ以上水源の森が壊されないように、至急、法規制をかけねばなりません。壊し過ぎた森をもう一度天然林に再生していかねばなりません。森の動物たちのためでもありますが、人間のためでもあるのです。森を残し全生物と共存しなければ、人間も生き残れないのです。

 

国民の皆さんが、熊森協会をイギリスのナショナル・トラスト(会員数425万人)のように大きな団体にしてくだされば、国会議員が協力してくれるようになるので、日本でもイギリスのように自然を守る法律を次々と成立させていくことができるようになります。

 

水源の森を守るには、会員数が必要です。みなさん、ぜひ熊森協会の会員にご登録ください。

電話1本で会員になれます。0798-22-4190

 

まとめ

熊森協会は、奥山水源の森の保全・再生団体です。

 

私たちがシンボルにしているクマの棲む森は、最高の保水力を誇り、あらゆる生き物たちが生きられる完璧に豊かな森です。私たち人間は棲み分けを復活させるために、荒廃させた奥山を野生動物たちの餌場として再生しなければならなかったのに、全くそういうことをしてきませんでした。もし地球温暖化が人間活動の結果だとしたら、今年の山の天然林の実りなしも全てが自然現象なのではなく人間の責任も問われます。クマを殺しておけばいいではなく、どうしたら共存できるのかみんなで考えねばなりません。やさしい解決法が一番優れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

当団体への誤解もあるかもしれませんが、皆さん、ぜひ当団体の本質を知っていただけるとうれしいです。

 

詳しくは1冊100円の小冊子「クマともりとひと」をお読みください。

真実を求める人たちの口コミによって、現在57万冊発行。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文責:森山まり子

 

苦情なんかじゃない魂の叫び、でも、訴え方のルールは必要

今も連日、人身事故が相次ぐ秋田県では、今年、クマは1500頭までは殺しても良いとして、山から餌を求めて里に出てきたクマはすべて殺処分しています。10月23日現在で46件53名のクマによる人身事故が報告されており、クマ捕殺頭数も前代未聞の1030頭に登っています。

 

私たち自然保護団体が、一番つらくて一番恐れているのが人身事故です。人身事故が起きると、当然ながら地元では「クマ殺せ」の声が高まってしまい、とてもクマたちとの共存など考えられなくなります。何とか、人身事故の発生を止められないものかと、私たちもやきもきしていましたが、残念ながら秋田県には支部もないし、私たちの力不足で動けていませんでした。

 

そんな時、美郷町に夜こっそり何かを食べに来ていた(飢えに苦しむ)親子グマが、朝帰りに遅れ、人間に見つかってしまったんでしょう、作用小屋に逃げ込んでいるというニュースに接しました。親子グマが逃げ込んだ小屋は、数十人の猟師や警察、行政に取り囲まれ、逃げ出せば撃ち殺される状況下にあります。クマも私たち人間と同じように豊かな感情を持っていますから、恐怖と後悔で途方に暮れている母グマの姿が目に浮かびます。

 

私たちは、この母グマはまだ人身事故も起こしていないのだから、例外的に山へ返してやってもらえないだろうかと、秋田までお願いに行こうと思いました。全国の多くの子供たちも、このニュースを見ているだろうから、殺処分しましたでは、人間の子供たちも胸がつぶれてしまい、精神衛生によくないだろうと思いました。里に出てきたクマはすべて殺すが当たり前ではなく、助けられる命は助けるという例を1例でも秋田で作りたいというささやかな願いでした。(隣接岩手県では、捕獲後山への放獣例がいくつかある)

 

熊森新潟県支部長が夜通し車を飛ばして、山形の人(2人ともクマ生息地に在住しており、クマには詳しい)と合流し、美郷町に駆けつけました。急を知った秋田県会員もひとり現場に駆けつけました。新潟県支部長は、秋田県に抗議に行ったのではなく、頭を下げて親子グマの救命をお願いに行ったのです。

 

早朝、秋田に着くと、親子グマは、もうすでに箱罠に捕獲されており、住民の安全は守られていました。山に逃がすか、連れ帰るか、どちらにしても、熊森は非捕殺例を1例でも作ろうとしたのですが、長時間待たされた挙句、殺処分報告を受けました。私たちは胸がつぶれそうになりました。

 

今回の親子グマ殺処分に対して、多くの声が美郷町や秋田県庁に寄せられたそうです。他の人たちも殺処分されたというニュースを聞いて胸がつぶれそうになったんだろうと思います。

 

これに対して、マスコミが、役所の業務妨害になるとして、電話した国民を一斉に非難しました。これまで国民の自由な発言を大切にされてきたアエラまでもが、「秋田県美郷町寄せられた苦情2日電話450件メール160件役場担当者苦悩」と書きました。言論の自由を大切にしなければならないマスコミが、これではまるで国民に声を上げるなと言論封じしているように感じました。

 

電話をかけたみなさんは、魂からの叫びを伝えようとしたのだと思います。声を上げない日本国民がここまで多く電話したということは、同じことを感じた国民が他にも大勢いたはずです。これを単なる身勝手な苦情や迷惑電話にしてしまうのは良くないです。国民の言論を委縮させるものです。一大事と感じた時に、国民が一斉に声を上げるのは当然です。役場の皆さんは2日間電話対応に大変だったと思いますが、それだけ大きな問題だったということです。

 

ただ、双方にルールは必要だったと感じました。訴える側は、できるだけメールにすること。電話をかける場合は、きちんと名乗ってから手短かに伝えること。感情に任せて暴言を吐いたりしないこと。役場の方も、電話が込み合っているので5分以内でお願いしますと伝えるなど、こういう時はルールを設けられるといいと思います。

 

今回のことで行政側が報道規制を敷いてしまい、どこかの県のように今後はクマ関連のニュースを一切流さないようにしてしまうことも予想されますが、そういう方向にはいかないようにお願いしたいです。

 

クマ多数出没問題は、秋田県だけの問題ではありません。

 

なぜ近年、こんなに多くのクマが山から出て来るのか。

 

直接の要因は山に冬ごもり前の食い込み用食料がなかったことですが、背景には、人間が戦後、経済のために、山にスギばかり植え(秋田県の山の50%はスギで、そこには野生動物たちの餌なし)、開発で奥山のクマ生息地を破壊し続け、今も、全国各地で野生動物たちの生息地である森林を大量伐採して再エネ推進名目でメガソーラーや風力発電建設などを建設し続けている事実があります。

クマの多数出没は、森を大切に守って来なかったこれまでの国策の失敗です。野生動物たちの生息環境を脅かしているのは人間なのに、生息数が増えたなどと物言えぬ野生動物たちに全責任が押し付けられ、彼らの命が奪い続けられています。マスコミは現象ばかり追わずに、原因を追究すべきです。

 

美郷町の果樹園は今年全てクマに食べられて壊滅状態だそうです。果樹園を営む方々も、国の森林政策の失敗によって被害を受けています。弱い所に、声を上げられない所に、しわ寄せが行くのです。リンゴ農家などに温かい支援の手が差し伸べられることを望みます。お怪我された方への見舞金も必要だと思います。

 

美郷町の担当部署の方に聞くと、今回、ひとり10件ぐらいの電話を根気強く最後まで聞いたということで、2日間確かに大変だったと思います。職員の皆さんには心から感謝申し上げます。

速報:比叡山延暦寺滋賀院門主小林隆彰顧問ご逝去

小林隆彰先生には、大津のサル軍団が有害駆除される計画が上がった時、大変お世話になりました。現地に行くと、元々おサルたちが棲んでいた山の中が巨大開発されて、広大な宅地に変わっていました。おサルがこの宅地に出て来ると言って、住民の皆さんは困っておられましたが、おサルにしたら少し前まで自分たちの国だった場所です。

 

クマ問題と同じ構図です。人間が彼らの生息地を破壊しておいて、彼らが自分たちの生息地であったところに出て行くと、害獣というレッテルを貼って駆除するのです。熊森は胸を痛めて、何とか殺さない解決策はないかと、滋賀県支部を中心に連日出勤前の早朝にサルの追い払い活動を実施するなど、涙ぐましい努力を続けました。

 

小林隆彰先生はすでに当時延暦寺のトップレベルの偉い方でしたが、私たち熊森に長時間会ってくださり、親身に相談に乗ってくださいました。お会いして感激したのは、生き物たちの命について、熊森と全く同じ考えでした。そして、比叡山の山で殺生は認めないと宣言してくださいましたので、多くのおサルの命が助けられました。

 

その後いろいろと経緯があって、人間の庭の作物などに大きな被害を与える大津のサルたちは、捕獲されて大津市で終生飼育されることになったのでした。仏教の殺生禁止について、この時いろいろと学ばせていただきました。仏教の考えで行けば、日本の豊かな自然を生き物丸ごと守ることができると思いました。

 

小林先生、これまで長い間、熊森の顧問として、いろいろとお導きいただきありがとうございました。ご著書なども送っていただき、学ばせていただきました。心からご冥福をお祈り申し上げます。

経済産業省の資源エネルギー庁が住民説明会に関してパブコメを募集中。10月29日〆切

再エネ特措法が改正され、再エネ事業者に住民説明会の開催が義務付けられることになりました。これは当然のことで、一歩前進です。しかし、説明会の中身がまだまだ不十分で、住民側の声が通るようなものになっていません。

 

具体的には、

住民説明会に参加できるのは事業地境界から「300m以内」の周辺住民のみで、環境アセスメント対象となるような大きな事業でも「1㎞以内」の住民までとなっています。

 

しかし、奥地森林や森林尾根部での再エネ事業開発の場合、土砂の流出、水源地の破壊などは流域全体だけではなく海にまで影響が及びます。また低周波音は10㎞先でも影響があるとも言われており、再エネ開発の場合小さな単位で住民を区切ることは不適切です。また、自然生態系の問題は事業地からの近さとは関係なく、周辺住民に限られたものではありません。

 

このように説明会に参加できる「周辺住民」を限定すれば、周辺住民がほとんどいない奥地の開発では、説明会が形骸化することは明らかであり、絶対に変更すべきです。

 

また、一般的に住民には専門知識がないので、いきなり説明会に参加して事業者側から専門用語を並べられても、どこが問題なのかわからず、住民側に不利な事業案であっても、反論できないで終わってしまうことが多くあります。

 

そのため、住民説明会は、

1 希望があれば、流域から海に至るまで、その再エネ事業によって影響を受けることが考えられるすべての住民が参加できるようにすべき。

2 住民から希望があれば、説明会場に専門家や自然保護団体が出席できるようにすべきです。

 

以上2つを、パブリックコメントとして提出していただけたらありがたいです。

 

以下から意見を入れることができます。

<「再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ 第2次取りまとめ(案)」 に関する意見公募要領>

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620223028&Mode=0&fbclid=IwAR09Kp1rlUHSIr6KpxxdJeyFNABpSIIXXM9C49WYf7mf4Ux69JThQcMkJ8g

●メールでも送れます●

クマによる人身事故が起きないように、秋は地元と連携して連日走り回っています②クマ講座

今、クマが里に出て来るのは、冬ごもり前の食い込み用食料が山にないためで、空腹に耐えかねて、怖い人間のいる所に、夜こっそり食料を求めて出てきているのです。

 

うっかりして人間に見つかってしまうと、ツキノワグマは怖がりなので、何とか人間から逃げようとして、連日、人身事故を多発させています。

 

環境省発表によると、10月11日現在、今年度のクマによる人身事故件数102件、被害者106人(死者1名)です。

ヒグマによる人身事故件数は3件、被害者3件(死者1名)ですから、圧倒的にツキノワグマによる人身事故が多いのです。

 

日本のマスコミは、一方的にクマを狂暴な動物に仕立て、センセーショナルな人身事故の現象報道を繰り返しているだけで、なぜこのような事故が起きたのか、どうすればよかったのかという一番大切な原因と対策の報道をしません。

 

騒ぎ立てて視聴率を上げているだけで、報道に学びがないから、同じような事故がどこまでも相次いでいくのだと思います。

 

マスコミの皆さんは、ぜひ、クマの専門家である熊森協会を取材してください。私たちはなんとしてもクマによる人身事故を無くしたいので、生き物としてのクマの心理面までを見通した原因と対策をお伝えすることができます。

 

現在他府県にも出張して、各地で行政主催のクマ講座(2時間)を、実施させてもらっています。今回は、行政担当者や猟師の方、議員のみなさんの参加が目立ちました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おかげさまでみなさんから高い評価をいただけました。お世話くださったみなさん、ありがとうございました。

 

住民のみなさんには、クマがどんな動物なのか正しく知っていただき、どうしたら人身事故が起きなくなるのか、様々な事例から学んでいただけるよう、これからもがんばります。

全国のみなさんに、熊森の「クマ講座」を、見ていただきたいです。

 

クマによる人身事故が起きないように、秋は地元と連携して連日走り回っています①環境整備

熊森協会は設立以来から、徹底した現場主義です。

 

27年前に、会を立ち上げた初代会長がまずしたのは、兵庫県の地元の1市25町の首長さんたちに、「クマたちが造る保水力抜群の奥山水源の森を、日本文明存続のためにもう一度共に再生しませんか」という手紙を出したことです。

 

その中で、熊森協会と一緒に取り組みたいと言ってくださった町長さんたちを順次を訪れ、地元の役場の方、住民の方、猟師の方などとつながっていろいろと教わりながら共に活動してきました。

 

熊森は、今もずっとこの現場主義路線を貫いています。

 

近年、山の中の食料が減り、冬ごもり前の食い込みができなくなったクマたちが、命を賭して山から里に食べ物を求めて出て来るようになりました。熊森は、人身事故を無くそうと、ボランティアさんたちに手伝ってもらいながら、今年も必死に地元の環境整備に走り回っています。

 

兵庫県森林動物研究センターによると、今年の兵庫県の山の実りはブナ大凶作、ミズナラ大凶作、コナラ豊作です。

 

●クマのひそみ場となる草を刈る

 

 

 

 

 

 

 

 

くまもり現地到着

 

 

 

 

 

 

 

 

刈る前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草刈り後

 

 

・クマが集落に入ってこないように、カキの木の剪定や伐採

 

地元はどこも過疎化高齢化が進んでおり、力仕事ができる若者が不足。都会からのボランティアが大活躍します。

 

現地でカキやクリの木にクマが登れないよう木を剪定する熊森

 

↑民家近くのカキの木はクマが来ないよう伐採。(この木は渋柿。今年は実が少ない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伐採木の片付け

 

この地区のカキの木には、すでにクマが来ていましたので、集落内や集落周辺の木は伐採することになりました。しかし、離れた山裾にあるカキの木の実はクマたちに食べさせてあげてほしいと、熊森が提案。

 

クマは冬ごもり中の何か月間は飲まず食わずとなりますから、食い込みができないまま冬ごもりに入ったクマは、穴の中で死亡すると言われています。

 

同じ国土に生きる生き物同士。冬ごもりできないまでにクマが飢えに苦しんでいるのなら、少しだけでも空腹を満たしてやりたいと思うのが人情であり、天から授かった共存への本能であると思います。

 

以前訪れた集落の方が、私たちの祖先は拡大造林前までは、山の実りの凶作年でもクマが無事に冬ごもりができるように、山裾に柿やクリを植えてやっていたと教えてくださいました。

(熊止め林)

山裾までなら来ていいよ。ただし、集落には入ってこないでねという意味だそうです。最近はこのような他生物へのやさしさや思いやりが急速に日本人から失われつつあります。

 

クマに食料を提供したら、クマが増え過ぎてしまうと思う人がいるようですが、山裾に残されたカキやクリを食べるくらいでは、その心配はありません。メスグマは冬ごもりのための十分な食料を得られなかった年は、受精卵を着床させずに流してしまう習性があるので、凶作年は、子を産むクマは少ないと言われています。

(完)

自動撮影カメラの電池とSDカードの交換にボランティア大活躍:兵庫県波賀町

9月1日、熊森本部職員羽田はボランティアさん4名と共に、兵庫県宍粟市にある(公財)奥山保全トラスト所有の戸倉トラスト地に赴きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤線内がトラスト地  土色部分はスキー場

 

熊森がトラスト地内の動植物の調査を17年間継続中

 

2006年に購入したこのトラスト地は、東西に細長くて、一番上は鳥取県と兵庫県の県境に位置する赤谷山山頂1216メートルです。面積は広大で120ヘクタールもあり、購入当時から日本熊森協会の調査研究部が、動植物の生息調査を続けてきました。

 

山の下の方はコナラやクリが中心、上の方はブナやミズナラ、トチを中心とした生物の多様性が保たれた原生的な巨木の森でした。森からの大量で清らかな湧水が印象的でした。

 

周りの山々は戦後のスギの人工林で埋め尽くされてしまった感じですが、この山主さんは若くして大阪に出られていたので、山の下の方の一部を植林されただけで、奇跡的に?自然の森が残されたのです。

 

初めて山主さんにお会いした時、「どんな動物が棲んでいますか」と聞いたら、「クマさん!」とうれしそうに答えられたのを思い出します。

 

購入当時は、まだふもとの集落に多くの方が住んでおられ、ナショナル・トラストって何だい?別荘を建ててもうけるんかなど色々といぶかしがられたものです。それでも、秋になると谷がモミジなどの紅葉で赤くなること、谷川には30センチくらいのヤマメがいて、女でも手づかみで捕まえられたことなどいろいろお話しくださいました。なつかしい思い出です。

 

そんな集落の皆さんでしたが、雪が年々少なくなってきて、スキー場経営(戸倉スキー場)も苦しくなられたもようで、だんだんと集落に空き家が目立つようになっていきました。

 

森の方も、温暖化の影響か、ナラ枯れが進み、ササが消え、年々急速に劣化していきました。今や、森がスカスカになってしまって、見るも無残な姿になってしまいました。

 

森購入当時は動物たちも多くいて、クマの糞や足跡も簡単に見られましたが、今は見られなくなってしまいました。

 

現在、戸倉トラスト地内には10台のカメラが設置してあります。今回は、川沿いに設置した手前の4台に絞って、電池とSDカードの交換を行いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チシマザサが消えた林内

 

 

この日は気温26℃。景色もなんだか涼やかに見えました。

 

ボランティアの方々と作業

カメラ1台につき、8本の単三形電池と1枚のSDカードが必要です。ボランティアの方々にカメラの説明をしながら、順番に1台ずつ交換作業を進めていきます。

電池の向きやカメラスイッチのONとOFFなど、間違えてはならないポイントがいくつかあるので、注意力を集中させねばなりません。皆さん真剣に根気強く取り組んでくださいました。

熊森はボランティア団体なので、会員の皆さんがこうやって無償で手伝ってくださいます。本当にありがたいことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作業中のボランティアさんたち

 

この日は雲がかかってやや涼しい日でした。カエルなど水辺の生き物がたくさん見られた一方で、ヤマビルがものすごい数いました。長靴とズボンの隙間をガムテープで塞ぐなど、万全の対策をして臨んだので、誰一人血を吸われずに済みました。

 

 

回収したSDカードの中をチェック

シカとイノシシが少し写っているだけでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オスジカ

 

以前はクマをはじめ野生動物たちが多く映っていたそうで、少し悲しい結果ですが、これからも調査を続けます。

 

山からの湧水の量も年々激減してきています。

日本の山の荒廃は、

1,人工林を造り過ぎたことだけではなく、

2,クマたちが生息していた1級の天然林も急速に温暖化で劣化していっている事実

を、マスコミは国民に伝えるべきです。

でなければ、最近なぜクマが山からどんどん出て来るようになったのか、奥山調査などしない国民には理解できません。

その結果、人間活動の被害者であるクマが、まるで加害者のように誤って報道されています。(完)

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