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静岡県で「クマ止め林」づくり!
- 2020-11-01 (日)
- _奥山保全再生 | くまもりNEWS | 公益財団法人奥山保全トラスト | 静岡県
熊森の会員がボランティアで頑張ってくださっています
先日、「クマ止め林」を作ろう!という記事を公開しましたが(10月18日)、実際に静岡県の山でクマ止め林づくりに取り組んで下さっている会員の山路淳さんをご紹介いたします。
静岡県の天竜川上流で広葉樹林化をめざす
現場は、静岡県浜松市の公益財団法人奥山保全トラスト地が所有する佐久間トラスト地です。
(公財)奥山保全トラストは、熊森の自然保護活動から生まれたナショナル・トラスト運動を進める自然保護団体で、市民のみなさんからいただいた寄付で、生物多様性豊かな水源の森を開発されないように買取って保全する活動をしています。現在、全国に19か所、2346haの水源地の森を買取り、保全しています。
スギ・ヒノキの人工林率77%と山のほとんどをスギ・ヒノキにしてしまった浜松市では、野生動物の棲める生息環境はわずかにしか残っておらず、放置人工林の荒廃も深刻です。人工林地帯である静岡県では、ツキノワグマは絶滅危惧種に指定されています。
奥山保全トラストが所有する294haの佐久間トラスト地も3分の1がスギ・ヒノキの人工林です。ここでは、地元森林組合や日本熊森協会のボランティアに協力いただきながら、クマをはじめとする野生動物の生息地の回復や、保水力ある災害に強い森をめざして、スギ・ヒノキを伐採し、広葉樹林再生活動を積極的に行っています。
くまもり会員によるクマ止め林づくり
佐久間トラスト地の一角で、熊森協会の会員の方による動物のえさ場となる森づくりが進められています。
十数年に亘り、ご夫婦でボランティアでご協力くださっているSさんご夫妻の熱意に触れて参加されるようになったのが山路さんです。
山路さんにクマ止め林づくりにかける思いをインタビューしました。
(山路さんが伐採しているスギ・ヒノキの林。伐採したことで光が入るようになりました。)
くまもり活動にかける思い
茨城大学 理学部卒業後、静岡県西部で、高校の理科非常勤講師をしながら、ゴミ拾いや耕作放棄地の草刈りなどの環境活動に取り組んできました。
7年前に林業に転職。現在、中田島砂丘の海岸林整備、春野町、愛知県新城市の里山再生、広葉樹林化。竹林再生プロジェクトで、浜松市天竜区、中区の竹林整備を進めています。 海から山まで、総合的な環境保全の必要を考え、研究活動を行なっています。
熊森との関わりは、Sさんご夫妻のお宅の竹藪を整備して、沢沿いの眺め良くしつつ、孟宗竹の伐採技術の開発をしたことがきっかけで、熊森協会の存在を知り6年。奥山保全の重要さを改めて再確認して、入会しました。
人口減社会で、林業を続けるのが困難な場所を広葉樹林に戻していくことは、野生動物の保護だけでなく林業の今後の発展にも必要だと思い、活動に参加しています。
現在、ツキノワグマなど市街地の出没で騒動の中にいる人たちに、奥山の重要性について少しでも知ってもらいたいと思っています。
共生の場をつくりたい
現在、佐久間トラスト地でスギ・ヒノキの伐採や広葉樹の保護、生育調査を行っています。今後は、トラスト地全体の調査と適切な生態系保全に向けての簡易土工の実施をしていきたいです。
尾根伝いのスーパー林道の傍(最初の写真)は随分と明るくなりました。
栗の木が生えているので、それを避けて伐採を進めるのは難儀ではありますけど、広葉樹とスギ・ヒノキが混交する森を、作ること。
そのための高度の伐採技術を、地元の人々に見せていきたいです。
熊止めの森。人間と野生動物の共生の場を作っていくこと。そこは死ぬ気でやらざるを得ません。
山路さん、Sさんご夫妻、いつもありがとうございます。 奥山保全トラストや日本熊森協会の活動は野生動物との共存を願うたくさんのボランティアのみなさんに支えられています。
京都府与謝野町でクマによる人身事故現場を調査
現地のクマ生息地の山は、凶作の上にナラ枯れが深刻、エサ不足が懸念されます
10月24日、京都府与謝野町でクマによる人身事故が発生したと報道されました。
熊森本部は、近畿圏で発生するクマによる人身事故の現場を訪ね、お怪我をされた方をお見舞いし、再発防止対策を伝えたり、再発を防ぐお手伝いをさせていただいたりしています。
10月26日、熊森本部スタッフたちは現場へ急行しました。
お怪我をされた方のご家族と少しお話が出来ました。現場は、ご自宅の裏のクリの木付近とのことです。お怪我をされた方は、24日の朝8時頃、金属製のヒバサミを使って栗拾いをされていました。栗を拾い終えて帰るころ、クマが茂みから突然出てきて、背後から耳を引っかかれ、男性が転倒した後にクマは来た道を逃げていったそうです。幸い、命に別状はなかったそうです。
今年は、京都も山の実りが悪いと発表されています。エサが無く、里のクリを食べに来ていたクマと鉢合わせになったものと考えられます。なるべく、クマと人が至近距離で合わないように、この場の草刈り等が必要と感じました。
全国各地で、クマが出来てた、事故が発生したというニュースが後を絶ちません。秋にクマが出てくる原因を考えるには、「クマの生息地が今どうなっているか」ということを調べる必要があります。
くまもりNEWS「もはや末期症状 クマが山から次々と出てくるその訳は?」
熊森のスタッフは事故が発生した現場近くの山の調査をしました。
クマが降りてきた山を下から見ると、ナラ枯れが起きているようには見えません。しかし、山に登ってみると、標高600m程の山の上にある、コナラ、ミズナラが、木の根元から粉を吹きだし枯れていました。
100m歩くだけで、ナラ枯れで、虫の穴が開いている木は15本も見つかりました。
しかし、そのうち5本は、樹液を出して樹皮を修復しようとしていました。
ナラ枯れの原因は、カシノナガキクイムシが木に穴をあけることだというのが国の見解ですが、元気な木であればこのように樹液を出して復活できます。スタッフは、ナラ枯れ以前に木そのものが弱っていると感じました。
この山はクマの棲む自然林なのに、下草が全くありません。下草が無ければ、クマが身を潜める場所や、夏のクマの食料となる昆虫の生息環境もありません。
クマたちは、もう山に棲めないのでしょう。
里だけを見ていると真の原因や対策はわからない
山を見た後、地元の与謝野町役場を訪ねました。担当者は、山の中がこのような状況であることを知らなかったようです。その理由として「里で生活していると、里のことしかわからないから、クマが里に出てきたという情報だけしか問題にならない」ということでした。担当者は、ナラ枯れで山奥にクマがいないことは、あまりにも別世界の話でにわかに信じがたいという様子でした。
事故が発生した現場は、クマ捕獲罠が設置されましたが、1日で撤去されました。担当者のお話では、クマは事故直前に、事故現場の隣の家の柿の木に来てカキを食べていたようです。このカキを、事故後にすぐに隣の家の方が除去してくださったので、被害対策が出来ているか罠の撤去に至ったようです。
全国のクマ生息地自治体の皆さま
クマによる事故が発生した、クマの目撃が絶えない、そういった地域では、クマがなぜ、本来の生息地である山から出て来ているのか調査してみてください。山でナラ枯れが発生していたり、山の実りの大凶作など、大来な異変が発生しています。里に出て来たからといって捕獲していては、クマは滅びます。
どうか、山から降りてきたクマに遭遇しないように気をつけてください。
山の実り大飢饉の今、里の実りをわけてやってください。
人身事故の危険性がある場合は、柿の実を採って山中のクマの通り道に運んでやってください。今年のような異常年、クマと人が安全に棲み分け・共存していくためにはそれしか策はありません。
以下、今回初めて被害対策にきた、新入スタッフの感想です。
初めて事故現場を訪ねました。
事故に遭われた方以外にも町の方のお話もお伺いしましたが、対して気にされていない方から怖くてお墓参りにも行けないんだという方、クマや森の話をしても無関心な方という多様な反応に出会いました。
実りゼロという異常事態が山で起きていることに無関心な方が多いと、人身事故を起こすかもしれないクマは捕殺しておこうとなり、安易な捕殺が暴走するのではないかという印象を受けました。
問題に対し関心を持ち、実際に山に入って原因を探り、対策を考えることの重要性を改めて感じました。これからも、徹底した現場主義を貫き、現地を歩き続けます。
【埼玉県飯能市】このまま、メガソーラーのために森林破壊を許していいの? 工事を止めるため、もう一度、声を上げませんか!




【速報】クマ止め林をつくろう!
凶作年にクマたちが集落に出ないように、
えさ場づくりをめざして植樹会を開きました
10月18日 兵庫県宍粟市 原観光りんご園の裏山
ナラ枯れと山の実りの大凶作でクマをはじめとする野生動物にとって深刻な食料危機が現実になっている中、山から食料を求めて下りてくるクマたちのえさ場となるように、日本熊森協会は18日、兵庫県宍粟市波賀町原の原観光りんご園裏山でクマのえさ場づくり植樹会を開きました。兵庫県の奥地では、昔は、山すそにクリやカキを植えている地域が多く、奥山の実りの凶作年に、クマがクリやカキを食べに来て、植えた木々によってクマが集落に下りるのを止めていたそうです。
線路の枕木の利用や拡大造林のために伐られてしまった「クマ止め林」をもう一度、復活させたいと考えています。
兵庫県内だけでなく、大阪府や滋賀県在住の会員や非会員など15人とスタッフ4人が参加。原観光りんご園で約5年前まで専務理事を務めておられた幸福重信さん(83歳)に選んでいただいたカキ10本、クリ6本、ヤマボウシ2本を植えました。
幸福さんは、専務理事ご在任当時に苦労して育てたリンゴ約1万個を山から下りてきたクマたちに食べられてしまった体験を参加者に話されました。
「被害を知って腹は立ったけれど、よくよく考えてみると山に食料がないから生きるために下りて来たことが分かった。人間だけが良かったらいいのではなく原因は人間の側にあるのだ、人間が反省しないと、と思って共生の森づくりを熊森さんたちと始めました」と幸福さんはこれまでのいきさつを紹介。現場の裏山での植樹の取り組みなどを振り返りました。
幸福さんは「今年はあのころと同じように、山にえさがないひどい状態。あの当時から数えてちょうど今年は15年。クマたちと共生できる森をつくるために、いっしょに頑張りましょう」と呼びかけました。
幸福さんは続いて樹高約1メートルほどの苗木を手にとり、土を掘って水を入れ、土で固まった根を手でほぐしながら植え付けていく方法を身ぶり手ぶりを交えて解説しました。幸福さんの指導を受けながら、親子連れの参加者が植え付けにチャレンジ。植え終わると満足そうな笑顔を見せていました。
最後に、シカなどが侵入して食べられてしまう被害を防ぐためネットを外側に貼る作業をしました。
この日植えられた木は3年ほどで実をつけます。幸福さんは「皆さん自身の手で植えた木をぜひまた見に来てください」と呼びかけていました。奥山に実りが少ない状況は、当面は続くと思いますので、今後、液果やすぐエサになるものを補植していきたいと考えています。
小学1年の娘を連れて、初めて熊森の野外活動に参加した兵庫県の女性は「植えることの大切さや森林の意味についてとてもよく分かる説明で、参加して実際に植えることができて良かったと思います。必ずまた植えた木を見に来たいし、活動にも親子で参加します」と目を輝かせて感想を話していました。
山にエサがないクマたちが集落に降りて来ないようにするには、当面のえさ場が必要です。本部や支部を中心に、全国でこのような活動を広めていきたいです。
富山市の事故例から:ツキノワグマによる人身事故を減らす方法
富山県で、クマによる人身事故が発生しました。
お怪我をされたお二人の方に、心からお見舞い申し上げます。
それにしても、どうして人身事故が発生してしまったのでしょうか。
このクマを生かして山に返してやることはできなかったのでしょうか。
<以下、報道から>
警察や市によると、5月17日(日)朝8時28分に「高速道路ののり面にある繁みに1頭のクマがいる」という目撃情報が入りました。
午前9時25分ごろ、同市石田の無職、Kさん(92)が自宅の家庭菜園で作業していたところ、クマに遭遇。驚いて転倒し、左脚の骨を折りました。約5分後に、近くの畑で農作業をしていた同市小杉の飲食店経営、Iさん(84)がクマに右腕と右脚をかまれました。2人とも県立中央病院に運ばれましたが、命に別条はありませんでした。
午後1時15分、クマは民家の庭に逃げ込んだところを警察官立ち合いの元、猟師が銃で射殺しました。若いメスグマでした。
現場は北陸自動車道の南側で、富山地方鉄道上滝線の布市駅に近く、周辺には住宅地があります。
熊森から
富山市の担当者に電話で聞き取ったところ、現場周辺にはクマを引き寄せるものは何もなく、どうやってそこまでクマが来たのか、経路もわからないということでした。胃の内容物は草だったそうです。
熊森としては、現場近くの地理的特徴から、このクマは人目に付かない時間帯に、河川敷に沿って草を食べながら山から出てきたのだろうと思います。その後、山に帰りそびれたクマは川の繁みを伝って移動していたのではないでしょうか。その際、何らかのきっかけがあって(障壁があった、あるいは人を避けたなど。ちなみに現場の近くにある富山空港は、神通川の河川敷が滑走路になっています)北陸道ののり面に出てしまったようです。一般に、ツキノワグマは、人をとても恐れています。今回のメスグマも。人に見つかって恐怖におののいたと想像できます。
目撃情報を得て、日曜返上で、市担当者、県担当者、猟友会、警察など皆さんが現地に駆け付けられ、クマの捜索に当たられたそうですが、クマは見つからなかったそうです。クマは、これらの人間の動きを息を潜めてそっと見ていた可能性があります。
捜索中も、一般市民から、クマを見かけたという情報が次々と入り続けていたそうです。
多くの人間がクマを追いかける。多くの市民が屋外にいる。この状況が人身事故を誘発するのです。
何とか改善願いたいものです。
このクマは、人間から逃げようと走り回った結果、次々と人間に見つかるはめになり、もうどうしていいかわからず、パニックになってしまっていたのでしょう。
必死で逃げているときに、急に目の前に現れた人を攻撃して逃げきろうとするのは、人もクマも同じです。こうして、また、人身事故が発生してしまったのだと思われます。
先進的な海外では、このような場合、行政は住民に屋内退避を指示します。全員でクマをそっと見守って、クマが逃げて帰るまで待つと聞いています。「クマ1頭のために、人間活動が制御されるのはおかしい」という考えもあると思います。しかし、人身事故を起こさず、クマの命も守るためにはとても有効なやり方ではないでしょうか。
奥山生態系の保全・再生に取り組んでいる熊森は、日本最大のクマの保護団体でもあります。熊森として、いつも一番恐れているのは人身事故の発生です。
ひとたび人身事故が発生すれば、人も大変です。クマはその場で殺されてしまいます。
本来、平和愛好者であるはずのクマが、マスコミによって人を襲う恐ろしい動物のような誤ったイメージに、あおりたてられて、独り歩きしてしまっています。
どうして人身事故が発生したのか。事故が起こるたびに熊森は調べ、考えます。
人身事故を起こしたクマは、射殺されて当然という声もあると思います。しかし、今回のクマも、人身事故など起こしたくなかったと思います。
海外のように、クマが山に帰りましたという放送があるまで人間が全員家に入っていたら、人身事故は起きませんでした。警察や行政にも責任はあると考えます。
このクマにいつの時点で射殺決定が下りたのかはわかりませんが、富山市は緊急の場合のために、あらかじめ3頭のクマ駆除枠を取ってあるそうです。今回のクマはこの駆除枠を使って射殺したのではなく、警察官職務執行法によって射殺したそうです。
富山県は、県職員が麻酔銃でクマを捕獲する体制が整備されているということで、すばらしいと思います。この体制を使って、民家に逃げ込んだクマを捕獲して山に返してやれなかったのでしょうか。
クマが最後に植物で覆われた民家の庭に逃げ込んだのは、人間たちに追いかけられて、どこかに逃げ込みたい一心だったのだろうと思います。銃を構えた多くの猟友会員に囲まれて、このクマはもう人身事故を起こして逃げおおせる可能性は消えていたと思われます。
現場で対策に当たられたみなさんは、使命感を持って頑張られたと思いますが、初めてのミスで人間の所に白昼留まってしまったこのクマを麻酔銃で捕獲して山に返してやることもできたのではないでしょうか。他生物にも思いやりある優しい社会を作っていきたいものです。
P.S 熊森からの質問に対して、お忙しい中で隠すことなく丁寧に答えてくださった富山市の担当者に感謝します。
暑くなったね、とよにたらい
- 2020-05-02 (土)
- _クマ保全 | くまもりNEWS | 大阪府 | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
本日の最高気温は27℃。一気に、汗ばむ陽気となりました。
プールが大好きなとよは、なんと先日、暑さにたまりかねてか、水飲み用のステンレスバケツに、足を突っ込んでいたそうです。
そこで、プール改修が終わるまでの間、これで我慢してもらおうと、本日、昔洗濯に使っていた大きなたらいを持参しました。
大きなたらいと思ったのですが、とよの前では本当に小さく見えました。
右前足を入れたら、もう一杯です。
何とか水に触れたいトヨが、この後、どうしたか。動画で見てください。
両前足とお顔の半分下をつけたらもう限界。でも、楽しんでくれたようでした。
お寺やお世話隊の愛情をいっぱいに受けて、今ではとよは、人間を信頼しきって生きています。
久しぶりにとよに会って、しばらくお互いに見つめ合いました。
クマがこんなに穏やかでこんなに人の心をいやしてくれる動物だなんて。
テレビ局が撮影に来てほしいな。
家族連れが次々ととよ会いに来てくれました。
とよを見始めると、みなさんのお顔がみるみるゆるんでいきます。
みなさん、ニコニコ顔になって帰って行かれました。
とよの力、すごいね!
プール改修、急ぐね。(完)
NHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見て
以下、会員からのメールです。
昨晩のNHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見ました。
老漁師が大声でコラッとかこの野郎とか言ってヒグマを遠ざけながら漁をしていました。
見ていてヒグマと共存というより、私にはヒグマを虐待しているように見えました。
なぜなら、ヒグマは人が見えるところに来ただけで、大きな声で追い払われているのです。何も悪いことはしていません。
・
番組のなかで、ここまでヒグマと共存できているのは、この知床だけだというようなことを言っていましたが、そうではありません。
ロシアでは(場所は記憶していませんが)、猟師のすぐそばで何頭もの大きなヒグマが、漁師から捕った魚を分け与えてもらって食べている場所があります。
漁師たちもヒグマも、どちらも互いを恐れてはいませんでした。
・
しかし、この知床では漁師が捕った魚は1匹たりともヒグマには与えないと言っていました。
だから飢えてやせ細ったヒグマの親子は弱り果て、子熊は死んでしまいました。(多分あの母熊も死んでしまうでしょう)
そんな状態のどこが共存なのでしょう。
人間がまるで海の幸は自分たちだけのものだと言わんばかりに独り占めして、ヒグマを見殺しにする自然遺産なんて変です。
NHKは、ヒグマと人が共存しているこの場所は何と素晴らしいのかと称賛しているようですが、違うと思いました。
別の方法で共存する方法があると思います。
ユネスコ自然遺産の調査団は、漁師の都合で作った道路とダムを撤去するように要請しました。
熊森から
番組は見ておりませんが、あの場所は有名です。
あの場所は特別保護区で、普通の人は入れません。
入れるのは許可を得た特別な研究者と環境省のレンジャー、番屋の漁師だけだと思います。ああそれと、NHKのカメラマン。最果ての地です。
残念ながら、日本でヒグマが殺されないのは、あの場所だけです。
北海道に行って驚くのは、海にびっしりと張り巡らさせた定置網が延々と続いていることです。
これでは、戻ってきたサケやマスが、川を上る前にほとんど人間に捕獲されてしまうのではないかと危惧します。
それでも、ヒグマを殺さないという一点だけで言えば、知床のあの場所は、ヒグマにとっては奇跡のような唯一の天国だと思います。
その点では、ヒグマを殺すことを止めて50年という老漁師さん(84歳)はすごいと思います。
しかし、人間も含めた全生物のために、入らずの森や開かずの森を取り戻したいと考えている熊森としては、あのような最果ての場所は、将来的には海岸の定置網を除去して、漁業も撤退して、人間が入らないヒグマの国に戻すべきだろうと思います。
イノシシ罠に誤ってかかってしまったクマをどうしますか
ツキノワグマの生息地域であって錯誤捕獲のおそれがある場合については、地域の実情を踏まえつつ、ツキノワグマの出没状況を確認しながら、わなの形状、餌付け方法等を工夫して錯誤捕獲を防止するよう指導する。また、ツキノワグマの錯誤捕獲に対して迅速かつ安全な放獣が実施できるように、放獣体制の整備に努める。
これまで、錯誤捕獲されたクマは法律通りきちんと放獣してきた岡山県なのに、どうなってしまったのでしょうか。
・
尊厳されるべきは人間の命だけという間違った方向に日本社会が進んでいることに、熊森は大変危機感をおぼえています。すべての生命が尊厳される社会でなければ、自然も、地球環境も守れません。
・
熊森は自然保護団体として、どこまでも、全生物の生命尊厳を訴えていきます。
クマはなぜか、簡単に罠にかかってしまう動物です。
バッコヤナギに親子グマの映像 宮城県仙台市
21日午前8時ごろ、仙台市青葉区大倉ダム近くで鳥獣被害対策実施隊(猟友会)が6頭の親子を目撃しました。 クマの体長は2頭が1メートル以上、別の2頭は70センチほど、 残りの2頭が50センチほどで2組の親子と みられています。 クマたちはこの後、バッコヤナギの新芽を夢中で食べていたということです。
動画がアップされている間に、みなさん、ぜひ見ておいてください。見とれてしまいますよ。
TBC東北放送より
花火で脅すと、別の木に移り、再び食べ始めたそうです。
釣り人が来ていたので、クマが出ていますと伝えると帰られたそうです。
午後3時ごろに宮城総合支所の職員が注意を呼びかける看板を設置したりして周辺に注意を呼び掛けました。
食べ終わったら移動するだろうということで、行政として捕獲などは考えていないということです。
熊森から
人間がここにダムを造らなければ、見つかっていなかったクマたちの春の生態です。
あの重い体で枝が折れないのかとハラハラします。
クマのため、全生物のため、人のため、このような場所を未来永劫に日本各地に残していきたいです。
私たち熊森の使命でもあります。
クヌギが花盛り 雌花と雄花がわかりますか
4月17日、庭のクヌギが花盛りなのに気づきました。
あまりにもきれいなので、見に来ませんかと熊森スタッフに声をかけた次第です。
ところが、2日後の19日に見ると、もう花期が終わってしまったようです。
自然界の移ろいのあまりのはやさに驚きつつ、あわてて写真に撮りました。
クヌギは風媒花だからいいものの、虫媒花だったら、こんな花期の短い花は困りますね。
ちょっと昆虫の訪花の日がずれたら、もう受粉できなくなってしまいます。
4月19日のクヌギの雄花
無数に垂れ下がっている紐のようなものに雄花がびっしりついています。
クヌギは、花と言っても、めしべとおしべがあるだけで花びらはありません。
手前の茶色っぽい雄花はもう花粉を出し終わった感じです。
2日前には写真奥の雄花のようにきれいな黄緑色でした。
雄花をアップで撮影しました。
一つの雄花に、おしべが4本付いています。
びっしり咲いた?雄花
雌花は小さすぎて撮れないので、ネットから写真を探し出しました。
新枝の葉の根元についている2ミリのものが雌花です。
雌花と言っても3つに裂けた柱頭があるだけです。
今年の雌花
クヌギは2年成のドングリなので、今春受粉した雌花がドングリになるのは、来年の秋です。
去年受粉した雌花は、この時期3ミリぐらいになっています。
下の写真が去年受粉した雌花です。
今年の秋には大きなドングリに成長していますよ。
去年の雌花
このクヌギは、熊森協会ができる前の年の秋、山に行った時、あまりにも大きなドングリを見つけて一つ持ち帰り、庭に植えたものです。
数年後には実をつけ始めました。
17年後、胸高直径18センチにまで育ちました。
2013年撮影17年目のクヌギ
この年、このクヌギの木から落ちたドングリの2分の一量の重さを図ってみました。
スーパーのビニール袋がいっぱいになりました。
重さは5キログラムありました。
1本のクヌギから合計10キログラムのドングリが落ちたことになります。
クヌギのドングリ
現在保護飼育中のツキノワグマ「とよ」も、クヌギのドングリは大好きです。
秋の食い込み期には、「とよ」は1日に10キロのドングリを平らげますから、このクヌギの木1本で1日分の食料を得ることができます。
冬ごもりに備えてのツキノワグマの食い込みは、7月末から始まります。
もし、この大きさのクヌギのドングリだけで、1頭のクマが冬ごもりしようと思ったら、このような木が山の中に150本点在していることが必要です。
クマが生息するために、どれだけ広い山が必要か想像すると、気が遠くなりそうです。
クマが生息する自然が残されているということは本当はすごいことで、自慢すべきものなのですが・・・
クヌギの樹液はカブトムシやクワガタ、オオスズメバチなど、葉はウラナミアカシジミ(チョウの一種)の幼虫など、ドングリにはゾウムシなど、もう数えきれないほどのいろいろな動物が、クヌギの木で命をつないでいます。
狭い庭に、クヌギの大木は無理なので、2015年に植木屋さんに伐ってもらいました。
しかし、10日後には切り株から青々とした新芽が出てきて、今また元の大きな木に戻ってしまいました。
切り株から新芽(伐採後50日目に撮影)
クヌギは、青森を除く本州と九州、四国に分布しています。
クヌギは昔から、炭やシイタケのほだ木などに広く利用されています。
古文書を読まれた先生によると、祖先が摂津などから苗木を取り寄せて各地にクヌギを植えて回ったことがわかるそうです。
よって、分布は全国に連続しており、クヌギに地域固有の遺伝子はありません。
皆さんの所では、ドングリの花は終わりましたか?
それともこれからですか?
日本にドングリの種類は21種あります。
クヌギ以外のドングリも春に花が付きます。
ドングリの雌花や雄花をまだ見たことがない人は、ルーペでいつか見てください。
命の不思議さを感じますよ。(完)