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今冬雪の中、クマの目撃相次ぐ 山形県新庄市は2月3日、仙台市は2月7日、いずれも麻酔後山に放獣

今冬雪の中、東北などの市街地に於けるクマの目撃件数が例年になく多く、わが国のクマ保護史上に残しておくべき特別事態だと思います。報道映像の顔や体つきから、若いクマだと感じることが多いです。

一昨年の東北山の実り大凶作年時に於けるクマの異常ともいえる大量出没で、母グマに連れられ餌を求めて市街地に出て来たものの、母グマを人間に殺され、山に戻って冬眠することを知らないまま市街地近くでなんとか冬を生き抜いた子グマが、春以降も市街地の裏山でこっそり生き続け、今冬も山で冬眠することを知らずにさまよっているのではないかと推察されます。

餌があるから冬眠しないのだろうという説もありますが、当協会で保護飼育している元野生グマ「とよ」を見ていますと、冬眠中飲まず食わずでも生きられるだけの脂肪層が体に蓄えられると、大量に積まれた餌があっても食べなくなり、自ら寝室に入り込んで春まで出てきませんから、違うのではないかと思います。

ある動物園の飼育者に聞くと、動物園ではクマに冬眠されるとお客に見てもらえなくなるので困る。わざと不十分な量の餌しか与えないようにしているので、冬中起きているとのことでした。

 

山形県新庄市の場合

マスコミ報道によると、2月1日午後1時半、新庄市内を車で走っていた女性が1頭のクマを目撃。このクマは猟友会などの追い払いを受け、新庄中学校の軒下や市内中心部を逃げ回り、最上公園の中に居座りました。(熊森訂正→逃げ込みました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大勢の人間に追われて逃げ惑うクマ

 

地元猟友会の皆さんが公園内に箱罠を設置しましたが入らず、2日朝7時に公園から逃げ出しました。

現行法(鳥獣保護管理法38条)では、人や建物に被害が出るのを恐れて、市街地では原則、銃の使用が禁止されています。

そこで、山形県は獣医による麻酔銃使用を市に指示したようで、獣医さんが公園から200m離れた集落の通路でじっとしているクマを見つけ、建物の3階から2回にわたり背中めがけて麻酔銃を発射。しばらくして動かなくなったところを猟友会のみなさんが網で捕獲して箱罠に移し、離れた山中にこのクマを放獣したとのことです。けが人なし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麻酔銃が命中して動かなくなったクマ

 

猟友会の方によると、3歳から4歳ぐらいの若いメスの成獣で、やせていたとのことです。

 

宮城県仙台市の場合
2月7日午前5時40分ごろ、仙台市泉区高森2丁目の高森自然公園に1頭のクマが入っていくところを住民が目撃し、泉署に通報。
行政提供写真:高森自然公園内の茂みにいるクマ。2月7日午前8時39分(朝日新聞より)
以下、マスコミ報道。
その後、周辺でクマを目撃したという通報が相次ぐ。クマは体長約1メートル。その後も公園内にとどまっていたため、市の委託業者が麻酔銃を使って眠らせ、正午過ぎに捕獲。午後1時半ごろに山林に放した。
公園に隣接する明泉高森幼稚園は、警察からの連絡を受け休園。周辺の高森小学校と高森中学校は、一斉メールで保護者へ周知し、職員による巡回を行った。けが人なし。
熊森から
危険性のないクマは殺さずに山に返してやるというのは、人として当然のことです。
しかし、そのためには今回のように多くの皆さんの大変な労力が必要です。
殺さずに山にクマを返してくださった新庄市と仙台市の担当者の皆さん、猟友会のみなさん、本当にありがとうございました。
環境省は今国会で、市街地でも銃が撃てるようにと、鳥獣保護管理法38条を変えようとしています。

 

市街地でも発砲できるようにすることで、出没したクマを素早く射殺し、短時間で解決することを狙っているのでしょう。
やむおえない状況が発生することもあることは認めますが、しかし、そのような法改正が行われると、今回の新庄市や仙台市で行われたような、山に放獣しましたという動物福祉に基づくやさしい事例がこの国からなくなってしまうのではないかと心配です。
クマによる人身事故が起きないようにということは誰しも願うことですが、そのためにはとにかくクマを刺激しないようにして、市街地から追い出すことです。
現行法が住居集合地域等で銃を撃つことを禁止しているのは、建物や人間に被害が及ぶ恐れがあることを危惧しているからで、それなりの意味があります。猟友会や元自衛官の方にお聞きすると、住宅地での発砲というのはとても慎重にしなければ事故が起こる可能性があることなのだそうです。

 

国会議員のみなさんが今後、環境委員会でどのような論戦を闘わせるのか知りませんが、里に出てきたクマはさっさと殺しておけばいいんだという昨今の【他生物の生命軽視論調】に偏らず、どうすれば済み分けて共存できるのかをしっかり議論いただけるよう願っています。

 

クマを初めとする多くの野生動物たちは日本列島の先住民であり、今も保水力抜群の豊かな水源の森を無報酬で造ってくれているありがたい存在です。

今回の法改正案について、環境省の考えを詳しくお知りになりたい方は、以下の環境省の資料をご覧になってください。
人間さえよければいいという今の社会風潮の中で、唯一環境省だけは自然や野生生物の立場に立っていただきたいです。
環境省までもが人間最優先になってしまうと、人間活動がここまで大きくなったこの国で、大型野生動物たちはもう生き残れません。(完)

第6次ツキノワグマパブコメを機に前代未聞2023年度秋田県クマ大量出没の原因を推察する②

熊森が考えた2023年の秋田県クマ大量出没の原因は、山に冬ごもり前の餌が何もないという大異変が起きたのだろうということです。

 

戦中戦後の食糧難を経験されたお年寄りなら、クマたちの飢えの苦しみはご理解できると思います。クマが人の前に出て来たのは、まさか民家の柿を食べても人間は自分を殺すまではしないだろうという人間への信頼感があったからではないでしょうか。人間は必ずクマを殺すと知っていたら、昼間は人前には決して出なかったと思います。

 

2023年8月、東北地方は記録的な少雨の上、観測史上初の異常高温に見舞われ、秋田県では前年度より5度も気温が高かったということです。堅果類である秋のブナ・ミズナラ・コナラの実りは、全て皆無という大凶作でした。大変な事態だったと思いますが、この3種が大凶作になった年は過去にも何回かあったはずです。しかし、2023年のような大量出没は歴史上1回も記録されていません。

 

徹底した現場主義を貫いてきた熊森本部は、2023年11月20日、原因究明のため、顧問の研究者である主原憲司先生と共に秋田入りしました。

 

山裾のクリの木の全てにクマ棚ができているのを見て驚きました。元々豊凶差があまりないからか、クリだけは実っていたんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

全てのクリの木にクマ棚

 

地面に散乱する多くの空のイガやクマが折ったと思われる枝を調べているうち、私たちは殻だけで中身のないペタンコのクリの実(シイナといって、クマも食べられない)がたくさん落ちていることに気づきました。どうしてこんなにシイナグリが多いのか?

 

 

 

 

 

 

シイナグリ

 

昆虫学者である熊森顧問の主原憲司先生は、これらの大量のシイナグリを見て、この年のクマ大量出没の原因を解明されたのです。

 

以下、主原先生のお話

 

クリはふつう雌雄同株で6月~7月に花が咲きます。

 

クリは他家受粉で、季節の前半は虫媒花、後半は風媒花となります。
クリの花にくる昆虫は種類が多すぎて紹介しきれません。虫媒花の時期は、チョウ、ガ、ハチの仲間や、甲虫の仲間など、実に多様な昆虫がやってきます。クリの雌花には柱頭が3つついており、もし、ハナカミキリ(カミキリムシよりかなり小さい)のような狭い花の中を歩き回る昆虫の仲間が来てくれたら、確実に受粉が行われ、栗のイガの中には実が3つできます。

 

 

 

 

 

 

 

 

写真は、クリに来る昆虫たちの一部です。

 

 

 

 

 

 

 

昆虫が受粉したクリの実

 

しかし、花粉媒介をしてくれる昆虫がいないと、後半の風による受粉だけになります。風だけだと昆虫が受粉してくれるのと違って受粉率が低下するため、イガの中の実が1つになったり2つになったりしてシイナの実が増えてしまうのです。

 

こんなにクリのシイナが多いということは、この年、山から昆虫が大量に消えていたということです。この年の異常高温が原因ではないでしょうか。

 

葉食性の昆虫は卵からかえった幼虫時は、柔らかい若葉しか食べられません。しかし、温暖化によって葉の成長が早まると、卵からかえった時、葉がすでに固くなってしまっており、葉を食べることができません。このようなわずかなずれにより、昆虫の大量消滅が起きたと考えられます。

 

サルナシやマタタビなど多くの液果類は、ほとんどが虫媒花ですから、昆虫が消えたことで、液果類まで実らなかったのでしょう。こうして、ブナ、ミズナラ、コナラ等の堅果類は大凶作、液果類も実らず、餌が何もない山になってしまったのだと思います。近年、昆虫の大量絶滅が続いていますが、温暖化が進む以前には起きなかった現象です。(以上)

 

私たちは、この年、東北地方で山岳ガイドをしている方などに電話をして、山に異変がないか聞き取っていました。みなさんが言われたのは、堅果だけでなく液果も全く実っていないという話で、主原先生のお話と合致しました。

 

熊森が出した2023年度秋田県クマ大量出没の原因は―――
堅果類の大凶作が重なった上、異常高温により葉食性昆虫が大量消滅し、液果類まで実らず、秋のクマの食料が大飢饉におちいっていたからです。

 

ならば、人がすべき対策は、温暖化が続く中、秋の山のクマたちの餌をどうするかでしょう。

 

主原先生は、山裾のクリによって、2023年、秋田の人も秋田のクマも随分救われた。もし、クリの実がなかったら、もっと多くのクマが集落に出てもっと大変なことになっていたでしょうと言われます。

 

秋田の佐竹知事は、クマが集落に出て来ないように、クリとカキを全部伐れと指示を出されたそうですが、山裾のクリだけは絶対に伐ってはいけない。むしろ熊止め林としてもっと山裾にクリを植えていくべき。ただし、クリは標高の高い所では寒過ぎて育ちません。クマとの共存のためには、今後の温暖化を見越して、秋田ではクヌギなどのドングリを植えていく必要がありますとも言われていました。

 

私たちは、クマを失うと、豊かな水源の森を失うと見ています。何としても、今後もクマたちと共存できるように知恵を絞っていかねばなりません。

これは直接的には、クマなどの野生動物たちのためではありますが、生物の多様性の保全は、まわりまわって私たちの子や孫、人類が生き残るためにも欠かせないのです。秋田県は正しい原因を知り、クマ対策をやり直してほしいです。(完)

 

第6次ツキノワグマパブコメを機に前代未聞2023年度秋田県クマ大量出没の原因を推察する①

秋田県は令和6年12月23日(月)から令和7年1月24日(金)まで、第13次秋田県鳥獣保護管理事業計画(変更案)」及び「秋田県第二種特定鳥獣管理計画(素案)」についての意見募集(パブリックコメント)を行っています。
その中に、秋田県第二種特定鳥獣管理計画(第6次ツキノワグマ)(素案)21ページがあります。

 

これを機に、長年、全国のクマ問題を見てきた日本熊森協会として、2023年度秋田県クマ大量出没の原因をまとめておきたいと思います。

もちろん、自然界は超複雑系で、人間の頭では何をもってしても完全には測り知ることができない世界であることは、最初に申し述べておきます。

 

まず初めに、秋田県の皆様におかれましては、この年、前代未聞、大量のクマが山から出て来て人身事故も過去最多、どんなに大変だったかを思い、改めてお見舞い申し上げます。しかし、こんなことになったのは、クマに原因があった訳ではないことを知っていただきたいのです。

 

まず、戦後の1950年から2024年11月末までの以下の秋田県クマ殺処分数グラフを眺めてみてください。(クリックで拡大)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔、秋田で狩猟や有害駆除で獲られていたクマは、年間たったの100頭以下?届け出がどこまであったのかわかりませんが、秋田県がツキノワグマ管理計画を作られた平成15年以降の数字は精度が高いと思われます。

 

 

2023年度は東北全域でブナ・ミズナラ・コナラ全てが大凶作でした。秋田県では、狩猟(150頭)、個体数調整捕獲(31頭)、有害捕獲(2153頭)で、生息推定数4400頭の53%に当たる計2334頭のクマが殺処分され、主に人の生活圏で62件(70人)の人身事故が起きました。

 

ちなみに2024年度のブナ・ミズナラは昨年から一転して並作~豊作、11月末現在のクマ有害駆除数は363頭、人身事故は10件(11人)にとどまっています。

ある町の行政担当者に聞くと、お盆以降クマの目撃はピタッと止んでいたのに、冬になって雪の中で目撃されるクマが何頭かいるということです。前年集落にまで大量出没して大量殺処分されたクマたちの生き残りが人間の生活圏にそっと住み着いてしまっているのでしょうか。または、彼らは母グマを殺され、冬眠することを知らずに生き延びてしまった孤児たちではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新聞記事

 

さて、2023年に、どうしてこのような大量出没が起きたのでしょうか。

 

秋田県の素案では、秋田県は県土の70%が森林で、野生鳥獣の良好な生息域が広がっており、昭和50年代から奥山中心に実施してきた生息調査の結果から、本県のツキノワグマの生息状況はかなり安定していると考えられると記述されています。
しかし、秋田県は戦後のスギだけの拡大造林政策による人工林率が50%と高率で、多くが放置されていること、2023年度生息推定数の53%のクマが殺処分されていることを考えると、どうしてこのような記述になるのか理解できません。

 

素案は、クマ大量出没の原因として、

①中間山地の過疎化・高齢化

②クマ類の分布拡大

③個体数の増加

 

をあげておられますが、中間山地の過疎化・高齢化は今に始まったことではないし、クマが急に分布を拡大したり、急に個体数を増加させることなど動物学的にあり得ないので、大量出没の原因はこれらではないでしょう。

 

原因特定を間違うと、対策は皆外れてしまいます。案の定、秋田県の対策は、環境省にお願いしてクマをシカ・イノシシに次いで指定管理鳥獣に指定してもらい、さらに捕殺強化できるようにすることでした。

 

昭和50年代から奥山中心に(猟師が目視で)実施してきた生息調査の結果から、秋田のクマは安定生息との記述が素案には3回も出てきますが、肝心のその方法での生息推定数の変化がどこにも出てきません。県庁にこの調査での生息推定数を問い合わせると、情報公開請求するように言われ、その結果はまだ出ていません。

 

繁殖力の弱いクマを半数以上捕殺して翌年、生息数が安定していたのなら、まるでミステリーです。

 

環境省も同調してか、昨年9月の環境省の「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン補足資料」で、個体群管理に関する考え方として、従来の「個体群を安定的に維持または回復させる」から、「個体群を安定的に維持しつつ、人との軋轢軽減を図ることができる個体数に管理する」と、いつのまにか記述を変更しています。(管理するという行政用語は、捕殺するという意味です)

 

環境省伊藤信太郎大臣は、クマ類を指定管理鳥獣に指定する際、絶滅が確実視されている四国のクマだけは除外しました。ということは、全国のクマを、四国並みの絶滅寸前数にまで低減させるのがいいと考えているのでしょうか。

 

みなさん、クマが豊かな森林生態系や災害防止にどれだけ大きな寄与をしているかの生物学的知識が完全に欠如していると感じます。クマだけを見るのではなく、森林や自然を全体として見ることが必要です。オオカミを絶滅させてしまってから、オオカミが人間には到底不可能なシカやイノシシなどの生息数調整をしていたなど気づいても、もう取り返しがつかないのです。
人体と同様で、生物種が失われて行く度に、機能器官がひとつずつ失われていくことになり、全体が支えられなくなっていきます。

 

農作物被害や人身事故を無くしたい気持ちはよくわかりますが、生息数を低減させても絶滅させない限りこれらはなくなりません。それよりも奥山広葉樹林再生と聖域化による棲み分けの復活、恒常柵などによる被害防止対策を取った方が、ずっと被害防止や事故防止に効果があり、人々が安心して暮らせるようになります。その上、水源は守られ、山地災害も起きにくくなります。もっと総合的に考えるべきだと思います。

 

ゾーニング管理を導入するとありますが、ゾーニング管理は絵に描いた餅です。地図上にあちこち線を引いてみても、人間もクマもそんな線がどこに引かれているのかわからないので、意味がありません。

 

 

 

 

 

 

 

と言って、2023年のようなクマ大量出没はたまりません。いったいあの原因は何だったのか、②に続きます。

 

秋田市で目撃が続く子グマ、熊森本部が放獣または保護を要望済み

市街地に大人のクマが出て来るようになった地域のみなさん、どんなに大変か、心からお見舞い申し上げます。

 

戦後、奥山のクマ生息地の森を皆伐し、跡地に実のならないスギやヒノキばかり植えて放置し大荒廃している人工林、最奥地の観光地に連なる立派な舗装道路、こんなことをしていたら、餌場を失ったクマが餌を求めていずれ山から出てきますよ。そうなるまえに、奥山の餌場を再生し、人間は奥山から撤退しましょうと、熊森は28年間、各方面に緊急提案をし続けてきました。

 

しかし、国も都道府県も、どんどんとクマの生息地を奪うことばかりしてきました。これまで何度も私たちは、クマと人間、どっちが大事なんだ!と、お叱りを受けてきました。どっちも大事です。こんな簡単なことがわからなくなってしまったのは、自然界の仕組みを知らない国民がほとんどになってきたからでしょう。

 

さすがに、ナラ枯れによるミズナラの総枯れや昆虫の相次ぐ消滅は、私たちにも想像外でした。これも、クマの生息を脅かす一大事です。

 

どちらにしても、クマが市街地にまで出て来るようになったのは、研究者たちが言うように、クマが増え過ぎたからではありません。クマに責任はありません。人間側に大いなる責任があります。

 

秋田市の市街地で連日、子グマの目撃が続いています。

市街地で母が殺されたのを知らず、母を探し続けている子グマなのかもしれません。

餌を求めて水路を歩いているうち、気が付いて地上に出たら、そこは市街地。人に見つかって逃げているうち、山に帰る道がわからなくなって、迷っている子グマなのかもしれません。

人情としては、水やえさはどうしているのか、心配になります。

子グマですから、殺傷能力はありませんが、市街地をうろついている状況は、クマにももちろん人にも良くありません。

秋田市はそのうち捕獲するのでしょうが、熊森本部は放獣または保護の要望を伝えてあります。

秋田県は全国で唯一、原則としてクマを放獣しないと決めています。

いつ秋田県のだれが決めたのか知りませんが、これ、おかしくないですか。

鳥獣保護管理法(環境省)に違反では?

本部のある兵庫県では、山の実り大凶作年の今年11月30日現在、クマの放獣216頭、殺処分105頭となっています。

人間でも動物でも可能な限りの生命尊重は、生物倫理の第一歩です。

 

秋田県はクマは山に放しても帰って来るといわれますが、秋田で実験されたのでしょうか。

兵庫県の放獣例では、8割は捕獲場所に帰ってこなかったそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋田での科学的なデータを出すためにも、今回、放獣を試してみられるべきだと思います。

もし、山が雪で、もう山にこの子グマを返せないというのなら、春まで保護してから返してやればいいと思います。

他県ではそういう例があります。

 

熊森が春までこの子グマを保護せよというのならしますし、お金も出します。

 

この提案は、直接的には子グマのためかもしれませんが、実は私たち人間に豊かな水源の森を残すことなのです。また、まわりまわって、弱者にやさしい人間社会を作るために欠かせないことなのです。秋田の子供や教育にどれだけいい影響を与えるか、はかりしれません。秋田の子供たちのためなのです。

 

クマすべて殺す秋田と言われるより、助けられる命は助ける秋田と言われる方が、秋田の物産や観光イメージにも限りなくプラスだと思います。

 

今年は東北地方は山の実りがよくて、秋田市でもお盆以来、クマの目撃はぱたりとなくなっていたそうです。そこにどういう訳か、今回のメスグマと子グマです。

自然界は、私たち人間にわからないことでいっぱいです。

 

今回の子熊を保護することで、困る人は誰もいないと思います。

クマは人間が日本列島に住み着くはるか昔から、日本列島に住み着いていた先住民です。

先住民に敬意を払うのは、後から来たものとしては当然です。

秋田県のクマ対応は、市町村ではなく県が決めるそうです。

ならば、秋田県担当者のみなさん、放獣または保護をお願いします。

 

目撃が続いている秋田市の子グマについて、熊森本部への問い合わせが多いため、今回、広報させていただきました。

 

ちなみに、人工林率が40%を超えるとクマは絶滅に向かうという説がありますが、秋田県の人工林率は50%です。

環境省令で指定管理鳥獣にクマ追加も、初年度から不適で、熊森はクマを外すか別案を提案

指定管理鳥獣とは、全国的に生息数が著しく増加していたり、生活環境や農作物、生態系に被害を及ぼしたりする野生動物で、集中的かつ広域的に管理(=捕殺)が必要な種に対し、国が大幅な個体数低減をめざして捕殺強化のための交付金を出すもので、2014年に鳥獣保護管理法に新しく導入され、シカ・イノシシが指定されました。

 

(熊森は、1999年に当時環境庁が個体数調整捕殺を導入しようとした時から、自然保護上からも生物倫理上からも、山の中にいる何の被害も出していない野生動物を個体数調整の名で人が殺すことに一貫して反対してきました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲睦まじい親子のヒグマ

 

今春、私たちが大反対したにもかかわらず、環境省は伊藤信太郎環境大臣が主導して、この指定管理鳥獣に、環境省令(=施行規則)でこれまでのシカ・イノシシに加え、クマを追加しました。

 

このような発想のバックには、クマが山から出て来て被害を及ぼす最大の原因は生息数の増加であるというクマ研究者たちの一方的で誤った考えがあります。

 

このクマ指定管理鳥獣、案の定、初年度から不適です。

 

以下、北海道のヒグマの例で見ていきます。

 

<北海道庁ヒグマ捕獲(=捕殺)新目標>

 

年間捕殺目標雌雄計1329頭、10年間で1万3290頭を捕殺する。

 

目標:人里周辺の森林に生息する個体を中心に捕獲を強化し、推定生息数を22年末の1万2200頭から34年末で約35%減の7931頭にする。

 

 

今年8月21日の道ヒグマ保護管理検討会では、検討会委員の一人である兵庫県立大の横山真弓教授(野生動物管理学)が、「10年で1万3290頭捕殺では不十分で、5年間で達成すべき」と主張していました。そうなると、毎年の捕殺目標は、2658頭になります。

 

ちなみに、山の実り大凶作の異常年となった2023年度の道内ヒグマ捕殺数は、最終統計によると過去最多の1804頭でした。

 

命あるヒグマをまるで工業製品でもあるかのように数字だけで機械的に扱うことを恐ろしく感じます。ヒグマは人間同様、豊かな感情を持ち親子の愛情も深い動物です。ヒグマをはじめとする北海道の野生動物たちは、北海道の豊かな自然生態系を形成してきた生き物たちで、人間から尊厳されるべき先住民です。クマ研究者の皆さんが作られた「北海道ヒグマ管理計画」には、クマが生存することによる恩恵を、今、私たち人間が受けているという視点が完全に抜け落ちていると感じます。

 

機械的な捕殺目標に基づき、問題を起こしていないクマも、子グマでも親子グマでも無差別に捕獲する個体数調整捕殺を止めるべきです。狩猟と有害駆除で十分です。

 

ところで、11月12日に報道されたUHB 北海道文化放送の番組によると、今年の北海道はこれまで長年続いていた秋の山の実り不作から一転して、10年ぶりにクマの主食であるドングリが大豊作です。

 

札幌市西区の登山道入り口に大量に落ちているミズナラのドングリ(UHB)

 

番組の中では登山者たちも、「10何年歩いていてこんなにドングリやクルミの実がなったのは見たことがない。今年は異常なほどの実りだ」  「すごく多いですよ。ドングリは大豊作。山ぶどうも多い。今年はクマ出てこないと思う。いままで出てきていたでしょ、エサなくてね」と語っていました。

 

ヒグマは今年の5月~7月はいつも通り出没していましたが、秋以降の出没がピタッと止まっているそうです。これまでクマと人の軋轢が増えるのは、クマ数の増加が問題とされてきましたが、熊森がずっと主張してきたように、クマの出没数は、山の中の餌量で決まることが証明されました。

 

道庁は、今年、どうやって1329頭(2658頭?)のヒグマを捕殺するのか。

山の中に分け入って殺すのでしょうか。捕殺する必要などあるのでしょうか。

これがクマ指定管理鳥獣初年度の実態です。

ちなみに今年10月末までのヒグマ捕殺数は579頭です。

 

クマという動物の特性を知らない一般の方は、今年ドングリが大豊作なら来年クマが爆発増加するのではないかと心配されているようです。

しかし、ヒグマは6月ごろの交尾期、オスの子殺しもあるそうで、生まれた子供が全て成長するわけでもなく、元々、クマは繁殖力の弱い動物です。

秋の実りの凶作年、十分な脂肪を貯えられなかったメスは受精卵を着床させません。

自ら個体数を調整する能力を持っているのではないでしょうか。

 

ヒグマだけではなくシカやイノシシに関しても同様ですが、野生動物と人が日本列島で共存するには、祖先がしていたように、使用する大地を分け合ってお互いに生息地を侵さないように棲み分けることが必要です。野生動物たちの聖域内で、彼らが増えようが減ろうが、それが自然なので、人間は何もしなくていいのです。

 

生き物にとって命ほど大切な物はないのですから、私たち人間は生き物を殺すことばかり考えずに、餌量が確保されるよう、戦後の国策であった拡大造林や奥山開発で人間が破壊し過ぎた生息地を再生させていただくこと、クマを初めとする森の生き物たちが安心して山で暮らせるように、人間が一歩後退して、原則として彼らの生息地に人は入らないようにすること、祖先が延々と設置していたシシ垣のように、被害防止柵を設置するといった棲み分け対策を優先すべきでないでしょうか。

 

クマとの軋轢を低減させたいのなら、まず、クマ生息地での観光開発や道路開発、メガソーラー、風力発電など自然破壊を伴う再生可能エネルギー事業をやめねばなりません。

 

環境省の職員の皆さんが、クマがシカ・イノシシのように捕殺強化だけにならないように、クマの交付金メニューに捕殺以外のものも入れてくださっています。しかし、地方自治体次第で、捕殺強化に偏る恐れがあり、そうなると絶滅が心配されます。元々、指定管理鳥獣はクマという動物の特性に合わないものなのです。(伊藤環境大臣の失敗です。)

 

浅尾慶一郎新環境大臣には、シカやイノシシと比べて繁殖力も弱く、生息数が3ケタも少ないクマを、シカやイノシシと同列に扱わないように、クマを指定管理鳥獣から至急外すことを、まずやっていただきたいです。

 

ただし、電気柵の設置や専門員の配置などの目の前のクマ対策に国からの交付金は必要ですから、指定管理鳥獣に、捕殺強化をめざさない種類をつくり、クマをそちらに指定する案などはありだと思います。

 

シカやイノシシも捕殺以外の方法で対処していけるようにすべきだと思います。殺しても殺しても、手を緩めるとすぐ元の数に戻ってしまいますから、無用の殺生になっています。これは残酷なだけで、永遠に殺処分が終わりません。明治にオオカミを滅ぼしたから、シカ・イノシシの数が制御できなくなったという説もあります。自然界のことは、調べても調べても人間にはわからないことだらけなのです。それが自然です。ただ、祖先の生命尊重思想だけは、子孫として忘れずに持ち続けねばなりません。(完)

 

みなさんのドングリで、「とよ」は今年も順調に冬ごもり前の食い込み

熊森が保護飼育の援助しているクマたちのために、今年も多くの方が公園のドングリや栽培クリ、果物などを送ってくださいました。
皆さん、毎年、本当にありがとうございます。

おかげで、とよは、ドングリ中心に1日約10キロ食べ続け、おなかの周りに冬ごもり用の分厚い脂肪層が付いてきました。

 

11月17日朝、九州で焼き畑にかかわってきた一人の青年が熊森にやってきたので、まず、とよのお世話の手伝いに行ってもらいました。

以下は、彼の感想文です。

 

とよ君のお世話を手伝って

本日、週1回のクマ舎のお掃除に同行させてもらえることに!!

今回、人生で始めて、クマを見させていただきました。

西宮市の熊森本部から車に乗せてもらって、クマ舎まで約1時間。

その間にクマのことなど、事前情報を色々聞く。

クマの種類はツキノワグマ。聞いたことはあったが、胸に三日月のような模様があるとのこと。

会う前からすごくドキドキわくわくしました。・・果たしてどんな子に会えるのだろう・・?

現場に到着して獣舎の鉄格子越しに初対面。

名前はとよ君。

 

・・・彼は、ただただ、猛烈にずっとドングリを食べ続けていました!!!笑

 

冬眠前にたっぷり食べるのであろうその本能というか、「食べる」ということに100%の意識が向いているクマがとっても純粋で。。。

 

 

下の写真は、ドングリから一瞬顔を上げた時のとよ君です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろんだけど、この時期、里山に降りてくるクマたちも、畑を荒らそうとかそのような考えは決して一ミリも頭にはないんだろうな。

冬ごもり前のこの時期、ただただ、食べることに必死なのだ。

この後、飲まず食わずで何か月間も厳しい冬を越さねばならないのだから。

とよ君のただ純粋なまでの、「食べる」ということに向けられた意識から、自然界で生きる動物たちの山と生きている一体感のようなものを感じました。

とよ君を通して、自然界に感動。

 

とよ君はこの時期、1日に大きな糞を10個するそうで、運動場には大量の糞がありました。70個?

糞の片づけを手伝いながら、クマの糞って全く臭くなくて甘酸っぱい香りがすることを発見しました。

 

日本全国から寄せられた、とよ君の大好物の種類(クヌギ)のドングリ、

寝床にするための無農薬の藁、

スタッフやボランティアの方々の丁寧すぎるほどの清掃、、、

 

過保護のようにも思えるほどの奉仕は、とよ君を保護すると決めたときに、全力で飼うという熊森の皆さんの決意の表れだったのですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おなかの周りに脂肪がたっぷり蓄えられたとよ

 

事務所に帰ってから、とよ君との出会いから飼うことになるまでの一連の経緯をまとめた特別報告をくまもりユーチューブ動画で見せてもらい納得。

 

熊森さんがずっと活動し続けてきた道のほんの少しを知れた感じで、あらためて熊森の皆さんに敬意を感じました。

この度は、急な訪問にも関わらず、貴重な機会を与えていただき、本当にありがとうございました!!

これからの活動に生かしていきます^^

 

とよ君おげんきでね~!!!

風車ができたらヒグマが出て来たと稚内の酪農家が証言 くまもり北海道が稚内で学習会

広大な土地を持つ北海道は東北と並んでメガソーラーや風力発電など、再エネ事業の草刈り場となっています。

再エネは、火力発電の何百倍もの土地が必要ですから、北海道のや東北の山間部や大地が狙われるのです。

 

道北の稚内ではもうすでに稼働している大型風車が188基もあります。

この1年間で44基増えました。

今後も続々と風車計画があがっています。

なんともかとも、もう信じられない思いです。

 

 

下の図は、稚内を中心とした道北地方のアセス中、建設中、稼働中の風力発電です。

クリックして拡大してから見てください。作成時のもののため、現時点と異なるものもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

佐々木邦夫氏Facebookより

 

 

 

 

 

こんな稚内で、10月13日、熊森北海道支部が風車学習会を開きました。十数名の方が集まってくださいました。

 

 

以下、北海道鈴木ひかる支部長からの報告です。

稚内に来ると、山の尾根筋にずらりと風車。ものすごかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稚内の山々の尾根に林立する風車群 クリックしてください。

 

 

地元で昔から代々酪農を営んでおられる方にインタビューしました。

風車ができたらヒグマが山から出て来た、電波障害が起きて携帯電話が使えなくなったと訴えられています。

 

 

 

すでに稼働している稚内の風車の騒音を録音してきました。

 

風車の音

 

この風車の騒音や振動、人間の耳には聞こえない超低周波音などに耐えかねて、山から出て来るヒグマなど森の動物たちを責められますか。

北海道庁は、ヒグマの大量捕殺を計画しています。

 

 

稚内風車に関する新聞記事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町を上げて風車推進の中では、稚内市民もいきなり反対の声を上げにくいと思います。
風車の真実を学ぶ市民学習会を市内各地で順次持っていくことが、まず必要だと思いました。

 

熊森本部から

北海道鈴木直道知事は、再生可能エネルギーの積極導入に熱心です。

北海道の自然を大破壊をして、東京などの首都圏に電気を送ろうとしています。

北海道の大地を愛する者ならできないのではないでしょうか。

稚内も市長以下、ほとんどの市議が風車推進派だそうです。

日本は、産業構造上、地方がどこも疲弊しています。

膨大な利益を得ることになる発電業者からのおこぼれのお金をたった20年間もらうために、地方はふるさとの大自然破壊行為を許すのでしょうか。一度壊してしまった自然は元には戻りません。

風車で命を奪われることになる鳥や獣や昆虫などは、どうなってもいいのですか。

未来の子供たちのことは考えないのですかと問いたいです。

 

 

自然の大切さを理解できるトップが、行政側にも企業側にもほとんどいないことが、日本社会の深刻な問題です。

 

風車には、バードストライクや騒音低周波音による風車病、山崩れなど、様々なデメリットがあります。

風力発電は製造から、発電中ずっと必要なバックアップ電源まで考慮すると、火力発電以上に二酸化炭素を出すともいわれています。

このようなことは国民には伝えられていません。

マスコミは、風力発電の負の側面や私たち国民の電気代から徴収されている再エネ賦課金を使って、どこの国が、どんな事業者が再エネで莫大な利益を得ることになるのかしっかりと伝えてほしいです。

 

ネットの時代ですから、国民のみなさんも、その気になって調べたら、今行われている再エネの嘘がわかってくるはずです。

要は、この国の未来に責任を持とうとしている大人がどれだけ我が国にいるかという問題だと思います。

再エネは、我が国の存続にかかわる重大問題です。やるなら、都市部と屋根置きまでにとどめるべきです。

 

再エネ業者に道徳心を失わせ、地元行政を狂わせている再エネ賦課金を即時廃止は見直すべきと考えています。(完)

9月24日奥山保全トラストと熊森が三重県大台町大森正信町長らを訪問

三重県の人工林率は64%と高率です。

 

そんな中、大台町の広大な山林676ヘクタール(池ノ谷:一部人工林を含む、父ケ谷:全山自然林)が売りに出され、当時のNPO法人奥山保全トラスト(現在:公益財団法人 奥山保全トラスト)は、何とか三重県に残された自然の森を守りたいと、全国民に寄付を訴え、2010年に見事、トラスト地としての購入に成功しました。

 

当時、ご寄付くださった方の多くは、地元を初め東京や名古屋など都市市民の皆さんで、都市の力が中心となって守った森と言ってもいいかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三重県大台町池ノ谷トラスト地

 

今回、本部は公益財団法人 奥山保全トラストの職員や、トラスト地の整備を毎年続けている熊森三重県支部の方たちと、久しぶりに大台町役場を訪問しました。

 

町長は大森正信さんという方になっていました。

大森町長は、「みなさんに大台町の水源の森をトラストしてもらって、本当にありがたかったです。中国が買いに来てたんです。」と、大喜びで私たちを迎えてくださいました。

あれから14年たっていますが、地元の皆さんに今もこんなに感謝されているのだとわかり、うれしかったです。

 

 

大森町長が私たちの訪問を喜ばれて、くまもりの森山名誉会長と固く握手(中央)

 

この日、大森町長、西尾副町長と共に、林野庁近畿中国森林管理局三重森林管理署の皆さんにも入っていただき、大台町の奥に広がる広大な久豆(くず)国有林と大杉谷国有林(どちらもスギやヒノキの人工林になっている)の今後について話し合いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大台町、奥山保全トラスト、三重森林管理署、熊森協会のみなさん

 

大森町長さんは、大台町としては全部元の天然林に戻してほしいと思っていると、森林管理署に強く申し入れられました。

昔の山や川をよくご存じの町長さんは、「昔は山から大量の清らかな湧水が湧き出し、宮川はすばらしく豊かな川だった。魚をはじめ生き物がいっぱい溢れていた。今は水量も激減。もっと水を流してくれと下流から言われるが、うちも水が必要だから、全てに応じられない。

宮川にダムを造ったことも失敗だった。ダムを造ってから、川の豊かさがすっかり失われてしまった。

宮川ダムを撤去したいと思って調べたら、ダムの部分の土地は今や大台町のものではなく中部電力のものになっており、できないことが分かった」と残念そうに言われていました。

 

広大な国有林に造ってしまった奥山人工林を今後どうするかは、林野庁の本庁が判断されるそうですが、林野庁としても地元の意向は無視できないとのことです。当面、林野庁としては国有林に至るまでの奥山道路の補修をしたいそうで、この予算が下りるのに5年ぐらいかかると言われていました。

 

大森町長さんに、「捕殺に頼らないクマ対策の提案書」を手渡して別れました。後から思うと、大森町長さんは私たちが提案書に書いたことを全部わかっておられたので、手渡す必要はなかったです。昔の大台町の山や川をを知っておられる町長さんの存在は大きいと思いました。

 

 

熊森から

 

「捕殺に頼らないクマ対策の提案書」について

 

<三重県のクマは保護対象>

広大で最高に豊かな森があって初めてのクマの生存が可能となります。戦後の林野庁の拡大造林政策によって、大半の山を人工林にしてしまった紀伊半島では、クマの生息は難しく、環境省は残り少ない紀伊半島のツキノワグマを絶滅の恐れのある地域個体群に指定しています。これを受けて三重県ではクマは保護対象であり、ずっと捕獲が禁止されてきました。

 

<今年、人身事故発生>

今年の8月14日夕方、音のする物を持たずに三重県の熊野古道をひとりで下山中の大阪の70代の女性がクマとばったり出会い、人身事故が発生しました。(クマに襲われたのではなく、事故です)

 

<三重県知事がクマを駆除対象にすると言い出す>

これを受けて、三重県の一見勝之知事は8月22日の記者会見で、県内のツキノワグマを「駆除の対象」に改めるよう、環境省に申し入れることを明らかにしました。知事に当選されるほどの方ですから、立派な方なんだろうとは思いますが、自然生態系の方の知識は不足のようです。

 

<知事や三重県議会議員の皆様に、三重県のためにもクマやクマの棲む森の保全・再生の必要性を伝えたい>

この日の午前中、私たちは三重県議会の大物議員を訪れ、クマのためにも人のためにも、クマを駆除するのではなく、奥山の自然再生が急務であると申し入れ、「捕殺に頼らないクマ対策の提案書」手渡しました。知事や議員の皆さんに自然界の仕組みについて伝える機会を作っていただきたいです。(完)

今秋も、兵庫県本部フィールド部隊はクマ防除現場に駆けつけています

9月以降、今年もクマの目撃情報が増えてきて、「クマの防除対策をお願いしたい!」と兵庫県クマ生息地のいくつかの地区からご依頼が入り始めました。

 

兵庫県は今年、ブナ、ミズナラ、コナラすべてが×という14年ぶりの大凶作の上、カキも不作です。10月末まで気温が高く、クマたちもどうしたものかと戸惑っていると思われます。その結果、今年9月末までの兵庫県クマ目撃数は605件と、昨年の同時期268件より大幅に増えています。今年9月末までの兵庫県のクマ捕殺数は78頭と、すでに今年度の捕殺上限を超えてしまっています(昨年度同時期の捕殺数は21頭)。今年、兵庫県のクマ狩猟は中止ですが、有害駆除は今後も続きます。

 

地区の皆さんは、「クマは来てもいいけど、人身事故が起きないようにしたい」とおっしゃって、クマ対策に取り組まれています。しかし、地元は過疎化や少子高齢化がすすんでおり、限界もあります。

 

そこで熊森本部職員に引率された都市部の会員を中心としたくまもりフィールド部隊が、助っ人として地元に入り、地元の方たちと一緒に作業をします。

 

人が利用しない集落近くの柿や栗の木はクマが来ないように伐採する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伐採木は、小さく切って邪魔にならないところへ置く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人が利用する柿の木は枝打ちした後、トタンや畔シートを巻いて、クマが寄り付かないようにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツキノワグマは臆病で、人間から身を隠せるような草場の中を移動することが多い。

そのため、草刈りはクマを寄せ付けない重要な対策のひとつです。

背丈よりも高い草は刈払い機を使って、木の周りや障害物周辺は、鎌で丁寧に手刈りしていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手刈り部隊のボランティアさんが、野生動物の糞を発見!

(クマっぽい糞ですね…)

 

 

 

 

 

 

 

 

シカなどが通った跡もありました。

 

 

 

↓草刈り前

 

 

 

 

 

 

 

↓草刈り後

 

 

 

 

 

 

 

同じ場所とは思えないくらい、とても綺麗になりました!

 

ボランティアの皆さんは、お住まいもバラバラ、年齢層もバラバラ。

皆さん、「地元の方の役に立てることを精一杯やろう」と一生懸命がんばってくださいます。

ちなみに今年の最年少は中学1年生の男子!

高枝のこぎりで、一生懸命カキの木の枝を切ってくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在進行形のクマ防除対策!

クマが冬眠するまでまだまだ続きます。

クマ防除ボランティアに参加ご希望の方は、ぜひ本部までご一報ください。

また「今年の最年少記録更新したい!」という若い力も大募集中です!

熊森本部 0798-22-4190

令和6年度兵庫県ドングリ類は14年ぶりの大凶作

2024年9月12日兵庫県庁環境部 自然鳥獣共生課 発表

(以下、概略)

兵庫県立森林動物研究センターが実施した今年のドングリ類(堅果類)の豊凶調査によると、14年ぶりの「大凶作」であることが判明しました。

 

 

 

 

兵庫県のクマ生息地域の多くで、今秋のツキノワグマの出没数は、過去5ヶ年平均の2~4倍になると予測され、冬眠前のクマが餌を求めて人里へ大量出没する可能性が危惧されます。

 

兵庫県に於ける今年度のクマの目撃・痕跡情報数は8月31日現在449件。
同時期としては平成13年度に統計を取り始めて以来の過去最高値。
この時期の過去最高は平成22年度の386件。(以上)

 

以下は、兵庫県資料を熊森がピックアップ表示

 

令和5年兵庫県のクマ目撃地

(色が濃くなるほど、目撃数が多い)

兵庫県のクマは北部に多く生息し、南西部にも生息しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

令和6年堅果類の実り(ブナ、ミズナラ、コナラ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年は、クマの生息地にほとんどドングリの実りがないことがわかります。

もっと詳しくお知りになりたい方は、以下の兵庫県資料をご参照ください。

 

 

熊森から

保水力抜群の巨木の奥山水源の森は、これまでクマを初めとする全野生動物たちが無料で造ってきてくれました。人間は彼らに深い感謝の気持ちを忘れてはならないと思います。清らかで滋養豊かな水が豊富に湧き出してくる森あってこその日本文明です。

 

クマたちの大量出没を考える時、私たち人間がまずしなければならないことは、生息推定数の計算ではなく、クマたちの生息地に、「飲み水と餌があるか」のチェックです。お店のない野生動物たちは、1日中その日の餌を探して歩いています。彼らの行動を左右するのは生息数ではなく餌です。

 

生息数が多くても、山に十分な餌があると里に出てきません。生息数が少なくても山に餌がなければ、最後の1頭が駆除されるまで次々と出てきます。

 

熊森のドングリ解説

ブナ

ツキノワグマは冷温帯の動物で、冬ごもり前に一番好む餌はブナです。しかし、ブナは豊凶が激しくて凶作年の実りはゼロです。ブナに頼っていては、凶作年餓死しますから、クマは他のドングリもあてにして生きてきました。

ブナは年平均気温が6℃~12.5℃の間でないと生きられないため、兵庫県では高い山が連なる鳥取・岡山・兵庫県境の狭い範囲にしか残っていません。近年、気温高温化が激しいためか、見るからに樹勢が衰えてきており、実っても、シイナと言って殻だけで中身のない実がほとんどです。もはやクマはブナに頼って生きることはできません。

 

ミズナラ

ブナほど豊凶が激しくないミズナラは、冬ごもり前の食い込み期にクマが一番あてにしてきた大きなドングリです。しかし、近年の気温高温化によって暖温帯から冷温帯に上がってきたカシノナガキクイムシによって、この虫に対抗する機能を持っていなかったミズナラは、一気に大量枯死してしまいました。(ナラ枯れ)

枯れ残ったわずかな木々に実りがあったとしても、以前と比べると木そのものがないのですから、採食できる量は激減しています。

 

その他のドングリ類

ミズナラほどではありませんが、ナラ枯れでそれなりに木が枯れてしまっています。

 

結論

昨今のクマは冬ごもり前に大量に必要な脂肪のたくわえを、何によって得るのでしょうか。
昨年、豊岡市では、それなりにコナラのドングリが実っている場所もあったのですが、なぜかクマたちが食べている形跡はありませんでした。

 

兵庫県のクマたちは、飲まず食わずで4~5か月暮らす冬ごもりのために、今後、何を食べて行けばいいのか、大変な飢餓状態となって苦しんでいると思います。

戦後の拡大造林政策によって、兵庫県のクマ生息地の多くはスギとヒノキの放置人工林に覆われ、下草も生えず荒廃したままです。

森林環境譲与税や県民緑税を使って、林業に適さない場所に作ってしまった人工林は伐採し、早急に野生動物に餌を提供できる天然林を再生してやるべきです。

 

熊森は、他の都道府県の状況も調べて、クマの保全とクマによる地元の被害防止対策を同時に考えています。

そのための全国的な調査や研究を、無償又は有償で手伝ってくださる方を募集しています。

将来的には職員登用の道もあります。

調査研究が好きな方得意な方は、ぜひご応募ください。

 

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