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原発再稼働と、各地の地下水脈分断がセットのリニアモーターカー

以下、熊森顧問でもある橋本淳司先生の週刊「水」ニュース・レポ
ート (2013年5月29日)より

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【今週厳選した「水」ニュース】
「リニア新幹線の早期着工を要請 愛知県知事らが太田国交相に」
(産経新聞、2013年5月27日)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130527/plc13052719030023-n1.htm
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〔ニュースを見る目〕

リニア新幹線計画の加速を伝えるニュースです。
リニア計画は国内景気の浮揚、海外へのインフラ輸出など、
プラス面が大きくクローズアップされていますが、
その一方で、地下水など自然環境に与える影響は大きいと考えら
れています。

また、原発を再稼働しなければまかなえない多大なエネルギーが
必要とされています。

その割には、こうした問題点がメディアに取り上げられることは
極めて少ないのではないでしょうか。

そこで今回はリニア新幹線と地下水脈について、これまでの記事
をおさらいしてみようと思います。
最初にこのテーマで記事が書かれたのは、いまから20年以上前の
ことです。

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「リニアへの期待と不安 生活・環境と調和課題」
(朝日新聞 1990年7月2日)
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というタイトルです。関連部分を引用すると、

「時速550キロを目指す磁気浮上式の
 リニアモーターカー新実験線の建設ルートに決まり、
 年内着工の準備が進む山梨県。
 将来のリニア中央新幹線(東京-大阪間)をにらんだ実験線と
 あって、ルート予定地周辺には見学客などをあてこんだ高層ホ
 テル建設計画も持ち上がり、沿線自治体は、実験線を地域活性
 化の起爆剤にしようと躍起だ。

 しかし、一方では地価高騰、自然環境の破壊、
 強力な磁場による人体への影響などを気遣う声も上がって、
 リニアブームは地元に期待と不安の渦を巻き起こしている」

とされています。不安や懸念という点では、

「県民には、未知のリニアに対する不安の声も出始めた。
 6月27日、ルートがかかる東八代郡御坂町で開かれた説明会で
 は、町民からトンネル工事に伴う地下水脈への影響や、磁場、
 騒音などを心配する質問が相次いだ」

「リニアについては、明るい面のPRが主で、問題点はあまり
 触れられていない。建設決定までの過程でも、住民の声が反
 映されていない」

と書かれています。

「明るい面のPRが主で、問題点はあまり触れられていない」

という点では、20年前も現在も同じです。

次の記事が書かれるのは、その5年後です。
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「客室や乗務員室、初公開 山梨リニア実験線3両編成で」
(朝日新聞1995年9月26日)
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記事中に、

「トンネル工事に伴う地下水脈の枯渇も不安視されており、
 今年2月には大月市で生活用水の水源が枯れるという問題が
 起こり、実験線のトンネル掘削工事が原因とみられている」

と具体的なトラブルについて触れられています。

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JR東海 リニア調査本格化 南アルートで水平ボーリング
(『FujiSankei Business i.』2008.2.15)
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では、
長野・山梨両県にまたがる南アルプスを横断するトンネルの
水平ボーリング調査について書かれています。

「水平ボーリング調査は、山梨県早川町と長野県大鹿村から、
 それぞれ直径10センチの穴を3キロずつ掘り、
 地質や地下水脈の状態などを調べる」

とされています。その後の調査結果についての記事はありま
せん。

ですが、すでに山梨県内で住民に話を聞くと、

「地下水脈が各地で分断され、
 川の水が干上がったり井戸枯れが起きたりしている」

というのです。

2011年になると、地元紙『信濃毎日新聞』が、
リニアモーターカーについて精力的に書き始めました。

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[特集]リニア県内中間駅案公表 沿線に文化財点在 地下水脈
保全も必要(『信濃毎日新聞』2011.8.6)
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この記事は至極真っ当で、
計画推進に当たって、自然環境への影響を十分に調査し、
影響が出るとわかった時点で、変更すべきとしています。

「トンネル掘削に伴う地下水への影響は十分な対策が必要だ。
 これまでも新幹線などのトンネル工事で周辺の水源が水枯れす
 るケースが出ている。

 自然環境への影響だけでなく、
 飲用水や農業用水など住民生活への影響も出かねない問題だけに、
 慎重な検討が求められる。

 概略路線内には「市民10万人の水がめ」として飯田市が保全を求
 めている風越山の山麓に湧き出る環境省の名水百選「猿庫(さる
 くら)の泉」や県営松川ダムもある。

 JR東海はこれらを避け、南側を通る路線に絞り込むことも可能
 としている。
 ただ、地下水脈は複雑に入り組んでいる可能性もあるため、
 事前にボーリング調査などで周辺の水源の位置や使用状況のデー
 タを集めて影響の度合いを予測し、
 具体的な路線を設定する際には回避するように準備を進めること
 が必要だ」

さらに同じく「信濃毎日新聞」の記事です。

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リニア時代(12)=巨大アセス本格化へ(2)
沿線水資源の影響 完全回避困難…折り合いは
(信濃毎日新聞 2011.11.09)
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「整備新幹線の建設主体として、
 さまざまなトンネル建設の実績を持つ独立行政法人鉄道・運輸
 機構でさえ、山梨リニア実験線延伸のトンネル工事で2009年、
 付近の「水枯れ問題」を引き起こした。

 南アルプスの長大トンネル(延長約20キロ)は、地表から最大
 1400メートル下の深い地中を掘削する。
 JR東海は「地表面への影響は小さい」とするが、
 「大きな地下水脈に当たった場合、トンネルが深いほど影響を
 及ぼす範囲が広くなる可能性もある」と複数の専門家は指摘す
 る。

 水源の完全回避は難しく、影響があれば事後対応。
 生活や経済活動に欠かせない水の保全がそれでいいのか。
 沿線地域とJR東海がどう折り合って対応すべきか、きちんと
 議論する必要がある」

いちばん直近のものは2012年6月の「朝日新聞」です。
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市有地9カ所で調査許可申請 リニアの環境影響評価で 川崎市
にJR東海(朝日新聞2012.6.9)
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「リニア中央新幹線をめぐり、
 JR東海は、川崎市に対し、市有地9カ所で地質などを調べる
 許可を申請した。
 環境影響評価の一環で、植生を調べたり、ボーリングをして
 地質や地下水脈などを調べたりする」

「一方、「リニア新幹線を考える東京・川崎連絡会・川崎」は
 騒音や振動、磁場の影響、電力消費が多いことなどを理由に
 、建設に反対している」

このテーマでまとめられた記事は、わずかこれだけしかありま
せん。ざまざまな課題を抱えながら、報道は皆無に近いと言え
るでしょう。

JR東海が名古屋に向けて進める工事は、

「ほとんどトンネル内だから、環境に負荷がない」

と言われていますが、地下水脈を分断することはないかなど、
リニア計画を検証し、賢明な選択をする必要があるでしょう。

<熊森から
さすが、橋本先生は、どんどん調査を開始されています。山梨
県立大学伊藤洋学長は、中央新幹線リニアモーターカーを動か
すには、原発3基~5基を動かす必要があるという。

現在、山梨県のリニア実験線の主な電力供給源は、東京電力
柏崎刈羽原発(新潟県)であり、現在、走行実験は休止中。

リニア建設に反対するJR東海労働組合小林書記長は、JR東海
は、リニアのために原発を再稼働させようとしていると言っ
ているそうだ。

熊森は涙ぐましい努力をしてこの20年間、日本の森や動物を、
守ろうとがんばってきました。
リニアは、ほとんどトンネル内を走るので、
環境負荷はないと勘違いしている人がたくさん
おられます。
しかし、トンネル造りは、水脈を各地で分断させるため、広範
な森を劣化させ、大量の動物が生きていけなくなると、熊森は
予測します。
山に1本の苗木を育てるために、どんなにみんなでお金を出し
合ってこれまで世話して苦労してきたことか。そんな活動を
してきた熊森だからこそ、天文学的な数の木々や生物を消滅
させるリニア建設には、黙っておれません。

森や動物をこれ以上痛めつけないように、リニア建設をやめ
ていただきたい。
ここまで国土を自然破壊してきた今となっては、お金よりも
命や国土の自然環境保全の方が大切です。
どうしても造らねばならないのなら、トンネルではなく、
せめて水脈を切らなくてもよい平地を走らせてください。
水を失った文明は滅びるからです。

未来と他生物への責任のための熊森の主張です。
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