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「若者よ、狩りに出よう」 獣害対策の担い手作り促進  という福井県地元新聞記事を読んで

以下、熊森関係者から届いた文です。

環境省主催の「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」が福井県
で開催されたことを伝えるニュースです。同フォーラムは、
これまで9県で開催されてきました。

環境省はハンターを増やし、獣害を減らそうとしています。

農作物がシカやイノシシに荒らされる被害が多発し、農家が
困っているという事情はわかります。

それについては何らかの対策が必要だと思います。

しかしながら、「すごいアウトドア!!」「あなたの知らな
いハンティングの魅力とは!?」などと遊び半分でハンター
増やす環境省の政策には違和感を覚えます。

安易に動物の命を奪うことであり、そもそも根本的な問題解
決にはならない可能性もあります。

たしかに森でクマに出合うケースが増えていますが、本来ク
マは臆病な動物で人と出合うことはありません。人の気配を
敏感に感じとり、クマのほうから避けます。

ではクマが頻繁に人の前に姿を現すようになったのはなぜか。
これは原生林が伐採されたり、あるいは人工林に代わったの
ちに放置されたために、動物の水やえさがなくなったことが
原因の1つと考えられます。

クマはもともと広葉樹の原生林にすんでいました。

広葉樹林は、自然界の母ともいうべき存在で、秋には実をつ
け生物に餌を提供し、晩秋、土のうえに葉を落とし、土壌を
豊かにします。

落ち葉が腐ってできる腐葉土は1年で1ミリ程度とされ、何百
年もかけてできた30センチくらいの表土で覆われると安定し
た森になります。

この土壌にしみ込んだ雨が、清浄な地下水となり、あるいは
湧きだして、生物にとって(もちろん人間も含まれます)の
命の水となります。

ところが原生林は減少の一途をたどってます。クマの出没は
このことと関係しています。

それはシカも同じです。

環境省や自治体はシカの年間捕獲目標を拡大しようとしてい
ます。

そして「シカの増加はハンターが減少したからだ」ととなえ
る研究者もいます。

「すごいアウトドア!!」「あなたの知らないハンティング
の魅力とは!?」などと遊び半分でハンター増やす環境省の
政策もこれに基づくものです。

この説明で使われる図表は「全国狩猟者登録数の推移」の
1975年以降の部分です。

http://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/menkyo.pdf

これを見るとハンター数は1975年~79年をピークにして減少
しているので、ハンターの減少が獣害の増加の原因と見るこ
とができます。

ですが、「全国狩猟者登録数」は1950年10万人以下と現在よ
りも少なかったのです。そして、その頃には獣害の報告はほ
とんどありませんでした。

つまり、統計資料の都合のよい部分だけ抜粋し、政策の正当
化を図っていると見られてもしかたがないのです。環境省は
「全国狩猟者登録数」の1920年から現在至るまでをオープン
にしてから、ロジックの再構築をすべきでしょう。

実際には、シカの捕獲に力を注ぐのは対症療法に過ぎないの
ではないかと思われます。

なぜクマやシカが人里に出てくるのか、根本的な原因を考え
て対策を立てるべきです。

多くの奥山がスギの木材生産地となり林道が張り巡らされ、
近年は戦後植林されたスギ・ヒノキの人工林が放置され、ク
マやシカは棲みかを追われました。

やるべきことはクマやシカのすむ場所をいかに保全するかで
す。

とりわけクマは生態系ピラミッドの頂点に立ち、生活のため
に大きな面積を必要とすることから「アンブレラ種」と呼ば
れます。

このような種の生息環境を保全することが、その傘下にある
その他の生きものを環境改変などの風雨から守ることにつな
がります。

忘れてはならないのは、そうすることが森を守り、水を守る
ことになり、人間の生活にとってもっともメリットがあると
いうことです。
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