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「クマが怖い」という言葉が怖い 

「クマにあったらどうするか」(ちくま文庫)を読みました。アイヌ最後のクマ撃ちと言われる姉崎等氏から見た、北海道のクマと森が語られており、大変興味深い本です。

姉崎氏は2013年に90歳で亡くなられています。姉崎氏の語りをこの本にまとめられた片山龍峯氏も、もう亡くなられています。

生前、熊森と接点がなかったことを本当に残念に思うと共に、本を残してくださったことに心から感謝します。

 

「クマは私の師匠」と生前語っていた姉崎氏は、クマを追う一方、広葉樹の少なくなった山を憂えて、クマが暮らしやすい自然環境を守ること を訴え続けておられました。木の実がならない針葉樹の人工林が増えることの弊害と、クマが暮らせる山の自然を守ることの 大切さを訴え、「動物と人間の境界線が大事と考えていた」と娘さん。クマを知り尽くした人の語る言葉は貴重です。ブログでも何度か紹介していきたいです。

 

以下、ある章の姉崎氏の言葉をまとめてみました。

(1)「クマが怖い」という言葉が怖い

クマが怖いものだっていう、その言葉が怖いんだよね。クマが暮らせるようなある程度の環境を作ってやると、クマはそんなに怖くないんだってわかると思う。

山で働く人たちは、クマの足跡を見ても、「おう、クマの足跡だ」って普通に思っているだけ。クマがいるんだけど、それで人を襲うかっていうと襲わない。

いつの間にか、人もクマも学習して、出会わないようにうまく暮らしている。

ところが都会近くにクマが出たら、集団下校だとか、ハンターを頼んで山をワーワー騒がしくする。するとクマの方もいつもと様子が違うから、精神的に緊張する。

クマに対して人間も学習しないといけない。クマは危険なものだっていう考え方を改めないといけない。一般の人がクマを見ると、クマに襲われた本や新聞を見て、すぐに危ないと騒ぐ。人もクマもゆっくり学習できる時間が必要。

 

(くま森から)

「クマが出た」と、テレビで連日、大の大人がギャーギャー騒ぎ立てるのを、本当にやめてほしいと思う。

クマが人間の所に出て来て何をしたかというと、何も変わったことなどしていません。お腹がすいたから、何かを失敬して食べただけのことです。動物だから、おなかがすくし、山にえさがなければ、生きるために山から出て、里に食べ物を探しに来る。当たり前のことです。

キャスターは、落ち着いた声でゆったりと解説してほしいと思う。ギャーギャー騒ぎ立てて報道すると、そんなに大変なことなのかと、国民がクマを怪物のように恐れだす。まさに、その言葉が、クマを怖くするのです。

 

今、姉崎さんの言われるように、動物と人間の境界を再構築することが大事です。その時、クマと人の境界がなくなる原因を作ったのは、クマではなく一方的に人間であったという事実は、人として忘れてはならないでしょう。

 

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