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4/20札幌でヒグマが射殺された事件に対する当協会顧問 門崎允昭博士の見解

以下の文は、門崎允昭博士が、北海道野生動物研究所のHPに掲載されたものです。

<またしても、愚かな札幌市の熊対策>

  • 2012年4月20日、「札幌市南区藻岩下1」の藻岩山山麓端の樹林地で草などを採食していた若熊を、朝6時半頃、猟友会のハンターがライフル銃で、危険予防の駆除と称し殺したが、これは正に生物倫理に反する行為である。
  • 殺された熊は、19日と20日の報道映像で見たところ、身体の大きさと一瞬写し出された犬歯の大きさから、2歳2ヶ月令の個体のようであった。
  • こ の熊は最初に目撃された19日以来、住宅に近い場所とはいえ、あくまで林地内で草などを採食しており、住宅地に出て来た様子も、出て来る様子も見られな かった。熊がいた場所は樹の葉が茂ると、外部から見え得ない環境であり、葉がなく外部から樹林地内部が見通せる今時でも、熊からすれば安心できる己の環境 であり、それが人家から20~30mのところでもそうなのである。このような場所では、熊が人を気にせず、恐れないのも当然で、それゆえに、そこで草など を採食していたのである。映像に写し出された熊の顔・表情を見れば、熊は安心しきって草を食んでいたではないか。そ の熊の心も見切れないで、熊がいる場所が人家に近くで、危険だから射殺した。そして、人を恐れない「新世代熊」(北大教授の坪田敏男「4月21日道新25 面」の可能性がある)とのコメント。これは、射殺行為を正当化する欺瞞さ傲慢さと、熊の生態についての無知をさらけ出したもので、あきれるばかりだ。
  • だ から、殺すべきではなかったと私は主張したい。私はこれまでの43年に亘る熊の諸々の調査研究結果から、この熊は住宅地に出て来る心配は無いと確信してい たが、どうしても居住地に出て来る心配危惧があれば、あの林地の縁にそって、200m程電気柵(移動式のソーラー式があり、容易に設置できる)を臨時に張 れば、まず生態的に熊は出て来ない。これもせずに、殺した事は、生物倫理(生物の一員である人として、他種生物に対する正しき道の問題として)にも恥ずべ き行為である。
  • 札 幌市は今年も約八千万円もの熊対策費(調査費)を付けていると言う。その金で電気柵を幾組か購入し、今回のような必要箇所に必要が生じた時に、設置した方 が、よほど市民と熊に寄与するはずである。はっきり言って、札幌市の熊対策で、公金を8千万円も出して調査せねばならないことなど、無いと言いたい。熊が 何頭いたって良いではないか。住宅地と熊の棲み分けを図れば良いのである。熊が出てきそうな場所は既に、過去のデータから、わかるはずだし、不明な箇所は 人家から100~200mの範囲の樹林地の地理的環境とそこでの熊の痕跡調査をすることで解明できる。それにしても、札幌市とこれに関与している、北大閥 のヒグマムラ(羆村:研究者集団?)は愚かとしか言いようがない。

ところで、私 も顧問をしている「日本熊森協会」が、道庁と札幌市に、今回の熊駆除について、問い合わせしたところ(4月20日に)、道庁の自然環境課 動物管理グルー プの熊担当者(アズマ氏)は①熊駆除の権限は道庁にある。しかし②実際は市町村に任せている、との答えだったと言う。 札幌市の担当課は①猟友会に任せている。②今回の件については、「今回の熊については、殺せとは言わずに、熊が出ているから、宜しくお願いします」と言っ たと言う。

なんと、無責 任な対応であろうか。  これに関連して、道庁の出先の環境研の間野勉課長は北海道新聞4月20日付けに、この熊がここに(藻岩山山麓端の樹林地)いることについて、①植物の新 芽を食べに来たか、②好奇心で来たかで、昨年秋に出没した個体と同じ熊で、人を怖れない「新世代熊」の可能性がある、とコメントしている。ここで、私が指 摘したいのは、「②好奇心で来たか」と言う文言。熊が住宅地に出て来る原因は4つあって、その一つに「好奇心で出て来ることもある」と言ったのは、私が最 初で、これは20年も前のこと。彼らはこれを、今まで無視し続けていたが、ついに、それを言い出したのには、滑稽としか言いようが無い。
この大地は人間だけの物では無い。総ての生き物の共有物。

熊を極力殺さずに、しかも各種被害を予防しつつ、共存すべきである

(2012年4月21日記)。

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