くまもりHOMEへ

くまもりNews

動物の棲める森を復元し続けているクマ生息地の幸福さん


2004年から日本熊森協会と強力にタイアップして奥山保全・復元活動に取り組んでおられる兵庫県宍粟市のクマ生息地にある兵庫一大きい原観光リンゴ園の専務理事である幸福重信さんを、3月20日、熊森本部スタッフ4名で訪問しました。(写真は幸福さん)

幸福さんは、かつて営林署の職員として、国有林の広葉樹林を伐採してスギ・ヒノキに植え替えていかれました。その後、過疎化高齢化が進むふるさとを活性化させようと兵庫県で初めてのリンゴ園作りに取り組まれます。そのリンゴ園を平成16年に台風16号が直撃し、7割以上のリンゴが落ちてしまいました。さらに、その年は奥山もかつてない大凶作で、空腹に耐えかねたツキノワグマが毎夜5、6頭やってきて、残りのリンゴを全て食べ尽くしてしまいました。

ふるさとのために地域の組合員と一緒に開園したリンゴ園が、窮地に追い込まれたのです。クマが憎い、けれども周りの山を見てみると7割以上がスギの人工林でした。天然の広葉樹林を針葉樹林に変えてしまったことを後悔されました。クマも被害者だったと、この時気づかれたそうです。

それ以降、大凶作年でクマがリンゴ園にやって来る年には、幸福さんは日本熊森協会などと協力して、おなかをすかせた森の動物たちのために、リンゴ園の外にどんぐりや落ちリンゴなどを置いてやっています。そうすることで、クマだけでなく鳥や蜂に商品用のリンゴが食べられることも防げるようになったと喜んでおられました。

幸福さんはかつて赤坂御所にて天皇・皇后両陛下に面会し、「全ての生物が共生できる豊かな森づくりに生涯を捧げます」と宣言されたそうです。現在、針葉樹林での間伐や広葉樹の植樹を積極的に行ない、森の復元に全力を注いでおられます。

先日、県庁主催の会議の席で、兵庫県内のある町長が、「農業のことをもっと考えて、動物をもっと殺してください。」と県に訴えておられたことを話すと、「農業を守っていくということは、動物を殺すということではない。農・林・漁業は結びつけて考えないといけないよ。人間が森林を針葉樹の単一林に変えてしまったから動物が住めなくなったんだよ。だから、多様な動物が住めるように人間がもう一度手を入れないと」と、おっしゃいました。

「昔は農と林は結びついていた。水は田んぼから生まれないんだよ。水は森からだ。森がつくったきれいな水を川が海に運んでいく。これが自然界の循環だ。これを守ることが、持続可能な生き方だよ。」「人間だけが生きていける環境なんかないんだ。動物たちが食べられる物を山に植えて、動物たちが安心して暮らせる場所を作ってあげる。そうすることで動物たちが人里に出てこなくなる。人と動物がいがみ合う時代はもう終わったんだよ。」と言われる幸福さんは、昨年だけでも50回ほどメディアに取り上げられました。全国からたくさんの応援の声が届いたそうです。ほとんどの日本国民は、幸福さんと同じ気持ちだと思います。

人間が犯した過去の失敗をバネにして、自然との共生に熱心に取り組む幸福さんの一言一言には、どんな論文よりも強い説得力がありました。全国各地でこのような野生鳥獣との共存、森の復元再生の実践活動に取り組んでおられる方、ぜひ日本熊森協会までご一報ください。動物たちや自然のために何かしたいと考えておられる全国の方がたに、あなたのお話を紹介させてほしいのです。

(原リンゴ園に隣接する地区共有のスギ人工林を強度間伐した場所。植樹したミズナラやコナラなどのどんぐりの木が立派に育っている。クモもやってきて、巣を作りだした。)

フィード

Return to page top