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ヒグマの背こすり 北海道遠軽町

お盆の帰省中である8月13日、北海道遠軽町でヒグマの追い払いを行っている岩井基樹さんを訪ね、調査されている森を見せていただきました。

ヒグマの爪痕

 

森に入ると、エゾマツやトドマツの木にヒグマの爪痕が付いていました。ふだん、柿の木などについたツキノワグマの爪痕を調査している私にとって、ヒグマの爪痕は、さすがに大きく感じました。

砂利道の林道を車で進んでいくと、ヒグマの大きな糞がありました。

フキノ葉を食べたヒグマの糞

 

中身は、ほとんどがフキです。周辺には食べても食べても食べきれないまでのたくさんのフキが生えており、夏のヒグマの主な食料源となっています。

糞の臭いを嗅いでみましたが、臭いはほとんどありません。

クマは消化力が弱いので、食べたものの臭いが糞にそのまま残されます。ふつう、臭くないのが特徴です。

ツキノワグマはもちろんですが、ヒグマもほぼ植物食です。

北海道の「ヒグマの会」副会長の山本牧氏の講演によると、1970年代、1980年代の ヒグマの糞を調査したところ、98%が植物質で、残りの2%は、アリ、ザリガニ、自分の体を舐めた体毛で、ほぼベジタリアンだったそうです。

最近は、有害駆除されて山に放置されたシカの死体や山すそまで農地化された畑の農作物や牧草も食べるようになりました。

クマは人間と同じく雑食性ですから、環境の変化で食べ物も自由に変わります。人間が、クマの食性を変えているのです。

 

 

しばらく進むと、エゾマツの木に大きな爪痕が2つついていました。木に登った様子もなく不思議な爪痕であったため、岩井さんにきくと、

「これは、ヒグマが背こすりをした爪痕です。この木には何度か背こすりしに来ています。」

と教えてくださいました。

ヒグマが背こすりに通うエゾマツ(この奥は人工林)

 

クマの4つの足では、かゆくなっても背中をかくことができません。

背中がかゆくなった時は、背中を木の幹に当て、2本の前足を後ろ手にあげて木に爪をたて、体を固定します。

そして、背中を動かして木にこすりつけます。

この時についた爪痕だそうです。

よく見ると、幹にヒグマの毛がたくさんついていました。

どのクマか知りませんが、なぜかこの木が気に入って、何度もこの木に来ているそうです。

北海道には、熊の住む豊かな森がまだまだ残されています。

 

下の写真は、実家近くの裏山です。

下層植生も豊かな森

 

ここは市街地に近いのですが、時々ヒグマの目撃があるようです。

ここで暮らしていた時には、このような森を当たり前に思っていました。

しかし、熊森で仕事をするようになって、全国各地のクマ生息地を歩く中で、故郷の森がいかに豊かで貴重な森であったのかわかるようになりました。

兵庫県をはじめ、食料の乏しい荒れた森に棲んでいるクマたちに、北海道の豊かな森を分け与えてやりたいです。

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