くまもりNews
兵庫県環境審議会が、審議らしい審議もなく、今年もクマ狩猟を原案通り承認 茶番100%
9月4日、今年の兵庫県クマ狩猟をどうするかを決める兵庫県環境審議会鳥獣部会が、兵庫県庁北、のじぎく会館で持たれました。
直前の8月30日の兵庫県のホームページに審議会開催の予告が出ましたが、気づいた県民はまずいないでしょう。
傍聴者は熊森本部からの3名のみでした。
前の7名は審議会委員のみなさん、後方の大勢の方は行政担当者
会の冒頭、兵庫県秋山環境部長から、本審議会で、「ツキノワグマの狩猟による捕獲等の制限について」ご審議願いますという挨拶がありました。
この後、部会長の兵庫県立大学江崎保男教授の進行で、まず、兵庫県鳥獣対策課の藤本副課長が配布資料に基づき諮問内容(=意見を求める内容)を説明されました。
(主な諮問内容)
平成28年度兵庫県ツキノワグマの推定生息数がMCMC法によるベイズ推定で中央値が897頭であり、環境省狩猟基準の成獣800頭を超えているに相当するため狩猟対象とする。
クマは冬眠するため、狩猟期間は11月15日~12月14日とする。
狩猟者一人当たり原則1頭。安全講習会を受講すること。
依頼事項として、親子グマは捕獲しないこと。
捕殺上限設定は、(環境省規定では、通常、推定生息数の12%以下だが、)兵庫県の場合は分布域拡大により人間との軋轢が増加しているので、人身被害、精神被害、農林業被害防止のための有害捕殺と合わせて(環境省規定最大の)15%を捕殺上限とする。
897頭×0.15=134頭が捕殺上限
()内は熊森捕捉
この後、兵庫県森林動物研究センターの廣瀬専門員から、ツキノワグマの目撃数や捕獲数が増加していること、生息域が阪神間北部にまで拡大していること、今年からゾーニングを取り入れて、個体数低減のために集落内だけではなく集落から200メートルまでのクマを有害捕殺していること(8月末までの有害捕殺は28頭)、昨年度人身事故が4件発生したこと、昨年度のツキノワグマ狩猟数は4頭だったことなどについて報告がありました。
また、昨年度のクマ狩猟講習会参加者140名に狩猟後アンケートを取ったところ、122名から回答があり、クマを狙って獲ろうと思った人は23名、後の8割は、狩猟中にクマに出くわしたら撃てるようにしておこうと思った人で、実際に山でクマに出会った人は16名だったそうです。
熊森は、行政のクマ対応を聞いてずっこけました。
●人間活動によって大荒廃している餌のない山の話に全く触れられていない!
●全国一律の環境省基準に、兵庫県の特質も考慮せず機械的に数字を合わせているだけ
●相手(クマ)の立場に立って考えることがさっぱりできていない
兵庫県と比べ物にならないほど森が深く豊かで人口密度の低い東北などのクマ狩猟県と同一基準で捕殺するのは無謀です。
人間が壊した生息地の復元も出来ていないのに、人前に出てきたクマを数が増えすぎているなどと安易に判断して捕殺するのは誤りです。
また、MCMC法によるベイズ推定を使用するとお好みの生息推定数にできると専門家によって指摘されているのに、耳を貸そうともしていません。
これでは、とてもクマの保護など任せられないと思いました。
クマがこの審議会を傍聴していたら、あまりの人間の身勝手さ残酷さに泣いたと思います。
山に食べ物がないから、人里に出て行っているのであり、ドーナツ化現象を起こしているだけです。
狩猟で人間の怖さをクマに教えると言いますが、今、銃の性能が飛躍的に向上しており、クマを追い掛けまわす必要はありません。
狩猟でクマを撃ち殺してしまうと、人間の怖さを知ったクマはいなくなります。
さあ、ここからが審議です。
しかし、委員の先生方の発言は誠に低調で、先程の兵庫県の説明に少し質問がある程度、兵庫県がそのたびに長々と答えていました。
諮問内容に対する意見は無きに等しかったです。
しいて意見らしきものと言えば、猟友会の方が発言された、「狩猟圧をかけて何度クマを追いやっても、奥山が豊かな森でなければまた出てきます。奥山生息ゾーンという名を、豊かな森ゾーンというようなインパクトのある名前にして、みんなで豊かな森について考えるべきではないでしょうか」だけでした。
しかし、この意見は流されました。
こうして、この審議会によって諮問内容は何一つ審議されないまま、原案通りの審議会答申となるのです。
これを茶番と言わずに何というのでしょうか。
熊森は25年間クマ問題に取り組んできた熊森の副会長を審議会委員に入れてほしいと、ずっと兵庫県にお願いし、面接まで受けましたが、はねられました。
熊森メンバーが審議会委員に入れば、現地を調べ続けているので、山のように意見が言えるのにです。
どこでも行政は、審議会をセレモニー的なものにしておきたがるようですが、そんなことではいい国が造れません。今のような体質を、とても残念に思います。
喧々諤々の議論があって初めて人々の思考は深まるのです。
帰宅後、審議とは何か、辞書で調べてみました。
ある物事について詳しく調査・検討し、 そのもののよしあしなどを決めることとありました。
かくして、今年も哀れ、山の中にひそんでいるクマまでが、「すごいアウトドア」として、ライフル銃で人間の楽しみのために撃たれるのです。
地元では、動物なんて殺してしまえという大きな声の人の陰に隠れてしまっていますが、生息地を破壊しておいて殺すことに胸を痛めておられる方は猟友会員も含め、何人もおられます。
みんなで、おかしいぞの声を挙げましょう。
でなければ、行政の方々は気づかれません。
肩書は立派だが野生動物を殺すことに何の心の痛みも感じない特殊な人の言いなりに動かれてしまいます。
以下、 NHK テレビ 関西 版 9月8日
兵庫 クマ狩猟ことしも解禁へ
ツキノワグマの住宅周辺への出没が増えていることなどから、兵庫県の環境審議会は、去年、20年ぶりに解禁したクマの狩猟をことしも認める方針を決めました。
動物の研究者や猟友会の代表などでつくる兵庫県の環境審議会は、県内のクマの生息数が去年4月の時点で897頭と推定され、狩猟が妥当とされる800頭を上回っているとしています。
またことし4月から7月までのクマの目撃などの出没件数が、去年の同じ時期を100件以上、上回る306件にのぼり、4月以降、2人が襲われけがをしているということです。
このため審議会は生息数の調整が必要だとして、去年、20年ぶりに解禁した狩猟をことしも解禁し、11月15日から1か月間、134頭を上限に狩猟を認める方針を決めました。
審議会の委員で、兵庫県森林動物研究センターの横山真弓部長は、「クマの出没が増え、人的被害も起きていて狩猟による捕獲が必要だ。また、クマを人里に寄せつけない取り組みも求められる」と話しています。
一方、(審議会を傍聴していた)西宮市の自然保護団体、「日本熊森協会」の森山まり子会長は、「森林(奥山)の環境が整備されていれば、里山からクマが下りてくることはない。狩猟ではなく、共存の方法を探るべきだ」としています。