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4月21日、クマ保全未曽有の危機の中、第27回くまもり全国大会盛大に開催①
- 2024-04-24 (水)
- くまもりNEWS
4月16日、伊藤信太郎環境大臣が、クマを指定管理鳥獣に指定すると発表しました。
マスコミは、これで国の交付金を用いてクマを捕獲したり被害防除したりできるようになりますと、一斉に報道。
問題は山や人ではなく、クマに原因があるとの誤った報道が、全国に広がり、クマはさらに追いつめられた状況におかれています。
まさに、クマ保全未曽有の危機です。
クマが棲めないほど山の荒廃が深刻で、捕獲を強化しても何も解決しない。問題の解決には山を豊かにし、人とクマの棲み分けこそ支援すべきという、熊森の主張はメディアにほとんど取りあげられません。
そんな中、第27回くまもり全国大会開催が熊森発祥の地、兵庫県尼崎市で開催されました。
今年も、新潟県の法人会員マルソー株式会社様から見事な祝い花が届けられ、会場入り口は華やかな雰囲気に包まれました。
豪華な祝い花
以下はプログラムです。
プログラムの裏には、3名の顧問の先生方が寄せてくださった500文字のコメントが掲載されていますので、それをまず、ご紹介したいと思います。
●環境省は何の為にあるのか
宮澤 正義 顧問(長野県 日本におけるツキノワグマ研究第一人者)
第27回熊森全国大会おめでとうございます。
私は、昭和2年生まれの97歳です。もう限られた時間の持ち合わせしかありません。熊森本部、支部の皆様の献身的なはたらきに、いつも感謝しています。
今回、愚かな環境省がクマを指定管理鳥獣に指定してしまいました。熊森の皆様の、クマをシンボルに日本の水源の森を保全・再生しようという27 年間にわたる大変な努力を、無駄にしてしまいかねない暴挙です。
病気治療の目的の方が奥山の温泉を訪れたりすることは否定しませんが、元気な人たちが、最近では300 名山までリストアップし、奥山にどんどん入り込んで行く。そのために、そこでしか暮らせない野生動物たちが蹂躙され、どんな苦難を強いられることになっているのか、考えてみたことはあるのか。生きるために人間の生活圏に出て行かざるを得なくなった彼らを駆除することに、環境省は予算を付けて推進する。
縦割り行政の弊害なのか。環境省の人たちは大臣から職員に至るまで、生態系とは何か、日本国も批准した生物多様性条約とは何かわかっているのか。この国に環境庁が作られた理由、庁から省への格上げの狙いさえわかっていないのではないか。無念です。
●ツキノワグマの出没要因となる温暖化問題
主原 憲司 顧問(京都府 昆虫研究者)
昨年は観測史上最も暑い夏となりました。マスコミ報道は、連日、クマの出没や人身事故で埋め尽くされていましたが、このクマの異常出没に温暖化が関係していることを述べる報道は皆無でした。温暖化により寒冷気候帯に生息している種の多くは適応できずに衰退しています。私は蝶類を継続調査していますが、食樹となる木の芽吹き時期がずれることで、標高の低い山地では既に絶滅が始まっています。この状況は冷温帯の昆虫や植物を餌にしているクマにも連動します。
秋のクマの出没はブナ科堅果類の凶作が大きな原因です。冬眠に必要な栄養を得るため、冷温帯林のブナが不作だとクマはミズナラ域に移動。コナラやクリが混交する中間温帯林に移動することもあります。ここも不作だと、人里を徘徊し、周辺で越冬し、春の出没要因になります。奥山の餌不足で人里に出没しているクマをこのまま有害駆除し続けても、絶滅以外に人里での出没は止められません。
薮の刈り払い等の対策は出没位置の変化を生むだけで、根本解決には至りません。山からクマが出て来ないようにするためには当面の餌不足問題を解決する必要があり、そのためにはクヌギのドングリ(地域固有の遺伝子を持たない)を山に運ぶなどの給餌行為も、場所によっては必要です。
●クマの棲める森を
藤田 恵 顧問 (元徳島県木頭村村長)
本来のクマは「人の匂を嗅ぐと四キロ先まで逃げる」と言われ、1940 ~ 70 年代の私が子供の頃から青年の時分の常識でした。
クマが山から出て来る根本原因は「拡大造林」です。「拡大造林」は1950 年代から、広葉樹を皆伐して主にスギやヒノキを密植した国の愚策です。このため、クマが住んでいた全国の広葉樹林が殆ど無くなってしまったのです。それで、棲みかも十分な食べ物もないためクマは命がけで、民家付近へ出て来ていたのです。(注:四国のクマは残り十数頭。ここまで減ると種の保全はもうむずかしい)
以上のようなクマの側からの発想で、拡大造林で荒れ果てたスギなどの針葉樹林をケヤキやクリなどの広葉樹の森にしなければ、根本的な、クマなどの獣害対策は不可能です。人間のした生息地破壊は棚に上げて、民家近くで害があったからと、クマなどを銃で撃ち殺しているのは私が知る限り世界中で、低民度の日本だけです。
「クマの棲める森」は、広葉樹林によるクマを頂点とした生物多様性の原点です。近年のコロナ被害、鳥インフルエンザなどの多くは生物多様性が失われていることが原因だとされています。クマなど大型動物の出没は、これらに対する人間への警告だと思います。
以上
どうする環境省 クマ指定管理鳥獣化パブコメ結果 賛成9 反対440
環境省はクマを指定管理鳥獣にすることをどう思うかの1行だけを提示して、国民の意見を聞きたいとしてパブリックコメントを募集しました。締め切りは3月13日でした。
環境省は3月28日、パブリックコメントの結果とそれに対する回答を発表しました。
以下が、その発表です。
忙しい中、パブリックコメントに応募されたすべての皆さんに敬意を表します。
膨大な数のコメントをまとめてくださった環境省職員の皆さんに感謝申し上げます。
熊森としては、パブコメ結果と環境省回答を見て今後どうしていけばいいのか、多くの国民の皆さんと大いに議論したいです。
自分の考えをしっかり述べることのできる国民が増えることが、いま日本に本当に必要です。
みなさん、ご意見をお寄せください。
祝 4月1日宮城県が再エネを森林以外に誘導する全国初の条例を施行
森林保全へ再生可能エネ課税 全国初、宮城県条例施行
以下共同通信2024年3月31日記事より
森林を大規模開発する再生可能エネルギー事業者から営業利益の2割相当の税を徴収する全国初の宮城県条例が1日、施行された。税負担を課すことで再エネ開発を森林以外へ誘導し、環境保全と再エネ促進の両立を図る。狙い通り適正な立地が進めば「税収ゼロ」となることも想定する異例の新税だ。
国は脱炭素社会の実現に向け再エネ推進の旗を振るが、乱開発や景観悪化などで地元住民の反発を招く事例も目立つ。新税には既に複数の県から問い合わせが寄せられており、効果があれば全国に広がる可能性もある。
課税対象は0.5ヘクタール超の森林を開発する太陽光と風力、バイオマスの発電施設。エネルギー種別ごとに異なる税率を適用し、太陽光の場合は出力1キロワット当たり最低620円、風力は同2470円で、国の固定価格買い取り制度(FIT)の売電価格に応じて税率を変える。
正式名称は「再生可能エネルギー地域共生促進税」で、使い道を特定しない法定外普通税。県は条例施行後5年以内に検証して内容を見直す。
宮城県が導入する再生可能エネルギー新税のイメージ
熊森から
宮城県村井嘉浩知事の宮城の森を守ろうとする強い姿勢と決断力に、大拍手を送ります。
この条例でどのような効果が出るか、注目していきたいです。
うまくいくようなら他の都道府県知事の皆さんも、是非続いてください。
3月15日 杉本和巳議員が、衆議院第3回環境委員会で再エネ事業について質問
3月15 日、令和6年衆議院第3回環境委員会で杉本和巳議員(比例東海ブロック、維新・教育無償化を実現する会)が、再生可能エネルギー事業について質問されました。
質問中の杉本和巳議員
(要旨)文責熊森
杉本和巳議員 次に再生可能エネルギーについてです。
陸上風車:北海道で留萌から稚内にずっと日本海側を車で走っていくとですね、28基の風車が幌延のあたりにずらーっと並んでるんですね。極めて壮観ですね。素晴らしいなと思って、私はずっと風力風力と思っていたんですけれども、熊森協会さんに聞くとですね、風車は生態系上、そのヒグマはもうあるかもしれないし、キタキツネもそうかもしれないですし、あるいは水源としての水の流れ方とか、そういったものに非常にマイナスになるということです。
洋上風車:先日、再生可能エネルギー海域利用法というEEZまで洋上風力発電を中心としてその範囲を広げるということが閣議決定されたというふうに伺っていますが、こういったものが生態系並びにその他自然環境に与えるマイナス面、バードストライクだけに限らず、ほかの動物にもそれから自然全体についてどんなマイナス面があるか総論として伺っておきたいというふうに思います。
メガソーラー:太陽光発電についても伊豆半島の伊東の(メガソーラー)を視察しましたけれども、山の頂上とか中腹に太陽光パネルが設置されて、それによって木材が伐採されて、その木材が台風みたいなのが来たときに流れて、川を縦に伝って海に流れて海洋というか、漁場を赤潮の発生原因になったりして影響が出ているみたいなことを地元の陳情で伺ったことがあります。
この3つについて、環境影響評価として、生態系並びに自然環境にどんな影響があるのか、御担当の政府参考人から御答弁いただければと思います。
環境省鑓水総合環境政策統括官
お答えいたします。
陸上風力につきましては、近年の導入拡大に伴いまして、森林開発に伴う動植物の生息地の喪失やバードストライクの発生による鳥類への影響等、動植物や生態系への影響に対する懸念が大きくなっている状況だと認識してございます。
洋上風力につきましては、バードストライクに加えまして、海生生物や藻場への影響等が懸念されるところでございます。
太陽光発電事業につきましては、森林伐採に伴う土砂の流出やのり面の崩壊が発生する事例があると認識してございます。
このため、事業者が環境への適正で配慮がなされた事業を進めるように、環境省といたしまして、①環境影響評価評価制度に基づきまして、必要な確認を行っているところでございます。
それらの影響について事業者が適切に調査予測評価を行うこと。またそれらの影響を回避低減する措置を求めているところでございます。
そうした中で②環境大臣意見におきまして、例えば事業実施区域の見直しを求める場合もございます。
杉本和巳議員
再生可能エネルギーというのは全て善みたいに思ってしまいますが、光と影の部分がやはりあって、その影の部分も我々はしっかりチェックしていかないと環境立国として向かっていけないし、ネットゼロ(=正味ゼロ)に向かわないと思いますので、ちょっと御感想で結構なんですが、風力並びに太陽光についてのマイナス面についての御意見を伺えればと思います。
伊藤環境大臣
委員御指摘のように再生エネルギーのみならず、全てのエネルギー発生においては必ず光と影がございます。それで③環境省としてはこの2050年、カーボンニュートラルを目指して再生可能エネルギーの最大限の導入が不可欠と考えております。
他方、今参考人からも答弁がありましたように、大規模な森林開発を伴う再生可能エネルギーの事業計画が増加し、動植物への影響や生態系の損失に対する懸念は大きくなってきていると思います。
このため、環境への適正な配慮がなされた事業を推進することが大変重要であり、環境省としては環境影響評価制度において、環境影響や環境保全措置を確認していくことがより重要になってきていると考えております。引き続き④環境配慮が確保された再生可能エネルギーの導入が図られるよう、環境影響評価制度の運用等にしっかり取り組んでまいりたい、そのように考えています。
熊森から
①日本の環境影響評価評価制度は、業者の費用負担で業者が行うものですから、どうしても影響は軽微などとして業者に甘くなりがちの結論となります。
②環境大臣意見は、自然環境を守るために真摯にご意見を書かれていると感じますが、問題は事業を変更したり中止したりする権限がないことです。
③自然の中で巨大再生可能エネルギー開発を行えば、どうしても著しい自然破壊が生じます。環境配慮が確保された再生可能エネルギーなどあり得ません。再エネ事業は、都市部やビルの屋上などすでに自然が破壊されてしまっている場所で行われるべきです。
3月15日 林佑美議員が参議院予算委員会でクマの生息地である奥山の生活環境について質問
3月15 日、令和6年衆議院第3回環境委員会で林佑美衆議院議員(和歌山県、維新・教育無償化を実現する会)が、クマ生息地の生活環境の改善について質問されました。
この原因は、拡大造林政策によるスギ・ヒノキの植林、奥山の大規模開発による生息地の自然林の減少です。九州、四国、紀伊半島では、人工林率が6割を超えております。大臣もよく発言されておられますように、クマはシカやイノシシと比較して、生息数も少なく、繁殖力も弱く、環境変化にも弱い動物です。
クマは春夏秋の山の植物を食べており、食べる植物の種類は200種類を超えると言われております。秋はドングリ類を大量に食べ脂肪をつけ、冬眠に入ります。奥山に豊かな自然林があることがクマの生存条件です。昨年は東北や北海道で大量出没が起こりました。
山の実りの凶作が原因とされておりますが、異常な熱波による記録的猛暑となったためか、山に食料が何もないという例を見ない状況が発生した模様です。気候変動などの環境破壊により、豊かな森が残っていた東北や北海道でも森がクマを養えるだけの豊かさを失ってきていると感じております。
秋田県は近年、クマの捕殺の強化を進めてきましたが、昨年生息推定数の半数を優に超える2400頭超のクマを捕捉しております。捕殺をいくら繰り返してもクマが出てくる根本原因を解決しなければ被害は減りません。また、大量捕殺を繰り返していくと、地域的にクマが絶滅するところも出てくるでしょう。
そこで質問なのですが、被害を減らしていくにはクマが人里に出なくてもいい環境をつくるという根本的な対策が一番大切であり、林業不振により放置された人工林を自然林に戻す取り組みや、去年のような温暖化の影響が考えられる山の実りの大凶作の年であっても、クマが山の中に餌を確保できることを考えた、実のなる樹種の植樹などが必要となってくると考えますが、クマの生息地である奥山の生息環境について、環境省はどのように考えられておられますでしょうか。
朝日健太郎 環境大臣政務官
お答えいたします。環境省では、クマ類の保護や管理に関しまして都道府県の対策の指針となるような①ガイドラインを策定しております。また、昨年秋の、委員からありましたとおり、深刻な被害状況を受けまして、②専門家による検討会を設置をいたしまして、本年2月8日に被害防止に向けた総合的な対策の方針を取りまとめていただきました。
この内容ですけれども、クマ類の地域個体群の保全、そして人間との軋轢の軽減の両立を図るため、人間とクマ類の③棲み分けを図ることとしております。こうした考えに基づきまして、奥山などにおいてクマ類の保護を図るための保護優先地域や人身被害の防止を図るための人の生活圏、それらの間の緩衝地帯を設置設定し、それぞれの地域に応じて適切に管理を行うゾーニング管理を進めているところであります。
環境省では、奥山地域を含めまして、④国立公園や鳥獣保護区などの保護区域の指定などによりまして、生息環境の保全を図ってまいります。引き続き、農林水産省などの関係省庁と連携をいたしまして、クマ類の生息環境の保全を図って参りたいと考えております。
林議員
ありがとうございました。日本最大の大型野生動物であるクマの棲める森は、多種多様な生き物が絡み合う生態系の営みの中でつくられた水源の森でもあります。人工林が多く占める森林環境を少しでも改善して、クマの生息できる環境を奥山につくっていくことが、人や動物のみならず、地球の環境にも資すると考えております。
ぜひ環境省が先頭に豊かな森林環境をつくっていただきたいと思います。
熊森から
林議員、ご質問ありがとうございました。戦後の拡大造林政策による奥山人工林化が行き過ぎ、クマなど奥山の動物たちが生きられなくなっているという指摘を私たちが開始してから32年目です。人工林は行き過ぎていないとして、私たちはずいぶん批判されてきました。やっと国会でこの問題が出るようになったことに感無量です。
今の日本の行政は、経済第一で、野生動物たちの食料を思いやるような優しさは皆無に近い状態です。一般国民は胸を痛めているので、環境省や農水省が市町村など地方行政を指導して、野生動物たちの餌場となる森再生事業を進めていただきたいです。
熊森から環境省と国民のみなさんへ
①環境省のガイドラインが守られていないという現実があります。
熊森はこれまで各地の奥地集落を訪れ、地元の方や猟師の皆さんと話し込んだり、自分たちで調べたりして得た見聞を元に、何度も環境省に、「錯誤捕獲された野生動物は放獣すること」などのガイドラインを多くの都道府県が守っていないという現実を訴えてきました。
しかし、1999年の地方分権法によって野生動物の捕獲に関しては、国は都道府県に権限を委譲しているからとして、これまでこの件に対して環境省は都道府県を指導してくださっていません。権限を委譲したと言っても、国の定めた範囲内での権限移譲のはずですから、環境省は都道府県を支援するとともに、国のガイドラインを守るように強力に指導すべきだと思います。
第一、くくり罠のような残虐罠を山の中に無数に設置してシカやイノシシの問題を解決しようという発想自体が、人間の倫理観からも生態系保全上からも間違っていると思います。
②検討会委員に自然保護団体や動物たちの心がわかる動物愛護団体を加えるべきです。
研究者ばかり集めて検討しても、斬新な発想が生まれにくいと思います。クマ関係の検討会には、ツキノワグマ研究の第一人者である宮沢正義先生(今年97才)や、ヒグマ研究の第一人者である門崎允昭先生(今年86才)らに長年指導していただき、自らも徹底した現地調査やクマの生息地保全、被害対策の実践を行ってきた日本熊森協会も検討委員会に入れていただきたいです。国の今後を決めるにあたって正しい歴史を学ぶことが大切なのと同様、自然保護にとってもわが国の野生動物たちとの共存の正しい歴史を知る識者から学ぶことが大切です。
③祖先がしていたように、原則、奥山をクマの生息地として棲み分けるべきです。
現在、スキー場やキャンプ場など、奥山にも人間活動の場が多く広がっており、そのような場所を人間ゾーンとしてゾーニングしている現状では、クマたちはどこにおればいいのか居場所がないという現実があります。
④国立公園内での風力発電など再エネ事業を禁止してください。
巨大風力発電計画が奥山尾根筋で目白押しです。環境省が国立公園を守ってくださるのはありがたいことです。ならば、山の命ともいえる山の最も大切な場所である尾根筋を平らに削ってしまい、尾根筋に至る道路建設のためにと森林を大伐採して国立公園を破壊してしまう再エネ事業を環境省は禁止すべきです。
環境省には、本当にがんばってもらいたい。
環境省がんばれ!
私たちは環境省の応援隊です。
3月12日 森田俊和議員、衆議院環境委員会でクマ問題について森の視点から質問
- 2024-04-01 (月)
- くまもりNEWS
3月12日、令和6年衆議院第2回環境委員会で森田俊和衆議院議員(埼玉県、立憲)がクマと森について質問されました。
(要旨)文責熊森
森田俊和衆議院議員 熊について森の視点から質問させていただきます。
山で生息してきた動物たちが、里地里山やもうちょっと住宅が密集しているようなところにまで下りてきてしまって、ひどい場合には人身事故にもつながるというのは非常に不幸なことです。私は、対症療法的なところよりも、少し根本的なところをお尋ねをしてみたいなと思います。その根本原因の一つとして言われているのが、山が、森が痩せてしまっているということです。
日本の国土の三分の二が森林であり、そのうちの四割以上が杉、ヒノキの人工林だと言われております。熊の食べ物は人間が森に入って食べるものとそんなに変わらないと思うんです。春になればフキが出てきたりとか、若い芽、葉っぱが出てきて食べたり、あるいは、夏になれば、いろいろな虫を食べたりとか、秋になれば、ドングリとかいろいろな木の実だと思いますけれども、いずれにしても、杉、ヒノキだと、熊やほかの動物たちが食べるものがどうしてもないという状況になっていると思います。
また、山深いところと人が住んでいる場所の間にも、きちんとした自然の植生に近い森を用意するということも必要なんじゃないかなと思います。
伊藤環境大臣 委員御指摘のように、奥山というのは大事ですね。
環境省としては、奥山等において熊類の保護を図るための①保護優先地域、あるいは、人身被害等の防止を図るための人の生活圏、それらの間の緩衝地域を設定し、それぞれの地域に応じて適切に管理を行うゾーニング管理、これを引き続き進めていくという方針でございます。
舞立大臣政務官 令和三年の六月に閣議決定しました森林・林業基本計画におきまして、多様で健全な森づくりを推進することとしておりまして、森林整備事業において針広混交林や広葉樹林の造成への支援を行うとともに、例えば、②森林環境譲与税を活用して、住民の要請に応じた針広混交林や広葉樹林の育成も図っているところでございます。
環境省回答に対する熊森見解
①奥山を本当にクマ保護優先地域にするのなら、奥山でのシカ・イノシシ捕獲用のくくり罠設置を禁止すべきである。
シカ・イノシシ用の罠といっても、くくり罠にはクマ、カモシカ、キツネ、タヌキなどいろいろな動物が皆かかる。錯誤捕獲は罠設置者の責任で放獣すると決められているが、放獣は大変なので、実際にはほとんどが殺処分されるか放置されて死に至っている。罰則無し。
兵庫県の場合はクマに関しては放獣されているが、指や足首が欠損したものが一定数見られる。以前、くくり罠は足を失うなど、どの動物にとっても残虐過ぎるので、熊森がくくり罠禁止を強く環境省に要望したことがある。
その時、環境省は、今、くくり罠を禁止することはできないが、罠の直径を12センチ真円に規制するので成獣グマは掛かりにくくなる。これで様子を見てほしいとの回答をされた。しかし、すぐに、長野県から、短径が12センチであれば長径は何センチでもいいとの規制緩和が始まって、多くの県で現在、弁当箱型と言われる規制緩和されたくくり罠が使用されている。その結果、錯誤捕獲されるクマが多数生まれている。国にはこの実態を何度も訴えているが、環境省からの改善策はいまだなし。
第一、奥山は野生動物優先地域であるから、いかなる動物に対しても、罠を掛けるべきではない。どうしてもシカを排除しなければならない場所があるなら、罠ではなく、祖先がしていたように、柵かシシ垣で排除すべきである。
②国は市町村に、樹種転換を指導する必要がある。熊森の強い訴えで、森林環境譲与税を使っての針広混交林化や広葉樹林化は、確かに可能になった。問題は、市町村職員に山のことがわかる者がいなくなり、そのような事業に取り組もうとするところがほとんどないことである。ある市を訪問したらそこの担当職員たちに至っては、子供の時からずっとあったスギ・ヒノキの人工林を、自然の山だと皆勘違いされており、針広混交林化や広葉樹林化に向けての意識が全くなかった。行政は私たちのように長年各地で森再生に携わってきた民間の自然保護団体と協力して、具体的な施策を進めていただければと願う。
その他 冷温帯の下層植生は、シカに食べられると再生できない。奥山にシカを誘導する結果となっている奥山観光道路を閉じるべきである。
3月12日 篠原孝議員、衆議院環境委員会でクマの指定管理鳥獣化について質問
- 2024-03-30 (土)
- くまもりNEWS
3月12日、令和6年衆議院第2回環境委員会で篠原孝衆議院議員(比例北陸信越ブロック、立憲)がクマ指定管理鳥獣化に関する質問をされました。
質問中の篠原 孝議員
(要旨)文責熊森
篠原委員 次に、熊問題です。 環境省は中央環境審議会の下に東京農業大学の山崎晃司先生を座長に検討会を三回開いて、それを受けて検討して、四月中にはクマを指定管理鳥獣にしていくという方針だそうですが、その後どのように扱っていかれるおつもりか。
伊藤信太郎環境大臣 環境省では、昨年の熊類による深刻な被害状況を受けて、専門家による科学的な検討を経て、①ゾーニング管理、広域的な管理、順応的な管理の三つの管理を推進しながら、熊類の地域個体群の維持を前提としつつ、人の生活圏への出没防止によって、人と熊類の空間的なすみ分けを図ることとしました。
環境省では、クマ指定管理鳥獣化に対するパブリックコメントを二月十三日から開始しておりまして、国民の皆様の御意見を伺った上で、絶滅のおそれのある四国の個体群を除き熊類を指定管理鳥獣に指定する手続を完了したいと考えております。
熊類を指定管理鳥獣にすることで、②熊類の生態等の調査やモニタリング、人の生活圏への出没防止のための環境管理や必要な捕獲、人材育成等、都道府県の状況に応じた効果的な対策を講じることが可能となります。
他方で、熊類は、今御指摘がありましたが、既に指定管理鳥獣に指定されているニホンジカ、イノシシとは繁殖力、個体数の水準、被害の状況が異なることから、③捕獲に偏らない総合的な対策が必要とも指摘されているところでございます。
篠原委員 熊は、生態系上も非常に大事な動物です。長野県の山は、だんだんだんだん栄養分がなくなってきています。シベリアの森林が何であんなに豊かかというと、アムール川にダムが一つもないからです。サケやマスや、百種類ぐらいの魚が(海から川へ産卵のために)上っていく。それをまず熊が食べる。(産卵を終えたサケやマスは)死んでいく。(山の中は)サケの死体だらけなんですが、あっという間に鳥や獣に食べられてなくなる。④この海の養分が森に戻る循環がなくなっているんですよ。だから、熊はやたらに殺しちゃいけないんですよ。生態系の循環を担っているんですよ。ちゃんといてもらわなくちゃいけない。
このところの兼ね合いが難しいんです。何が大事かというと、私は人材が圧倒的に不足していると思うんです。田舎の市町村はお金がないですから、県が、⑤県庁にきちんとした熊の専門家を置くべきです。環境省も、都道府県に出向して熊の専門家を養成してください。
伊藤環境大臣 委員御指摘のとおり、専門的な知見を有する人材の確保、育成が不可欠でございます。
篠原委員 環境省だけでは無理だと思います。全省庁を挙げてやらなくちゃいけないです。
朝日健太郎環境大臣政務官 令和二年(2020年)十月にクマ被害対策等に関する関係省庁連絡会議(農林水産省、林野庁、警察庁及び環境省)を設置しております。
篠原委員 農林水産省は、生産ばかりになるからいけない。環境保全というのを、今度、食料・農業・農村基本法の中にも入れ込んでいくべきだ。みどりの食料システム戦略とか。熊も緑を守っている、大事な役割を担っているんですよ。ネイチャーポジティブとか、⑥片仮名の名前をいっぱい使って環境行政をやるのは僕は反対だ。聞く人は分からないですよ、何のことか。「鳥獣保護法」の獣という言葉は「野生動物保護法」という名に変えていただきたい。獣だと、けだもの、駆除すべきものとなる。テディーベアがあるし、熊は愛きょうがあるので、世界中で愛されている。熊だって愛護しなくちゃいけませんよ。 熊を敵対視しているから熊森協会から批判されるわけですよ。(名前は大切で)、我が長野県は、恥ずかしながら、林務部森林づくり推進課⑦鳥獣対策室です。(こういう行政の部署名がいけない)
熊森の見解
①環境省のゾーニング管理で被害を出していないクマを守れるかもしれないと熊森も最初期待したのですが、実態は集落ゾーンに誘引物が入った箱罠を大量に仕掛け、山にいるクマをおびき出して無実のクマを大量に捕殺しています。ゾーニング管理というなら誘引物入り罠を仕掛けないことが前提でなければなりません。
②山から出てきた目の前のクマばかり見ていてはダメ。根本原因は山。根本対策は餌のある山を再生させること。
③根本的に対応が違うのなら、別の名前にすべきでしょう。クマを指定管理鳥獣に入れてしまったら、そのうち初心が忘れられてニホンジカ、イノシシと同じく捕殺強化だけになってしまう恐れがあります。
④この指摘はとても重要です。サケが産卵時に川をさかのぼってくるのは自然そのもので、海の養分を山に戻すという大切な役割を果たしていました。本州にもサケがのぼってくる川をもう一度取り戻して、森の動物たちがサケを食べられるようにしてやりたいです。直接にはクマの為ではありますが、森が豊かになり、人間の為にもなるのです。
⑤専門家と呼ばれる人なら誰でもいいのではなく、クマの心が読み取れて、捕殺に頼らない対応ができる専門家でなければなりません。
⑥まったくもって同感です。文章に英語を多用するのは本当にやめていただきたい。ここは日本国なのです。
⑦鳥獣対策などというものは、人間至上主義そのもの。人もクマも大切です。
篠原議員、伊藤環境大臣は永らく環境部会に属してこられた方で、これまでの日本の環境行政にお詳しく、大いに期待したいところです。
ただし、議員や環境大臣と言っても皆さんお忙しく、現場を自力で調査し続ける時間などありません。野生動物問題を考えるにあたって、現状では肩書きのある研究者や彼らの見解をそのまま流すメディアに情報を依存するしかないかもしれません。
熊森のような利権やしがらみゼロの自然保護団体の声にも大いに耳を傾けていただきたいです。
以前の山を知らない若い人たちに、今のクマ問題の根本原因は山にあることを知ってもらいたい
- 2024-03-05 (火)
- くまもりNEWS
以下は、2024年3月2日の河北新報投書欄です。
投稿されたのは、奥羽山脈のふもとで自然農をされている船形山のブナを守る会の創設者である小関俊夫さんです。
長期に亘り奥羽山脈の山を見続けてきた小関さんは、人間活動によって、現在の山が、クマにとってどれだけ生きづらい環境に変えられてしまったのかをよく知っておられます。
今のクマ問題を正しく解決するには、過去数十年間にわたる山の変化がわかっていなければなりません。
クマ問題に取り組む若い人たちには、歴史的なこともぜひ勉強していただきたいです。
■クマとの共生 方策考えて 小関 俊夫 75歳(大崎市・農業)
クマによる人的被害防止のため、捕獲に国の支援が受けられる鳥獣保護法上の指定管理鳥獣にクマが追加されます。山の神だったクマが邪魔者にされました。
クマが里に出没するようになったのは、昭和50年代に始まった林野庁による拡大造林施業でブナ林が伐採され、クマのすみかを奪ってからです。それにリゾート開発が拍車をかけました。クマは安住の地・ブナ林を追われたのです。
登山仲間によると、最近、山でクマに出合うことが少なくなってきた、クマの生態に異変が起きているのではないかということです。人とクマのすみ分けを図るゾーニング管理が言われていますが、人がクマの領域を侵していることを念頭に議論してほしいです。
ブナの伐採は止まりましたが、自然再生エネルギーの名の下に、宮城、山形両県にまたがる船形連峰にも風力発電事業が計画され、森や山が破壊される恐れがあります。また、低周波音や騒音によるクマの健康被害も懸念されます。開発事業の前に、クマへの畏敬の念が大切なのではないでしょうか。
昨年はクマの大好きなブナの実が大凶作でした。クマは妊娠しても食物不足だと冬眠中に流産するそうです。今年はクマの個体数は減少するでしょう。クマの指定管理鳥獣追加の前に、人とクマが共生できる方策が必要だと思います。
春到来!とよくん、目覚めました🐾
- 2024-03-04 (月)
- くまもりNEWS
たくさんの方からいただいたドングリや栗を食べ、昨年12月20日過ぎには冬ごもりに入ったとよくん。 例年目覚める日はお彼岸前後でしたが、 昨年、今年と少し早くなってきています。
3月3日(日)暖かな日差しの中、運動場でまどろんでいたとよくんお世話スタッフが目撃しました。スタッフを見るとご飯をおねだりし、クルミとどんぐりをもらい満足そうにしていたそうです。
まだ寝起きでぼんやりしているとよくんではありますが、これから少しずつ活動的な様子を見せてくれるでしょう。
ぜひとよくんに会いにきてください!
3月13日まで『クマの指定管理鳥獣化について』パブリックコメントにご意見を❗
- 2024-02-19 (月)
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