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1月30日 興味津々、豊能グマの1週間の動きが記録されました 自動撮影カメラ回収
- 2015-01-30 (金)
- _クマ保全 | くまもりNEWS | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
記録された動画をチェックしてみました。自動撮影カメラを設置したことでクマに負担をかけないか心配でしたが、豊能グマは赤外線の小さな明りをあまり気にしていないようだったのでほっとしました。
豊能グマは1週間中ほとんど寝ていましたが、時々体を動かして寝返ります。そのさまは、まるで休日に寝転んでいる人間にそっくりです。何もすることがないからか、時々思い出したように寝床のわらをしごいて細かくしたり、何かを食べたりしていました。
ちょっと寝る向きを変えてみようかな
撮れた動画は、全編通して、本当に静かなものでした。時々、移送檻の内部を見まわして、これから僕はどうなるのだろうかと考えているようにも見えました。退屈なのでしょうね、大きなあくびも時々していました。
大きなあくびをする豊能グマ
落ち着いたクマの様子にホッとしました。一日も早く明るくて広い獣舎に出してやりたいです。みんなで応援しているから、春までここで我慢してね。
またクマ、林業作業員重傷 北海道・厚岸の国有林 近くに巣穴 地元猟友会はクマの駆除(=捕殺)開始
先日の1月26日、釧路管内標茶町の塘路原野の山林で同僚5人と枝打ち作業をしていた男性がヒグマに襲われ死亡するという痛ましい事故が起きたばかりです。1970年以降、このような事故は7件だそうです。
ヒグマは、人間が自分たちを殺そうとしている怖い動物であることをよく知っており、通常、簡単には巣穴から出て来ません。山林作業の音や振動でびっくりして飛び出してきたと思われます。子育て中の母熊だったそうです。
地元は、この母熊を見つけて殺処分しようとしていますが、北海道野生動物研究所所長の門崎允昭博士は、マスコミの取材に対して、「クマも被害者だから、殺すべきではない」と答えられました。しかし、マスコミはこの部分を世に伝えませんでした。
(こうして、マスコミによって、ゆがんだ世論が形成されていくのです)
1週間後の2月2日、またまた同様の事故が近くで起きました。今回、クマが出てきたとみられる巣穴は、入り口の直径が50センチ以上と大きく、オスの可能性もあるということです。そんな大きな穴を、どうして事前に人間側が察知できなかったんでしょうか。
NHKテレビニュースでは、アナウンサーが、もうやるせないという感じで、「また、クマによる被害です」と、ニュースを読み上げ始めました。この方の、道徳観や倫理観はどうなっているのだろうかと熊森は疑問に思いました。事故は痛ましいものですが、明らかに非は人間側にあります。
地元猟友会は、さっそくこのヒグマの捕殺に乗り出したそうです。
今後、ヒグマが冬籠りしているそばで林業作業をすることを、人間側が反省して見直さない限り、また同様の事故が起きるでしょう。その度に、ヒグマを殺せでは、とても共存などできません。人間は本来備わっている慈悲の心を取り戻しましょう。
<以下は北海道新聞2月3日記事>
【厚岸】2月2日午後2時35分ごろ、釧路管内厚岸町上尾幌の国有林で、樹木の調査業務を行っていた森林林業調査研究所(帯広市)の作業員岩田正則さん(74)=帯広市西16北2=がヒグマに襲われ、顔などを引っかかれて重傷を負った。
厚岸署などによると、同研究所は根釧西部森林管理署(釧路市)の委託を受け、12人で2日午前8時から樹種ごとの太さや高さなどを調べ、伐採する木の選定作業を行っていた。3人一組で作業中、突然ヒグマが現れ、岩田さんが襲われたという。
事故現場は釧路管内標茶町との境界付近。1月26日には、直線距離で約15キロ離れた標茶町塘路原野で別の会社の林業作業員がヒグマに襲われ、死亡する事故が起きているが、同研究所は特にクマの対策をとっていなかったという。
標茶町の事故との関連について、猟友会関係者は今回の事故現場近くにクマの冬眠する巣穴があり、別の個体の可能性が高いとみている。
1月15日 元気で全頭冬ごもり中、元八幡平熊牧場のヒグマたち 秋田県阿仁「くまくま園」視察
秋田県北秋田市阿仁熊牧場は雪の中でした。
毎日、飼育担当者の方々が冬ごもり中のクマたちを見回ってくださっています。ヒグマ棟に行くまでは、毎日の雪掻きが大変です。
冬ごもり棟の中は、暗かったです。
私たちが飼育員の方達と入っていくと、ほとんどのヒグマはのっそりとうれしそうに起きてきました。そして、飼育員の方々の手の指をペチャペチャなめたりしてみんな心から甘えていました。ここで、どんなに愛情を持って大事に飼育してもらっているのか、ヒグマたちの行動でわかります。
一瞬廊下の電気をつけてもらいました。
入れてもらった藁を細かくして、みんな上手に寝床を作っていました。(少し下手なのもいる)
この写真ではわかりませんが、冬ごもり中も、いつでも水が飲めるようになっていました。
18頭のヒグマたちを、ひとつの運動場に出すことの苦労を、係りの方々からいろいろ聞きました。聞けば聞くほど大変だなあと思いました。
ここのヒグマたちは、避妊や去勢を一切していませんから、まず、運動場にはオスとメスを分けて出さねばなりません。ここはヒグマを動物福祉に配慮して終生保護飼育するところで、繁殖は一切させないことになっています。
ヒグマには、オス同士メス同士であっても、相性の悪い者たちがいるそうです。ケンカして傷つけあうことがないように、慎重に観察してグループ分けし、運動場に出しているということでした。メスなら1回に6頭を運動場に出せるグループ作りができたと、係りの方が自慢されていました。
何と言っても、クマは元々、森の奥で一人ひっそりと暮らしている動物なので、そういう動物を集団で飼うこと自体が、クマにとってストレスなのではないかと、係りの方が心配されていました。
250キロもあるコディアックグマの太郎くんは、1頭だけで運動場に出すそうです。初めて出した日、運動場の真ん中に造られた木造のあずまやを、さっそくポカンやって壊したそうです。全部壊す気かと思われたのですが、それ以降はなぜか、運動場に出してもらっても、もう壊さないのだそうです。太郎は反省したのかもしれないということでした。
八幡平にいた時の太郎
ビッグとその兄弟のサチコだけは、他のクマが怖いらしく、1年前に八幡平からここへ引っ越してきて以来、何回運動場に出そうとしても、自分の部屋から出ようとしないのだそうです。
大変慎重なビッグは、八幡平から引っ越すときも、どんなにおいしいえさを置いても最後まで移送檻に移ろうとせず、何日間も引っ越しを長引かせて担当者を泣かせました。
運動場に出るためには、他のクマたちの部屋の前を通らねばならないので、それが怖いらしいということでした。今年は何とか、運動場に順次出れるようにならしていくと、飼育員の方が言われていました。
今は冬で、ヒグマの個室は暗くしてありますが、春になると太陽がそれぞれの部屋に差し込んできます。個室でも結構快適に暮らせるように設計されています。
私たちは18頭全頭にあいさつして回りました。本当にみんな幸せそうでおだやかないい顔をしていました。
このクマたちの救命、終生保護飼育をめざして、当時寄付して下さった多くのみなさんをはじめ、応援して下さった多くの国内外の皆さんに、ここのクマさんに会いに来てやっていただきたいと思います。見ていると人間の方も幸せな気持ちになってきます。クマたちも落ち着いたようなので、見学ツアー企画も考えていこうと思いました。すぐ前の森吉山は、野生のクマたちに会える山です。自然の森とクマの両方を見てもらえればいいなと思います。
ツキノワグマたちの方は、集団冬ごもり中のため、今回は見に行きませんでした。
2月17日(火) 平成26年度兵庫県野生動物保護管理運営協議会の傍聴を
今年4月以降、環境省の指導により、全国の野生鳥獣保護管理から、保護の字が取り外され、管理だけになります。管理という行政用語は、=殺すです。
野生鳥獣は害獣と決めつけられ、科学技術や株式会社まで使って、今以上に大量に補殺されるようになります。野生鳥獣大量虐殺(ホロコースト)がさらに促進されると言っていいと思います。
兵庫県に於いては、その変わり目となる、平成26年度兵庫県野生動物保護管理運営協議会です。
兵庫県クマの狩猟再開案が提出される恐れもあります。
・日時:平成27年2月17日(火)13:30~16:30
・場所:兵庫県立ひょうご女性交流館501号室
〇神戸市中央区下山手通4-18-1
〇兵庫県庁3号館の通りを隔てた北側
・電話:078-221-8031
1時間早めに行って登録しておけば傍聴できますから、メディアのみなさんをはじめ、猟友会のみなさん、県民や国民のみなさんにぜひお越しいただき、会議を傍聴していただきたいと思います。
兵庫県庁担当部署 電話078-362-3069
ちなみに、大日本猟友会長さんは、環境省が開催した会議で、今回の法改正は大変危険であり事故が増える恐れがあるとして、いくつもの点で反対されました。しかし、原案が強行されました。環境省付きの先生方は、現場をよく知る猟友会の方々の声をもっと慎重に聞くべきだと思いました。
かつて、環境省は、野生鳥獣を守るところでしたが、今はどこよりも大量殺害を進めるところです。
人間が行った戦後の森林大破壊によって、山で生きられなくなっている野生鳥獣たちへのお詫びは一切なく、増加する鳥獣被害問題に対して、第1次被害者である野生鳥獣を第2次被害者である農家に殺させて終わろうとしているのです。
このような対症療法のみの解決法は、ひたすら残酷であり農家の方々をも不幸にするもので、くまもりは人間として認められません。
1月14日 秋田にマタギの子孫を訪ねて
マタギについて、これまでいろいろな方の話を聞いたり、本を読んだりしてきました。関西に生まれ育った私たちにとっては、いまひとつ不明なマタギです。いろいろな説がありますが、マタギの子孫に会って直接話を聞いてみようと思い立ちました。
どんな問題でもそうですが、昔のことは今のように記録が残っているわけでもないので、何が真実か、なかなかわかりづらいものがあります。
秋田県上空で飛行機から秋田の山を見降ろしました。山の人工林部分と自然林部分が、はっきりと区別できます。黒く見えるのが、クロキと呼ばれるスギです。本当に黒く見えます。自然林部分は、落葉広葉樹が葉を落としているので、雪が積もり、白色です。
こうやって見てみると、秋田県の山も、スギだらけです。人工林率50%と発表されていますが、本当だろうか、もっと人工林率が高いのではないかと思えてきます。
これまで秋田行きは、内陸の大館能代空港を利用することが多かったのですが、今回は秋田空港着です。秋田は大雪で埋まっていると思ってやってきたのですが、日本海沿岸には雪がほとんどありませんでした。当然ですが、同じ県でも場所によって降雪量は全然違います。
マタギの里は、雪で埋まっていました。
マタギの子孫の方に、8時間もの長い時間、お話をお聞きしました。それでもまだ聞きたいことが残ってしまい、もっともっと時間が欲しいと思いました。とても興味深く楽しい語らいで、夢中になって聞いてしまいました。
<熊森がした主な質問>
・マタギとは何か。
・マタギであった祖父や父親の暮らしはどのようなものであったか。
・なぜ、マタギを継がなかったのか。
・今後のクマや森への思い。
マタギの家に暮らした方のお話は、マタギを取材したり研究したりした方のお話より、直接的でした。
この方は、初めて銃を撃ったとき、獲物に命中したのだが、致命傷を外れていたので、獲物はケガをした形になったそうです。そのとき、銃を撃ったのは自分だが、突然獲物がかわいそうになって、何とかして助けてやりたい、生かせないか、撃たなければよかったと強く思ったそうです。これが、この方がマタギを継がなかった理由の一つです。わかるような気がしました。いろいろな人がいますが、ほとんどの人間はこのタイプだと熊森は思います。
この日の語らいで一番驚いたのは、マタギのみなさんが、クマを山神様からの授かりものとして、とても大切に思って愛していたことです。昔、クマは害獣ではなかったのです。
必要なものしかとらないのがマタギで、祖父が生涯に獲ったクマは50頭ぐらい。発達した銃を使って多くのクマを獲った父親でも、生涯に100頭ぐらいだろうということでした。巻き狩りは30人ぐらいで行うそうですから、一人あたりの分け前は知れていたのではないかと思いました。アイヌの、クマを神として崇める文化との共通性を見ました。
また、映画や漫画などに出て来るマタギの話の中に、いくつもの嘘があることを思い知らされて愕然としました。そういう物は、娯楽として面白おかしく衝撃的に作られており、マタギはあんなことしないよ、クマはあんなことしないよと教わるたびに、熊森としてこれからどうやって世間に訂正していけばいいのだろうかと、頭を抱えてしまいました。
少年時代、マタギの祖父や父親と野山を走り回ったというこの方は、秋田の大自然が育てた生き物や人へのやさしさと魅力でいっぱいでした。秋田でも、山奥に造られた道路やスキー場によって、野生動物たちが山から追い出されているそうです。20年前までは、冬の山は、ウサギの足跡だらけだったが、今は本当にもう見なくなった。ヤマドリとも本当に会えなくなった。感覚的には、山の生き物たちは、以前と比べて10分の1に減ったと思うと言われました。秋田でも、大変な事態が進行していることがわかりました。
最後に、この方が、「山を思う気持ちは、マタギでなくても必要です。守っていかないと、いつか山はダメになってしまう」と言われたのが心に残りました。
聞かせて頂いたたくさんの貴重なお話を、今後何らかの方法で会員のみなさんに伝えていきたいと思います。
1月6日 年明け早々の豊能グマくん
- 2015-01-06 (火)
- _クマ保全 | くまもりNEWS | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
役場がお正月休みだったので、久しぶりの豊能グマ君のお世話日となりました。役場の方が、休み中もお世話して下さっていました。ありがとうございました。
元気にしているかな。今回は特別で8人で行きました。
そっと部屋のドアを開けて移送檻の中の豊能グマ君をみんなでしばらく見ていました。年末にたくさん入れてもらった藁の中に埋もれて、眠っているようです。私たちが来ていることに気付かないのか、動きません。
眠っているよ
お掃除を開始です。みんなで部屋の中に入っていくと、クマ君は起きてきました。女性陣には、少しずつ気を許し始めたようです。
女性陣は信頼してもいいみたい
移送檻内の藁を、4センチの鉄格子からいったん全部取り出しました。結構時間がかかりました。その間、クマ君には、杉の間伐材の輪切りをおもちゃとして与えておきました。食事よりも、間伐材の輪切りをかじって粉々にすることに余念がないようです。
お掃除中も、杉の輪切りをかじり続けるクマ君 ストレス解消になるといいね
糞尿もたくさんあったので、移送檻の床を水できれいに洗い流しました。
その間、Mさんが、杉の輪切りをかじる豊能グマ君の歯を、集中的に撮影しました。どうも、右上下の牙が折れているのではないかと、前回、問題になったからです。
右牙上下
逃げ出そうとして獣舎の鉄をかじったのかもしれませんが、仕方がありません。箱罠にかかって檻の鉄を噛み、歯を全部失ってしまうクマも多いと聞いていますが、豊能グマ君は、今のところ、他の歯や左牙上下は大丈夫ですから、良しとするしかありません。本当に一日も早く、広い獣舎に移してやりたいものです。
1月5日 謹賀新年 クマ(大型野生動物)とも共存すべき
同じ国土に住むもう一つの国民<野生動物>を殺さない国に
狭い移送檻に閉じ込められて6か月の大阪府豊能町誤捕獲グマ 2014年12月撮影
平成は、野生動物大量補殺国家
野生動物による農作物被害等が増加していますが、人間が彼らの生息地を大破壊したことが原因です。
国も行政も研究者もマスコミも、このことを隠して、ハンター養成やジビエ料理推奨に躍起です。
その上、今春からは、環境省の方針で野生動物捕殺株式会社が各地で認可され、更なる野生動物大量補殺が展開されます。
野生動物を殺すと、国からお金がもらえるのです。(私たちの税金です)
今春から、殺したシカは、野山に放置していいことになります。(今も、県によっては100%近く放置されていますが)
放置されたシカの死体に、クマを初めいろいろな動物が群がっています。
バランスが取れていた生態系は、こうして人間が手を入れ回るのでもう無茶苦茶になっていっています。
鳥獣被害問題の解決は、人間が動物の棲める森を復元して、棲み分けを復活するしかありません。
これ以外の解決法は全て失敗します。
9月22日 朝日放送テレビ 夕方の「ニュースキャスト」が、豊能グマ問題を大きく報道(関西エリア)
- 2014-09-22 (月)
- _クマ保全 | くまもりNEWS | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
「ツキノワグマ捕獲したけど、対応苦慮なぜ」
(以下、内容)
ナレーター:今年6月の事ですが、大阪府内で初めて、野生のクマが捕獲され、それから3か月経つのですが、今もクマは狭い檻の中に閉じ込められたまま。
大阪府はこの事態を受けて対応マニュアルを作成したのですがこのマニュアルがまた波紋を広げています。
<日本熊森協会提供の、豊能誤捕獲グマの映像>
シャッターが開けられ薄暗い部屋に日の光が射しこむ。
檻に体当たりするのはツキノワグマ。餌をやるため人が出入りするときしか日光があたらない。この狭い檻の中で軟禁状態なってから3ヶ月。一頭の野生のクマの取り扱いを巡って行政の対応が八方塞がりになっている。
(現地から)ここは大阪府豊能町の国道です。この辺りはのどかな風景が広がりますが、この田んぼの奥の山の中で、今年6月、国道から300m離れた山中で、野生のツキノワグマが捕獲されました。
<猟友会豊野支部会長下村氏>
「ここですね。これはシカとイノシシの捕獲用に設置したんですが、熊なんて大阪では信じられへん話で。」
捕獲されたのは体長1.3m、体重51.5㎏、4~5歳のオスとみられている。
兵庫県立大学森林動物センター 横山真弓準教授
6月オスがメスを求めて行動圏を拡大する時期でたまたま通過をしてしまった。
大阪府内でクマが捕まったのは初めてで、関係者は困惑した。対応マニュアルが無かったからだ。府はとりあえず二つのドラム缶をつなぎ合わせた檻に閉じ込めた。しかし、その様子を報道で知った自然保護団体が、ヒグマの移送用の檻を府に提供。その時、あくまで臨時の物だと釘を刺したという。
<日本熊森協会 森山会長>
「運搬用ですから狭い、しかも水飲み場やトイレはありません。それで大阪府さんに渡す時に1か月が限度ですよと。」
ところがツキノワグマは3か月過ぎた今も、狭い檻の中にいる。なぜなのか。クマが捕獲された時の対応としては、山に返す「放獣」、動物園などへの「譲渡」、そして「殺処分」の3つが考えられる。大阪府ではこれまでなんとか引き取り先がないかと、全国の動物園やクマ牧場などに打診したが、野生なので病気を持っている可能性がある、成獣では人になつきにくい等、105か所すべてに断られた。ならば殺処分できるのかというと、実は捕獲したツキノワグマをむやみに殺すわけにはいかない。近畿地方のツキノワグマは生息数が少なく絶滅が危惧されていて、環境省はイノシシの罠などに誤って捕獲されたものは原則、山に返すよう指針を出している。
<大阪府動物愛護畜産課 堤側課長補佐>
「人がかなりたくさん山の方まで住んでまして、クマを放したら急きょ人間と接触する可能性がものすごく高くなるという場所にありますので、大阪では無理ですね。ということで自分とこでは放せないという事になりますね。」
結局、行き場が見つからず、クマは狭い檻に閉じ込められたままだ。これまで大阪府では10年近く目撃情報すら無かったが、今年は豊能町以外にも、春先からツキノワグマの出没が相次いでいる。
近隣府県ではどう対応しているのか。京都府与謝野町 先月からクマの出没情報が連日続いている。
<京都府与謝野町住民>
「ここに細長い檻が据えてあった。向こう向きに蜂蜜が入れてあって、中に入って檻の蓋がバタっと閉まった状態で。」
先週柿の木などの被害が多かった場所に檻を仕掛け、メスのツキのワグマが捕獲され、その日のうちに集落から離れた場所で山に返したという。クマは臆病で学習能力が高い。 その習性を逆手に取って、この場所は危ないと認識させて山に返すと、人里に下りてくる可能性が低いという。
<京都府森林保全課 佐藤課長>
「檻とか罠にクマとかがかかってしまう。そういう場合は、目的と違う狩猟行為、捕獲行為になるので、その地域で放獣をしていると。」
とはいえ、クマを山に返すことについて、地元住民の思いは様々だ。
住民 A 「みんなクマ怖いがな。」
B 「処分してもええんじゃないかと思うのだが」
C 「いちいち殺すのは可哀想や思うで」
D 「何とも言えないが、そういう具合に決まっているのなら・・・。」
クマを放すことに住民から反対意見もあるが、京都府はクマを集落に寄せ付けない対策を進めたうえで原則クマを山に戻している。
インタビュアー 「住民の方から、放獣しないでとかいう声は?」
佐藤課長 「あっ、そうですね。ありますね。放すことについては、ご理解を頂くんですが。それに対して、一方では被害の防獣対策ですとか、いろんな普及啓発活動を市町村と一緒になって進めて、ご理解を頂いています」
豊野町と隣接している兵庫県も、京都府と同様、地元に理解を求めながら、誤って捕獲されたクマは、理解を求めながら山に返している。ツキノワグマは極力捕殺しないというのが大原則で、人とクマとの共生の道を探っているのだ。
これまでクマの対応マニュアルを持たなかった大阪府が、今回の事態を受けて今月上旬急きょ作った対応マニュアルが波紋を広げている。誤って捕獲されたクマを山に返すのに地元の合意という条件を付けたのだ。
<大阪府 堤側課長補佐>
「どこまでというのは難しいと思いますが、住んでおられ方の意見を全てというわけではないかもしれません。ただ出来るだけ多くの方の合意が要るかなと思っています。」
地元の住人はどう思っているのか
住民 A 「そらあかんわ。怖いわ。遠いとこ行くんならいいけどな。」
B 「誰かに引き取ってもらうとかが安心ですけど。」
C 「何とも言えない。返した方がいいけどなあ。」
少なからず否定的な意見が聞かれた。
府の新ルールでは誤って捕獲されたものは地元が反対すれば事実上殺処分することになる。それは環境庁の指針や他の自治体の対応とは正反対になる。
インタビュアー 「他のエリアから見るとどう取られるかな。不公平じゃないかなとあるんですが。」
堤側課長補佐 「ありますね。他と若干違っているのは、近隣府県さんではクマが実際に子孫を残しながら棲んでいる。大阪の場合はそこに棲んでいるのではなく、たまたま来たクマ。そこにひょこっと現れたものなので、若干その取扱い、感覚的には違うものかなという風には思います。」
人とクマとが共生するために兵庫県や京都府で作り上げた保護体制。一頭の迷いグマを巡る大阪府の体制がその保護体制を揺るがしかねない。
<大阪府行政の発言に対する熊森の見解>
大阪府行政担当者の不勉強と身勝手さ、ごまかしには、あきれ返ります。大阪府民の水源は、琵琶湖です。琵琶湖の水が、いつも満々とたたえられているのは、雨水や雪解け水以外に、琵琶湖の周りに残されたクマたちが造る豊な森から、毎日、琵琶湖に大量の水が流れ込んでいるからです。
「水は、森から」なのです。
琵琶湖の周りの森を形成している重要な構成メンバーであるクマが絶滅しそうになっているため、みんなで守ろうとしているわけです。
大阪府はクマの生息地ではないから、クマが迷い込んで来たら殺しますという身勝手な答えにはあきれてしまいます。しかも、豊能の山は、大阪府と言っても、京都府や兵庫県と隣接してつながっており、生息地に行政の境界線などないのです。
豊能の山に、クマが生息していないかどうかは知りませんが、生息していないならなおさら、放獣すべきです。クマは餌のない市街地になど向かいません。生息場所に帰っていくだけです。全く持って生態を不勉強です。
ほんの一瞬、大阪府の山中に顔出ししただけのクマを、なぜ、大阪府は殺す権利があるのか、理解できません。
しかも、殺すことに決めたのに、大阪府ツキノワグマ対応方針では、「周辺住民の合意が得られた場合、速やかに放獣を実施する」と記述し、一般の国民に、<次回は放獣もあり得ると誤解させる書き方>をしています。大阪府担当者のずるさは、全く許せません。大阪府にクマが顔出ししたら、速やかに殺すことにしましたと、誰にでもわかるように書くべきです。
今、捕獲して狭い檻に収容しているクマの状態は、明らかに動物虐待であり、動物愛護法違反です。大阪府動物愛護畜産課としては、早急に飼育改善をすべきです。大阪府では、お手本になるべき行政が、鳥獣保護法違反と動物愛護法違反を続け、動物を虐待しています。
(以上)
㉔ 9月18日 朝日放送テレビの夕刻番組「キャスト」の取材
- 2014-09-18 (木)
- _クマ保全 | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
㉒ イギリスの動物愛護団体から 大阪府松井一郎知事に、豊能のクマ問題で請願署名 数日間で5,312名分の署名が届けられる
- 2014-09-19 (金)
- _クマ保全 | くまもりNEWS | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
イギリスの動物愛護団体が、豊能のクマを救うため、ネットで署名を集めてくださいました。熊森にとっては、初めて見るネット署名で、最初意味が解らず、戸惑ったり驚いたりしました。海外のみなさんを初め、署名をしてくださった全ての皆さんに、心からお礼申し上げます。すでにこの請願署名は、大阪府松井一郎知事に届けられたということです。
ヨーロッパでは現在、アニマルライト(動物の権利)が声高に叫ばれるようになってきております。この地球は、人間だけのものではない。全生物と人間が共存する場所としてとらえ直そうという方向に、文明の転換が始まっており、現代生態学の発達もあって、人間の事しか考えない人間中心主義は、人類破滅への道であるということへの理解が広まっているようです。
日本でも、人間が、他生物の存在に畏敬の念を持つやさしい文化を取り戻したいものです。
他生物にも優しい文明が、一番優れている