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動物たちの森を壊して植えたスギ・ヒノキの分収造林、全国で破たん  滋賀県など債権放棄

琵琶湖の水源涵養のためという名目で、林野庁の勧めで、1965年、滋賀県と下流の府県や市がお金を出し合って、滋賀県造林公社を設立。琵琶湖周辺の山の自然林を伐採して、跡地にスギなどの林業用の苗木を大々的に植えました。50年後、苗木が育ったら伐採して材木を販売。収入を山分けしてもうけようというもくろみでした。しかし、今、伐採予定の時が来たのに、材木価格の下落により、伐採して運び出しても伐採費用や運搬費用を差し引くと、収益が出るどころか赤字になるだけ。収益を山分けするどころか、出資金1円だって返ってきません。

滋賀県は仕方なく、この度、滋賀県造林公社とびわこ造林公社に出してきたお金のうち、769億円(県民ひとりあたり5.5万円)を、放棄することにしました。下流域府県もそれぞれ2公社に出してきたお金を放棄することにしました。森の動物たちから生息地を奪った戦後の拡大造林政策が、人間にも損害をもたらしただけであることを思うと、滋賀県嘉田知事が言われるように、国の責任には大きいものがあります。私たち国民としては、専門家や行政の偉い人たちが考えたことでも大失敗することがあるということを、肝に銘じて頭に叩き込んでおくべきです。それどころか、地元の農林業者がわたしたちに、「戦後、国の言うとおりしたら、全部失敗した」とよく嘆かれることの意味を考えねばならないと思います。

今さら林野庁を責めてみても、しかたがありません。熊森は、こんなことになったのは、拡大造林や分収造林に反対しなかった全国民の責任であるととらえています。問題は、この後どうするかです。今後荒廃した山が引き起こすと予測される大災害の頻発を防ぐためにも、放置人工林の強度間伐を公共事業で早急に進め、人工林の3分の2は、真の水源涵養のためにも針広混交林の自然林に再生させて、今、集落周辺に出てきている動物たちが帰れるようにしてやってください。残りの3分の1の切り出しやすい場所では、林業用に森林整備を行ってほしいです。熊森はもちろん、このための協力を惜しみません。琵琶湖の水を使っている近畿2府4県の府県民のみなさんもきっと協力して下さると確信します。
滋賀県嘉田由紀子知事「破綻は国の責任」

拡大造林の後は、伐り出すためにと拡大路網  (林野庁 森林・林業再生プラン最終案)

2010年2月から9回にわたって、林野庁で、「森林・林業再生プラン」の検討会が持たれ、11月30日に、鹿野農林水産大臣に対して検討委員会座長から、最終とりまとめが出されました。

このプランには、林業だけではなく、日本の森や動物たちの今後の運命もかかっているため、当協会は、昨年度、このプランを何度もチエック。その結果、このプランは、日本の山を、土建工事の対象としてしか見ていないのではないかと、危機感でいっぱいになりました。このプランの目玉は、国産材利用50%を目指すという名目で、①拡大路網(山中への網の目のような道路造り)の促進、②ドイツ林業にならって、3点セットの大型林業機械の導入です。

日本の山は、富士山ろくと北海道を除いて、いずれも急峻です。熊森は、これらによって、これまで以上に山が荒れ、野生動物たちの生息が危うくなるとして、道造りより、まず、すでに道がある所の主伐や強度間伐から始めてほしい、林業林と環境林のゾーニングをおこなってほしいなどと各方面の方々に訴えてきました。検討会を傍聴すると、私たちと同じような意見も一部委員から出ていたのですが、現段階での最終とりまとめを見ると、とにかく①拡大路網造りが突出して前面に出てきています。

国土保全や生物多様性の保全をどうするかについては、23年に策定する予定の全国森林計画で明確にするとされています。熊森が訴えたことが、一つでも多く全国森林計画に入るように、今後も訴え続けます。このプランができたことで、近く、「森林法」の改定があるということで、こちらも目が離せません。さっそく本部では、森林法の勉強会をもちました。

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