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2013-04-19

八幡平クマ牧場死亡事故から1年

2名の死者と6頭の射殺熊を出した、昨年4月20日の痛ましい八幡平クマ牧場の事故から1年が経ちました。

 

以下は、本日4月19日付け秋田さきがけ新聞記事の記事です。

20130419「八幡平クマ牧場死亡事故から1年

 

クマ牧場元経営者の長崎さんの「事故前から経営は成り立っていなかった。もっと早くに行政や愛護団体に窮状を訴え、廃業に向けた支援を仰ぐべきだった。そうしていたら、最悪の事態は避けられた」という言葉が、胸に残りました。

 

本人の努力が足りなくてうまく行かない場合に手を差し伸べると、その人を甘やかしてダメにしてしまいますが、人間には一生懸命取り組んでも、うまく行かない時があります。その時は、救いの手が差し伸べられる社会でありたいと思います。

 

1周忌となる明日は、亡くなられた2名の方と、射殺された6頭のクマたちに、そっと手を合わせたいと思います。八幡平クマ牧場では、長崎さん主催の法要が営まれる予定だそうです。

イエローストーンで環境教育に携わっている専門家が、熊森本部を来訪

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昨年、NHKのEテレで放映された、熊森群馬県支部が登場する番組を見られた、イエローストン在住アメリカ人研究者が、4月18日、熊森本部を訪ねて来られ、大変有意義な意見交換の場が持てました。

 

母子グマの写真撮影など、アメリカでのクマの生息推定数の出し方が、とても興味深かったです。アメリカでは、クマに負担を与える調査法は良くないとして、クマに触れない方法で、クマの糞などからDNAを大々的に割り出して生息推定数を出したりしているということでした。(糞の中には、腸の細胞がたくさん含まれている)。発信器を付けるのも、クマに負担を与えるので、できるだけしないということでした。

 

もしそうなら、日本人の研究者たちが、クマを捕獲し、クマに時には死ぬような耐えがたい負担を与えて、生息推定数を出したり研究したりしている現状は、国際的にも、研究者の倫理観を喪失したもので、もっと強く批判されねばならないだろうと感じました。

 

四国の半分の面積のイエローストーン国立公園ですが、一時は8000万頭のバイソンを25頭にまで殺し尽くした間違った歴史を持っているそうです。大反省の上に立って、国を挙げて、自然保護策に転換した結果、今ほど動物たちが増えてよみがえった時代はないということで、ヒグマに関しては、600頭ぐらいいると思うと、喜ばれていました。(150年前に戻せた)。ツキノワグマ(アメリカクロクマ)は、あまりに多いので、何頭いるのか数えてみようと思う人はいない。

 

クマの平均寿命は、イエローストンでは、6か月だそうです。クマが繁殖力の弱い生き物であると言われる所以がわかります。

 

以前、アメリカでは、クマなど野生動物は殺す対象だったそうですが、今はすっかり国民の価値観が変わって、共存する対象になっているということです。ヒグマもツキノワグマ(アメリカクロクマ)も、民家のすぐ近くまできても許されるようになり、今ではともに暮らしているそうです。

 

今後ともいろいろと情報交換していきたいと思いました。

 

最後に、「アメリカのニューヨークタイムズやワシントンポストなどのマスコミから得られる情報を見ている限りでは、日本人は、福島原発大事故から何も学ばなかったことがわかる。世の中が変わるチャンスだったのにと、アメリカ人としてはがっかりだ。放射能汚染水は今も毎日出っ放しで、一体どうなっているのか。民主主義国家なのだから、国民が責任だ」と、はっきり言って帰られました。

 

早池峰山をシカの食害から守る取り組み

以下(2013年4月14日  読売新聞より)

 

早池峰山をシカ食害から守れ

高山植物の宝庫として知られ、花巻、遠野、宮古の3市にまたがる早池峰山(1917メートル)を、ニホンジカの食害から守ろうと、林野庁東北森林 管理局が危機対応マニュアルを初めて作成した。シカによる高山植物の食害は全国的に広まりつつあるが、大きな被害が確認されていない段階で、未然防止を目 的にマニュアルが作成されるのは珍しく、関係者は「早池峰を全国のモデルケースにしていければ」としている。

 

同局では、住民から「早池峰山の山奥でシカが散見されるようになった」との情報を得て、2011年度に早池峰山周辺でシカの生息密度調査などを実 施。高山植物が多い核心部を取り囲むように広範囲にシカが生息していることが分かり、12年度の調査でも同様の傾向が確認された。

 

シカは爆発的に増加することが知られ、南アルプスなどでは、姿が目立つようになって数年で植生に壊滅的な被害が出ている。

 

早池峰山でも今年2月、危機感を募らせた県内の自然保護団体が、地元猟友会に周辺での有害駆除を要望するなど、対応が迫られていた。

 

マニュアルでは、早池峰山周辺(1区画当たり2キロ×2キロの150区画)を、四季を通じてシカの侵入を阻止すべき「保全区域」(37区画)、越 冬地として生息することを阻止すべき「シカ排除区域」(36区画)、個体数ゼロを目標に数の低減を図るべき「シカ低減区域」(77区画)の三つに分類。生 活痕や食痕、目撃情報などにより6段階の危機レベル(0~5)で判定し、各段階における基本方針と対応策などをまとめた。

 

保全区域は、貴重な高山植物や天然林がある「森林生態系保護地域」全体をカバーする形に設定し、主にその周囲2キロをシカ排除区域とした。植生が回復困難な状態に陥るのを避けるため、各区域ごとに回避すべきレベルも設定した。

 

マニュアルに基づき判定すると、保全区域の59%(22区画)が、既に同区域が回避すべき「レベル2」に達しており、有効な対策をせずに数年間放 置すれば、一部で草本類の群落が壊滅的なダメージを受ける可能性があると指摘した。理想とする「レベル0」に該当する区画は、各区域ともゼロだった。

 

同局では今後、有識者や、県と周辺自治体の担当者を交えた「早池峰シカ危機管理委員会(仮称)」を発足させ、マニュアルを元に、越冬地での捕獲など効率的な管理手法などを検討していく方針。

 

マニュアル作成に携わった森林総合研究所東北支所(盛岡市)の堀野真一・生物多様性研究グループ長は、「これまでは早池峰がどのぐらい心配な状況 で、何をやっていけばいいのか、具体的に示すものがなかったが、マニュアルができたことで関係者が共通認識も持って対策に取り組むことができる」と話して いる。

 

<熊森から>

確かに、わずかに残された原生的自然林にまでシカが入り込み、あっという間に下草を食べ尽くしてしまうようになってきた。そうなると、もう奥山にクマを初め、多くの生き物たちが棲めなくなる。当協会も、原生的自然林から自然植生が完全消滅しないように、今年から、防鹿柵の設置を予定している。早池峰山を、どのような方法でニホンジカの食害から守ろうとしているのか。シカを殺さない方法で対処する取り組みの研究を望む。

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