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2017-10-18
許せない暴挙、今年、秋田県は過去最大533頭のクマを大量駆除(9月末現在)した上に、3ケ月間の狩猟も計画 全国のクマ保護体制を壊す恐れ
- 2017-10-18 (水)
- くまもりNEWS
今春、米田一彦氏(まいたかずひこ 日本ツキノワグマ研究所所長)が、
警戒せよ!秋田の「人食いグマ」は3頭生き残っている
と、例によって誰も検証できないことを発表し、新聞などに大きく取り上げられました。そして、またまたセンセーショナル記事がお望みのマスコミの寵児となりました。
まともに信じた秋田の善良なみなさんは、震え上がられたと思われます。しかし、人食いグマなど誕生しているとは思えません。もしそんなクマが誕生していたら、被害者が続出するはずです。
それ以外にも、昨年の秋田県内に於けるクマによる死亡事故4件、今年の死亡事故1件もあって、これまでクマを見かけても、秋田にクマが居るのは当然として役場に届け出なかった人たちが、不安になって届け出るようになったり、クマを見かけたら殺してほしいと申し出るように変わっていったことが考えられます。
注:本文中のグラフは全て、ダブルクリックによって拡大され鮮明になります。
秋田から始まったこの流れが全国に広まって、クマは殺すべしというとんでもなく間違った国民感情が一気に発展していく恐れがあります。クマは、祖先がしていたように、棲み分けることによって人間とこの国で十分安全に共存できる素晴らしい動物です。戦後、奥山を破壊して、クマと人間の棲み分けを一方的に壊したのは人間の方です。
今年8月末に熊森本部が秋田県庁を訪問した時は、まだ捕殺数は340頭でした。去年、476頭も殺したあとなので、すでに多すぎるが、何とか今年は去年のような大量駆除にならないようにと強くお願いしてきたところでした。よって、10月15日(日)の秋田魁新報社の、秋田県内クマ駆除、最多533頭 目撃数更新、冬場の猟解禁
という記事を見た時、熊森本部スタッフ一同、2年連続のあまりにも度を越した秋田県のクマ大量駆除に対して、許せない思いでいっぱいになりました。
秋田県のクマ管理計画書によると、個体管理: 「各年度の総捕獲数上限は、事前調整捕獲数(春ぐま)+有害鳥獣捕獲数+狩猟数の合計が、推定生息数の12%までとなるようにする。」とあります。秋田県のクマ推定生息数は1013頭ですから、120頭数が捕獲限度のはずです。今年の9月末で、駆除数533頭は異常で、すでに上限を大きく逸脱した捕殺数です。
同計画書では、「捕獲数が上限に達した場合 狩猟自粛の要請をしなければならない。」とあります。
10月16日、熊森本部は、クマの担当部署である秋田県庁自然保護課に電話をしました。
熊森:どうしてこれほど多数のクマを殺したのですか。秋田県の有害駆除の許可基準が甘すぎるのではないですか?クマの目撃数は、岩手の方が多いですが、捕殺数は秋田の方が断然多いです。
県庁:出先の県振興局が、駆除の許可を降ろしていますが、きちんとやっていると思います。
熊森:2年間ですでに、1009頭駆除ですよ。これって無茶苦茶じゃありませんか!
県庁:県内クマ推定生息数1013頭が間違っていたようです。
熊森:クマが何頭いるかは、誰にもわかりません。1013頭という秋田県の推定数が間違っていたとしても、これまでこんなに大量に捕殺したことはなかったじゃないですか。秋田のクマを皆殺しにするおつもりですか。
県庁:今年は、去年以上にクマが人里にどんどん出て来たのです。
熊森:きっと山に餌がなく、生きるためにしかたなく出てきたのだと思います。同じ国土に生きる者同士、手を差し伸べてやらねばならないのではありませんか。去年はブナが大凶作でした。今年はどうなんですか。
県庁:ブナは凶作、ミズナラとコナラは豊作です。
熊森:どうして驚くほどの数のクマが山から出て来たと思われますか。
県庁:秋田は平地がミズナラ帯です。平地のミズナラやリンゴ園のリンゴ、養蜂業者の巣箱を狙って出て来ています。
熊森:クマが食用にしてきたブナ、ミズナラ、コナラ以外の植物にも、何か大異変が起きて、秋田の山でクマが生きられなくなったのではないでしょうか。クマが山の異変を訴えているのに、彼らの悲鳴に耳を傾けることなく、害獣のレッテルを張って殺してしまうのは間違っています。今年、秋田の奥山で何が起きていたのかは、支部もないのでわかりませんが、秋田県は奥山の餌状況を調べるべきです。
県庁:ドングリ以外のクマの餌も調べているという熊森のような団体は、秋田にはありませんから、よくわかりません。ナラ枯れはありますが、今年、急拡大したというようなことはありません。
熊森:熊は冬眠前の食い込みができないと、冬眠中に死んでしまうので、彼らも必死です。山から出て来て平地のミズナラを食べているのなら、見逃してやってほしいです。
県庁:人身事故が16件も起きているのです。私もクマを殺したくないのですが、県民のクマ殺せの声は、もう押さえられません。
熊森:秋田にもクマに優しい人はたくさんいます。人身事故には胸がいたみますが、すべてクマが悪かったわけではないはずです。人間を襲ってやろうなどと思っているクマは1頭もいませんよ。人間に臨界距離(12メートル)内で出会って恐怖でいっぱいになり、逃げたい一心で人間をはたいて逃げる。これがクマの習性ですから、クマに早めに人間の存在を知らせるなど、人間側の努力も必要です。
県庁:何回も地元のみなさんに講習会を開いてきました。ジョギング中の方がクマに後ろから襲われた例もあるんですよ。この場合、人間に落ち度はないでしょう。
熊森:それだけでは判断できません。人間にはわからない理由があったのかもしれません。まあ、殺してしまったのはもう仕方がないとして、なぜ、県がクマ狩猟を推進するのですか。秋田県の保護管理計画によると、捕獲上限を超えた時は、狩猟を自粛することになっていますが。
県庁:県議会の自然環境委員会でも、専門家の集まりである野生鳥獣保護管理対策検討委員会(会長:星 崎 和 彦 秋田県立大学)でも、私たちの狩猟再開案(これまでは狩猟自粛が続いていた)に反対する声はありませんでした。
熊森:女性や子供の声は聞かれましたか。殺さないでやって欲しいという声が多いと思われます。強者の声ばかり聞いていると、県民みんなが殺せと言っているように錯覚してしまうのではないでしょうか。地元の代表などは、だいたいが声が大きく、何かあった時、自分が責任を問われないように、クマを殺せという傾向があります。このような声だけを聞いていたら、クマを絶滅させてしまいます。第一、山に潜んでいる問題のないクマまで、なぜ狩猟で殺そうとされるのですか。
県庁:クマ狩猟は、奥山ではなく里山でしてもらおうと思っています。ハンターに隊を組んでもらい、里山から山奥に向けて散弾銃やライフル銃を撃ちながら上がって行ってもらうのです。追い上げです。
熊森:殺さないのですか?
県庁:いえ、狩猟ですから、クマが居たら撃ちます。
熊森:それはおかしい。奥山に餌がないからクマたちが出て来ているのに、奥山に追い返すというのは、クマたちに餓死せよということですね。まるで、人間が悪魔になってしまっているではありませんか。無茶な獲り方はしないというマタギの精神はどうなったのですか。人間の都合ばかり考えていては、野生動物との棲み分け共存などとてもできません。
もう、今年、クマを狩猟する案は正式に決定したのですか。
県庁:10月20日の環境審議会に私たちが作った原案を諮問して、座長から答申を得たら決定します。狩猟上限は58頭です。
熊森:58頭の根拠は?
県庁:秋田県は、春期捕獲(=春熊猟)をやっていて、その捕獲上限は推定繁殖数の3割と決めています。今年度の場合、推定繁殖数は273頭でその3割は82頭です。今年春期捕獲で24頭のクマを捕獲しました。よって、今回の狩猟の上限は、今年の春期捕獲上限の82頭から、24頭を差し引いた58頭となります。穴熊猟と親子熊猟は禁止にします。
秋田の山は、11月末から12月中旬にかけて雪が積もり始め、12月末にはクマは冬眠に入ってしまいます。実質クマ狩猟は、11月15日~12月上旬くらいの間になるでしょう。
熊森から
秋田県のこのような無茶苦茶な流れを見逃してしまうと、クマ絶滅につながる悪しき風潮が全国に広まってしまいます。
生き物に大変やさしいお気持ちを持っておられる 佐竹敬久 秋田県知事に、FAXやE-mailを使って、みんなで訴えませんか。
秋田の新聞社に投稿するなどもいいと思われます。
1、秋田県のクマ大量捕殺は、環境省のガイドラインや、自らが作った「秋田県クマ管理計画」にも大きく逸脱するもので、歯止めを失っており、認められない。
2、これだけの大量捕殺を2年連続続けてきたのであるから、今年のクマ狩猟は当然禁止すべきである。
3、秋田県は、去年と今年に、なぜ大量のクマが人里に出て来たのか、その原因を探り、殺すという対症療法ではなく、根本原因の解消に当たるべきである。
クマ保全を願うなら、今の秋田県のやり方は到底放置できるものではありません。
渦中におられる担当者のみなさんは、もう何がなんだかわけがわからなくなっておられるのだろうとお察しします。
今回の事は、日本の熊保護が今後どうなっていくかという大事な局面です。黙っていてはならない。本部も訴えます。
注:環境省に訴えても、無駄ですから、お知り置きください。都道府県にお任せしていますの一点張りで、何の力にもなっていただけません。都道府県が暴走した時、指導する部署が日本国にはありません。民間が声を挙げるしかないのです。
以下は、ツキノワグマ管理に対して秋田県に寄せられた国民の意見に対する秋田県の回答です。秋田県の姿勢がわかります。
「第12次秋田県鳥獣保護管理事業計画(案)」及び「秋田県第二種特定鳥獣
管理計画(案)」についての意見募集結果について 2017年3月7日