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2018-02-01
【速報!】東京都青梅市での子グマ2頭の無許可射殺を刑事告発へ
2016年11月、東京都青梅市で、猟友会員が、捕獲許可が1頭しか出ていないにもかかわらず、山で木に登り逃げていた3頭の親子グマを射殺しました。2頭の子グマを射殺したことは最近まで隠されていました。
日本熊森協会は、関係者の証言と現場調査から、2頭の子グマの捕獲は鳥獣保護法等に違反するとして、昨日、青梅警察署を訪れ刑事告発を申し入れました。
また、本日、東京都のツキノワグマ保護体制の構築を求めて、東京都知事宛の申入書を提出しました。
熊森の副会長の室谷弁護士の外、東京都の市野綾子弁護士、島昭宏弁護士にも告発代理人としてご協力いただきました。
クマは襲ってきたのではなく、山林で木の上に逃げていて無抵抗だった
2016年11月10日、親子グマ3頭の目撃情報があり、東京都猟友会青梅地区から駆除隊9名が出動し、猟犬をかけてクマの追い払いを開始しました。青梅市は、1頭しか捕獲許可が出ていないから子グマを撃たないようにと指示していました。それにもかかわらず、猟犬を追いかけていた猟友会員が、山林でスギの木に登って逃げていた3頭の親子グマを射殺しました。猟友会員は、3頭を射殺したにもかかわらず、青梅市には「1頭だけ捕獲した」と嘘の報告をし、2頭の子グマを捕獲したことは隠し、なかったことにしてしまいました。
熊森に、今回の無許可捕獲の通報があったのは、2017年11月末です。熊森本部は以降、聞き取りや現地調査等を進めてきました。
2017年12月、青梅市は、2016年に11月のクマ捕獲は1頭ではなく、3頭だったとメディアへ訂正発表をしました。青梅市の聞き取り調査では、クマを撃った猟友会員は、「クマが藪から出てきて、自分に向かってきたから射殺した」と証言しているとのことでした。
しかし、熊森本部、東京支部、神奈川支部等の現地を調査したところ、現場はスギの人工林内でクマが身を潜められる藪などありませんでした。クマが登っていたスギの木には母グマと思われる爪痕がいくつも発見されました。
また、クマを撃った猟友会員は、3頭を射殺した直後、駆除隊にいた猟友会に対し、「木に登っている親子グマ3頭を全て撃ってしまったので、市役所の人に内緒で山から下ろすのを手伝ってほしい」と依頼をし、クマが向かってきたという発言は一切していないという証言も得られました。
違法行為には、法に基づく処分を
東京都では、絶滅危惧種とされているツキノワグマは狩猟禁止措置が取られており、許可のない捕獲は鳥獣保護法や銃刀法違反となります。
クマを撃った猟友会員の「藪に隠れていたクマが向かってきたから撃った」という報告は、クマが潜める場所のない現場の状況や当日駆除隊に参加していた猟友会の証言とも矛盾します。
青梅警察署は、刑事告発を受理するかどうか検討するとのことでしたが、絶滅危惧種の保全という観点からも、事実を適正に捜査し、違法行為に対しては厳しい処分がなされるべきです。
東京都でツキノワグマの保護体制強化を要請
2月1日、熊森は東京都庁へ出向き東京都知事あてに、今後、絶滅危惧種である東京都のツキノワグマ保全強化を要請する要望書を提出し、都庁記者クラブで記者会見を行いました。
クマは、本来臆病で、人間が怖いので、積極的に人を襲う習性はありません。猟師が猟欲のあまり無抵抗のクマを「襲ってきたから撃った」ことにしてしまう、今回のようなケースは、氷山の一角であると考えられます。クマは繁殖力が低く、捕獲圧に弱いので、「危険」というレッテルを張り、安易な捕獲を進めていると絶滅に拍車をかけることになります。
東京都で、クマと人が共存できるよう、奥山への放獣や追い払いの徹底、そして何より本来の生息地である奥山の自然林の復元等の取り組みが行われるよう、東京都支部とも協力し活動を進めていきたいです。
(野生動物保全担当 水見)
ツキノワグマ保護体制構築のための東京都への要望事項
1 東京都でも、他府県のように、ツキノワグマの放獣体制をつくること。特に山の実りが凶作年の出没やイノシシ等の罠への錯誤捕獲については、捕獲したクマを山に放獣できるようにすること。
2 クマの出没時、追い払いや誘因物の除去を徹底すること。 3 絶滅防止の観点から、子連れのメスグマは原則捕殺しないことをルール化すること。 4 ツキノワグマの違法捕獲が発生しないよう、捕獲許可権者である東京都が捕獲従事者の監視体制の強化、各自治体への指導を徹底し、違反者に対しては適正な処分をすること。 5 東京都の本来のクマ生息地である奥山がスギ・ヒノキの人工林率が高く、クマが生息できない環境となっているため、奥山の広葉樹林化を進め、ツキノワグマの本来の生息環境の整備をすること。 |