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2018-12-17

なぜ「植えない森造り」でなければならないのか 平野虎丸顧問のブログより

「植えない森造り」でなければならない訳を、代々林業家の家で育たれた熊森の平野顧問が誰にでもわかるように、ブログに上手にまとめておられるので、以下にご紹介させていただきます

 

2018年09月21日

植えない森は、過程が大事

 

平野虎丸です。ご訪問ありがとうございます。
森は、植えないでも森になるので「植えない森」を皆さんにお奨めしていますが、植えたほうが早く森になるのではないか、とよく言われます。
しかし、植えない森は、森になるまでの過程がすばらしく、大事なのです。
森、と言えば、皆さんは樹が生い茂っているところ、と思われているかもしれませんが、森にも人間と同じように、種の時代から赤ちゃん、幼児、青少年時代などいろいろな時代を経て大人の森になっていきます。
まず、木が伐採されたあと、

 

●その地域の野草やイチゴなどトゲ類の先駆植物が発芽する。
●野草にチョウやハチなど昆虫がやってくる。
●ウサギやシカなど草食動物がやってくる。
●昆虫の幼虫や成虫を餌とする野鳥がやってくる。
●野鳥を餌とするタカやフクロウなど大型の野鳥がやってくる。
●木イチゴなど先駆植物に赤や黄色の実がなる。
●埋土していた森を構成する木の種が発芽して、成長を始める。
●周辺にある木の種や野草の種が飛んでくる。
●野鳥が種を撒き、木の種類を増やす。
●野草や木々、野鳥の種類が増えていく。
●先駆植物の棘類が成長して最終的に森を構成する木々をシカの食害から守り、森が本格的に成長を始める。
●森の成長と共に、茅を始め草原植物が姿を消し始め、先駆植物も枯れて森を構成する木々の肥料となっていく。
●森を構成する木々、というのが、皆さんが植えたいと思われている樹木です。
サクラ、クヌギ、ケヤキ、モミジなどです。
●森の初めに生えてくる先駆植物や草原植物は最終的な森の構成員ではありませんが、自然界に必要な植物や生物です。
●原生林では、野草も虫も野鳥も少なく、餌が少ないのでシカもあまり増えません。
●原生林を伐採することは悪いことばかりではありませんが、すべてなくしてしまうと、そこにひっそりと生きていた「ホイホイさん」のような生き物たちが絶滅します。
●そういう意味で、原生林は無くしてしまえば戻ることはありませんが、原生林の成り立ちが「植えない森」です。
●植えない森ができる過程において、たくさんの生き物たちが関わっていることが大切なので、森づくりを急がないで欲しいと思っているのです。

 

林業のように、木を伐採後すぐに整地をして(農薬などを撒くこともあります)、苗を植え、苗の成長と共に邪魔になる野草や先駆植物を刈っていくならば、野草も昆虫も野鳥も棲む暇がありません。

これが野草や昆虫が絶滅する所以です。

「漁民の森」や「企業の森」づくりは広葉樹を植えていますが、数種類の木材になる木だけを植栽するので、棘類など先駆植物も野草もなくなり、限られた草や虫だけが生き延びることになります。

自然界は人間が計り知れない植物や昆虫が生息しているので、植林しての森づくりは本来あり得ないものであり、行政と共に植林活動をされている皆さんは、木材生産をしているだけです。

 

森は多種多様な植物や生物を生み出しているものであり、シカが悪い、イノシシが悪い、というのは森づくりではありません。
イノシシは野草をひっくり返したりしますが、土を掘り返しているので、よいこともあります。
シカやイノシシが森を守っています。

 

「植えない森づくり」に人間の手は不要です。
人間が生まれる前から森はありました。
人間は森が完成した後に生まれてきたのです。
山に人間が木を植えて手入を続けることこそ森を破壊する行為です。
「日本一花の森」では、森になると消失していく希少な大陸遺存系草原植物を守るために年中草刈などの手入をしています。道づくりも草原植物を守るために必要です。
草刈りをしないと「すぐ森になる」。
それが植えない森です。

 

ライオンズクラブ複合地区環境保全セミナーでの名誉会長講演  

先月、「クマが教えてくれた日本の森の危機」と題して、森山名誉会長が上記セミナーの記念講演の講師を務めました。

270名の参加者応募があり、ホテル大阪日航の部屋は入りきれないほどの人でした。

 

講演中の名誉会長

 

社会奉仕の一環として、日頃より地球環境の保全に取り組んでおられるライオンのみなさんの意識の高さが伝わってくるような会場の雰囲気でした。

熊森としては、レジュメの代わりにくまもり小冊子を全参加者に配布させていただきました。

 

講演の中で森山名誉会長が、

「私たちは会設立以来21年間、大型野生動物たちが棲める奥山水源の森を再生しようと、植樹会を何度も実施して、あの手この手で天然林の再生を手掛けてきましたが、私たちが森再生と言って造ってきたのはドングリの木が並んだドングリ公園であり、森ではありませんでした。

ドングリ公園?

 

長年みんなで森を造ろうと活動した結果、人間には森など造れないことがわかりました。

森は、虫や鳥や動物を含む自然が、気が遠くなるような長い年月をかけて造り上げるもので、今後は、原則として人工林を皆伐し、鹿よけ柵を設置した後は放置して、熊本の平野虎丸顧問が提唱されている自然に任せた植えない森造りをめざします」

放置人工林を皆伐して地面に日光が当たるようにした後は、何もしない方がいい。

種は鳥や風や動物が運んでくる。九州では、自然の回復力が大きいので、シカがいてもシカ除け柵は不要。

 

と、話したことが、大きな反響を生みました。

 

無理もありません。ライオンズクラブの皆さんの中には、私たち同様、地球環境の保全をめざして、一生懸命植樹活動にがんばってこられた方も多くおられますから、人間には逆立ちしても森など造れないと言われたら、ショックだったと思います。

 

ただし、熊森は、植樹活動を全面否定するつもりはありません。自然界に任せておけば森の遷移をたどりながら植生が変化し続け、最終的にすばらしい本当の森が数百年後にでき上がります。しかし、今すぐここにドングリの実る場所を誕生させたいなどとなれば、そこにドングリの苗を植樹するしかないからです。

 

講演後、豪雨による山崩れの後の被災地支援の募金にがんばってきたが、放置人工林を崩れにくい天然林に変えることが大切だとわかったとか、今後の植樹についてどうすればいいかなど、多くの方々から、様々な感想やご質問をいただきました。

 

神戸には、熊森の初期からずっと熊森を応援してくださっている女性だけのクラブがあります。

そのメンバーの方が、

「これまで熊森の活動を紹介してもあまり関心を示してもらえなかったが、今日、多くの参加者が熊森の話に熱心に耳を傾けているのを見て、時代が変わってきたと感じました。是非会員に登録して、この自然保護団体を支えてほしいです」

と、参加者たちに訴えてくださいました。本当にうれしかったです。

 

後半は、各地でのライオンズクラブでの活動報告でした。

各クラブの発表

 

私たち熊森は、「今だけ、金だけ、自分だけ」の日本人がどんどん増えていくのを恐ろしく思っておりましたが、ライオンズクラブのみなさんの報告を聞かせていただいて、ここに集まっておられる皆さんは、私たち熊森会員と同じだなと感じました。

みなさんは、安田喜憲先生が言われる日本文化、「祖先への感謝、未来への責任、生きとし生ける物への畏敬の念」をしっかり身につけておられることがわかり、とても心強く思いました。

 

今までの経験からすると、せっかく熊森講演を聞いて感動してくださっても、日々のめまぐるしい日常生活に戻ってしまわれると、ほとんどのみなさんが奥山水源の森再生の話など忘れてしまわれます。それだけ現代人は忙しいということですが、今回お話を聞いてくださったみなさんの中から、あちこちで、奥山水源の森再生活動支援の芽が生まれてほしいと、切に願っています。思い出して、年会費千円の応援会員になってくださるだけでも、奥山再生に貢献できます。

 

私たちには、今すぐ文明を、経済第一、人間中心、科学盲信から、自然保護に転換をしないと、この国も人類も、近い将来滅びることがはっきりと見えています。危機感でいっぱいです。

他生物のために、子供たちのために、気づいた者ががんばるしかありません。

 

最近は、マスコミが行政に忖度して、市民による環境保全や自然保護活動を取り上げなくなってしまった現状に、私たちは危機感でいっぱいです。

会長講演、名誉会長講演、環境教育を希望される方は、遠慮なくお声かけください。

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