くまもりHOMEへ

ホーム > アーカイブ > 2019-05-09

2019-05-09

都市部に配分された森林環境譲与税の使い道提案(2)市民や子供たちの森林学習に使う

今や国民の9割が、森から離れて都会で暮らす時代です。実は、これはとても怖いことなのです。森に生かされていることを日々実感して森と共に暮らしてきた私たちの祖先の感性が、都会暮らしではすっかり失われてしまいます。

その結果、森の破壊や荒廃に関心のない国民が、大量に誕生してしまっています。(現在の日本の姿)

これは、日本文明崩壊への道です。(森≠林)

 

そこで、市民や子供たちが、生物の多様性や水源の森の保全の重要性を理解できるような講演会や体験学習が必要となります。

 

<実践報告>

 

放置人工林地帯に広葉樹苗を植樹する尼崎市の中学生たち 兵庫県朝来町1998年

 

1998年秋、尼崎市立園田東中学校3年生330名の義務教育最後の遠足を、当時の学年主任が、奥山人工林地帯での実のなる木の植樹と決めました。

予想通り、最後の遠足は、遊園地でパーッと楽しく遊ばせてほしいという生徒たちから、強いブーイングが出ました。

 

そこで、体育館に学年全生徒を集め、理科教師2名が、戦後造り過ぎた人工林が放置されて大変なことになっているという話をしました。ひとりは都市出身者、もうひとりは奥山出身者です。

 

説明会後、遊園地に行きたいという声は生徒たちから消えていました。ひとりの男子生徒が、「先生たちの話を聞いていて、泣きそうになったわ。人工林が大量に放置されて、野生動物や地元農家がえらい困ってるんやな。しょうがないな。山奥行って、広葉樹を植えてやるわ」と言ってきたのを、今も覚えています。(中学生は、まだ純粋なのです)

 

いよいよ当日。普段より30分早く登校。大型バス8台を連ねて兵庫県朝来町の伊由峠に向かいました。バスが兵庫県の人工林地帯に突入すると、バス酔いで気分が悪くなっていた生徒たちまでもが思わず立ち上がって「ワアーッ」と、びっくりして、窓の外の景色を見ました。

 

「これは、話に聞いたよりひどい!どこまで行っても、スギ以外何もない。まるで死の世界や。これでは、野生動物たちが山から出て来ざるを得んなあ。農家も大変やなあ」生徒たちの目が輝き出しました。

 

朝来町から提供された広葉樹の植樹地は、トンネル掘削工事で出た残土置き場です。

ここでまず、地元の方たちから林業や農業の大変な現状を聞かせていただきました。生の声は、生徒たちの胸に響きます。

 

植樹地は、土が固い上、石も多く、生徒たちは穴掘りや土入れに苦労していましたが、一人残らず目を輝かせて作業に取り組んでいました。(信じられない光景でした)

 

朝早く出たのに作業に手間取って、お弁当の時間が午後2時にずれ込みました。しかし、みんな喜々として文句ひとつなし。(信じられないできごとでした)

 

帰りのバスの中で生徒たちが口々に語りました。

僕ら今日、役に立ったなあ。僕らにも地球環境のためにできることあったんや。うれしかった。(一番多かった声)

・がんばって植樹したけど、帰りのバスの中から振り返ったら、山に何もしなかったのと同じくらい植樹地が小さい。

・日本中の中学生の最後の遠足を、奥山人工林地帯で広葉樹の植樹にしたらいい。

・すごい思い出になった。遊園地より良かった。

 

このたった1日の校外学習が、生徒たちを信じられないほど大きく成長させました。

よほどうれしかったのでしょう。卒業後何年かして、バスを1台チャーターし、元生徒有志たちが植樹地に出かけました。

今ではこの場所は、秋になるとドングリやクリの実がたくさん実っています。

(あれから21年。残念ながら周りの放置人工林は、今も放置されたままです。奥山天然林化は、まだ全く進んでいません。)

 

森林環境譲与税でこのような森林教育を市内全校が行えば、森を大切に思い、林業や農業の問題にも心を寄せる若者たちが育つと思います。

そのためには、まず、森林環境譲与税で森林教育の入門書として、「クマともりとひと」(1冊100円)を購入して、全先生たちに配っていただくことから始めなければなりません。

 

p.s空き家が大変多くなっている今、林業の成長産業化をめざすためにとして、無理に国産材を使って新たに家を建てなくてもいいと思うのです。みなさんはどう思われますか。

 

フィード

Return to page top