ホーム > アーカイブ > 2019-05-13
2019-05-13
改正法案衆院審議始まる 国有林内の人工林伐採跡地は未来の林業のためにもせめて針広混交林に
2019年5月8日から衆議院農林水産委員会で、「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」の審議が始まっています。この法案のことは3月2日のブログでも紹介しました。
5月9日の議員のみなさんの質疑のようすは、インターネット(衆議院3時間3分)で見れます。(長時間ですが、とても面白くて参考になりますので、可能な方は是非ご覧になってください」)
日本に住む私たち全生物の大切な財産である国有林の今後50年の姿が決まる大切なターニングポイントです。多くの国民の皆さんに関心を持っていただき、声を上げてもらいたいです。
林政審議会(平成31年2月20日)の配付資料:林野庁という資料によると、わが国の森林面積のうち3割にあたる761万ヘクタールが国有林で、そのうち3割にあたる232万ヘクタールが戦後の拡大造林政策で植えられたスギ・ヒノキ・カラマツを中心とした針葉樹の単一人工林です。
林業不適地とされる急傾斜地や林道から離れた奥山にあるものを除く人工林が、今回の伐採対象地で、50年の伐期を迎えているそうです。
広大な面積にびっしりと植えられたスギの人工林
この法案は簡単にいうと、「林業の成長産業化をめざす」という名目で、国民の膨大な税金を使って国有林内で国が育ててきた人工林の樹木伐採権を、「意欲と能力のある林業経営者」と呼ぶ、実質、大手の林業会社に数百ヘクタールの人工林を最高50年間提供するものです。こまごまとした私有林の人工林と違って、国有林の人工林は広くまとまっており、道路も入っているので、材を搬出しやすく有利です。しかも、伐採後の再造林は国が経費を持ち育林もしてくれます。樹木を採取する前に、樹木料を国に納付しなければならないなどいくつかの制約があり、中小の地元林業会社の参加は難しいと考えられます。
これが林業の成長産業化を促進させることになるのでしょうか。大手素材生産会社はもうかるかもしれませんが、一から自分たちで苦労して育てた木を伐るのでなければ、ただのバイヤーであり、林業とは言えないのではないでしょうか。
国有林問題を報道するマスコミ人がまずいないので、ほとんどの国民が何も知らないうちに事が進んでいっています。
今後、5月14日には参考人招致が予定されているそうです。
私たち熊森は、今回の法案による皆伐地は、スギ・ヒノキ・カラマツの再造林ではなく、原則として以前のように天然林に戻していただきたいです。
国有林は、本来、公益のために存在するのであって、経済活動の場となる林業には使うべきではないと考えます。
どうしても林業用地にしなければならない国有林があるのなら、そこは、その山に合った針広混交林施業を施していただきたいです。
50年後、何の材を育てておけば売れるのか、誰にも予測できません。
人気の建材が、スギ・ヒノキ・カラマツに代わって、ケヤキやクリに代わっているかもしれません。
針広混交林にしておけば、公益的機能の増進はもちろんですが、未来の林業のためにもなります。
パルプ、家具材、バイオマス燃料などは、断然、広葉樹がいいです。
スギ苗を植林後放置したため、広葉樹が自生し、針広混交林になった山
熊森としては、急傾斜地や林道から離れた奥山にある国有人工林を放置してもらっては困ります。
材の搬出は不可能でしょうが、群状皆伐などを施し、こちらは天然林に戻していただきたいです。