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2019-05
宮崎県は44の伐採業者を選定 伐採面積の8割を再造林の方針 拡大造林の反省はあり?なし?
- 2019-05-06 (月)
- くまもりNEWS
宮崎県延岡の夕刊デイリー4月10日記事によると、森林管理経営法の施行にあたって、宮崎県は山主に代わって放置人工林を伐採し材を販売する「意欲と能力のある林業経営者」を、第一弾として44業者選定し、登録証交付式を行ったそうです。
宮崎県の森林面積は58万ヘクタールですが、うち33万ヘクタールがスギやヒノキの針葉樹だけの人工林です。(人工林率は、57%の高率です)
33万ヘクタールの人工林のうち、約10ヘクタールはすでに森林経営計画が策定されており、林業用に利用されています。
残り23万ヘクタールの人工林が森林管理経営法によってどうなるのか、熊森は注目しています。
新聞報道によると、宮崎県は、放置人工林を伐採した後、8割の面積を再造林する方針だそうです。
これでは、スギやヒノキを植え過ぎたことによる生物の多様性の喪失や、将来の水源確保の不安などへの反省がなさすぎるのではないかと思い、宮崎県庁担当者に問い合わせてみました。
宮崎県は、スギ素材生産量が27年間日本一という林業県です。
国内の木材需要が落ち込み、長年、低迷が続いてきた日本の林業ですが、最近は韓国や中国の木材需要が急増しています。
九州材は地理的に近いということもあって、輸出に舵を切ったところ、輸出材がこの10年で30倍にも急成長しているそうです。
しかし、売れるから、もうかるからで、山を林業や経済の視点でしか見ないと、後で取り返しのつかないしっぺ返しが来ます。
2019年度は、森林環境譲与税として、宮崎県に1.1億円、県内市町村に、4.6億円が配分される予定だそうです。
(2023年からは、県に1.7億円、市町村には15.6億円)
8割も再造林するのではなく、森林環境譲与税を使って天然林を再生してほしいとお願いしたところ、業者は伐採搬出してもうかる場所の放置人工林しか伐採しないので、現在未利用の放置人工林23万ヘクタールの8割が再造林されるという意味ではないということでした。森林管理経営法の施行によって、いったい、何万ヘクタールの放置人工林が伐採されることになるのか予測がつかない上、今後どのように進めていくか未定部分が多いということでした。
宮崎県森林環境税(県民一人500円)も調べてみましたが、どちらの森造りにも、野生動物の棲める森を復元するという観点がありません。
人間至上主義は人間を滅ぼします。
宮崎県には、林業や人間のことばかりではなく、他生物のことも考えた森造りにもがんばっていただきたいです。
森林経営管理法、森林環境税法・森林環境譲与税法、どちらも始まったばかりなので、どうなっていくのか、熊森は、地球環境保全や自然保護の立場から目を光らせていきます。
以下は、2018年11月に林野庁の外郭団体である森林総研四国支所が開催した講演会の概要です。
四国や宮崎県のことが発表されています。
4月から「森林経営管理法」スタート 放置された私有人工林は市町村が管理、企業が伐採の流れに
生物の多様性や水源を失うとして、私たちが27年前から訴え続けてきた放置人工林問題。
最近は豪雨による崩れが激しくなり、野生動物だけではなく、人間も命を失ったり財産を失ったりすることが増加。もう待ったなしです。
事ここに及んで、国は、やっと重い腰を上げ、2018年に森林経営管理法、2019年に森林環境税・森林環境譲与税法を、国会で矢継ぎ早に成立させました。
突然の法案提出→成立だったため、放置人工林を抱える山主さんにどれくらい新法が周知徹底されているのかわからなかったのですが、和歌山県有田市と海南市で配布されているフリーペーパー「アリカイナ」の本年3月号に、興味深い記事が掲載されていました。
「アリカイナ」によると、今年2月9日に、和歌山県有田川町・旧清水町地区で開催された山林所有者説明会に、約200人が詰めかけたということです。やはり、具体的にどういうことになるのか、みなさんよくわからず、心配になられたのだと思います。
森林経営管理法によると、市町村は、放置人工林の所有者を調べ、森林管理の委託希望をたずねたり管理委託のお願いをしたりして、管理権を得ます。所有者不明の場合はホームページや掲示板で広告し、半年たっても連絡がなかった場合は、その森林を市町村の管理下におきます。
一方、都道府県は、意欲と能力のある林業経営者(企業)をリストアップします。市町村は、管理下に置いた森林のうち、もうかりそうな山は、リストアップされた企業に伐採や収益の権利を与えます。
「アリカイナ」によると、無断で人の山の木を伐って販売してもうけるのは、盗伐に匹敵するほどの財産権の侵害である(憲法29条に抵触)と森林経営管理法に反対している専門家もおられるそうで、山主にも結構反対者がいるということです。有田川町では、山林所有者への意向調査は、10年かけて行う予定だそうです。
熊森としては、放置人工林は余りにも弊害が多く、亡国につながるため、国としては一刻も早く手を打たなければならないと思います。しかし、どんないいことでも、強制は許されません。市町村山林担当者は、何とか山主さんとよく話し合っていただいて納得されたところから、管理方法、供給過多による材価低下を防ぐための計画的な伐採、伐採後の跡地の処置、販売利益の分配など、スムーズに事が運ぶように、がんばっていただきたいです。現在、全国市町村の3分の2には、山林担当職員がいないということです。放置人工林をかかえる市町村に、優秀な山林担当者を付けることが、森林環境譲与税を使って第一になされるべきことでしょう。
ただ、放置人工林は、材の搬出が不可能、または、無理して搬出しても搬出経費が掛かり過ぎて赤字となるため放置されてきた山林であることが多く、民間企業が無理に材を搬出しようとして、大型機械を入れて無茶な林道造りを実施し、どうせ他人の山、後は野となれ山となれで、山をずたずたにしてしまわないか心配です。市町村の強力な監視が必要です。
市町村は、企業に、山神様や野生動物たちの存在を忘れないようにすることを指導していただきたいし、放置人工林を天然林に戻すことで、林業者(山仕事)に森林環境譲与税から多額のお金が支払われるようにしていただかなくてはなりません。また、人口減、空き家増加、和風建築の需要減を考慮していただき、拡大造林政策の失敗を深く反省して、50年後の放置人工林を造るようなスギ・ヒノキの再造林だけはやめていただきたいです。
今後、あちこちの市町村で、森林経営管理法の実施に当たり、山主への説明会が持たれると思います。林森経営管理法がどのように進んでいくのか、私たちにはわからないことが多くあります。情報をお持ちの方は、熊森本部まで情報提供いただけたらありがたいです。
【速報】赤松顧問の投稿が毎日新聞全国版に!!
森林環境税で「放置人工林の天然林化を」
日本熊森協会の発足間もない頃から支援し続けてくださっている赤松正雄顧問(元衆議院議員)の森林環境税についての投書が、本日、毎日新聞の「オピニオン」欄に大きく掲載されました!
「私が顧問を務める一般財団法人「 日本熊森協会 」はクマなどの大型 野生動物がすむ奥山の再生に全国規模で取り組んできた自然保護団体である。森林環境税法の制定に当たっ ては、放堕人工林の天然林化を盛り込むよう強く主張した。
残念ながら法律に明記はされなかったが、衆参両院総務委貴会での可決に際する付帯決議に「 地域の自然条件等に応じて放置人工林の広葉樹林化を進めること」が盛り込まれた。決議は政府に対し、自治体に具体的な指針を示し、必要な支援を行うよう求めている。これが有名無実にならないことを切に望む」(記事より抜粋、全文はこちらでお読みください)
と、熊森の国会でロビー活動とその成果として、広葉樹林化の付帯決議がついたことも書いてくださっています。
ここからがスタートです。付帯決議を有名無実化させず、天然林化を進めるため、熊森は既に動き出しています。赤松顧問の投書がたくさんの方に読まれ、天然林化へ向けた共感の輪が広がるよう、この記事をみなさんに広めていただきたいです。
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第22回くまもり全国大会 盛会でした!
- 2019-05-02 (木)
- くまもりNEWS
生命にあふれる豊かな森再生へ、決意を新たにしました
4月27日(土)第22回全国大会、10連休の初日でしたが、全国からたくさんのみなさんにお集まりいただきました。
今年の全国大会の目玉は、森林環境税法のロビー活動の成果として、「広葉樹林化」を求める附帯決議がついたこと。特別報告のコーナーで報告しました。
室谷会長が、「広葉樹林化とその体制整備を進めることを求めた附帯決議を、たくさんの方と協力し、私たちの力で実現させましょう!」と呼びかけました。
ロビー活動にご協力いただいた赤松正雄顧問(元衆議院議員)、「放置人工林の天然林化を」と国会で質問し、附帯決議がつくようご尽力いただいた高井崇志衆議院議員、片山大介参議院議員(くまもり顧問)も駆け付け、ごあいさついただきました。
赤松正雄顧問 |
ご参加いただいたみなさん、お手伝いをいただいたみなさん、本当にありがとうございました。
この1年も、次世代のため、他生物のため、豊かな森再生をめざして、全国で活動をしていきます。
みなさんも、ぜひ、私たちの活動にご参加ください!
第23回全国大会は、2020年5月2日(土) 於:ホテル ヴィスキオ(尼崎市)です。ご予定ください。