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2019-06-05
島根県浜田市 いとも簡単に連続2頭の若グマ捕殺 メディア報道にも大問題 熊森本部厳重抗議
浜田市内ではこの2週間余りで、JR下府駅周辺や石見海浜公園、それに県立大学周辺などの広い範囲でクマの目撃が23件相次いでいたそうです。
警察などがパトロールを強化する一方、石見海浜公園を一部を立ち入り禁止にして、捕獲おり2基を設置していたところ、
①5月30日に体長1メートル13センチ、体重36キロで2歳から3歳のオスがかかり、直ちに殺処分されました。
テレビニュースから
親から離れたばかりの若グマです。殺処分が速すぎて、熊森が放獣してくださいの声を挙げる暇もありませんでした。
この件に関するマスコミの報道のひどさには、絶句です。
テレビニュースでは、檻にかかったクマに記者が近づき、「カメラに向かって、威嚇してきました!」と、それが重大問題であるかのように伝えていました。クマがどんなに狂暴であるか人々に伝わるようにしたら面白いニュースになると思ったのでしょうか。
罠にかかってしまい、人間に殺されるのではと恐怖でいっぱいになっているクマに人が近づいたら、クマは人間を必死で追い払おうとします。クマの行為は、当然です。こんなことすらわからない記者さんがおられるのでしょうか。
クマが捕殺された後、「捕まって一安心です。良かった」と、いうようなコメントをばかりを取り上げていました。
他生物との共存本能を失っていない子どもたちは、このニュースを見たらショックで胸がつぶれただろうと思います。
捕まえるのは仕方がないとしても、相手は、まだこの世に生まれて2~3年しかたっていない、何もわからない若グマです。
このクマがやったことは、公園にたくさん実るサクラの実を食べに来たことだけです。
殺してしまうのではなく、山へ逃がしてやろうという声は、島根県民から起きなかったのでしょうか。
信じられないほど一方的なニュースでした。
記者の不勉強には、あきれるばかりです。
目撃数が多いことから、クマは他にもいるのではないかということだったので、熊森本部としては、次回クマが捕獲されたら、今度は山に放獣してやってくださいとお願いしようと思いました。
6月5日、行政の連絡先をネットで探し始めたところ、体長130センチメートル、年齢は5歳か6歳、体重45キロのオスの若グマが、浜田市国分町の住宅の近くに仕掛けたおりにかかったので、すぐに殺処分したという新しいニュースが入っていました。またしても、罠にかかるのと殺処分が同時なので、声を挙げる時間がありませんでした。
今、日本国は、一部の研究者たちが広めた、「大切なのは人間の命だけ」という、とんでもない誤った思想に覆われてしまっています。
西中国山地のクマは、環境省が絶滅の恐れがある地域個体群に指定しており、島根県の保護動物でもあるのです。これまで島根県は、日本一のクマの保護先進県として名をとどろかせてきました。罠にかかったクマの放獣体制も整備されています。殺さなくてもいい命を殺すのは、犯罪だと思います。
いったいどういうことなのか、石見海浜公園の管理責任者に電話をしてみました。
責任者によると、自分たちはこの件にノータッチで、自分たちが殺処分してくれと言った訳ではないということです。次回からは、山に逃がしてやってくれるよう県に頼んでほしいとお願いしておきました。
次に、浜田市の農林振興課に電話をすると、自分たちは捕獲申請はしたが、捕獲されたクマを殺処分してほしいとも、山に逃がしてやってくれとも、何も言っていない。全て、権限は県にあり、県が決めたということです。
そうかもしれませんが、若いクマが、人間の恐ろしさも知らずに、桜の木の実や住宅のビワの実を食べたからと言って、即死刑は行き過ぎです。県にクマをどうするかの権限があったとしても、市の職員として、山に逃がしてやってくださいとお願いはできたはずです。ここでも、次回は、人間としての倫理観から、山に逃がしてやったらどうかと県に頼んでほしいと、お願いをしておきました。
最後に、島根県庁の鳥獣対策室の担当者に電話しました。今回クマが出た場所は、人が多く訪れる場所で、島根県ツキノワグマ保護計画のゾーニングでは、クマ排除地域だったということです。それはわかりますが、それと捕獲後殺処分するのとはつながりません。島根県は放獣技術を持っているのですから、次回から、放獣してやってほしいとお願いしておきましたが、なんだか歯切れの悪い対応でした。どうされたのでしょうか?
電話を切ってから、みんながクマという動物をあまりにも悪く誤解し過ぎていることに気づきました。さっそく、石見海浜公園と浜田市に、くま森小冊子「クマともりとひと」を郵送しておきました。人々が、野生動物に共感を持てなくなり、害獣としか見なくなったのは何故だろうと思うと、やはり、メディアの報道姿勢に問題があるからだと思いました。あす以降は、メディアの記者たちにも、アタックしてみようと思います。くま森小冊子「クマともりとひと」を読んでいただければ、クマがどんな動物か、クマたちが棲んでいた山を、人間がいかに破壊し続けてきたかが、短時間でだいたい伝わると思います。
クマを初めとする野生動物の本当の姿や、彼らが置かれている悲惨な状況を知っていただくために、行政やマスコミのみなさんを筆頭に、くま森小冊子「クマともりとひと」を、生涯をかけて、全財産をつぎ込んで、全国民に配布して回りたいです。心ある皆さん、ご協力ください。
野生動物たちの存在意義を知ることは、とりもなおさず、私たち人類が、この地球上で生き残る道なのです。(完)
p.s 島根県のクマと森の状況をお知りになりたい方には、日本熊森協会発行の、田中幾太郎著「西中国山地からクマを失うことの意味」500円(送料別)をおすすめします。
益田市在住の田中先生は、幼少の頃より、猟師だったおじい様と、中国山地を駆け巡られてきた方で、「中国山地の主」と、呼ばれています。
地元の方々に、中国山地の生き証人の声を、ぜひ聞いていただきたいです。
お奨め本
国有林管理経営法改正、参院農林水産委で可決
㊗ 付帯決議に「広葉樹林化」の言葉が入る
上記法案は、5月22日から週2日ペースで5日間、計約13時間30分にわたるに参議院での審議を終え、本日2019年6月4日に農林水産委員会で採択されました。明日本会議でも採択の予定。
日本熊森協会は、国有林でこそ、天然林化を率先して進めてほしいと訴えていました。
参議院農林水産委員かでの採決の際、附帯決議で、
「木材の安定供給・造林・保育・間伐等の施業の効率化、森林の有する多面的機能を持続的に発揮していくために必要不可欠な路網整備、鳥獣被害対策、立地条件等に応じた広葉樹林化及び針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するとともに、所要の予算を確保すること」(第10項)
という条項がつき、衆議院の附帯決議では入っておらず、私たちが求めていた「広葉樹林化」という文言が入りました!
みなさん本当にありがとうございました。
その他にも、附帯決議の前文で「昨今、頻発している自然災害への対応や、地球温暖化防止に対する国民の強い関心等も踏まえ、国有林野の有する公益的機能は、より一層十全に発揮されることが求められている」と指摘し、「生物多様性の保全や災害防止等の森林の公益的機能を重視した管理経営を一層推進していくこと」(第1項)、企業に長期に亘る大面積の伐採権を与える「樹木採取権」の指定にあたっては、国有林の「公益的機能の維持増進に悪影響を及ぼさないよう、森林の特性に応じたゾーニングを踏まえ、樹木採取区の指定を行うこと」(第4項)といった、災害防止、水源保全、野生動物たちの生息地としての国有林の役割を重視し、大規模な伐採が、こういった機能を阻害しないように求める条項が入りました。
この間、インターネットで審議の様子を見続けているうちに、吉川農林水産大臣や牧元林野庁長官をはじめ、質問に立ってくださった国会議員の方々、表には出ないけれど、裏で一生懸命質疑応答を支えられたみなさんに、すっかり親近感を抱くようになりました。心からご苦労様でしたと、今は労をねぎらって差し上げたい気持ちでいっぱいです。
国会審議を見ていて、国会議員は大変だなあとつくづく思いました。これだけ専門性の高い議論を人前できちんとした言葉で短い時間内に語ろうと思ったら、特別高い知性と猛勉強が必要です。改めて、なんだか、国会議員のみなさんが、すごく偉く思えてきました。
どの意見もそれなりに一理あります。議員のみなさんが自由に発言されているのを見ていると、日本はやはりいい国だなあと思わざるを得ません。政治はここまで進歩したのですね。
本当は、5月中に採決してしまう予定だったようですが、日本熊森協会、自伐型林業推進協会、東京パルシステムなどが、この法案に対して声を挙げたためか、理事のみなさん(堂故委員長、上月議員、田名部議員、紙議員)の叡智で審議日程が1日加算されたようです。超多忙な国会なのに、国民としては感謝です。うれしいです。
団体の要望
●日本熊森協会
国有林内の人工林は232万ヘクタール。一方、戦後の拡大造林政策によって皆伐された奥山原生林の面積は628万ヘクタール。自然保護団体である日本熊森協会としては、豊かな森を造るクマなどの大型野生動物が棲める水源の森を取り戻したいので、国がこの度、民間企業に頼んで国有林内の人工林を皆伐するのであれば、伐採跡地にはまたスギやヒノキを植えるのではなく、原則として、植えない森造りで全てを天然林に戻してもらいたいと願っています。
広葉樹林化及び針広混交林化等の多様な森林づくりを推進するという言葉が付帯決議に入ったことは、室谷悠子会長らによるロビー活動の成果だと思います。
●自伐型林業推進協会
皆伐と再造林のサイクルでは一時的な収益確保にしかならず、不足している林業人材の育成は極めて困難である。大規模山林分散型の多間伐林業を推進すべきである。(熊森も全く同感です)