ホーム > アーカイブ > 2019-07-18
2019-07-18
栃木県塩谷町、牧場の飼料タンクに落ちた親子グマの救出作戦
2019年7月18日、親子3頭のクマが、デントコーンなどが入った家畜用飼料タンクの中に落ち、4日間出られずに閉じ込められたままになっているというニュースが流れました。
ニュースに取り上げてくださった記者さんに、深く感謝します。
記者さんのおかげで、私たちはこの親子グマたちのことを知り得ました。
異変に気付いたタンクの持ち主は、親子グマがタンクに落ちて出られなくなっていることを、14日に役場に届けています。
その後の役場の対応はどのようなものだったのでしょうか。
熊森本部を初め関東の熊森支部員らは、町の担当者へ次々と電話して、この親子グマの救出を願い出ました。
現地は、標高1000~1100mの山奥にある町営牧場です。人家や集落からは離れています。
以下、塩谷町の担当者とのやりとりです。
熊森:この親子グマを、何とか山へ帰してあげてほしいです。
担当者:私たちも何とか助けたいので、山に放す方針です。しかし、4日間、この中に閉じ込められていたので、衰弱していないかが不安です。
熊森:放獣決定に、感謝いたします。どのようにして放されますか。
担当者:飼料タンクを解体して横に寝かせ、タンクの上部にある蓋をロープで引いて開け、自力で脱出させます。衰弱していますので、麻酔は使えません。本日中に放獣作業をしたいです。
熊森:何とか水を飲ませてあげてください。本日放獣作業ができないのなら、ひもつきバケツに水を入れて、ロープでタンクの中へ降ろしてやってください。
担当者:はい。やってみます。
(夕方、熊森本部は、再度、塩谷町の担当者に問い合わせました。)
熊森:無事放獣は出来ましたか。
担当者:午後、タンクを横に寝かせ、蓋を開けて放獣作業を行いました。子グマ2頭はすぐにタンクから脱出し、走っていきましたが、母グマは衰弱がひどいのか、タンクから出られない状況です。タンクを横に寝かせるときは、母グマは興奮していたのですが。
熊森:タンクの外に、水を入れたバケツをたくさん置いてください。タンクを横にするときに怖かったと思います。人がタンクの近くにいると、安心して出られませんので、母グマも余計に気を張って体力を消耗してしまいます。みなさん遠く離れてください。子グマも近くで母グマが出てくるのを待っていると思います。また、現在の状況を獣医師にも相談してください。
担当者:わかりました。やはり水が必要なんですね。やってみます。
しかし、18時のニュースでは、母グマが衰弱死したことが報じられました。
熊森から
ニュース映像を見ると、自らも脱水症状に陥っていると思われる母グマが、タンクの中で懸命に子グマに自分の唾液を飲ませていました。
とてもつらくて見ておれません。
もう少し早くこの情報を察知できていたら、助けることができました。
とても悔しい気持ちです。
関東の熊森会員の皆さんをはじめ、この件で、親子グマを助けたいと、何度も町の担当者へ電話をしてくださったみなさん、
本当にありがとうございました。
また、タンクを壊してもいいから、中の親子グマを助けてやってほしいと言ってくださった牧場主さんにも感謝します。
飼料タンクにクマが落ちてしまう事件は、東北地方や北関東のクマ生息地では時折あります。
牧場経営者のみなさんは、クマが蓋を開けられないように、蓋の改善をお願いします。
この件で、日本熊森協会顧問の門崎允昭顧問と、水見竜哉研究員がメディアの取材を受けました。
門崎顧問のコメント入りNEWS
水見研究員コメント入りNEWS
山に逃げた子グマが、母なしで生き残ることはむずかしいと思います。
命に対しては、いかに迅速な対応が必要かを、改めて思い知らされた事件でした。
みなさんと共に、今後の教訓として生かしたいです。