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2021-08

8月7日 「長野の森を視る会」その①

今年5月に予定されていた本部・支部共催の「長野の森を視る会」が、コロナで延期になったままでした。応募してくださった長野県会員のみなさんも残念だったと思いますが、私たち本部スタッフも残念でした。

 

と言いますのは、熊森本部は設立25年間の間に全国各地の森を研究者らと調査してきましたが、まだ長野の森だけが未調査で残っており、本部にデータがありません。

 

主原憲司先生がお元気なうちに、長野の森に通い続けられてきた先生に長野の森を案内しておいていただきたいということになって、東京オリンピック開催でコロナ第5波が拡大しつつある時ではありましたが、とりあえず内輪だけでもと「長野の森を視る会」を実施しました。

 

地元に迷惑をかけてはいけないので、本部スタッフは全員、PCR検査で陰性を確認しての出発です。

 

今回調査する森は、八が岳連峰です。

 

長野県は、3000m級の山々を連ねる飛騨山脈(北アルプス)、木曽山脈(中央アルプス)、赤石山脈(南アルプス)に囲まれた内陸県です。海から離れており雨が少ない、県土の標高が高いため夏でも涼しいなど、避暑地や別荘地に最適です。

 

私たちが長野の森に期待したことの一つは、標高の高さ故、急激な地球温暖化の影響をまだ受けていない森が残されているという点です。

 

長野県のツキノワグマ推定生息数は400頭〜1万5440頭、中央値3940頭とされ(幅が大きすぎますが、それだけクマは何頭いるかさっぱりわからない動物なのです)、日本で最もクマが多い県です。クマをシンボルに活動している熊森にとっては胸おどる県です。

 

【1日目 8月7日(土)】

長野県茅野市の標高1400mの場所にある、白樺湖のほとりのホテルに全員宿泊。

白樺湖は、蓼科山,霧 ケ峯,八 ケ岳 な どに囲 まれた中信高原国定公園の中心に位置し、昭和22年に造られた人造湖であることが、ホテル内の展示でわかりました。そんな昔から、人間はもうこんな奥地でも自然改変をやっていたのかとびっくりです。

北佐久郡立科町 と茅野市 の境界の低 湿地 「池の平」を流れ る水温の低い音無川の源流渓谷に堰堤 を築いて水をためて温め、農業用温水溜池 とした のだそうです。そんなかつての高原の戦後の一開拓村が、今や一大観光地に様変わりしていました。

 

ホテルの前は、オオヤマザクラ、コナラやミズナラなどの落葉広葉樹林帯です。オオヤマザクラはちょうど今、クマたちにとって食べ頃、黒い実がびっしりついています。豊作です。

豊作のオオヤマザクラ

白樺湖湖畔のミズナラ林

 

ミズナラの実はまだ小さくて、これからです。

ミズナラと言っても、見ただけで葉の大きさが違う物やら木によっていろいろです。

これは種内の多様性であり、環境の変化があっても滅びずに種を残すために種内の多様性は大切です。

 

17時から、主原憲司先生による、座学が始まりました。

 

参加者は、本部4名と長野県中澤支部長ご夫妻ら長野の会員・非会員のみなさんで計12名。自己紹介で、長野の参加者の皆さんは、自然保護にかかわって来られたエキスパートであることがわかりました。

 

様々な蝶がたくさん生息している辰野町の山でメガソーラー計画が持ち上がったため、慌てて建設予定地を「蝶の森」にして整備し、地権者にメガソーラー業者に山を売らないように説得して山を守った人たちも来られていました。

開発を止めるには、すぐに開発計画を察知して、山林売買がなされない前に阻止に動くことが大事だと言われていました。

 

主原先生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広い会場で3密を避けてのマスク勉強会

 

主原先生は、「今、日本各地で昆虫が激減し、大量に絶滅していっている。昆虫が減った原因として、昆虫が餌源としている植物が森の中から急速に衰退していっていることがある。原因はすべて急激な地球温暖化で、植物は動物のように短期間には移動できない。積雪の減少もあり、昆虫・植物の生理活動のバランスが大きく崩れてきた。このままでは、クマも人も生き残れなくなる」として、人間活動による急激な地球温暖化が自然界にもたらしている絶望的な影響について話してくださいました。

 

地元長野の参加者からは、長野の昆虫や野生動物、森の現状について専門的な質問が相次ぎ、主原先生も参加者の知見の高さに感激されながら、一生懸命答えられていました。

保護飼育中のクマたち、冬ごもり用の食い込み期に入っています

10頭のツキノワグマと20年間家族として暮らされたくまもり顧問の長野市在住宮澤正義先生によると、クマは7月の末から8月の初めにかけて、突然、冬ごもりに向けて猛烈に食べ始めるということです。

その日がいつなのかは1頭ずつ決まっており、カレンダーを見ているのかというほど、毎年同じクマが同じ日に食い込みを始めるということです。

くまもりが飼育援助しているクマたちも、今、猛烈に食べています。

8月25日、栃木県会員のIさんから、廃棄処分用ということで段ボールに入った小さな梨がたくさん送られてきました。

 

味見してみると、確かに商品にはならない小粒ですが、とてもおいしいです。

 

今、クマたちは与えても与えても平らげてしまう時期で、本当に助かります。

とよの食べっぷりを見てください。

 

7月6日 拍手!山梨県議会が全会一致で太陽光発電規制条例を可決 森林伐採を伴うもの等を禁止

 太陽光発電施設の新設を規制する条例が7月6日、山梨県議会で全会一致により可決、成立していました。
「山梨県太陽光発電施設の適正な設置及び維持管理に関する条例」
施設を新設する際に、土砂災害が発生する恐れが高い区域森林伐採を伴う区域を設置規制区域と規定し、県内の土地の8割に相当する「設置規制区域」で、出力10キロワット以上の施設の新設を原則禁止する内容です。
違反者は事業者名を公表し、国に通報して、FIT認定の取り消しを求めるそうです。
くまもり注:1MW(メガワット)=1000KW
    一般家庭の屋根に設置する太陽光発電システムは10kW未満
長崎幸太郎知事のコメント
「再生可能エネルギーの普及は、環境とエネルギーの両立のためにやるものだと理解している。木を切り倒して作る太陽光発電は矛盾しないかという思いを強くした。抜け道を許さない「日本一の条例」にする。森を切り開いて太陽光発電施設を作らせることは、山梨では今後はない。(事業者から)訴えられるリスクを恐れない。最高裁判例を作る覚悟で臨む」
山の斜面に設置された大規模な太陽光パネル 甲斐市

以下、山梨県HPより

条例制定の背景・目的

平成24年7月に固定価格買取制度(FIT制度)が創設されて以来、日照時間に恵まれた本県では、太陽光発電施設の導入が急速に進み、それに伴い、森林伐採や斜面への設置などによる、災害、環境及び景観等に関する様々な問題が顕在化してきました。

こうしたことから、太陽光発電施設の設置、維持管理及び廃止に至る太陽光発電事業の全般について地域環境を保全し、又は災害の発生を防止する方法により適切に実施するよう必要な事項を定め、地域と共生する太陽光発電事業の普及を図り、もって太陽光発電事業と地域環境との調和及び県民の安全で安心な生活の確保を図るため、条例を制定しました。

 条例の概要

1.施行日

令和3年10月1日(既存施設 令和4年1月1日)

 

 2.条例の対象

発電出力10kW以上の太陽光発電施設(建築基準法に基づく建築物に設置されるものを除く。)

 

3.事業者の責務

事業者は、次の責務を有することとします。

1 関係法令の規定を遵守しなければなりません。

2 太陽光発電事業の実施に当たり、自然環境、生活環境及び景観その他の地域環境を保全し、又は災害の発生を防止するために必要な措置を講じなければなりません。

3 太陽光発電事業の実施に当たり、地域住民に十分な情報提供及び説明を行い、太陽光発電事業の実施について理解を求め、地域住民との良好な関係を築くよう努めなければなりません。

 

4.設置規制区域

次の区域において、太陽光発電施設の設置を禁止します。

設置規制区域に設置する場合は、知事の許可が必要です。

1森林の伐採を伴う区域

・地域森林計画対象民有林(森林法第五条第一項)及び国有林 (森林法第二条第三項)

2土砂災害等が発生している、又は発生するおそれが高い区域

・地すべり防止区域 (地すべり等防止法第三条第一項)

・急傾斜地崩壊危険区域 (急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第三条第一項)

・砂防指定地 (山梨県砂防指定地管理条例第二条)

3土砂災害等により、施設が損壊するおそれが高い区域

・土砂災害警戒区域 (土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第七条第一項)

・土砂災害特別警戒区域 (土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第九条第一項)

 

5.維持管理

既存施設を含む全ての施設を対象に、事業者は維持管理基準に従って計画書を作成し太陽光発電施設及び事業区域を適正に維持管理しなければなりません。また、計画を作成したときは、公表しなければなりません。

 

6.設置届出

既存施設については、令和4年6月30日までの間に設置届を提出していただく必要があります。

 

くまもりから

当たり前のことがおわかりで、県土を守るためには事業者から訴えられることも恐れないなんて、なんてすばらしい知事さんでしょうか。

他の都道府県も、一刻も早く山梨県に続いてください。森林伐採されてから気付いても手遅れです。森はもう元には戻りません。

再エネ投資家によってこの国の水源の森や大型野生動物たちの生息地が破壊し尽くされてしまうのではないかと絶望的になっていた私たち自然保護団体にとって、山梨県は希望の光です。深く感謝します。

 

長崎幸太郎知事にお礼を!〒400-8501. 山梨甲府市丸の内一丁目6番1号 山梨県庁

8月11日 東北自動車道の溝に後ろ両足がはまってしまったイノシシくん 助けてやれなかったのか

8月11日午前0時10分頃、仙台市太白区の東北自動車道上り線で、車に当たったと思われるイノシシが中央分離帯の側溝にはまって動けなくなっているのを、ネクスコ・パトロール東日本の職員が見つけた。イノシシの両後ろ脚が側溝に挟まっていた。

車両から目撃した人の話では、イノシシはしょげ返っていた感じだったという。

約12時間後、このイノシシは身動きできない状態のまま射殺されたというのを聞いて、胸がつぶれそうになった。

何とか助けてやれなかったのだろうか。

 

 

①ネクスコ(Nippon Expressway Company )東日本に電話してみました。

・・返答→ すぐに、高速警察隊に連絡しました。

Q高速道路の側溝に蓋をしておかないと、かわいそうにまたこのようなことが起こると思います。

・・返答→ 高速道路では車がスピードを出しているので、蓋をしたら蓋が跳ね上がります。蓋はできません。

②高速警察隊に電話してみました。

・・返答→ 直ちに、仙台南警察に電話しました。

③仙台南警察に電話しました。

・・返答→直ちに、仙台市太白区役所に電話しましたが、真夜中だったので守衛さんには伝えましたが、動ける人はいませんでした。

④仙台市太白区役所に電話しました。

・・返答→10時過ぎに、現地に向けて出発しました。現地には、ネクスコ、高速警察隊、仙台南警察、区役所、猟友会が集まり   ました。仙台市役所、宮城県庁、宮城県警察本部にも連絡を取りました。

 

これだけの人たちが集まっているのに、てこか何か使ってこのイノシシの足を側溝から持ち上げて逃がしてやろうという声は出なかったのでしょうか。

宮城県には仙台に野生動物保護管理センターという合同会社があって、麻酔銃を使える人が2~3人いるそうです。

 

結局、行政の人たちの総合判断は、駆除でした。

今、宮城県ではイノシシの被害に困っており、お金を出してイノシシの駆除を進めています。

地元の心情を思うと、そんな時にわざわざこのイノシシを助ける意味はないということだったようです。

 

しかし、私たちはそれとこれとは別だと思います。

苦しんでいる動物を見たら、まず助けてやってほしい。

高速道路を一時通行止めにしても。

麻酔のお金は私たちが出します。

道路を造ったのは人間、側溝を造ったのも人間、車に当ててしまったのも人間、こんなことになったのは、人間にも責任があるのではないでしょうか。

人間にはいろんな考えがあるでしょうが、私たちはこう感じたということを、宮城県の行政に伝えておきました。

 

みなさんはどう思われますか。

 

P.S  後日、現場に行かれていた行政の方からお電話をいただきました。みんなでイノシシのところに行ったら、とびかかってきそうな勢いで突然、前足で暴れ出したのでとても危険を感じた。駆除以外はありえないと言われていました。イノシシは、人間が大勢やってきて怖くて恐ろしかったのだと思います。

このイノシシは銃ではなく、電気ショックで殺処分されたということでした。訂正させていただきます。

 

7月19日 地元が推進?原発の町福井県美浜新庄ウィンドファーム尾根筋風力発電計画の地元を訪問

ご存じのように、福井県三方郡美浜町は原発の町です。

2021年4月、福井県杉本知事が40年を超える老朽原発である3号機の再稼働に同意し、運転中です。

 

「樹齢300年のブナ巨木林、風力発電で伐採の危機」として、美浜新庄ウィンドファーム20基~25基事業計画反対するネット署名が出ていたので、今年7月6日、くまもりもフェイスブックで賛同署名を呼びかけました。(8月15日現在の署名数9935筆)

事業主はグリーンパワーインベストメント(略称GPI)で、主要株主は、Pattern Energy Group LP(アメリカ・カナダ)という外国資本です。

 

完成予想図(くまもり作成)

 

ところが、熊森本部に一部の方から、地元が賛成しているのに反対していいのかという疑問の声が入りました。

 

自然度9のブナ林が伐採されるというのに、地元が承認している?

どういうことなのか、さっそく熊森は現地を訪れました。

 

現地に近づいてくると、原発からの大量の送電線が張り巡らされていました。(下写真)

 

 

 

 

 

 

会ってくださったのは、現在、町会議員の松下照幸氏と事業者のGPIの社員2名です。

 

松下氏は美浜町で、長年、反原発運動を続けられてきた方で、会社員から町会議員となり、反原発派議員として孤軍奮闘してこられました。

美浜町では13年前、経産省の補助金で風力発電を造ろうとしたことがあったそうですが、そのときはうまくいかなかったようです。

松下氏は今は『森と暮らすどんぐり倶楽部』を立ち上げ、林業振興・木材利用の様ざまな試みをまち起しにつなげる仕事をなさっています。どんぐり倶楽部の事務所の前には、見慣れない木が生えていました。油桐(アブラギリ)という木だそうです。

 

 

 

 

 

 

青いTシャツの方が、松下さん

新庄区は6000haの山林を有しており、ほとんどが自然林という自然豊かな地区です。福井県と滋賀県の県境に、石川県の白山の一番いい森に匹敵するブナの巨木の原生林が残されていたなど、熊森本部は今回初めて知りました。

 

 

 

 

 

以前の新庄区は、薪炭やアブラギリの種から油をとる仕事が盛んだったそうですが、いまはもう成り立ちません。

現在の町の産業を訪ねると、ほぼすべてが原発関連の仕事ということでした。

この地に優れた地場産業があったら、原発は来なかったという痛切な思いが、松下さんの粘り強い活動を支えています。脱原発を言うだけではだめ、原発に頼らなくても町の人々の生活が成り立つようにしてこそ、脱原発が実現すると松下氏。

 

風車製造メーカーは日本にはありません。松下氏はドイツまで2度視察に行かれました。ドイツでは田舎へ行くほど経済が元気になるそうです。騒音や振動など、風力発電には様々な問題がありますが、技術革新で、年々改善されており、松下氏は今後の技術革新に期待されていました。

 

熊森からの質問に答えていただきました。

 

①尾根筋はクマなどの野生動物たちの通り道です。そこを削って平らにして風車を建てることによる鳥や野生動物たちへの影響は

松下氏:新庄地区の山はほとんどがブナ・ミズナラ林だが、クマはほとんどいない。なぜか動物があまりいない。

(役場担当者によると、美浜町でのクマ目撃は年間4~5頭で、ほとんど山の中だそうです。)

イノシシは山にいるが出てこない。シカは減った。サルは出てきたら花火で追い払いをしている。金網や電気柵で被害防除対策をしている。

 

②ブナの巨木を伐採することによる自然生態系への影響は?

松下氏:昔から炭焼きなどでブナを伐採してきた。自然林は一部を伐採してもすぐに再生するから問題ない。美浜町としては人工林は崩れるので、山を広葉樹に植え替えているそうです。

 

③風力発電を誘致したいメリットは?

松下氏:雇用が生まれること。今は、ほとんどが原発関連の仕事。あとは公務員、土木、水産ぐらい。

 

共に訪れた新庄の山に詳しいくまもり滋賀県支部の会員たちが、「25基も風車を建てないでほしい。特に尾根にブナの巨木群がある2か所はこの上もなく貴重な自然生態系なので、あの場所だけでも、絶対に残してほしい」と懇願されました。

 

熊森本部から

 

自然度9のブナの原生林というのは最高の原生林です。

新庄の山にお詳しい松下氏に新庄の森を案内していただきたくなりました。

 

確かに、昔からこの地区の山は一部を伐採して利用しては再生させてきたのだから、必ずしも伐採がいけないわけではないと思いました。問題は、尾根に至る広い道を急峻な山に造って、尾根を平らに削り、大きな穴(深さ20m?)を尾根に掘ってコンクリートを流し込んでいいのかということです。

 

セメントの灰汁による地下水の汚染、鳥や野生動物たちへの影響、大雨時の山崩れ…予測不可能な不安がいっぱいです。母なる大地に人工の手を加えない方がいいに決まっています。しかも、いったんやってしまったら、流し込んだコンクリートは二度と取り外せない、リニア同様、もう二度と元に戻せない再生不可能な大開発なのです。

 

熊森はクマたちの棲む水源の森を守ることが使命なので、尾根筋への風力発電は絶対にやめるべきと考えていますが、ではどこに造ればいいのかということになると、まだまだ知見不足です。風力発電の寿命は20年ということですが、20年後どうなるのか、まだ事例を知りませんから、不明点でいっぱいです。

しかし、原発以外に仕事がないという現状は確かに問題で、これは美浜町だけの問題ではなく、第一次産業を切り捨てて工業大国をめざしてきた我が国の政策の見直しを、国民みんなで考えねばならない時に来ていると思いました。(完)

 

P.S

ブログを読んだという、山に詳しい地元の人から電話が入りました。

くまもりは今、大雨のたびに九州の山がどれだけ崩れているのか知っているのか。自然林を伐採してスギを植えたのにどんどん崩れてるんだよ。風力発電は、尾根を皆伐してそのあと何も植えないんだよ。尾根から崩れるって断言すべきだろうとのお叱りでした。

 

 

 

8月1日 第26回くまもり本部原生林ツアーに26名(大人19名、小学生7名)がご参加!

私たち都市市民の命を支えている水源の森を見に行こう。

 

本部原生林ツアーは、くまもり25年の歴史の中で毎年欠かさずに実施してきたイベントです。

コロナの感染状況から、今年も去年同様、自車参加で実施することになりました。

集合場所は、兵庫県千種町千種高原です。

 

まず最初に、地元の千種川源流の会の阿曽さんに、大苗を植えておられる山を案内していただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

21年前に皆伐された山は、ススキが原になっていた

 

この山は、約70年前、千種町が約300haもの自然林を皆伐した後、国にスギやヒノキを植えてもらった官行造林地でした。

標高は900メートル、多い時は雪が4メートルも積もるという豪雪地帯です。

植林後の手入れがなされなかったこともあって、元々の広葉樹が植林苗の間に大きく育ってしまい、まるで自然の針広混交林のようになっていました。

 

2000年、千種町と林野庁の契約期限が来て、契約どおりこの森の立木を皆伐して売却し、売上金を町と国で山分けすることになりました。

千種町の人工林率は83%です。千種町の森の動物たちはこの森の広葉樹に頼って生きています。この森を皆伐されたら、生きていけません。当時、日本熊森協会は姫路工業大学助教授の佐古井一朗先生と力を合わせ、この森を伐採しないよう、兵庫森林管理署(林野庁)にお願いしましたが聞き入れられず、皆伐が始まりました。

 

しかし、大運動の結果、千種町の大英断もあり、皆伐は30haで止まり、残り270haは針広混交林のまま千種町に返還され保全されることになりました。

皆伐されてしまった部分に、熊森をはじめいろいろな団体が3年苗を植林し、シカ柵を設置してこの場所を広葉樹の森に戻そうとしました。しかし、雪解け時になだれ落ちる雪に柵が壊されることの連続で、その度にシカに苗木を食べられてしまいます。

何度植林に挑戦しても、森に戻せません。残念ながら、ついに熊森もギブアップしてしまいました。

 

この後ここに、地元の阿曽さんたちが、シカに食べられないような大苗を植えて森の復元に乗り出され、成功されつつあります。阿曽さんたちは、千種川の源流を守るだけではなく、川でつながった海まで視野に入れて水の循環を守ろうとされています。その展望を皆で伺いました。

 

次に参加者の皆さんに見ていただいたのは、放置人工林の内部です。中は暗くて食べものは何もありません。

 

 

さて、いよいよ、お待ちかねの岡山県若杉天然林85ヘクタール。

以前、この森にはクマが2頭棲んでいましたが、今はもういません。

 

入口の広場でお弁当を食べてから、天然林に入ります。

大人たちはくまもり職員から植物や生き物、奥山生態系の詳しい解説を聞きながら頂上をめざします。

今回は、昆虫に詳しい奥津会員も特別参加、参加者の見聞を深めてくださいました。

子どもたちは地図を片手に見つけたものを書き込んでいきます。

 

この森は、25年前は本当に素晴らしく豊かな原生林だったそうですが、年々劣化。

今年はさらに、ナラ枯れでミズナラが大量に枯れていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

谷川の水量が例年と比べて激減

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

枯れて倒れたミズナラの根っこの大きさを体感

 

今年の原生林ツアーはお天気も良く、林内は涼しくて、最高のコンディションでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しかったねえ。生き生きとした参加者のお顔。

 

ずいぶんと劣化してしまった原生林ですが、それでも初めて参加された皆さんは、この森に大感動されていました。

今年も原生林ツアーを企画して良かったです。

 

<参加者の感想>

・自然がたくさんあってニホントカゲにも会えた。川の水を飲んだ。これからは水を大事にしようと思った。(大阪府在住 小学5年生)

・健康な山の姿は気持ちがいい。ゆっくりとここにいたい、帰りたくないと思いました。気持ちのいい場所は、自然の持つ本来の営みがあるというサイン。しっかりと今の課題と向き合い、先のまた先に紡いでいきたいです。(兵庫県在住)

・今まで意識して歩いたことがなかったのですが、天然林にはたくさんの木や生きものがいて、水が豊かで美味しいことが分かりました。子どもたちはいつもはスマホやゲームをしていることが多いのですが、今日はイキイキしていました。(大阪府在住)

 

くまもりから

全員の感想文を読ませていただきましたが、参加して良かった、勉強になった、感動した、初めて森のことがわかってきたなど、満足度の高い感想文ばかりでした。参加してくださったみなさん、ありがとうございました。

全国の支部でも、原生林ツアーを実施できるようにしたいです。

7/26 保育園児たちにくまもり授業 西宮市西田公園

西宮市にある原っぱ保育所から、環境教育の依頼がありました。

保育所内で、まず、くまもり紙芝居を見てもらいました。

その後、年長さんと年中さん、先生方、みんなに20分ほど歩いてもらい、西田町にある西田公園に行きました。

この公園は、晩年、西宮にお住まいだった万葉集研究家・犬養孝先生(1907-1998)が尽力されて、昭和63年に誕生した公園です。
先生が選ばれた歌と、その歌に出てくる72種の万葉植物が植えられ、万葉植物苑という別名を持ちます。
梅などの木本類は今も残っていますが、草花はなくなってしまっているものもあります。

 

アベマキの木の下で、ドングリにはいろいろな種類があることを、標本を見せてお話ししました。

クマさんの食べるドングリはどれかな

 

園児たちは、秋にこの公園でどんぐり拾いをしているようで、ドングリにはとても興味を示していました。

クヌギなどのドングリの種類を知っている子もいました。

8月20日を過ぎると、ドングリは急に大きくなり始めるのですが、この日はまだドングリの実は5ミリぐらいにしか成長しておらず、ドングリの赤ちゃんということでみんなに見てもらいました。

 

 

ドングリのお話の後は、ビンゴカードを渡してネイチャービンゴ開始!

見つけたら、先生にカードを持って行って、スタンプを押してもらいます。

セミの抜け殻は、みんなすぐに見つけられました。

アリ、とんでいるいきもの、園児たちは見つける度にうれしそうに、スタンプを押してもらいにとんできます。

なかなか見つけられなかったのが、キノコでした。

 

植物探しとして、今回はギザギザの葉にしましたが、紙芝居でどんぐりの話をした後なので、ドングリの木の葉とかにしたらよかったかなと思いました。

 

初めての園児との野外授業。

園児たちがみんなで仲良く嬉々として生き物探しをしているのを見て、ほっとしました。

園児から大人まで、年齢に合わせてが楽しめる、こんな公園が保育所の近くにあって良かったです。

 

 

7月18日 オンラインで、 ⭐️全国再エネ問題連絡会を立ち上げました 

2021年7月18日、メガソーラーや尾根筋風力発電問題に取り組む約30団体が26府県から集まり、全国再エネ問題連絡会を結成しました❗️❗️
立ち上げニュース(1分14秒)
7月18日全国再エネ問題連絡会を立ち上げオンラインシンポ動画全記録
・入会申込書   みなさん、どんどん入会してください!
国土や自然を破壊するメガソーラーや風力発電にどうやって反対したらいいかわからずに悩んでおられる全国の団体や個人のみなさま
   泣き寝入りは不要です。みんなつながりましょう。

自然エネルギーを推進するために森林を皆伐するなど、本末転倒です。

今こそ、物言えぬ生き物たちや子や孫たちのために、私たち大人が声を上げる時です。

自然再生エネルギーとして経産省が一気に推進しようとしているメガソーラーや風力発電が投資家の高利回りの投資対象となっており、日本全国の奥山生態系・奥山水源の森の破壊に歯止めがかからなくなっています。

日本国にとっても、クマの棲む豊かな水源の森を全国に保全・再生し、クマたち野生動物の絶滅を止めようと運動し続けてきた熊森にとっても、この上もなく危機的な状況になってきました。

国会議員などの超党派議員に動いてもらって、議会で再生エネルギー名目の開発に法規制をかけてもらうことが必要です。

私たちは、豊かな自然や住民生活を破壊しない再エネ政策の実現をめざして法改正を求めます。
全国のみなさんと連携して、野生動物たちの生息地でもある水源の森を守るため、力を尽くしたいと思います。
みんなが力を合わせて多くの声を届ければ、世の中はきっと変わる!
メガソーラーや大規模風力発電問題に取り組む住民のみなさんはもちろん、
自然保護団体、山岳会など多様な団体のみなさんに、団体で又は個人でご入会いただきたいです。

 <共同代表>

太白カントリークラブ メガソーラー建設に反対する会  (宮城県)

函南町のメガソーラーを考える会(静岡県)

平群のメガソーラーを考える会(奈良県)

一般財団法人日本熊森協会(兵庫県)

宇久島の生活を守る会(長崎県)

静岡新聞7月19日7.19静岡新聞
長崎新聞7月19日 クリックで拡大されます。

 

7月17日オンラインシンポジウムに参加した感想  残虐過ぎるくくり罠、全面使用禁止にせよ

7月17日の第3回くまもりオンラインシンポジウム

「ストップ!!錯誤捕獲」

で、⻑野県⼩諸市の担当者が錯誤捕獲の現状を報告してくださいました。

大衝撃を受けました。

近々、ユーチューブに全編をあげさせていただきます。

全国の都道府県並びに市町村の鳥獣対策担当者必見です。

このシンポジウムは、ほぼ100%の参加者から「とても良かった」と、高い評価を得ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くくり罠に再度かかり、2本足になってしまった子グマ

いったいこの子グマが何をしたというのか

 

山中に仕掛けられたくくり罠に錯誤捕獲されて3本足になってしまった子グマが、再度くくり罠にかかって2本足になってしまった写真が提示されました。(上の写真)

胴体からちぎれた足の傷口を見てぞっとしました。2本の骨も折れています。むごすぎるの一言です。もう、泣きたいです。

誰が認めても、熊森はこのようなことを絶対に認めません。

 

山の中は森の動物たちの家です。

山の中にまで罠を仕掛ける権利は、人間にないはずです。

 

小諸市の担当者によると、十分な対策をとっている小諸市でも、この一週間に5頭のクマがくくり罠に錯誤捕獲されたそうです。

くくり罠にかかって足をワイヤーで締め付けられ、もがいているカモシカの映像も見せていただきました。まさに日本残酷物語です。

 

日本では、膨大な数の野生動物たちが、毎日、毎日、無数に仕掛けられたくくり罠に次々と掛かり、足を失ったり、命を落としたりしています。

 

錯誤捕獲されたクマと天然記念物のカモシカに関してだけは、小諸市では罠を外してやるそうですが、キツネやタヌキなどまでは手が回らないので錯誤捕獲されても放置したままだということです。

 

くくり罠はそもそも田畑の農業被害をなくそうと、シカやイノシシを捕殺するために山の中に仕掛けられたものです。

本来の捕獲目的であるシカやイノシシであっても、くくり罠にかかった姿は、悲しすぎます。

 

確かに今や、シカ被害は大変ですが、シカだけが悪いのでしょうか。シカは元々、林縁にある草原や湿原の動物でした。500万ヘクタールあったこれらのシカの生息地は、戦後、ことごとく人間によって農地や宅地にされてしまったのです。

人間側に、何も責任はないのでしょうか。

 

令和の時代は、残虐罠であるくくり罠を使用禁止にして、どんなに困難であっても、祖先がしていたように網や柵で田畑を囲う対策に移行すべきだと思います。でなければ、人間の優しさが失われ、人間がだめになっていくと感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大分県佐伯市に残る江戸時代のシシ垣

 

 

もちろん過疎化高齢化した地元にそのようなことを要求しても難しいので、都市市民の税金を投入すべきでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現代版シシ垣

 

熊森は、これまでもくくり罠の使用禁止を求めて何度も環境省に申し入れをしてきました。

罠の直径12cm規制の厳格実施は当然ですが、それ以前に、くくり罠のような残虐罠は、トラばさみ同様、使用禁止にすべきです。

わたしたちはこんな残酷な罠を、絶対に認めません。

みなさん、くくり罠の全面使用禁止の大声を熊森と共にあげていきませんか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:トラバサミとは

動物の身体の一部を挟み、野生の動物や人等、無差別に捕まえて大怪我を負わせる大変危険なわなで、2007年に原則、使用が禁止されました。いまだにホームセンターなどで売られているのは許せません。

 

<シンポジウムを終えて>

 

くくり罠による錯誤捕獲がひどいことになっているという猟師からの密告は、これまで何度も熊森に入っていましたが、実態は闇に隠されたままでした。

 

今回、小諸市の担当者が日本で初めて実態を調査し報告してくださいました。画期的なことです。担当者の勇気と、このようなすばらしい担当者を採用された小諸市に、心からの拍手を送りたいです。(完)

 

 

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