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2022-08-06
7月31日若杉天然林ツアー 道中の山々を見た参加者から自衛隊出動要請の声
- 2022-08-06 (土)
- くまもりNEWS
7月31日に実施されたグリーンコープ主催の若杉天然林ツアーに、熊森本部から8名のスタッフが同行してガイド役を務めさせていただきました。
うっそうと繁る里山自然林
朝9時、神戸三宮を大型バスで出発して、阪神間から一番近い原生林状態の森である若杉天然林(83ヘクタール岡山県)に向かいます。道路の両側に続く山々の木々の緑がきれいです。
かつて、六甲山をはじめ瀬戸内海沿岸の山々は、塩田用のたきぎ取りや炭焼きなど人々の過剰利用ではげ山だらけだったと言われています。
しかし、1960年代の燃料革命以降は、里山は利用されなくなりました。鳥が運んできた種などが自然に芽生えて、今では木々が大きく育っており、うっそうとしています。一見原生林風ですが、これは原生林ではなく自然林です。クマはいません。
自然林の中にところどころ、夏なのに紅葉したかのように赤茶けた木々が見られます。なら枯れで枯れたドングリ類の木です。
拡大造林政策による人工林
青々とした元里山の山並みを見ながら、中国自動車道を西に進んでいくと、山の緑が急に濃くなってきました。戦後造られたスギだけヒノキだけの人工林地帯に突入です。ここは、人工林率73%の宍粟市(しそうし)です。
兵庫県はありがたいことに、井戸知事の時代に日本で初めてメガソーラーや風力発電に対して条例で厳しい規制をかけてくださったため、山には他県のようなメガソーラーや尾根筋巨大風車など、異様な再エネ人工物は見られません。
中国自動車道を出て国道29号線を進み、途中で下車して参加者の皆さんに人工林の中をのぞいてもらいました。
林内は真っ暗で、草1本生えていません。
放置人工林の中をのぞいて、砂漠化している内部を見る参加者たち
シカなどの野生動物たちが人間のところに出てこないように、人工林の周りには金網が張り巡らされています。
もし、自分がシカなら、ここから出てくるな。出てきたら殺すぞと言われたら、何を食べたらいいのでしょうか。泣きたいです。
道中延々と見てきた青々とした人工林ですが、木を一斉に取り除いたら、中は茶色一色の砂漠です。
生き節の時に枝打ちしておかないと、材にしたときに節が外れて板に穴が開くと聞いています。
ならば、今更、枝打ちしても手遅れですね。この大量の木々、何に利用できるのでしょうか。バイオマスで燃やしてしまうという手もあるでしょうが、私たちの膨大な税金を投入して造ってきた人工林の最後が、燃やして終わりでは悲しくなります。二酸化炭素削減の国策が泣きます。
参加者のみなさんの中には、日本にはいい森がいっぱい残っていると安心されていた人も多く、日本の山の現状を知らなかったと大変ショックを受けておられました。(いまだに学校でも教えないし、マスコミも伝えないから、仕方がないですね)
若杉天然林前に着いて昼食。
その後、いよいよ、天然林内に入ります。
原生状態の天然林
熊森協会を結成した25年前と比べると、森の劣化が著しい若杉天然林ですが、それなりにみなさんは楽しみ感動してくださっていました。
帰りも、再び人工林率93%の岡山県西粟倉村や宍粟市の人工林で埋め尽くされた山々を車窓から見続けました。いくら何でも自然生態系を無視してスギやヒノキばかり植え過ぎだろう。まだ気づかないのか。怒りがわいてきました。
林業に向かない部分の人工林の天然林化運動
①野生動物のために、
②水源の森確保のために、
③災害に強い森にするために、
熊森協会は結成以来、造り過ぎた人工林の天然林化を全国に訴え続けてきました。
森林環境税ではくたくたになるまで国会に通い続けて、天然林化に予算が使えるようにしました。
だが、私たちがどんなにがんばっても世の中は変わらない。むなしくなりました。
私たちが人生をかけてがんばり続けてきたこの森再生運動・野生鳥獣との棲み分け復活運動の25年間は、いったい何だったのか。
宍粟市の山々を見ると、林業用主伐も全く行われていません。
林業にも使えない人工林ならば、未来のためにも伐採して天然林化を進めるべきです。
今晩、人工林の夢を見てしまいそうなほど、人工林連続の景色でした。
皆さんも、下の動画でしばし、バスの窓から外の景色を見てみてください。
行けども行けども、岩場以外は山の上まで人工林です。
・
地元の人たちは、今や過疎化高齢化で動けません。
赤色部分がスギやヒノキだけの人工林
以下は、日本文明存続のために天然林に戻すべきと熊森が主張してきた山の5か所です。
・奥山全域
・尾根筋
・山の上3分の1
・急斜面
・沢筋
今後のこと
どうしたら天然林に戻せるのか。
参加者のおひとりがつぶやかれました。「自衛隊に伐ってもらうしかない」
中国では、人民解放軍が山に植林していると聞きますから、若くて元気な自衛隊の皆さんに人工林を伐ってもらう。名案かもしれません。
うーん。こうなったら、熊森が株式会社を作り、税金を使って天然林化事業を全国展開していくしかないのかも。
水道の蛇口をひねっても、水が出ない。そうなってから慌てふためいても、手遅れなのですよ。みなさん。
私たち日本国の未来を大人の責任で守りましょうよ。
祖先への感謝、未来への責任、生きとし生けるものへの畏敬の念。これが日本文明です。(完)
7月21日くま森が天然林化中の兵庫県戸倉植樹地の草刈り作業
- 2022-08-06 (土)
- くまもりNEWS
人工林の天然林化への道のり~草刈り作業~
7月21日木曜日、本部職員羽田とボランティア2名が、兵庫県宍粟市戸倉にある3か所の広葉樹植樹地で草刈り作業を実施しました。植物はこれでもかというくらい生長しており足の踏み場がないほどでした。植樹した木本類を傷つけないように、手鎌を使って手作業で草を刈りました。
今回たくさん生えていたイヌワラビをはじめとするシダ類は、本来シカが食べるものではありません。植樹木を守るシカ除けネットの内にも外にもたくさん生えています。シカが食べないために伸び放題です。
しかし、近年は森林内のシカの食料が激減したことで、シカが本来食べなかった植物まで食べ始めているそうです。今後、さらにシカの食料がなくなると、毒性のある植物まで食べるようになるだろうといわれています。シカが気の毒です。
2時間程の作業で植樹地を囲ったシカ除けネットの内外を一通り刈り終えました。雨の中の作業となったため、足元が滑りやすく体力を消耗しましたが、これで苗木に光が当たるようになったと思います。
ヤマビルが多く、参加者全員が血を吸われてしまいました。ヒルは肌にくっついても痛みがないので気付かないことが多いです。シカがいる地域にはヒルもたくさんいます。ヒルよけ対策が必要です。
戸倉には今回草刈りを行った3か所以外にも天然林化中の植樹地があります。今後も皆で力を合わせて天然林に戻るよう頑張ります!
兵庫県宍粟市山崎の黒豆畑のシカ防除ネット張り
- 2022-08-06 (土)
- くまもりNEWS
狭まり続ける野生動物と農家の距離
~捕殺に頼らない農作物被害防除の実現へ~
6月末、黒豆畑がシカに荒らされて困っているという地元農家からの訴えがあり、熊森本部職員の水見と羽田は、兵庫県宍粟市山崎の現地を訪れました。黒豆畑に確かにシカの足跡があり、どこからか侵入しているようでした。このままだと苗が食べ尽くされてしまうので、早急に策を講じることになりました。
調べてみると、揖保川沿いの金網フェンスが一部崩壊していました。そこからの侵入だと思われます。畑の川側に防除ネットを設置することにしました。
防除ネットで農作物を守る!
7月16日(土)、職員羽田がくまもりボランティア3名と共に再び畑を訪れて、防除ネット設置に取り掛かりました。木の杭を杭打機やハンマーで力いっぱい打ち込んで、すぐ横に長さ2mを超える支柱を立てていきます。杭と支柱を結束バンドで固定して、風で倒れることがないようにします。
杭と支柱を立て終えたら、数人がかりで高さ2m以上のネットをかけていきます。ネットがたゆんでしまうとシカが飛び越えてしまうことがあるので、伸ばしながらしっかりと張っていきます。その後、ネットの下部にペグを打ち込んで隙間をなくします。シカも生きるために必死で通れる箇所を探ってくるので、隙を作らないことが大切です。最後に人が行き来できる出入口をつけて完成です。
4時間ほどかけて全長約70mのシカ防除ネットが完成しました!
ネットを張って以降、畑にシカが入った形跡はなく、黒豆は順調に育っているということです。美味しい黒豆が実るといいですね!
シカを銃や罠で殺さなくても、人間の生活圏と野生動物の生息域を分けることで、共存の道は開けます。一人でも多くの方に、個体数管理や有害駆除、害獣といった言葉に疑問を持って頂きたいです。日本熊森協会は捕殺に頼らない農作物被害防除実現の道を探り続けていきます。