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オオカミの導入は命を弄ぶ研究者の遊び 元旦の新聞トップ記事に思う

ある新聞の元旦トップ記事は、<ニホンオオカミのはく製からクローンに挑む>でした。はく製オオカミの毛皮から細胞核を取り出して、イヌの卵子に入れ、めすイヌの子宮に注入する研究の紹介です。

成功するかどうかは知りませんが、このような生命操作は人間の傲慢以外の何物でもないと思います。生命のことなどほとんど何もわかっていない人間には、許されない実験行為だと思います。もし、オオカミが誕生したとして、生息環境も生息を受け入れる体制も全くないこの国で、どうやってかれらは生きていけばいいのでしょうか。狭い日本です。生きるために食糧として家畜を襲い、有害駆除されることになるでしょう。関係者一同、誕生したオオカミの悲しさなど、誰も考えてやっていないと、記事を読んで感じました。このような記事が、よりによってなぜ元旦のトップ記事になるのか、新聞社の良識や倫理観を疑います。研究していいことと、してはいけないことがあるはずです。

忠犬ハチ公やマンモスの復活も視野に入れているそうで、これはもう、研究者の前後を考えない命遊びでしょう。

さらに驚いたのは、シカ数を調整させようという大義名分で、タイリクオオカミを導入しようとしている人たちがいることです。タイリクオオカミを導入したら、めでたく、シカ数が調整できると本気で期待している人は、いるのでしょうか。シカ数が増加して問題になりはじめたのは平成になってからで、最近のことです。オオカミが滅びたのは100年前です。どう考えても因果関係はありません。

第一、日本にタイリクオオカミのようなオオカミがいたというのは、本当でしょうか。1960年に分類学の今泉吉典先生が、かつて日本にいて、明治に絶滅したと言われている「山犬」と名付けられていた動物のはく製に、ニホンオオカミという正式な和名をつけられました。このときから、日本には、ニホンオオカミがいたと表現されるようになりました。しかし、その時には、すでにこの動物は絶滅していたので、どのような動物だったのかよくわかりません。国内にもいくつかのはく製があるじゃないかということですが、当時のはく製の作り方は今と違い、何頭分かの毛皮を寄せ集めて作られた大雑把なもので、どの部分がオオカミなのか、単純には判断できない難しさがあるそうです。しかも、犬とオオカミはDNAが同じで、DNAによる判別はできないのだそうです。日本に、家畜をどんどんと襲うタイリクオオカミのようなオオカミはいたのでしょうか。

ニホンオオカミ、山犬、野犬の違いは?このような大変興味深い内容が、元高校の校長先生であった西田智氏が出版された「ニホンオオカミは生きている」という本(二見書房)に詳しく書かれています。

オオカミ問題に興味のある方は、ご一読ください。

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