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「一切の鳥獣殺生を認めない考え方は問題で、秩序ある狩猟が必要」との提言に、狩猟団体と環境団体が合意

(「狩猟と環境を考える円卓会議」の合意に対する熊森見解)
野生鳥獣の殺生を嫌うのは、日本人の最大の美徳の一つである。明治になるまでの1200年間、日本では殺生禁止令が出っぱなしに出ていた。鳥獣にやさしい気持ちを持ち殺生しないように心掛けるのは、日本文化でもある。このおかげで、日本には近年まで生物の多様性が保たれた豊かな森が残り、豊富な湧き水をもとに農業や様々な産業を発展させてきた。せっかく国民の身にしみついている美徳を、西洋型自然観を取り入れてつぶしてしまうのは、取り返しのつかない過ちとなる。
最近、国が率先して国民に狩猟をすすめる裏には、戦後の森林政策の失敗を、物言えぬ鳥獣や地元農家のせいにして、責任逃れしようという意図がある。一見緑に覆われた日本の奥山だが、内部は砂漠化して鳥獣が生息できなくなっている所が多い。間伐によって、早急に、日本の山に鳥獣がもう一度棲めるよう森を復元しなければならない。その努力をしたくないから、生きられなくなって山から出て来た鳥獣を、有害鳥獣として国民に殺させようとしている。このような方向に進めば、日本人は動物だけではなく人間に対する優しさまで失い、無責任な民族になっていくだろう。
鳥獣被害増大問題は、「動物達に帰れる森を、地元の人たちに安心を」のスローガンのもと、動物の棲める森の復元・再生で解決すべきである。この方法以外の解決法は、残酷なだけでなくすべて失敗すると確信する。
シカは森林の破壊者などと、最近、完全に害獣視されているが、シカがいて森林が消えるなら、とっくにこの国の森林は消えていたはずである。一時的な現象で判断するのではなく、自然は長いスパンで見ていくべきである。現在のシカ問題は、確かに大変なことになっているが、元はと言えば人間が引き起こしたことが原因のようだ。近々、シカ問題についての新説を紹介してみたいと思う。
<以下、新聞記事>
農作物被害や生態系悪化 円卓会議「秩序ある狩猟」提言 環境団体と認識共有
シカやイノシシなど鳥獣による農作物被害や生態系悪化が深刻化しているとして、官民でつくる「狩猟と環境を考える円卓会議」(座長・梶光一東京農 工大教授)は29日、「一切の殺生を認めない考え方は問題で、秩序ある狩猟が必要」との提言を公表した。円卓会議は、敵対しがちな狩猟団体と環境団体が参 画。捕獲の必要性で認識を共有したことは、今後の野生生物保護に一石を投じそうだ。【田中泰義】

農作物の鳥獣被害は全国で年間200億円に上る。また、知床(北海道)をはじめ全国で貴重な植物が食い荒らされる一方、特定の動物が増え、生態系のバランスも崩れてきた。しかし、ハンターの減少や捕獲に対する社会的な理解不足で、害獣対策は遅れてきた。

ハンターの全国組織「大日本猟友会」は昨年11月、日本自然保護協会など国内を代表する環境団体、学識経験者、長野県などでつくる円卓会議を発足、5回にわたり議論した。

その結果、日本では動物愛護の思想から殺生を忌避する考えがあるが、過度な保護や捕獲態勢の遅れが農林業被害の増加、生物多様性の劣化を招いたと 指摘し、日本人と野生動物との関係は転換期にあると分析。増えすぎた動物の命を奪う意味を理解するための教育の充実▽捕獲の担い手確保▽捕獲した鳥獣の食 料や毛皮への活用--などを求めた。さらに、食肉などを市場に流通させることは、捕獲に必要な経費の確保や山村の活性化、食料自給率の向上につながると指 摘。提言には、参考図書や食材の入手先も盛り込んだ。

梶座長は「このままでは自然も人の暮らしも守られない。早急に行動しなければならない」と話す。環境省鳥獣保護業務室は「提言を尊重し、政策を充実させたい」としている。

毎日新聞 2011年6月30日 東京朝刊

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