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体を張って1頭のクマの命を救った富山県亀田支部長
2006年11月9日。この年も、なぜか、今年のように、山の実りなしというありえない大凶作年でした。当時の富山県亀田支部長が富山の山奥を見回っていると、突然、ガサッという音がしました。そちらを見てびっくりしました。クマが柿の木にかけられた違法くくり罠に片足がかかってぶらさがっていたのです。実がゼロのこの柿の木にまで登って実をさがそうとしたクマに、亀田さんは哀れを感じたといいます。亀田さんを見て驚いたこのクマは、逃げようとして暴れた瞬間、うまく木のまたに座った形になりました。
亀田さんは、このあたりの柿の木を見てびっくりしました。どの木にも、びっしりとくくり罠がかけられているのです。「違法罠群発見!」亀田さんは、携帯で直ちに熊森本部に電話。富山県庁に放獣を頼んでくれるよう連絡するとともに、持っていたビデオカメラで、あたり360度の景色を撮り始めました。民家などどこにもない奥地にかけられた違法罠群であることを証明するためです。
すると、猟友会の車が少し遅れてやってきました。銃を持った人たちが出てきて、このクマを撃ち殺そうとしました。亀田さんは必死に抗議しましたが、聞き入れられません。ついに亀田さんは、このクマの前に立ちはだかって、「どうしても撃つというのなら、私を先に撃ちなさい」と、体を張ったのです。交渉は夜遅くまで続き、亀田さんの撮った証拠ビデオを世に出さないという条件で、和解が成立しました。
このクマは翌朝、麻酔をかけられ、罠からはずされて、放獣されました。この地域で、クマが放獣されたのは、初めてということでした。
静岡県の猟友会員から、クマ放獣の朗報
「イノシシの箱ワナにかかっていたクマを、放獣しましたよ!」静岡県の猟友会会員から喜びにあふれる電話が入りました。
どうせならということで、テレビ局も呼んで、大々的に放獣したそうです。熊森のトラスト地の近くに放したので、そのうち、トラスト地に行くかもしれませんとのこと。熊森のトラスト地が役立てばこんなうれしいことはありません。どんどん使ってくださいといっておきました。
11/3 京都で4.5トンのクマ用クリを仕分けして発送しました
業者のご好意で、大量のクリを無料提供していただけることになり、このトラックで取りに行きました。なんとトラック4台分のクリをいただきました。
80キロ入ったクリの麻袋を開けて、運びやすいように近くの公園で、17キロの小袋に詰め替えます。昨夜突然という急な呼びかけにもかかわらず、14人の方たちが駆けつけてくださいました。一刻も早く飢えたクマたちに届けてあげたい一心で、手際よく詰め替えが進んでいきます。
延々と並べられたクリ入り小袋。通行人の方たちが、大量のクリにびっくり。クマたちに送り届けると知ると、みるみる笑顔が広がっていきます。業者さん、ボランティアで仕分けに駆けつけてくださったみなさん、ほんとうにありがとうございました。ただちに、クマたちが出てきているところに分散して届けられました。
全国1280の全クマ生息地市町村に、殺さないクマ対策として、動物への緊急食料運搬を申し出る
発送作業中
10月31日と11月1日の2回に分けて、全国1280のクマ生息地の市町村長さんと鳥獣担当者に、殺さず、しかも集落にも出てこないクマ対策として、山中への動物用食糧緊急運搬を提案するとともに、当協会が可能な限りお手伝いしたいという申し出を、小冊子「クマともりとひと」とともに送りました。このままでは、今年、冬篭り用の食い込みがさっぱり出来ていないため、クマたちは雪上をいつまでも歩き続け、駆除しつくされる恐れがあると判断したためです。
わたしたち人間にとっても、保水力豊かな森を確保しておくことは大切で、それにはクマたちの存在が欠かせません。どうか、くまもりの申し出を受け止めてくださるやさしい市町村が現れてくださるようにと、もう祈りたい気持ちでした。もっともっと会を大きくしないと、クマの絶滅を止められない。
「世界がもし100人の村だったら」著者の池田香代子さんが、ブログで熊森を紹介
(以下 池田香代子さんブログ「感じた 動いた 考えた」より転載させていただきました)
2010年11月01日
熊にドングリを
11月になりました。東京は季節外れの台風を境に、秋を飛ばして早、初冬の寒さです。みなさんの地域はいかがですか。今年の季節のめぐりはほんとうにおかしかった。あの暑く乾ききった夏、石畳のあいだに植えた姫ホトトギス龍が枯れたのには驚きました。宿根草のホトトギスも次々と立ち枯れ、残った株も下の方の葉はまばらで、茶色くたれさがり、まるで幽霊のようです。それでも花の付きはよく、木枯らしじみた風にけなげに揺れています。来年は元気にたくさん咲いてくれますことを。
庭の柿の木も実をつけませんでした。どんぐりもさっぱりです。テレビのニュースは毎日のように、熊が人を襲い、射殺された、と伝えています。まるで原稿のフォーマットがあって、固有名詞を入れ替えているかのようにすら感じます。山に食べ物がないのです。それで、冬ごもりを控えて、熊たちは必死で人里に迷い降りているのです。深夜の住宅街、車のライトとクラクションにおびえ、興奮しながら2頭の仔熊を守ろうとうろたえていた母熊の姿は、忘れられません。
クラクションを鳴らしていた人は、熊を山に追い払おうとしていただけで、むやみに邪険にしていたわけではありません。人里に熊が出る、驚いて人を襲うというのは、深刻な事態です。作物を荒らされることも、同様です。収穫のほとんどを熊や猪や猿に食べられてがっくりと肩を落とす農家さんの姿には、涙がにじんでしまいます。だから、熊の目撃情報に地域には緊張が走り、猟友会の人びとは本業もままならないほど大忙しで、あちこちに呼ばれてこの「害獣」を「駆除」しています。
大新聞には、熊が異常に増えていること、狩猟人口が減っていることが、熊の異常な出没の原因だ、と書かれているそうです。でもこれはとんでもない誤報だと、「日本熊森協会」さんに教えていただきました。こちらの団体は、数年前にも、熊にドングリを、と全国に呼びかけ、大量のエサを山に運びました。もちろん今年もです。お宅の柿の木は、実をつけていませんか? お庭にドングリの実は落ちていませんか? ぜひ、山の熊たちにプレゼントしてあげてください。私は、なにしろ庭の柿もどんぐりも実が成らなかったので、したくてもできないのです。
「くまもり」さんのサイトやブログを読むと、その活動に胸が熱くなります。同時に、環境省のやる気のなさには、怒りを通りこして唖然としてしまいます。つい数日前まで、生物多様性条約 COP10を主催していたお役所とは思えません。熊は、この列島の生態系の頂点に位置する、生態系の王者です。この大型動物が今年すでに2120頭も「駆除」されているのです(9月末現在)。また「クマ」という古語は奥まった隠れたところを意味し、それはすなわち神威、聖なるものを意味します。熊野、熊本、阿武隈などの地名も、そうした古代信仰に関係しています。クマは、この列島にいにしえから暮らしてきた人びとにとって、カミそのものなのです。環境省は、この列島の自然のカミをなんと心得る。
熊と人が共生するには、森のありかたそのものを根っこから考え直すことが急務です。でも、とにかく今年の熊たちの飢えを救わねば。送り先、送り方など、「くまもり」さんにお問い合わせのうえ、どうかよろしくお願いします。
朝日新聞山梨版に熊森の猟友会会員記事
クマ 「出没」は人間への警告だ
(朝日新聞山梨版 2010年10月29日 より)

20年前仕留めたクマの剥製と米山光男さん=笛吹市御坂町下黒駒
■笛吹の狩人、米山光男さんに聞く
笛吹市御坂町で桃やプラムを栽培する農家、米山光男さん(63)は狩猟免許を取得して43年になる地元猟友会の重鎮。ツキノワグマも7~8頭仕留めた狩人だが、最近頻発する「出没グマの射殺」を批判的にみる。「クマは減っている」と語り、「いま見直すべきなのは、クマの食べ物をなくしてしまった林業政策」と訴えている。(永持裕紀)
秋から冬に同町下黒駒で米山さん夫婦が営む料理店に、米山さんが撃ったクマの剥製(はく・せい)が飾られている。仕留めた時体重約130キロだった大物とは20年前の2月、御坂山地の山奥で出会った。最初の1発が当たったのに走って近づいてきた。2発目も命中したが、すぐ足元に。3発目でクマは息絶えた。「勝負をかけた命のやりとり」だった。
20歳の時免許を取ったのは「勝負」が面白いと思ったからだ。けれど、この大物を仕留めたころから、狩りが面白くなくなってきた。山や森、動物の様子が「おかしい」と思えてきた。
シカが増えた。クマが減っていることと関連があると米山さんはみた。それはクマの好物のドングリがなくなったからだ。御坂の山も椎(しい)やブナなどの天然林が伐採され、針葉樹の人工林に変わった。最近はクマを見かけないと米山さんは話す。「クマもかわいそうだ」
米山さんは昨年、氏子を務める檜峰(ひ・みね)神社(同町上黒駒)の100ヘクタール近い自然林が県の指導で伐採されたのを機に、知事と環境相あてに「林業政策の見直し」を訴える手紙を書いた。「野生動物や貴重な植物を絶やし、自然界の生態を狂わして、私たち人類まで絶やしてしまうつもりですか」と記した。
「クマの出没」は、自然が何か大切なことを人間に伝えようとしている警告と米山さんは考える。「出没は今年ドングリが不作だからじゃない、日本中どこもドングリがなくなっているからだ」。クマ絶滅は自然のバランスを崩してしまうと、猟友会員のまま、クマと森の保護を訴える日本熊森協会に入会した。
人間や作物に危害を加える出没グマはすぐ殺せという声もある。森の変容を見続けてきた米山さんは話す。「元々の原因が何なのか、じっくり見直すべきチャンスです」
10月30日 やっとクマが、くまもりのドングリを見つけてくれた!
ここは、クマが今年大量に殺されている町です。もし生き残っているクマがいたら、何とか助けてやりたいとドングリを運んだのですが、前回も食べていません。もうクマがいなくなったのか、または、わたしたちが置くところが悪くて、クマが見つけられないのか。やきもきしながら10月30日に再びドングリを持っていくと、なんと、ドングリの山が消えています。横には大きなクマのウンチが。ヤッター!クマがドングリを見つけてくれた!参加者一同、思わず、歓声をあげました。だんだん、どういうところに置けばいいのかわかってきました。
クマのウンチの拡大写真
ドングリの殻が所々入っているので、確実に食べてくれているのが分かります。新たにドングリを山のように積んで帰りました。11月15日の狩猟解禁日までに何とか食べさせておきたいと、気持ちが焦ります。狩猟が始まると、ドングリ運びは狩猟者にクマの存在を教えることになり、かえって危険です。
くまもりのドングリを食べて朝帰りのクマにばったり
朝帰りのクマ
地元の方が、くまもりの運んだドングリをたっぷり食べて朝帰りするクマと、ばったり出会われました。クマはちらっと一瞬、人間のほうを見たそうですが、何も関心ないという感じで通り過ぎていったそうです。住民は、クマの後姿をパチリと撮影することができました。
ここでは、クマがカキをねらって出てくる年は、カキをあげています。その期間は、
①夜、できるだけ出歩かない。
②どうしても出る必要のあるときは、車で出る。
これだけで、クマたちとうまく共存できているのです。祖先はみんな、こうして共存してきたのです。
それにしても、山にある放置人工林には動物たちの食料が何もない。早くこれを自然林に戻してやりたいものです。
安易に、大量の罠をかけ過ぎではないのか
あっちでもこっちでも、クマが罠にかかったという知らせ。本部スタッフ、支部スタッフ、現地に急行しました。このクマは子グマで、すでに、市役所に檻ごと連れてこられていました。
最初、子グマはショックのあまりか放心状態でした。
持って行ったドングリをあげると、我に返ったようで、食べ始めました。
「山の実りなしという異常年なので、人里に出てきたのを許してやってほしい」
命を救うための粘り強い交渉が、あっちでもこっちでも続きます。熊森のできることをすべて見せて、命を助けてやってほしいとお願いしましたが、うまくいきません。飼育檻を持たないので法的には違反ですが、子グマを見ていると、もう、抱いて家に連れて帰ってやりたくなります。くまもりスタッフたちの苦悩が続きます。
何か、おかしいぞ。そうだ!安易に罠をかけすぎなんだ。出てこないように食料を運ぶ。こちらに力を入れないとだめなんだ。
猟友会員からの電話通報
熊森には、仲間の不正を見かねた猟友会員たちからの電話通報が結構あります。多いのが、クマがどんどん有害駆除されているが、殺す必要のないいクマがほとんどだという通報です。クマが高く売れるために、獲る必要のないクマを有害だったと偽ってどんどん獲っている。クマが絶滅してしまう。くまもりなんとか止めてくれという電話です。
これまで何人もの良心的な猟友会員のみなさんに、会いたいといわれてお会いしてきました。驚くべき不正実態をいろいろと教わってきました。日本には鳥獣保護員という制度がありますが、多くの県で鳥獣保護員の実態はオールハンターです。これでは取り締まりが不十分になるのは避けられません。熊森は、このような不正行為をあばく団体ではないので、新聞記者や警察のみなさんにぜひ調査していただきたいです。
最近通報してくださった猟友会員の方に、近々、お会いしてこようと思います。