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兵庫県三田市で数年前に皮むき間伐したスギを、すべて伐採!~ボランティアさんの底力~

7年前、熊森は兵庫県三田市で、多くのボランティアさんに参加していただき、放置人工林の皮むき間伐を行いました。
(以下は、当時のブログ)

6月4日(日) 皮むき間伐フェスタ開催!!

 

皮むき間伐は、チェーンソー不要、小学生でも手軽にできる間伐です。

ただし、簡単に皮がはがれるのは、木が地中からどんどん水を吸い上げている6月前後の成長期だけです。

 

今回の熊森の出動は、皮むきされて立ち枯れた木がシカ除けネットに倒れ込んで、シカが畑に入って来たという地元からの連絡を受け、
この際、フィールドチームで全部片づけようとなったものです。

 

伐採する箇所は3か所で、伐採すべき木は300本近くもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

<現場A>

ここは、倒木が小屋の上に倒れる恐れがあり、緊急性の高い場所です。
延べ2日間、作業人数5人で終了しました。

 

 

 

 

 

 

<現場B>
密植しているため、伐採時には隣の木に引っかかってしまうことも頻発。

ボランティアさんたちは、伐採した木の枝打ちや整理を積極的に行ってくださいました。

現場Bは延べ5日、作業人数延べ18人で終了しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↓Before

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑After

 

<現場C>
ここはスギの密度が特に高いため、作業前に念入りにミーティングをし、みんなで情報を共有しました。

 

現場Cは延べ3日間、延べ16人で作業完了!

 

↓Before

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑After

山主さんから「本当によくやってくださいました。」とお礼の言葉を頂き、うれしかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

3月から本部フィールドチームとボランティアさんたちで合計8回にわたり作業した3か所の現場。
延べ32人というたくさんのボランティアさんにご参加頂きました。
初めて参加して下さったボランティアさんがほとんどでしたが、みなさん「楽しかった!」
「目に見えて達成感ある」「いい汗かきました」と満足して笑顔。
くまもりの底力は、会員さんのボランティアだなと実感できる場面でした。

ご参加下さった皆さん、本当にありがとうございました!

 

 

 

 

熊森から

皮むき間伐は、元々建築屋さんが木の皮をむいて立ち枯らし、1年後に材が乾燥した頃、山から伐り出して使用するものです。

しかし、熊森の活動は奥山が主で伐り出しが難しいため、皮むき間伐後に材を使用する予定はありません。

今回、伐採を担当した職員が、皮むきされて皮がない材を伐ろうとすると、幹がくるくる回って伐りにくかったと言っていました。

皮1枚といえども、あるとなしではそんなにちがうのですね。

ならば、最初からチェンソーで伐採しておけば、2度手間にならなかったという反省があります。

しかし、皮むき間伐にかかわってくださったみなさんが、山の事や木のことについて楽しく学んでくださったと思うと、

三田市の皮むき間伐は、意味があったと思います。

この後、ここの人工林がどう変化していくか、見守っていきたいと思います。

 

 

とよくん獣舎のペンキ塗り作業がおわってピカピカに❗

豊能町高代寺内にあるとよくんの獣舎の塗装作業は5月17日に始まり、途中雨で作業日が変更になることも多々ありましたが、ようやく昨日終了しました。

以前より濃い緑色になり、周囲の樹木とも調和しているようです。

 

before

 

 

 

 

 

 

 

after

 

 

 

 

 

 

 

 

ペンキの匂いが大好きなとよくんは、顔や身体をスリスリとこすりつけてペンキの匂いを堪能(?)していました。

 

 

 

ちょっぴり鼻にペンキがついているところもご愛敬。

 

 

連日作業をじゃますることなく、じっと静かに見守っていたとよくんの姿に塗装屋さんも、「かわいいね、えらいね」としきりにおっしゃっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後にご褒美のハチミツをもらって夢中に舐めるとよくん、きれいになった獣舎で快適に暮らしてね!

 

皆さん、獣舎にぜひ遊びにきてください。

週に1度のお清掃ボランティアも募集していますので、こちらもご参加お願いします!

 

【お掃除ボランティア】6月は11日(火)・16日(日)・25日(火)を予定しています

ぽつんと一軒家に住む犬たちが、うれしそうに散歩に飛び出したのに家の前で動かなくなった訳

先日、和歌山県の山の中の一軒家に住む方を訪れた際に、お聞きしたお話です。

 

山に犬を捨てる人がいて、その方は3頭も保護飼育されています。

8月のある日、いつものようにうれしそうに家から散歩に飛び出した犬たちですが、家を出たところで立ち止まり、地面の臭いをかいでいたと思ったら、今日は散歩に行かないという感じで家に戻ってしまいました。

後でわかったのですが、離れたところにあるクリの木に、クマが来ていたのです。

足跡の臭いを嗅いだだけでわかるんですね。

争いを避ける動物たちの対応をすばらしいと思いました。

 

またこれも8月のある日、周囲のまだ青いクリの木の実を食べに、サルの群れが突然現れました。

今度は犬たちは、サルの群れに向かって一斉に吠えながら追いかけていきました。

サルの群れはどっと逃げていきましたが、しばらくするとまたもどってきました。

するとまた、犬たちが飛び出していって吠えながら追いかけます。

サルの群れはまたどっと逃げていきます。

これをこの日7~8回繰り返したところ、これ以来、サルの群れがここに来ることはなくなったそうです。

 

実際に闘ったり殺したりせずに折り合いをつけていく動物たちの知恵は、人間以上だと思いました。

 

自然の中で野生動物たちと人間が共存するには、犬が不可欠ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山の中の一軒家で保護飼育されている犬たち

 

この犬たちは、なぜか家の中にいることを好むそうです。

スクープ!指定管理鳥獣化主導の北海道でヒグマ個体数が過大に推定操作されていたことが判明

(はじめに、熊森から)

現在のクマの生息数推定計算は非常に複雑になっており、専門家でないとチェックは不可能です。
統計学の専門家である元日本福祉大学経済学部教授の山上俊彦先生は、この度、北海道のヒグマ生息数の推定過程を精査され、過大推定となるようにように操作されていることを見つけられました。

 

(本文)

以下は、山上俊彦先生のお話をまとめたものです。

 

北海道庁はこれまでクマの個体数推定方法を、全国で唯一非開示としてきましたが、2024年3月末の北海道ヒグマ保護管理検討会にて、やっと、道総研(地方独立行政法人北海道立総合研究機構産業技術環境研究本部エネルギー・環境・地質研究所)の研究者に依頼してきた1990年~2022年度末におけるヒグマの個体数推定方法の概略を提出しました。

 

概略なので大まかな輪郭が示されただけです。詳細まではわかりませんが、それでも今回の発表で、なぜヒグマの駆除数がこれだけ増加しているにも関わらず(2021年度のヒグマ捕殺数1030頭、放獣ゼロ)個体数推定値が増加し続けているのかがはっきりしました。

 

北海道ではヒグマの個体数を推定するにあたって、まず、北海道を7つの地域に分け、高密度地域は33頭、中低密度地域は20頭程度のヒグマから得たヘア・トラップ調査に基づいて、メスの生息密度を求めています。

 

例えば、渡島半島地域では2012年に渡島西部地で実施したヘア・トラップ調査の結果から、メスの生息密度推定値の95%信用区間は、下限値0.141頭/k㎡~上限値0.327頭/k㎡で、中央値は0.215頭/k㎡でした。

 

これに森林面積をかけて、メスの上限個体数を推定するのですが、当然のことながら、中央値である0.215頭/k㎡に森林面積をかけなければなりません。空間明示型標識再捕獲法(ベイズ統計学)を用いてクマの個体数を推定するにあたって、他府県では皆そうしています。ところが、北海道はなんと、上限値に森林面積をかけているのです。

 

しかもその森林面積はクマが生息できる自然林でなければならないのに、多くの人工林を含めた森林面積をかけているのです。

 

このように北海道庁が、生息密度の中央値ではなく上限値を用いたり、針葉樹の人工林を生息地にカウントしたりするなど、個体数が過大に推定されるように意図的な操作をしていたことがわかりました。

 

生息密度の上限値を用いた上限個体数を設定して計算機実験を行うと、個体数は非現実的な値に接近するまで増加し続けることになります。

 

しかも1990~2012年の間は個体数が増加し続けるように事前にプログラミングしていたこともわかりました。

 

その結果、全道の 2022 年時点のヒグマ個体数推定の下限値、中央値、上限値は、それぞれ 6,264頭、12,175頭、21,347 頭となっています。このとき、生息密度の「上限値」を用いて求めたのが個体数公表値の「中央値」となっているのです。
もし、このような操作がなされていなければ、北海道のヒグマ生息数は7000頭程度になります。実際の頭数は人間にはわかりません。

 

ヒグマを指定管理鳥獣に指定した環境省令は、このような北海道の個体数過大推定操作を精査せずに決定したものであり、この際、環境省は管理指定鳥獣にヒグマを指定したことを無効とすべきです。環境省のチエック機能はどうなっていたのでしょうか。このような操作によって国からクマ捕殺交付金を得ようとした北海道の要求は、誠に不当であると言わざるを得ません。

 

以下グラフは、道総研による、ヒグマ推定個体数の変化です。

 

 

 

熊森から

ヒグマの生息数が増えたか減ったかは、いつと比べるのかで答えが変わってきます。1990年という年はヒグマの生息数減少が危惧され、絶滅するのではないかと心配されて、道庁が春グマ狩りを廃止した年です。その年と比べるなら、ヒグマは増えたという答えしか出てきません。北海道開拓のころは間違いなくもっともっといたはずです。

 

では、何頭だったら適正頭数なのかということですが、クマという動物は、葉が繁る森の中を単独行動で大きく移動し、木々が葉を落とす冬には冬ごもりにはいってしまうという生態上の特性があるため、何頭いるのか生息数のカウントが不可能な動物です。まして適正頭数など、人間が決められるようなものではなく、生態学において「適正頭数」の判断基準などありません。

 

グラフの2022年推定個体数をみると、上限値と下限値の差が15000頭と幅があり過ぎです。もし、下限値が実態を反映していた場合、ヒグマが増えているとは到底言えません。

 

これからのヒグマ対策は、ヒグマの推定個体数に右往左往するのではなく、人身事故や農作物などの被害をどう減らすかに重点が置かれるべきだと熊森は考えます。多くいても人間のいない所にヒグマがいるのであれば問題はないし、少ししかいなくても人間の近くに出てくるようであれば問題です。現在、行政は、クマの個体数推定に膨大な予算を使っていますが、無意味です。こんな簡単なことに、専門家と言われる人たちがなぜ気づかれないのか不思議でなりません。

 

私たちの税金は、ヒグマを殺すことではなく、生息地再生や被害防除対策など、人とヒグマが棲み分けられるようにすることに使っていただきたい。その方が、道民の皆さんのためにもなると思うのですが、道民の皆さん、いかがでしょうか。(完)

 

 

マスコミはクマを悪者にしたてるのはやめて 軽トラに突進した根室母グマ報道の問題点

昨年から、なぜかマスコミのクマ報道が、「クマは悪者で捕殺の対象」というもの一辺倒に変わりました。目に余るひどいクマ報道の連続です。アルメディアの方は、クマを悪者にすると視聴率が取れると言っていました。

クマは本来とても平和的な動物で、人間に遠慮してかわいそうなくらいそっとこの国で生きています。

こんな報道が続くと、クマという動物を全く知らない多くの国民が、人を襲う恐ろしい動物という間違った固定観念をもってしまいます。

 

今回の根室の軽トラに突進した母グマの報道でも、子グマを守ろうとした母グマの行為であったことがほとんど取り上げられておらず、ヒグマ凶暴、軽トラの被害ばかりが強調されています。以下は報道の見出しです。

 

・【クマ】軽トラックに襲いかかる 北海道・根室市
・北海道根室軽トラックにヒグマが衝突乗っていた2人けがなし
・【衝撃】ヒグマが軽トラックに体当たり フロントガラス破損

 

ニュース映像に使われたドライブレコーダーを注意深く見ると、一番初めに一瞬子グマが画面左に歩いていく姿が映っています。
(子グマと母グマの文字は、熊森による挿入)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この子グマのことに触れないと、なぜ母グマが軽トラにとびかかったのかが視聴者に伝わりません。

 

地元の方に聞くと、この軽トラックを運転していたのはギョウジャニンニクを採りに、国道からそれた山道に入り込んで行った地元の方だそうです。母グマにクラクションを鳴らし、パニックに陥らせています。ヒグマの生息地に入るのですから、最初に子グマを見つけた時点で一旦停止してそっと引き帰るという最低限のマナーを守るべきです。

 

突進してきた母グマの後ろにも、もう1頭の子グマが現れますが、この軽トラは無視してこの林道をぶっ飛ばしていきました。

 

また、根室市がこの母グマに捕獲罠を仕掛けるとの続編ニュースも、人間側の視点ばかりです。以下は報道の見出しです。

 

・ヒグマによる「軽トラック襲撃」を受けて「箱わな」緊急設置へ 今月中にも周辺2か所に車体は大きく損傷、、、北海道・根室市

・軽トラを襲ったクマ箱罠を設置し捕獲へ「人身事故につながる危険」北海道根室市

 

行政は、罠を掛ける前に、この軽トラを運転していた方を指導したのでしょうか。

 

物言えぬ生き物たちに全責任を負わせるという最近のマスコミ界の倫理感も問題です。

 

根室市は、道の駅の横に罠を掛けることを考えているそうです。しかし、罠の中にはハチミツなどクマの大好物が入っていますから、遠くのクマまで誘引してしまいます。北海道ではクマ放獣体制がありませんから、罠に掛ったクマは100%銃で殺処分されます。
この辺りは元々ヒグマの生息地で、何かを狙ってクマがやって来たのではなく、元々の通り道だということです。
根室市担当者によると、地元ではクマを捕獲してほしいという声も出ていないということですから、根室市は罠を掛けないようにお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

根室の道の駅(鈴木支部長撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

道の駅横の熊注意や立ち入り禁止看板(鈴木支部長撮影)

 

注意看板は必要です。
根室市さん、今後ともヒグマとの共存をよろしくお願いします。

🐾『子グマを守るため、軽トラに立ち向かった母グマを捕獲しないで』北海道 鈴木ひかる支部長 根室市長に申入書を提出

4月28日に、貴市で、林道を走行していた軽トラックにクマが襲い掛かったというニュースが流れました。母グマが、子グマを守るためにした行動でした。
5月1日、この母グマを山中に罠をかけて捕殺すると報道されたため、くまもり北海道支部ですぐに情報収集や申し入れをして、山の中に檻が設置されていないことは確認ができましたが、今後も引き続き対策が検討されるということでした。

 

5月10日、鈴木ひかる北海道支部長が、愛犬とともに8時間かけて高速を飛ばし、根室市役所を訪問、釧路から駆けつけた会員1名とともに、母グマを捕獲するため罠を設置しないでと市長宛要望書を提出ました。

 

 

 

🔴母グマの行為は正当防衛であること
 鈴木支部長は、今回は、子グマを連れた母グマに対し、偶発的にせよ誤って近づき、驚かせてしまったことが問題であり、母グマを捕獲するのは止めていただきたいと要請。
 対応していただいた担当者の方によれば、母グマを捕るというのは間違った報道で、これ以前に道の駅周辺や市街地近くでクマが目撃されており、市民生活に支障をきたしてはいけないということで、箱罠設置はそのためであるということでした。

 

🔵クマを誘引することもある罠設置でない対策を
 これに対して、鈴木支部長は、箱罠で駆除しても問題解決にならず、かえって箱罠は、もともとは問題がなかった、関係ないクマを誘引してしまうこともあり、かえって人身事故を誘発する危険があると伝えました。
住民にとっては、クマが出没しないことが大切で、出没させないためには、入ろうとする場所で、誘因物を特定して除去したり、電気柵や、防除柵を設置することが有効な対策で、島牧村での事例などを伝え、箱罠設置でない対策を求めました。
根室市では、今後も、引き続き会議で対応を協議するとのことでした。
地元、釧路新聞、毎日新聞、UHBテレビ(北海道文化放送)、読売新聞の記者さんが取材をしてくださいました(釧路新聞は有料記事です)。

 

🔴今後も引き続き、棲み分け対策の提案や協力を
 この晩、鈴木支部長が泊まったホテルのオーナーは、クマも他の動物も罠で取るべきでない、ヒグマに人の存在を知らせてやれば山でも事故は防げると言われていたそうです。根室市でも、生き物との共存を願う方はけっこうおられるとのことでした。
 5月11日、鈴木支部長は、朝は、クマがよく出没しているという道の駅周辺を視察して、帰宅。電気柵等の侵入防止対策を実施すべきとのことで、引き続き、根室市に対し対策の提案や協力をしていきたいとのことです。

事故0捕殺0のベテラン行政担当者のクマ対応 ③人間などに驚いたクマが建物に逃げ込んだ場合

(3)人間などに見つかり驚いたクマが建物内に逃げ込んだ場合

建物出入り口がギリギリ見える100mほど離れたところに担当者が車を止め、エンジンも止めて窓を閉めて待機します。クマに対して風下であったり充分な距離が確保出来ているようであれば窓を開けてもエンジンをかけていても大丈夫です。建物の扉は全開にしておき、夜になるのを待ちます。それ以外の人はすべて立ち去るか、規制線外に出てもらいます。クマをパニックに陥らせる回転灯やエンジン音などは厳禁です。

 

このようにして平静な環境を作って見守ると、多くの場合、人の動きが止まる午前2時から4時に、クマはそっと出て来て山にさっと帰って行きます。暗視スコープやサーマルビジョンでクマが山に帰ったことを確認します。

 

こうやってこれまで多くのクマを山に返してきましたが、交通事故等で怪我をしていた場合は一晩では出てきません。3日目ぐらいに建物から出て山に帰って行った例もあります。その間、飲まず食わずなので、水やえさを与える必要はありません。(与えても、飲まない食べない)

 

(4)クマのいる山に入る場合

私は、林業用の顔面シールドを付けたヘルメットをかぶって入ります。これだと、あっ襲ってきた!と思った瞬間、顔面シールド降ろし、顔面をガードできます。基本的に唐辛子スプレーは使いません。唐辛子スプレーが噴射できるように準備する前に、クマが目の前に来てしまう恐れがあるからです。

 

 

クマが人間に一撃を加えて逃げようとする場合、立ち上がってのしかかるようにして前足を振り下ろすことが多いため、しばしば前足の爪が人間の顔に当たり顔面の大けがとなります。(クマが人の顔を狙って襲ってくるのではなく、たまたま位置的にそうなる)顔面ガードを付けていると、このケガを防ぐことができますし、ヘルメットで頭を守れます。

 

クマから逃げきれないときは、出来るだけ戦います。先に金属が付いた靴で鼻か口を殴るか蹴ると効果的です。といっても、襲ってきたことは、今まで数百回山でクマに出会って3回しかありません。

 

もちろん唐辛子スプレーは非常に有効なので、一般登山者の方や、相手がヒグマである場合などには積極的に使用していただきたいです。私は行政担当者なので、唐辛子スプレーを使用してパニックになったクマが集落に下りて行って市民に危険が及ぶ恐れを避けたいという思いもあるのです。

 

(5)クマやシカが線路に入って列車に轢かれないようにするコツ(轢死が、すごく多い)

①シカの場合

シカが線路に執着する理由は多岐に渡るため、理由を特定するのは経験を積んだ人材でないと困難ですが、何故その場所で線路に入るのか理由を調べます。

鉄粉を舐めたくて入っている場合は、線路から離れたところに、錆びた古い線路などを置いてシカが舐められるようにしてやると、そこにみんなで舐めに行き、もう線路に入らなくなります。

 

②クマの場合
クマが線路を積極的に利用する主な原因は二つあり、ひとつには長距離を楽に移動するためで、もうひとつはシカの轢死体を食べるためです。
そのため列車がシカをひいた時には、出来るだけ早くシカの轢死体を線路外の山側に置いておくと、クマが次に轢かれるのを防ぐことが出来ます。
シカ避けとしてカプサイシン(唐辛子)を線路に塗ることがありますが、クマはカプサイシンに執着するので、この処置を施した路線では、次に、クマが轢かれる恐れが生じます。(完)

 

事故0捕殺0ベテラン行政担当者のクマ対応 ②夜の集落に餌を求めてクマが出た場合

(2)クマが夜間に餌を求めて集落に出てきた場合

人間への警戒心があるクマなので、問題を起こすことは少ないです。

夜間に集落周辺の餌を食べて山への朝帰りが遅れ、早朝人間に見つかってしまったクマも、問題を起こすことの少ないクマです。

夏場に住宅密集地の小学校の近くに夜間に出てきたクマがいました。夜間でも撮影可能な自動撮影カメラをかけた結果、そのクマは小学校のプールで泳いでから、山に帰って行ったことがわかりました。

 

行政担当者は家屋から何m離れたところに来ているかなど、情報収集に努めます。家屋から100m離れていても危険な時もあれば、毎年来ているクマで5mしか離れていなくても大丈夫なクマもいます。

 

その地域のクマ社会が成立していれば、経験豊かな母グマが子グマに教育を徹底させるので、何時頃にどこまでなら出て行っても安全か、クマたちは皆、理解しています。よそからクマがやってきても、そこの母子グマを見習って集落に近づき過ぎないように気を付けます。このような母子グマの存在は流れグマが来ても集落に近づき過ぎないように教え、集落を守ってくれる貴重なクマで、決して捕獲してはならないクマです。

 

 

事故0捕殺0ベテラン行政担当者のクマ対応 ①昼間の集落に餌を求めてクマが出た場合

ある町のツキノワグマなど野生動物対応のベテラン行政担当者(10年間引き続き担当中の男性)は、昨年度、それなりに次々とクマが集落に現れる中、クマによる人身事故ゼロ、クマ捕殺ゼロを達成されています。この方に、人身事故ゼロ、クマ捕殺ゼロのコツを教えていただきました。

 

コツは、一言で言うと、「クマを一切刺激しないこと」です。
人身事故を多発させている行政担当者のみなさん、行政対応に問題はなかったでしょうか。ご検討ください。

 

総論:まず最初に、なぜクマが集落に出て来たのか見分けること。

 

1、食べ物を求めて出て来た
→柿の実など、取り除くことのできる場合は取り除く。
・ただし、集落外縁のものを狙って出てきた場合は、下手に取り除くとクマが集落内に入ってくることがあるので、許容することも考える。
→気を付ける。
早春の渓流には、落実直後はタンニンが強く食べられなかった前年のトチなどが、渓流の水にさらされている間にアクがとれて、クマが食ベられる状態になっているため、釣り人は渓流でクマに出会うことがある。要注意。
→危険なので近づかない。
・シカの死体や腐乱死体に発生したウジ虫を食べに来ている場合は要注意。近くでのランニングやサイクリングは危険。

2、5月前後に、母グマまたは子グマが、発情しているオスから逃げようとして出て来る
→オスグマを追い払ってやると、山に帰る。

3、蛍の出る頃、早朝、集落の川で水浴びのために出て来たり、単に通行するだけなどの一過性のもの
→あまり問題視しなくてよい。

4、母から独立したばかりの好奇心の強い3歳くらいの若グマが、人間の集落を見に来る。
→見に来ただけなので、しばらくしたら自分から帰って行く。

 

 

各論

(1)クマが昼間に餌を求めて集落に出てきた場合

人間への警戒心が薄いクマであることが考えられるため、要注意。

連絡を受けた行政担当者はすぐに現地に向います。この場合、人身事故を起こさせないというのが行政としての一番の目標となります。とにかくクマを刺激しないように、クマから離れたところでクマの動きをそっと気長に見守ります。マスコミにはご遠慮願います。

警察官は遠く離れたところにいて、市民がクマがいる方向にやってこないようにするという役割に徹してもらいます。

クマがもし集落内へ移動するようであれば、少人数の専門員でクマに気づかれないようできるだけ離れて一定距離を取りながら付いていき、そっと監視し続けます。

クマをパニックに陥らせるパトカーの回転灯やサイレン、拡声器などは一切厳禁です。

大声や爆竹で脅したり追い払おうとしたり追いかけたりすることも厳禁です。そんなことをすれば、クマが見当が付かない方向に逃げだしたり、反対に物陰に入り込んで動かなくなることがあり、これが人身事故につながります。出来るだけ普段と変わらない静かな環境を保持し、クマが平静に山に帰るまで見届け、終わります。

人がそっと離れたところから見守っていたことに、クマは気づいています。

 

門崎允昭顧問が視察してきたオーストラリアでの野生動物と人の徹底した棲み分け実態

以下は、札幌にある北海道野生動物研究所の所長で長年くまもり顧問を務めてくださっているヒグマ研究の第一人者である門崎允昭先生が発行されている北海道熊研究会 の会報 第 125 号( 2024 年3月30日付)です。先生の許可を得て転載させていただきました。

 

私(門崎允昭)の羆に関する基本姿勢は人的経済的被害を予防しつつ、極力羆は殺すべきでないと言う立場です。
理由: この大地は総ての生き物の共有物であり、生物間での食物連鎖の宿命と疾病原因生物以外については、この地球上に生を受けたものは生有る限り互いの存在を容認しようと言う生物倫理(生物の一員として、他種生物に対して、人が為すべき正しき道に基づく理念による。

日本では熊や鹿が、市街地に出て来るからとの理由で、その抑止策として、一方的に、殺す事を決め、殺しまくっていますが、皆さんはどう考えますか。
今回、73 日間、オーストラリアに滞在し、その間に、各地で野生動物に対する対応を、調査しました。(2023 年 12 月 20 日札幌出発し、娘宅に滞在し、2024 年 3 月5 日、札幌へ帰着。)、

 

その結果、どの地域でも、野生動物が本来の生息地から、人が利用している地域に、出て来る事を、高さ2m程の金網を張りめぐらせて、(一部の箇所では有刺鉄線柵を張って)、完全に防いでいる事を、国策として行って居ることを目撃し、日本との違いに、驚嘆。
動物が(利用する可能性が有る地所も含めて=市街地の道路沿いは勿論、僻地の道路沿いも含めて)道路を越えて、人が日常的に使用する場所には、一切出てこられないようにされている事に驚きました。

 

次の写真は、Australia の東海岸の中部に位置する Coffs Harbour 市の市街地で撮影したものです。

我が国でも、同様の対策をすべきなのに、そうしないで、熊や鹿を、殺しまくろうと、決めて、殺し始めたのだから、世界中から、日本人の知性の劣等さが時と共に広がり、非難を受ける事になるでしょう。

 

本号のお知らせ

<電気柵と有刺鉄線柵の設置法>
地面から約 20cm 上に一線を張る。それから、約 40cm 置きに、4 線ないし 5 線を張る
北海道の熊問題は、昔も今も、以下の4項目です。解決法を記載します。

① 「羆の生息地に山菜採り、遊山・登山、作業等に入って羆に襲われる
解決法・・・ホイスルと鉈の持参

② 羆が里や市街地出没して住民に不安を与えている
解決法・・・一時的には電気柵・恒久的には有刺鉄線柵

③ 放牧場、僻地の農地、果樹園、養魚場にクマが現れ食害や不安がある
解決法・・・一時的には通り道に電気柵を張る。 恒久的には有刺鉄線柵を張る。

④ 僻地の農作地での人身事故の予防
解決策・・・ 恒久的には有刺鉄線柵を張る。

 

札幌市芸術の森では、2013 年から、羆が出て来る可能性がある5月~11 月の間、全長 12km にわたり、電気柵を張って羆が園内に侵入するのを、完全に防いでいる。
芸術の森の電気柵の設置、撤去にかかる経費は約 40 万円で、若干の変動はあるとのことです。漏電防止のための草刈りは、一月約 20 万円ですが、草が繁茂する時期になると 100 万円程度増加し合わせて 120 万円前後になるとのことです。したがって、電気柵にかかる経費はトータルで年間 160 万円~180 万円になるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門崎先生と芸術の森の有刺鉄線

以上。

 

熊森から

門崎先生のお話では、オーストラリアでは、行けども行けどもどこまでもこのような柵で人と野生動物の棲み分けが徹底されていたそうです。これだと、確かに有害駆除はゼロです。
人と野生動物が触れ合う機会が全くないというのはちょっと寂しいような気もしますが、殺すよりはいいかな。
ただし、オーストラリアの人は狩猟を楽しみますから、狩猟の時はもちろん柵内に入ります。
2016年度のカンガルーの狩猟数は150万頭だったそうです。オーストラリアのカンガルー推定生息数は5000万頭だそうですから、もしこの数字が正しいなら、3%の狩猟率です。
学者によっては、干ばつ年は大量のカンガルーが餓死して、自然がカンガルーの生息数をコントロールしているから、狩猟などしなくてもいいと言っている人もいます。
カンガルー皮を売って儲けたい人は狩猟をします。ただし、子供のいるカンガルーの狩猟は禁止されているそうです。

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