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ノルウェー大使館で対談を行いました       ~雄大な自然を誇る環境先進国ノルウェー~

氷河によって作りだされた雄大な景観が美しいフィヨルドの国、ノルウェー。

オーロラや夏の白夜など、高緯度に位置することで紡ぎだされるダイナミックな自然とそこに溶け込む人々の暮らしが魅力的な国です。

また、国を挙げて環境・気候変動対策にも力強く取り組んでおり、首都オスロが2019年の「欧州・緑の首都(European Green Capital Award)」に選定されるなど、国民に「自然と生物多様性」が根付いている国でもあります。

 

今回、地球規模で悪化している森林劣化の問題と日本の野生のクマが直面している問題に関して会談させていただきたいと大使館に連絡したところ、「是非おいでください」とすぐに返信をくださいました。

デンマーク大使館に続いて、ノルウェー大使館に訪問、公使参事官(Minister Counsellor)のリーネ・アウネ氏(Ms. Line AUNE)、広報担当官(Information Officer)の土山亮子氏と貴重な意見交換をさせていただきました。

(左から)リーネ・アウネ氏、土山亮子氏、伊藤純子会員、室谷悠子会長

 

対談そして意見交換

会談では、現在の日本は、拡大造林政策によって全森林の半分近くが実をつけない人工林に変わった上、さまざまな開発により、生息域を奪われたクマたちが人里に降りて来ざるを得ない状況になってしまったこと、それにもかかわらず山の中にまで罠にかけ、かかったクマを子グマにいたるまで殺処分している現状を伝えました。

このような状況が続くと、近い将来、クマが絶滅に至る地域が次々出る可能性があるということをデータに基づくグラフや実際の奥山の森林の状況を撮影した写真を示しながら、室谷会長が説明しました。

さらに近年のミズナラ・コナラの木が枯れるナラ枯れ現象の問題についても話しました。リーネ・アウネ公使参事官は、大変興味を持って私たちの目をしっかり見ながら熱心に話を聞いてくださいました。

その後、アウネ氏は、ノルウェーの森林管理に関してはEUのフレームワークに沿って行なっているが、森林の劣化問題は常に注視していかなくてはいけない問題であること、またナラ枯れについては初めて聞いたので、本国の状況を確認したいと話されました。

今後、ノルウェー大使館から本国の環境問題に関わる団体と日本熊森協会が連携を取れるよう働きかけてくださることになりました。

日本ではまだまだ野生動物の危機や森林の危機が浸透していません。どのようにすればいいかと質問すると、生物多様性や森の保全は大変重要な課題であり、その重要性の観点からアピールしてはどうかとアドバイスくださいました。

最後に、ノルウェーを訪れたことがある熊森会員に「オスロからフィヨルドに向かう車窓からノルウェーの豊かな森を見ていただけましたか?」と質問されました。その温かい笑顔に自国の自然や森への深い愛情と誇りを感じました。

別れ際、大使館の外まで見送ってくださったアウネ氏と土山氏に「在任中に日本の水源の森をぜひ見てください。ご案内します」と伝えると「ぜひ!」とおっしゃってくださり、再会を約束して大使館を後にしました。

ノルウェー大使館Twitterでもご紹介くださいました

 

世界初森林皆伐禁止令の国ノルウェーより学ぶこと

ノルウェーは岩山(フィヨルド)が多いため、森林率自体は33%と高くはありませんが、森林保全への国民の関心が高く、2016年、生態系保護をめざして、国内の全森林の皆伐を禁止するという世界初の決定を下しました。

それと同時に、熱帯雨林地域での違法な森林伐採とそれにより生産された商品(木材だけでなくパーム油、大豆、牛肉など)を調達しないことも約束しました。

さらに世界の森林保護のプロジェクトに資金提供し、森づくりに関わる人の人権擁護にも乗り出すことを発表しました。

 

会談を終えて

このように自然保護への関心が高いノルウェー大使館での面談も大変意義深いものとなりました。貴重な機会をいただき心から感謝しております。デンマーク大使館に続いてノルウェー大使館にも温かく迎えていただいたことで、地球環境問題は各国が協力し合うことで解決への道が開けるのではないかと希望を抱くことができました。

次世代へ向け、汚染されていない自然を残すため我々がするべきことは、環境への配慮です。それにもかかわらず、今、日本中の山間部で、メガソーラーを建設するために森を数十ヘクタール、ときに百数十ヘクタールも切り開く工事、つまり森林の「大規模皆伐」が頻発しています。

さらには、バイオマス発電の燃料調達や、風力発電の巨大風車建設のために森の木を伐る例も増えています。森林減少を大問題だととらえ皆伐を禁止し、世界の森林伐採についても力強く取り組むノルウェーの政策と比べると、日本人の危機感のなさに愕然とします。

我が国でも、野生動物の危機や森林破壊の問題に、早急に取り組まなければなりません。もっと多くの国民が関心を持ってくれるように、森林破壊や劣化の流れを食い止められるように、思いを新たにさらに取り組んでいきます。

熊森通信108号発送

9月27日、28日で、一般会員向けの会報発送を終えました。

もうすぐ着くと思います。

お楽しみに。

表紙は、なんとしても開発を止めたいメガソーラー開発の一つ、青森市で現在、森林伐採中の「新青森太陽光発電所建設事業」105ヘクタールです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目次

 

グラビア 宮城山形北部風力発電伐採予定地の森(奥羽山脈林野庁緑の回廊)

 

巻頭言 森林を破壊しての温暖化防止などない!会長 室谷 悠子

 

特集 祝  全国再エネ問題連絡会結成 くまもりは共同代表で事務局を分担

自然破壊を伴うメガソーラー・巨大風力発電事業に規制を

 

丹波篠山酒井市長と懇談 自然と人が共存棲み分けできるまちに

 

電力大量消費社会からの脱却  金井塚 務 氏

 

主原 憲司 顧問と歩く 長野県八ヶ岳

 

全国初調査

クマ保全 くくり罠錯誤捕獲の実態と鳥獣捕獲体制の改革

長野県小諸市農林課野生鳥獣担当員 竹下 毅 氏

 

新顧問紹介    衆議院議員  土屋 品子 氏

第26回くまもり本部原生林ツアー

 

新支部長紹介

・宮城県支部

・栃木県支部

 

太郎と花子のファンクラブ・くまこ

とよファンクラブ

 

北海道 57年ぶりに市街地で羆による人身事故 原因と対策

顧問  門崎 允昭 氏

 

会報発送風景

ボランティアさん毎回ありがとうございます。

9月7日 豊かな自然や住民生活を破壊する事業に規制を!河野大臣に全国再エネ問題連絡会が訴え

第15回 内閣府「再生可能エネルギーに関する規制等のタスクホース」(オンライン会議)で、全国再エネ問題連絡会共同代表山口氏(静岡県)が訴える

 

タスクフォース:緊急性の高い、特定の課題に取り組むために設置される特別チームのこと。もともとは軍事用語で「機動部隊」を意味する。

 

 

全国再エネ問題連絡会は、メガソーラーや大規模風力発電問題に取り組む団体が、国政へ声を届けるために設立されました。

熊森は、事務局と共同代表を務めています。

今回、上記タスクフォースで、連絡会の山口雅之共同代表が、全国で起こるメガソーラーや大規模風力発電開発に関する問題点について訴えました。

 

第15回目のテーマ
地域と共生した、持続可能な再エネ(主に太陽光発電)の導入拡大に向けた規 制・制度の在り方について

 

政府出席者
河野太郎規制改革担当大臣、藤井副大臣、内閣府事務方幹部

出席官庁
経産省(新エネ課:FIT法、電安課:電気事業保安関連)
環境省(温対法、環境アセス関連)
農水省林野庁

委員
大林ミカ(自然エネルギー財団)

高橋洋(都留文科大学)

原英史(元経産省)

川本明(元経産省)

招へい

山口雅之(全国再エネ問題連絡会共同代表)

 

当日の配布資料

 

第15回ライブ配信動画

 

全国再エネ問題連絡会の山口代表は、利益優先の違法・杜撰な再エネ開発により地域住民の生活が脅かされている実態を力強く訴えました。タスクフォースの委員の専門家のみなさんも、現実に起こっている再エネ開発のトラブルを解決するために、具体的な規制が必要であるとして、各省庁に的確な意見や質問をしてくださいました。皆様ありがとうございます。

 

しかし、残念ながら、経済産業省や林野庁、環境省の回答には真剣さがなく非常に中身の薄いものだったと思います。

 

特に林野庁の、再エネで森林を伐採したら保水力が衰えるというなら、より強固な調整池を作ればいいという発想は安易過ぎます。

林野庁は、メガソーラーや風力発電を建設するために森林がどんどん伐採されているというのに、規制をかける気はないようでした。

宮城県と山形県の県境北部では、緑の回廊に指定しているクマたちが棲む豊かな国有林を、外資のエネルギー会社に貸し、開発許可を出しています。

我が国に最後に残された生物の多様性に富む水源の森を潰してしまうことについて、林野庁で働く人やOBはどう感じているのでしょうか。

 

山口代表は、

「今日の国の答えは今までの延長線ばかり。全く改善されない。

事業者の財産権より私たちの生存権の方が優先されるべき。国民の命と暮らしを守るのが行政でしょう。

今の現状では悪徳業者がのさばるばかり。環境アセス法に罰則をつけてほしい。

県知事がいくら開発に反対しても、林地開発許可を不許可にできないなんておかしい。

今、このユーチューブを見ている方たちは失望されているはずです。

森林法に決定的な欠陥があります。森林法を改善しない限り、国民は守られません。悪徳業者が森林法10条を悪用してくる。現状ではお金を儲けることしか考えていない悪徳業者がのさばるばかり。違反者には認定を取り消す仕組みが必要。

今日のような答弁では、私たちは国に対して不信が募る一方です。もっと真剣に困っている全国各地の国民の声を聞いて、考えて欲しい。」

と必死に訴えましたが、担当部局は消極的だったと思います。

 

最後に河野大臣が「今日聞いた話は一部の地域の例だと思います。」という話をされましたが、この問題は一部の地域の問題ではなく、全国で起きている、あるいはこれから起こり得ることです。

自然生態系にとっても、地域の人々にとっても「極めて危機的」な問題であることを、各省庁の担当者の方にもご理解いただきたいです。

 

空気中のCO2濃度を下げるためにCO2の吸収源である森林を伐採して設置する自然エネルギーなど本末転倒です。自然エネルギーは自然を破壊しない場所で設置されるべきです。

 

山口共同代表、たいへんお疲れさまでした。これを皮切りに自然破壊型の再エネ問題に困っておられるもっとたくさんの方々を巻き込み、国政へ意見を届けて行きましょう!

 

★メガソーラーや大規模風力発電に取り組む住民のみなさん★

全国再エネ問題連絡会へ、ぜひご参加ください!!

豊かな自然や地域を破壊する開発を止めるため、力を合わせましょう
https://saiene-news.com/

 

 

 

 

長野の森を見る会② 八ヶ岳連峰 道路、別荘、観光施設・・・どこまでも人間が入り込んでいた  

2日目 8月8日(日)

訪れた八ヶ岳連峰は、南北30km余りの八っつの大火山群からなっています。熊森はこれまで各地のクマ生息地を調査してきましたが、今回が最も標高の高い場所です。

 

茅野市から見た八ヶ岳連峰(茅野市市街地の標高が800m~900m)Wikipediaより

 

岳という漢字からわかるように、これらの山は下の方は森林ですが、上に行くと高木の育たない森林限界となっており、草原や岩石地帯になっています。

 

長野のクマの生息地は1000m~1400mと言われています。関西と違って人間の住んでいるところの標高が高いため、平地がすでに落葉広葉樹林帯です。よって、クマは奥山の動物ではなく裏山の動物なのです。

 

今回の目的地は、蓼科山と赤岳の間の麦草峠です。

黄線が今回の行程(3月撮影写真引用により落葉広葉樹林は茶色、針葉樹林は緑色)

 

9時に標高1400mの白樺湖を出発。

山岳道路はコロナ禍にもかかわらず、結構、人も車も多くてびっくりしました。東京ナンバーが多かったです。

 

11時に標高1900mに到着。

コメツガやヤツガダケトウヒなどの針葉樹やダケカンバが中心。

もう、クマの生息地ではありません。びっしり植えられたカラマツの人工林は、戦後の植林によるものです。

ササ原の上をいろいろな昆虫が飛び交っていた

 

シラビソの枝に、緑色の薄い布のようなサルオガセ(猿尾枷)があちこちで垂れ下がっています。サルオガセは酸性雨に弱いため、兵庫県や京都府では消滅してしまった植物です。内陸部の長野にはまだたくさん残されていました。さすが、長野。

 

 

 

 

 

 

サルの尾が絡めとられてしまうのでしょうか

 

13時 標高2100mの麦草峠に到着。車で行けるのはここまでです。もっと上まで行きたい人は、歩いて登らねばなりません。

お花畑には可憐な高山植物の花々がたくさん咲いており、とてもきれかったです。びっくりしたのは、実に様々な昆虫たちが花々にいっぱい群がっていたことです。日本にはこんなにいろいろな昆虫がいたのかと思いました。(もちろん、本当はもっといますが)

 

人間がお花畑に踏み込まないようにロープが張り巡らされている

シシウドの花には、ハチやカミキリなど多くの昆虫が集まっていました。

 

積雪減で、数年前から、シカがここまで上がってくるようになったそうです。お花畑に少々のシカはいいのですが、(動物の体内を通過すると、草本の種子が発芽するため)、しかし、あまりにもシカが増え過ぎるとお花畑が食べ尽くされてしまう恐れがあります。

 

お花畑を抜けて、ヤツガダケトウヒの森に入ります。

今のところシカは大好物のササやトウヒの樹皮を主に食べており、森の入口には、シカが森に入らないように、シカ除け網が張られていました。

 

 

この辺りは溶岩に被われるなど火山性の土地で標高も高いため、トウヒ、シラビソ、ゴヨウマツ、ハイマツ等針葉樹だけの森です。

森の中に入っていきました。木の太さが皆だいたい同じなのは、70年ほど前にパルプ材として皆伐された後、放置された2次林だからです。

原生林ではありませんが、放置されたことによって元の森にもどってきていますから、植林されなくてよかったと思いました。

しかし、この森に、シカが入り込んできていますから、今後、この森が存続できるかどうかわかりません。

シカが入り込まないように、道路を閉鎖してほしいです。人間も入り込めなくなりますが、そんなところを作っておくことは大切です。

 

 

 

 

 

 

 

 

八ガ岳中腹の針葉樹林帯入口付近①

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八ガ岳中腹の針葉樹林帯奥②トウヒの倒木更新があちこちにみられる

 

この森の外観が見渡せる場所がありました。見事に針葉樹ばかりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつまでも見ていたいほど美しい北八ケ岳針葉樹林帯

(南八ケ岳は、火山灰地帯で落葉広葉樹林帯だそうです

 

熊森本部は、今回長野県の奥山に初めて入りましたが、標高が上がるにつれて林相がガラッと変わっていくことを体感しました。長野県ならではの体験です。

 

車で進みながらショックを受けたのは、長野の山はどこまでも別荘地やリゾート開発、観光道路などの人手が入っていたことです。これでは野生動物たちは安心して棲めません。

 

 

 

 

 

 

 

 

別荘が点在していることがわかる八ヶ岳中腹(3月撮影)

 

運転しながらスマホの地図に目をやると、1軒ずつの別荘に至る道路が山に張り巡らされていることがわかりました。

 

 

 

 

 

 

 

区画が大きい別荘地独特の道路(車中でスマホに表示された道路を撮影)

 

今回の長野は完全に観光地だという印象を受けました。人間には楽しいかもしれませんが、こんな奥地にまで人間が入ってきて、野生動物たちには迷惑この上ないと思います。

長野県ツキノワグマ管理計画によると、1,150平方キロメートルに及ぶ八ケ岳エリアに生息しているツキノワグマの推定数は15頭~570頭となっています。中央値は150頭だそうです。今回行ってみて、クマが棲めない訳がよくわかりました。

 

案内してくださった主原先生に、今回の長野の山を視る会は森林生態学的にはそれなりに勉強になりましたが、私たちが見たかったのは、人間の手がほとんど入っていない長野の原生的な森ですというと、そんな場所は北部の新潟県境にでも行かないともうありませんということでした。

 

1998年の長野オリンピックの時に、熊森第一顧問の宮澤正義先生が、長野最後の原生林が長野オリンピックで開発されてしまったと嘆いておられたのを思い出しました。西日本はもちろんですが、長野県でさえ、人間は大地を取り過ぎており、野生生物たちを追い詰めていると感じました。皆さんはどう思われますか。

 

観光は間違いなく自然を劣化させます。観光という産業について深く考えさせられた1日でした。

8月7日 「長野の森を視る会」その①

今年5月に予定されていた本部・支部共催の「長野の森を視る会」が、コロナで延期になったままでした。応募してくださった長野県会員のみなさんも残念だったと思いますが、私たち本部スタッフも残念でした。

 

と言いますのは、熊森本部は設立25年間の間に全国各地の森を研究者らと調査してきましたが、まだ長野の森だけが未調査で残っており、本部にデータがありません。

 

主原憲司先生がお元気なうちに、長野の森に通い続けられてきた先生に長野の森を案内しておいていただきたいということになって、東京オリンピック開催でコロナ第5波が拡大しつつある時ではありましたが、とりあえず内輪だけでもと「長野の森を視る会」を実施しました。

 

地元に迷惑をかけてはいけないので、本部スタッフは全員、PCR検査で陰性を確認しての出発です。

 

今回調査する森は、八が岳連峰です。

 

長野県は、3000m級の山々を連ねる飛騨山脈(北アルプス)、木曽山脈(中央アルプス)、赤石山脈(南アルプス)に囲まれた内陸県です。海から離れており雨が少ない、県土の標高が高いため夏でも涼しいなど、避暑地や別荘地に最適です。

 

私たちが長野の森に期待したことの一つは、標高の高さ故、急激な地球温暖化の影響をまだ受けていない森が残されているという点です。

 

長野県のツキノワグマ推定生息数は400頭〜1万5440頭、中央値3940頭とされ(幅が大きすぎますが、それだけクマは何頭いるかさっぱりわからない動物なのです)、日本で最もクマが多い県です。クマをシンボルに活動している熊森にとっては胸おどる県です。

 

【1日目 8月7日(土)】

長野県茅野市の標高1400mの場所にある、白樺湖のほとりのホテルに全員宿泊。

白樺湖は、蓼科山,霧 ケ峯,八 ケ岳 な どに囲 まれた中信高原国定公園の中心に位置し、昭和22年に造られた人造湖であることが、ホテル内の展示でわかりました。そんな昔から、人間はもうこんな奥地でも自然改変をやっていたのかとびっくりです。

北佐久郡立科町 と茅野市 の境界の低 湿地 「池の平」を流れ る水温の低い音無川の源流渓谷に堰堤 を築いて水をためて温め、農業用温水溜池 とした のだそうです。そんなかつての高原の戦後の一開拓村が、今や一大観光地に様変わりしていました。

 

ホテルの前は、オオヤマザクラ、コナラやミズナラなどの落葉広葉樹林帯です。オオヤマザクラはちょうど今、クマたちにとって食べ頃、黒い実がびっしりついています。豊作です。

豊作のオオヤマザクラ

白樺湖湖畔のミズナラ林

 

ミズナラの実はまだ小さくて、これからです。

ミズナラと言っても、見ただけで葉の大きさが違う物やら木によっていろいろです。

これは種内の多様性であり、環境の変化があっても滅びずに種を残すために種内の多様性は大切です。

 

17時から、主原憲司先生による、座学が始まりました。

 

参加者は、本部4名と長野県中澤支部長ご夫妻ら長野の会員・非会員のみなさんで計12名。自己紹介で、長野の参加者の皆さんは、自然保護にかかわって来られたエキスパートであることがわかりました。

 

様々な蝶がたくさん生息している辰野町の山でメガソーラー計画が持ち上がったため、慌てて建設予定地を「蝶の森」にして整備し、地権者にメガソーラー業者に山を売らないように説得して山を守った人たちも来られていました。

開発を止めるには、すぐに開発計画を察知して、山林売買がなされない前に阻止に動くことが大事だと言われていました。

 

主原先生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広い会場で3密を避けてのマスク勉強会

 

主原先生は、「今、日本各地で昆虫が激減し、大量に絶滅していっている。昆虫が減った原因として、昆虫が餌源としている植物が森の中から急速に衰退していっていることがある。原因はすべて急激な地球温暖化で、植物は動物のように短期間には移動できない。積雪の減少もあり、昆虫・植物の生理活動のバランスが大きく崩れてきた。このままでは、クマも人も生き残れなくなる」として、人間活動による急激な地球温暖化が自然界にもたらしている絶望的な影響について話してくださいました。

 

地元長野の参加者からは、長野の昆虫や野生動物、森の現状について専門的な質問が相次ぎ、主原先生も参加者の知見の高さに感激されながら、一生懸命答えられていました。

保護飼育中のクマたち、冬ごもり用の食い込み期に入っています

10頭のツキノワグマと20年間家族として暮らされたくまもり顧問の長野市在住宮澤正義先生によると、クマは7月の末から8月の初めにかけて、突然、冬ごもりに向けて猛烈に食べ始めるということです。

その日がいつなのかは1頭ずつ決まっており、カレンダーを見ているのかというほど、毎年同じクマが同じ日に食い込みを始めるということです。

くまもりが飼育援助しているクマたちも、今、猛烈に食べています。

8月25日、栃木県会員のIさんから、廃棄処分用ということで段ボールに入った小さな梨がたくさん送られてきました。

 

味見してみると、確かに商品にはならない小粒ですが、とてもおいしいです。

 

今、クマたちは与えても与えても平らげてしまう時期で、本当に助かります。

とよの食べっぷりを見てください。

 

7月6日 拍手!山梨県議会が全会一致で太陽光発電規制条例を可決 森林伐採を伴うもの等を禁止

 太陽光発電施設の新設を規制する条例が7月6日、山梨県議会で全会一致により可決、成立していました。
「山梨県太陽光発電施設の適正な設置及び維持管理に関する条例」
施設を新設する際に、土砂災害が発生する恐れが高い区域森林伐採を伴う区域を設置規制区域と規定し、県内の土地の8割に相当する「設置規制区域」で、出力10キロワット以上の施設の新設を原則禁止する内容です。
違反者は事業者名を公表し、国に通報して、FIT認定の取り消しを求めるそうです。
くまもり注:1MW(メガワット)=1000KW
    一般家庭の屋根に設置する太陽光発電システムは10kW未満
長崎幸太郎知事のコメント
「再生可能エネルギーの普及は、環境とエネルギーの両立のためにやるものだと理解している。木を切り倒して作る太陽光発電は矛盾しないかという思いを強くした。抜け道を許さない「日本一の条例」にする。森を切り開いて太陽光発電施設を作らせることは、山梨では今後はない。(事業者から)訴えられるリスクを恐れない。最高裁判例を作る覚悟で臨む」
山の斜面に設置された大規模な太陽光パネル 甲斐市

以下、山梨県HPより

条例制定の背景・目的

平成24年7月に固定価格買取制度(FIT制度)が創設されて以来、日照時間に恵まれた本県では、太陽光発電施設の導入が急速に進み、それに伴い、森林伐採や斜面への設置などによる、災害、環境及び景観等に関する様々な問題が顕在化してきました。

こうしたことから、太陽光発電施設の設置、維持管理及び廃止に至る太陽光発電事業の全般について地域環境を保全し、又は災害の発生を防止する方法により適切に実施するよう必要な事項を定め、地域と共生する太陽光発電事業の普及を図り、もって太陽光発電事業と地域環境との調和及び県民の安全で安心な生活の確保を図るため、条例を制定しました。

 条例の概要

1.施行日

令和3年10月1日(既存施設 令和4年1月1日)

 

 2.条例の対象

発電出力10kW以上の太陽光発電施設(建築基準法に基づく建築物に設置されるものを除く。)

 

3.事業者の責務

事業者は、次の責務を有することとします。

1 関係法令の規定を遵守しなければなりません。

2 太陽光発電事業の実施に当たり、自然環境、生活環境及び景観その他の地域環境を保全し、又は災害の発生を防止するために必要な措置を講じなければなりません。

3 太陽光発電事業の実施に当たり、地域住民に十分な情報提供及び説明を行い、太陽光発電事業の実施について理解を求め、地域住民との良好な関係を築くよう努めなければなりません。

 

4.設置規制区域

次の区域において、太陽光発電施設の設置を禁止します。

設置規制区域に設置する場合は、知事の許可が必要です。

1森林の伐採を伴う区域

・地域森林計画対象民有林(森林法第五条第一項)及び国有林 (森林法第二条第三項)

2土砂災害等が発生している、又は発生するおそれが高い区域

・地すべり防止区域 (地すべり等防止法第三条第一項)

・急傾斜地崩壊危険区域 (急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第三条第一項)

・砂防指定地 (山梨県砂防指定地管理条例第二条)

3土砂災害等により、施設が損壊するおそれが高い区域

・土砂災害警戒区域 (土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第七条第一項)

・土砂災害特別警戒区域 (土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第九条第一項)

 

5.維持管理

既存施設を含む全ての施設を対象に、事業者は維持管理基準に従って計画書を作成し太陽光発電施設及び事業区域を適正に維持管理しなければなりません。また、計画を作成したときは、公表しなければなりません。

 

6.設置届出

既存施設については、令和4年6月30日までの間に設置届を提出していただく必要があります。

 

くまもりから

当たり前のことがおわかりで、県土を守るためには事業者から訴えられることも恐れないなんて、なんてすばらしい知事さんでしょうか。

他の都道府県も、一刻も早く山梨県に続いてください。森林伐採されてから気付いても手遅れです。森はもう元には戻りません。

再エネ投資家によってこの国の水源の森や大型野生動物たちの生息地が破壊し尽くされてしまうのではないかと絶望的になっていた私たち自然保護団体にとって、山梨県は希望の光です。深く感謝します。

 

長崎幸太郎知事にお礼を!〒400-8501. 山梨甲府市丸の内一丁目6番1号 山梨県庁

8月11日 東北自動車道の溝に後ろ両足がはまってしまったイノシシくん 助けてやれなかったのか

8月11日午前0時10分頃、仙台市太白区の東北自動車道上り線で、車に当たったと思われるイノシシが中央分離帯の側溝にはまって動けなくなっているのを、ネクスコ・パトロール東日本の職員が見つけた。イノシシの両後ろ脚が側溝に挟まっていた。

車両から目撃した人の話では、イノシシはしょげ返っていた感じだったという。

約12時間後、このイノシシは身動きできない状態のまま射殺されたというのを聞いて、胸がつぶれそうになった。

何とか助けてやれなかったのだろうか。

 

 

①ネクスコ(Nippon Expressway Company )東日本に電話してみました。

・・返答→ すぐに、高速警察隊に連絡しました。

Q高速道路の側溝に蓋をしておかないと、かわいそうにまたこのようなことが起こると思います。

・・返答→ 高速道路では車がスピードを出しているので、蓋をしたら蓋が跳ね上がります。蓋はできません。

②高速警察隊に電話してみました。

・・返答→ 直ちに、仙台南警察に電話しました。

③仙台南警察に電話しました。

・・返答→直ちに、仙台市太白区役所に電話しましたが、真夜中だったので守衛さんには伝えましたが、動ける人はいませんでした。

④仙台市太白区役所に電話しました。

・・返答→10時過ぎに、現地に向けて出発しました。現地には、ネクスコ、高速警察隊、仙台南警察、区役所、猟友会が集まり   ました。仙台市役所、宮城県庁、宮城県警察本部にも連絡を取りました。

 

これだけの人たちが集まっているのに、てこか何か使ってこのイノシシの足を側溝から持ち上げて逃がしてやろうという声は出なかったのでしょうか。

宮城県には仙台に野生動物保護管理センターという合同会社があって、麻酔銃を使える人が2~3人いるそうです。

 

結局、行政の人たちの総合判断は、駆除でした。

今、宮城県ではイノシシの被害に困っており、お金を出してイノシシの駆除を進めています。

地元の心情を思うと、そんな時にわざわざこのイノシシを助ける意味はないということだったようです。

 

しかし、私たちはそれとこれとは別だと思います。

苦しんでいる動物を見たら、まず助けてやってほしい。

高速道路を一時通行止めにしても。

麻酔のお金は私たちが出します。

道路を造ったのは人間、側溝を造ったのも人間、車に当ててしまったのも人間、こんなことになったのは、人間にも責任があるのではないでしょうか。

人間にはいろんな考えがあるでしょうが、私たちはこう感じたということを、宮城県の行政に伝えておきました。

 

みなさんはどう思われますか。

 

P.S  後日、現場に行かれていた行政の方からお電話をいただきました。みんなでイノシシのところに行ったら、とびかかってきそうな勢いで突然、前足で暴れ出したのでとても危険を感じた。駆除以外はありえないと言われていました。イノシシは、人間が大勢やってきて怖くて恐ろしかったのだと思います。

このイノシシは銃ではなく、電気ショックで殺処分されたということでした。訂正させていただきます。

 

7月19日 地元が推進?原発の町福井県美浜新庄ウィンドファーム尾根筋風力発電計画の地元を訪問

ご存じのように、福井県三方郡美浜町は原発の町です。

2021年4月、福井県杉本知事が40年を超える老朽原発である3号機の再稼働に同意し、運転中です。

 

「樹齢300年のブナ巨木林、風力発電で伐採の危機」として、美浜新庄ウィンドファーム20基~25基事業計画反対するネット署名が出ていたので、今年7月6日、くまもりもフェイスブックで賛同署名を呼びかけました。(8月15日現在の署名数9935筆)

事業主はグリーンパワーインベストメント(略称GPI)で、主要株主は、Pattern Energy Group LP(アメリカ・カナダ)という外国資本です。

 

完成予想図(くまもり作成)

 

ところが、熊森本部に一部の方から、地元が賛成しているのに反対していいのかという疑問の声が入りました。

 

自然度9のブナ林が伐採されるというのに、地元が承認している?

どういうことなのか、さっそく熊森は現地を訪れました。

 

現地に近づいてくると、原発からの大量の送電線が張り巡らされていました。(下写真)

 

 

 

 

 

 

会ってくださったのは、現在、町会議員の松下照幸氏と事業者のGPIの社員2名です。

 

松下氏は美浜町で、長年、反原発運動を続けられてきた方で、会社員から町会議員となり、反原発派議員として孤軍奮闘してこられました。

美浜町では13年前、経産省の補助金で風力発電を造ろうとしたことがあったそうですが、そのときはうまくいかなかったようです。

松下氏は今は『森と暮らすどんぐり倶楽部』を立ち上げ、林業振興・木材利用の様ざまな試みをまち起しにつなげる仕事をなさっています。どんぐり倶楽部の事務所の前には、見慣れない木が生えていました。油桐(アブラギリ)という木だそうです。

 

 

 

 

 

 

青いTシャツの方が、松下さん

新庄区は6000haの山林を有しており、ほとんどが自然林という自然豊かな地区です。福井県と滋賀県の県境に、石川県の白山の一番いい森に匹敵するブナの巨木の原生林が残されていたなど、熊森本部は今回初めて知りました。

 

 

 

 

 

以前の新庄区は、薪炭やアブラギリの種から油をとる仕事が盛んだったそうですが、いまはもう成り立ちません。

現在の町の産業を訪ねると、ほぼすべてが原発関連の仕事ということでした。

この地に優れた地場産業があったら、原発は来なかったという痛切な思いが、松下さんの粘り強い活動を支えています。脱原発を言うだけではだめ、原発に頼らなくても町の人々の生活が成り立つようにしてこそ、脱原発が実現すると松下氏。

 

風車製造メーカーは日本にはありません。松下氏はドイツまで2度視察に行かれました。ドイツでは田舎へ行くほど経済が元気になるそうです。騒音や振動など、風力発電には様々な問題がありますが、技術革新で、年々改善されており、松下氏は今後の技術革新に期待されていました。

 

熊森からの質問に答えていただきました。

 

①尾根筋はクマなどの野生動物たちの通り道です。そこを削って平らにして風車を建てることによる鳥や野生動物たちへの影響は

松下氏:新庄地区の山はほとんどがブナ・ミズナラ林だが、クマはほとんどいない。なぜか動物があまりいない。

(役場担当者によると、美浜町でのクマ目撃は年間4~5頭で、ほとんど山の中だそうです。)

イノシシは山にいるが出てこない。シカは減った。サルは出てきたら花火で追い払いをしている。金網や電気柵で被害防除対策をしている。

 

②ブナの巨木を伐採することによる自然生態系への影響は?

松下氏:昔から炭焼きなどでブナを伐採してきた。自然林は一部を伐採してもすぐに再生するから問題ない。美浜町としては人工林は崩れるので、山を広葉樹に植え替えているそうです。

 

③風力発電を誘致したいメリットは?

松下氏:雇用が生まれること。今は、ほとんどが原発関連の仕事。あとは公務員、土木、水産ぐらい。

 

共に訪れた新庄の山に詳しいくまもり滋賀県支部の会員たちが、「25基も風車を建てないでほしい。特に尾根にブナの巨木群がある2か所はこの上もなく貴重な自然生態系なので、あの場所だけでも、絶対に残してほしい」と懇願されました。

 

熊森本部から

 

自然度9のブナの原生林というのは最高の原生林です。

新庄の山にお詳しい松下氏に新庄の森を案内していただきたくなりました。

 

確かに、昔からこの地区の山は一部を伐採して利用しては再生させてきたのだから、必ずしも伐採がいけないわけではないと思いました。問題は、尾根に至る広い道を急峻な山に造って、尾根を平らに削り、大きな穴(深さ20m?)を尾根に掘ってコンクリートを流し込んでいいのかということです。

 

セメントの灰汁による地下水の汚染、鳥や野生動物たちへの影響、大雨時の山崩れ…予測不可能な不安がいっぱいです。母なる大地に人工の手を加えない方がいいに決まっています。しかも、いったんやってしまったら、流し込んだコンクリートは二度と取り外せない、リニア同様、もう二度と元に戻せない再生不可能な大開発なのです。

 

熊森はクマたちの棲む水源の森を守ることが使命なので、尾根筋への風力発電は絶対にやめるべきと考えていますが、ではどこに造ればいいのかということになると、まだまだ知見不足です。風力発電の寿命は20年ということですが、20年後どうなるのか、まだ事例を知りませんから、不明点でいっぱいです。

しかし、原発以外に仕事がないという現状は確かに問題で、これは美浜町だけの問題ではなく、第一次産業を切り捨てて工業大国をめざしてきた我が国の政策の見直しを、国民みんなで考えねばならない時に来ていると思いました。(完)

 

P.S

ブログを読んだという、山に詳しい地元の人から電話が入りました。

くまもりは今、大雨のたびに九州の山がどれだけ崩れているのか知っているのか。自然林を伐採してスギを植えたのにどんどん崩れてるんだよ。風力発電は、尾根を皆伐してそのあと何も植えないんだよ。尾根から崩れるって断言すべきだろうとのお叱りでした。

 

 

 

8月1日 第26回くまもり本部原生林ツアーに26名(大人19名、小学生7名)がご参加!

私たち都市市民の命を支えている水源の森を見に行こう。

 

本部原生林ツアーは、くまもり25年の歴史の中で毎年欠かさずに実施してきたイベントです。

コロナの感染状況から、今年も去年同様、自車参加で実施することになりました。

集合場所は、兵庫県千種町千種高原です。

 

まず最初に、地元の千種川源流の会の阿曽さんに、大苗を植えておられる山を案内していただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

21年前に皆伐された山は、ススキが原になっていた

 

この山は、約70年前、千種町が約300haもの自然林を皆伐した後、国にスギやヒノキを植えてもらった官行造林地でした。

標高は900メートル、多い時は雪が4メートルも積もるという豪雪地帯です。

植林後の手入れがなされなかったこともあって、元々の広葉樹が植林苗の間に大きく育ってしまい、まるで自然の針広混交林のようになっていました。

 

2000年、千種町と林野庁の契約期限が来て、契約どおりこの森の立木を皆伐して売却し、売上金を町と国で山分けすることになりました。

千種町の人工林率は83%です。千種町の森の動物たちはこの森の広葉樹に頼って生きています。この森を皆伐されたら、生きていけません。当時、日本熊森協会は姫路工業大学助教授の佐古井一朗先生と力を合わせ、この森を伐採しないよう、兵庫森林管理署(林野庁)にお願いしましたが聞き入れられず、皆伐が始まりました。

 

しかし、大運動の結果、千種町の大英断もあり、皆伐は30haで止まり、残り270haは針広混交林のまま千種町に返還され保全されることになりました。

皆伐されてしまった部分に、熊森をはじめいろいろな団体が3年苗を植林し、シカ柵を設置してこの場所を広葉樹の森に戻そうとしました。しかし、雪解け時になだれ落ちる雪に柵が壊されることの連続で、その度にシカに苗木を食べられてしまいます。

何度植林に挑戦しても、森に戻せません。残念ながら、ついに熊森もギブアップしてしまいました。

 

この後ここに、地元の阿曽さんたちが、シカに食べられないような大苗を植えて森の復元に乗り出され、成功されつつあります。阿曽さんたちは、千種川の源流を守るだけではなく、川でつながった海まで視野に入れて水の循環を守ろうとされています。その展望を皆で伺いました。

 

次に参加者の皆さんに見ていただいたのは、放置人工林の内部です。中は暗くて食べものは何もありません。

 

 

さて、いよいよ、お待ちかねの岡山県若杉天然林85ヘクタール。

以前、この森にはクマが2頭棲んでいましたが、今はもういません。

 

入口の広場でお弁当を食べてから、天然林に入ります。

大人たちはくまもり職員から植物や生き物、奥山生態系の詳しい解説を聞きながら頂上をめざします。

今回は、昆虫に詳しい奥津会員も特別参加、参加者の見聞を深めてくださいました。

子どもたちは地図を片手に見つけたものを書き込んでいきます。

 

この森は、25年前は本当に素晴らしく豊かな原生林だったそうですが、年々劣化。

今年はさらに、ナラ枯れでミズナラが大量に枯れていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

谷川の水量が例年と比べて激減

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

枯れて倒れたミズナラの根っこの大きさを体感

 

今年の原生林ツアーはお天気も良く、林内は涼しくて、最高のコンディションでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しかったねえ。生き生きとした参加者のお顔。

 

ずいぶんと劣化してしまった原生林ですが、それでも初めて参加された皆さんは、この森に大感動されていました。

今年も原生林ツアーを企画して良かったです。

 

<参加者の感想>

・自然がたくさんあってニホントカゲにも会えた。川の水を飲んだ。これからは水を大事にしようと思った。(大阪府在住 小学5年生)

・健康な山の姿は気持ちがいい。ゆっくりとここにいたい、帰りたくないと思いました。気持ちのいい場所は、自然の持つ本来の営みがあるというサイン。しっかりと今の課題と向き合い、先のまた先に紡いでいきたいです。(兵庫県在住)

・今まで意識して歩いたことがなかったのですが、天然林にはたくさんの木や生きものがいて、水が豊かで美味しいことが分かりました。子どもたちはいつもはスマホやゲームをしていることが多いのですが、今日はイキイキしていました。(大阪府在住)

 

くまもりから

全員の感想文を読ませていただきましたが、参加して良かった、勉強になった、感動した、初めて森のことがわかってきたなど、満足度の高い感想文ばかりでした。参加してくださったみなさん、ありがとうございました。

全国の支部でも、原生林ツアーを実施できるようにしたいです。

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