くまもりNews
10/21 本部第4回 安藤誠の世界 どんなにクマや自然が素晴らしいかを伝えたい ~日常の奇跡~
- 2021-11-03 (水)
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10月21日(木)17時~19時 尼崎市中小企業会館 定員40名満席
(1)室谷悠子会長挨拶
森も自然もないここ兵庫県尼崎市が、熊森運動発祥の地です。
一方、北海道の大自然には都会に暮らす私たちが出会えないような様々な生き物たちが暮らしています。彼らもみんな私たち人間の仲間なんだよということを、世界的な動物写真家で様々な海外の賞もとられてきた釧路在住の熊森顧問安藤誠さんが、写真や映像で伝えてくださいます。
安藤さんの写真や映像が、熊森会員を増やしています。
(2)来賓あいさつ
元衆議院議員赤松正雄顧問
「クマと人間どっちが大事?」今のほとんどの国会議員は、西洋思想の影響を受けていますから「そりゃあ、人間だよ」と言います。しかし、正解は、「どっちも大事」なんです。大自然やそこに生きる野生動物たちも大事なんだよという祖先の正しい自然観を世に広めるために、熊森協会は闘い続けています。
何気ない日々が実は奇跡の連続なんだよという安藤さんの「日常の奇跡」という言葉を、わたしのブロブのタイトルに拝借させてもらいました。
(3)水見竜哉 くまもり主任研究員
北海道の人もあまり知らないのですが、実はヒグマは例年800頭ぐらい大量に駆除されています。
今年6月、札幌の市街地に出たヒグマが、タクシーに乗った報道陣などに追い掛け回されてパニックになり、逃げる途中に出会った4名の方に怪我を負わせ、草むらに逃げ込んだところを射殺されました。
人間の間違ったクマ対応が、人身事故を起こすのです。
◎安藤誠氏 講演
私は、自然がどれだけすばらしいかを伝える映画を、熊森協会と作りたい。
人間とクマ、どっちも大事なんだなあと、見ただけでわかるようになる映画です。
これはヒグマの動画ですが、この場面だけは一瞬ピンボケです。
20mぐらい離れたところでサケを採りに来たヒグマを撮影していたのですが、レンズ越しにヒグマと目が合い、ヒグマが僕に気づいて、「ん、お前誰だ」って僕の方をにらんできたので、思わず動揺してしまい、カメラの手がずれてピンボケになってしまったんです。でも、このヒグマは怒ってはいません。毛が立っていませんから。あっちに何か変な奴がいるなと思ったんでしょう。
ヒグマは人間を襲ったりしません。人を襲う動物だったら、僕は今ここにいません。
ヒグマって、サケの頭とイクラ(=卵)だけ食べる。一番栄養価の高いところです。あとは、ポイ。残りは、キツネとか他の動物たちの食べ物になります。
この場面だけ一瞬ピンボケしているその訳は・・・
クマを守るために、今年、狩猟免許を取りました。
体重わずか480g~800gのハシボソミズナギドリは、最長距離を渡る渡り鳥です。GPSもエンジンもついていないのに、年間3万2千キロを旅して渡ります。白鳥の渡りは3千キロメートルですから、それを思うと、ハシボソミズナギドリのすごさがわかります。
誕生した若鳥と共に、餌を求めて6月、オーストラリアのタスマニアから赤道を超え、まず日本列島に渡ってきます。千葉県の九十九里浜沖に来た時は、体重が半分に減っていますから、低気圧に巻き込まれた年は、何万羽という若鳥たちのおびただしい死体が見られます。生き残ったハシボソミズナギドリたちはこのあと北海道知床羅臼まで飛んでオキアミや魚を食べて体力をつけ、アラスカに渡り、北極海を経過してまたタスマニアに戻るのです。
人間にいろんなことを教えてくれるハシボソミズナギドリの渡り 知床にて
熊森から
安藤さんは、ハシボソミズナギドリたちが、勇気、やる気、生きる厳しさ、あらゆることを人間に教えてくれると言います。
もし、安藤さんの説明がなければ、私たちは、なんだかたくさんの鳥がいて豪快だなだけで終わってしまいます。しかし、生態を教えていただくことによって、同じものを見ても、感動が全く違います。安藤さんは、プロのネイチャーガイドでもあります。
安藤さんは、キタキツネの家族やラッコの家族、シマフクロウの夫婦、タンチョウの親子、クマゲラの親子、モモンガ等々、やらせなど全くない大自然の中のさまざまな生き物たちのピユアな命が輝く世界を、彼らの家族愛にあふれる会話を日本語にして紹介しながら、「どうですか、もう可愛すぎてのけぞりそうでしょう」などの感想も入れて、野生の生態や豊富な知識を紹介し続けてくださいました。
今年も、安藤さんから、私たちが今日生きていることそのものが奇跡の積み重ねなのだと、改めて教えていただきました。
安藤さんは、3分間の動画作品を作るのに、1000時間フィルムを回されているそうです。安藤さん、毎年新しい話題満載の、秋の全国講演ツアーをありがとうございます。
今年、熊森協会では、福岡県支部、三重県支部、本部、愛知県支部で安藤誠講演会を実施させていただきました。来年も開催させていただきますので、ぜひ皆様、ご参加ください!
参加してくださった皆様、スタッフの皆様、ありがとうございました。
雪が積もるまで続くヒグマのサケ狩り 北海道留萌出身の写真家佐藤圭氏のヒグマ写真と文が素敵
- 2021-11-01 (月)
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ベストカーwebというネットメディアが、1979年生まれの佐藤圭氏のヒグマ写真と文章を何度か掲載されています。
本物のヒグマを野で温かい目でそっと見続けてきた佐藤氏のヒグマ観は、釧路在住の当協会顧問安藤誠氏と同様、とても正確だと感じます。おふたりがつながればいいな。
ヒグマ害獣視が強い北海道にあっても、このようにヒグマを正しく理解しておられる方が何人かいらっしゃると思うと、幸せな気分になります。
以下は、ベストカーの佐藤氏の文と写真の一部紹介です。
僕は、撮影のために大雪山系の山に登ることが多いのですが、登山の途中で、ごくたまにヒグマに出会うことがあります。
出会うヒグマは、いつも草や花をのんびりと食べています。ヒグマは本来、温厚で臆病な生き物です。
登山者は、そのことを知っているため、ヒグマが去るのを待つか、距離を保って静かに通り過ぎます。それが、上手なヒグマとの付き合い方です。
北海道の山にはヒグマがいるのは当たり前なので、ヒグマがいても、ヒグマ注意の看板は立ちません。
ヒグマは嗅覚や聴覚が鋭く、人の匂いや気配、熊鈴の音などがすると自分から離れていきます。
この写真を撮影したときも、十分距離をとって望遠レンズで撮影しています。ヒグマは食事を終えると自らゆっくりと去って行きました。
本来、ヒグマは人間の存在を恐れています。人間を襲ってしまうのは、恐れから来る自己防衛の攻撃なのです。
ヒグマは大きく強く、人間は絶対に敵わない相手です。まず、ばったり出会わないための注意を最大限に払うことことが重要です。
秋になり、鮭たちが産卵のために川に帰ってくると、彼らが遡上する川では命のドラマが繰り広げられます。
大挙して遡上した鮭は、産卵を終えると、みな力尽きて死んでしまいます。その一部は朽ち果て、川の栄養となり、稚魚のエサとなる微生物や水生昆虫を育て、自分たちの子孫の生育を助けます。
また、一部は、浅瀬に打ち上げられ、周辺で暮らす動物や鳥類のエサをなります。この季節、川辺で観察していると、カモメやカラス、キツネやタヌキなどが産卵後の鮭を食べに集まっています。
そのなかに、並外れてどん欲な大食漢がいます。
日本の陸上で最大の哺乳類・エゾヒグマです。
秋のヒグマは、冬眠を控えており、皮下脂肪を蓄えなければならず、大量のエサを必要とします。
山でも、どんぐりや山ぶどうなどの木の実を食べまくっていますが、鮭のほうが断然栄養価が高いですからね。
雪が積もるまで鮭の遡上は続くので、ヒグマの狩りは毎日続きます! 鮭を日々食べ続けたヒグマは、見る見る体が大きくなります。
北海道では、近年、秋に産卵のために回遊してくる鮭の不漁が続いています。
また、鮭が減って、秋に栄養が十分に取れなくなったことが、ヒグマが街に出るようになった要因になっているかもしれません。
ヒグマがいる山は豊かです。ヒグマが鮭を山に持ち帰り、食べ残しは山の栄養になります。それで山の木々も健康に育ちます。
自然界の循環として、命は川から山へ繋がっているのです。
鮭の不漁の原因は、地球温暖化による海水温、海流の変化だとも言われています。

熊森から
ベストカーは、車の雑誌のようですが、佐藤圭氏による北海道の野生動物たちの様々な生態が連載されているようです。ぜひ、ご覧になってください。
本州のツキノワグマも、ドングリばかりではなく、冬眠前には昔のようにサケを食べさせてあげたいな。そのためには、戦後、無数に造られてしまったダムを何とかしなければならない。
全国再エネ問題連絡会での熊森発表が新聞のトップ記事に!
- 2021-10-26 (火)
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10月22日付け長周新聞が、10月16日開催、第4回全国再エネ問題連絡会での日本熊森協会本部の水見竜哉主任研究員の発表「東北地方における森林伐採を伴う再エネ事業の実態」を、トップ記事で紹介してくださいました。
10/31投票 宮城県知事選&宮城県衆院選立候補者全員に全国再エネ問題連絡会がアンケートを送付
- 2021-10-23 (土)
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建設反対の声をあげる力が弱い所に、容赦なく再エネ事業者が押し寄せている <風力発電編>
- 2021-10-22 (金)
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以下は、現在アセス進行中の風力発電事業をプロットしたものです。
風力発電によって自然が破壊され、多くの鳥やコウモリたちの命がバードストライクによって奪われ続け、自然界になかった振動、音、低周波音、光のちらつきなどの公害が四六時中発生して野生動物や地域住民を苦しめます。
現在計画中の風力発電 (能登の風力発電を考える会提供)
現在、作動中の風力発電
以下は、今後の風力発電の建設計画を見た人たちの反応です。
Aさん:稚内・下北半島・秋田沿岸部・福島原発周辺・能登半島・川内原発周辺など、いったん狙われると、とことん事業者が押し寄せてくることがわかりますね。
Bさん:すでに事業者が入っているところに、さらに事業者が押し寄せていることがわかります。
Cさん:仕方ないと諦めたところに、容赦なく押し寄せているということではないでしょうか。住民の反対運動があまり無いところが狙われているのだと思います。
そして、原発が立っているところにも多い気がします。住民の反対運動が弱いという面と、稼働していない原発の送電設備を使えることでコストが下がるという面もあるかもしれないです。
Dさん:ひどいですね。日本の国土が国内外の投資家たち金の亡者によって食い荒らされていくのがよくわかります。取り返しがつかなくなってから気づいても遅いです。第一、太陽光や風力のような不安定な電力は主力電源になどなりえないのに、自然エネルギー100%をめざそうだなんてスローガンが生まれています。政治家も多くの国民もエコだと騙されていることにすら気付いておりません。
Eさん:風力発電用風車はすべて外国製なので、外国の鉱山で鉄鉱石を掘り出して、工場で風車を作って、ヨーロッパから船に乗せて日本に運んできて、山に道を造って木を伐ってコンクリートで固めて、できてからは点検や修理に車で通い続ける。それぞれの段階で膨大なエネルギーを使うので、ますますCO2を排出する。寿命はたったの20年で、解体や廃棄物処理にまた膨大なエネルギーを使う。本当にCO2削減に役立つのかの計算結果はあるのか、はなはだ疑問。
風力発電は150億円ぐらい用意できる大金持ちしか参加できない事業のため、外国の大金持ちが多く投資してくる。
これだけ投資してもなおもうかるのは、日本では風力発電で発電した電力をFIT法によって高い値段で電力会社に買ってもらえ、その価格が20年間保証されるからです。
その財源は、なんと毎月私たち国民が電気料金に上乗せして強制的に徴収されている再エネ促進賦課金です。
以下は、我が家の今年8月分の電気料金明細書です。
明細書の下の部分を拡大してみます。
右欄下から2番目に、虫眼鏡で見ないと見えないような小さな字で再エネ促進賦課金950円が印字されています。印刷のインクも薄くて大変わかりづらいです。ひと月約1000円の賦課金がいつの間にかかけられています。
私たち一般国民から強制的に徴収されたこのお金が、FIT法によって、国内外の大金持ちをさらに富ますことに使われているのです。そして、わたしたちの国土はぼろぼろに破壊されていくのです。
みなさん、私たちの国土を守るために、自然破壊、森林破壊を伴う風力発電にノーの声を私たちと一緒にあげましょうよ。
再生エネルギー問題でお困りの方は、全国再エネ問題連絡会にご加入ください。一緒に日本の自然や森林を守りましょう。
少ない今秋のクマの目撃数、くまもりは今年、ドングリを原則運びません
- 2021-10-20 (水)
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今年のツキノワグマの目撃数は、各地ともかなり少ないようです。
2019年、2020年とあまりにも大量に捕殺しすぎたので(過去最多、2年間で1万1千頭捕殺)、生息数がかなり減ってしまっているのではないかと心配する声が、各地から熊森本部に届いています。
今年、山の実りがいいから出て来ないんだろうという行政の声もあります。
中には、うちの集落だけは例外で、クマが押し寄せるように出てきており、住民は危機感を抱いているという地域もありました。どうも1頭のクマが頻繁に豊作のクリを狙って集落内で出没を繰り返していただけのようでした。
2019年2020年2021年の月別ツキノワグマ目撃数を環境省から入手し、熊森本部でグラフ化して見ました。
今年はまだ8月までのデータしか集まっていないということですが、明らかに過去2年と違っています。クリックで拡大します。
山の実りも、全国行政に聞き取ってみました。
地域によってかなりばらつきがあります。
クリックいただくと表が出ます。
新潟県のように、3年連続山の実りが悪い地域もあります。新潟県のクマ生息地に住む会員たちから、「今年も山の実りが悪いが、クマはほとんど出てきていない。絶滅するんじゃないだろうな」という不安の声が本部に届いています。新潟県はクマの保護体制がなく、熊森の支部もないため、真相がわかりません。
以上のような状況につき、今秋、熊森は、原則、ドングリを運びません。よって、ドングリも集めておりません。遅くなりましたが、皆様にお知らせさせていただきます。
【速報】熊森顧問 務台俊介衆議院議員 環境副大臣に就任!
- 2021-10-07 (木)
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10月3日午後 こんなにトンネル掘って大丈夫? リニア市民ネット大阪第16回勉強会 JR高槻駅前
- 2021-10-02 (土)
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●アメリカのリニア推進企業、敗訴! 2021年8月
アメリカに、JR東海が設立した現地法人が売り込みをかけたリニア計画があります。しかし、それに強く反対する市民運動が起きており、土地収用法でリニア駅の土地獲得をめざしたした企業に対し、裁判所が土地取得を認めないという判決をおろしました。
住民の反対理由は、以下です。
●リニアに乗れるのは富裕層だけ
●振動と建設のために住宅価値が下がる
●緑地も喪失する。
アメリカにも、リニア反対運動が起きていたのですね。
詳しくは、リニア問題をずっと追ってくださっているフリージャーナリスト樫田秀樹氏のブログ「記事の裏だって伝えたい」をご覧になってください。
日本では、田園調布の住民たちが原告となって、JR東海のリニア工事の差し止めを求めた裁判の第1回口頭弁論が、10月26日に迫っています。
さて、コロナ禍でお休みしていた市民ネット大阪の第16回勉強会が復活です。会場はJR高槻駅を降りたところのビル。
初めての方も、ぜひ、ご参加ください。
日本の大地を、これ以上トンネルだらけにしてもいいのでしょうか。
考えるのか、見過ごすのか。
この問題、若いあなたにも責任があります。
森林伐採を伴う自然破壊型再生可能エネルギーに国は規制を 各省庁・政党党首に訴えて回る
- 2021-10-02 (土)
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全国再エネ問題連絡会(日本熊森協会内に事務局)共同代表の静岡県の山口雅之氏(函南町のメガソーラーを考える会)らが中心となって、森林伐採を伴う再生可能エネルギー事業に早急に規制をかけないと、安全安心な暮らし、生物の多様性、水源の森を失うなど、取り返しのつかない国土破壊を許してしまうことになるとして、連日上京し、各省庁の官僚の皆さんや各政党党首にまとまったお時間を取っていただき、必死に説明して回っています。
1日目(9月17日)の公明党山口那津男代表と日本維新の会片山虎之助代表の訪問には、静岡県の山口雅之氏、吉原英文氏、兵庫県から森山まり子熊森名誉会長、熊森東京都支部の小迫優子会員(10月より東京都支部長)が参加しました。奥山の森林伐採を止めていただかないと、クマが絶滅してしまいます。
資料写真などを多くお見せして、再エネ利権でで暗躍している悪質業者の実態や現行法の不備(FIT法、森林法、環境アセス法など)を指摘させていただきました。
公明党山口那津男代表
日本維新の会片山虎之助代表
山口代表は、森林伐採を伴うメガソーラーや風力発電の弊害について長時間お話を聞いてくださり、問題点が大変よくわかりましたと言ってくださいました。
片山代表は、開口一番、「自然を破壊しての再エネはおかしいだろう」と、すぐに私たちの主張をご理解くださいました。
熊森顧問の片山大介議員も同席くださり、今年改正されたばかりの温対法(地球温暖化対策法)について、話してくださいました。
改正点は3つで
①長期的な方向性を法律に位置付け、脱炭素に向けた取組・投資を促進
②地方創生につながる再エネ導入の促進
③企業の排出量情報のオープンデータ化
です。
これでは、今、全国各地で起きている再エネ問題を解決することはできないので、今後、国会議員の皆さんに、動いていただきたいです。
全国再エネ問題連絡会共同代表が今年の9月以降に懇談した省庁は、経産省、林野庁治山課、環境省です。
これまでに訴えを聞いてくださった政党は、公明党、日本維新の会、NHK党立花孝志代表、立憲民主党平野代表代行、共産党笠井亮議員、社民党福島みずほ代表、れいわ新選組辻村ちひろ議員です。
この後、最大与党の自民党にアタックします。
どなたが私たちの必死の訴えを聞いてくださるのでしょうか。
期待しています。
ノルウェー大使館で対談を行いました ~雄大な自然を誇る環境先進国ノルウェー~
- 2021-10-01 (金)
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氷河によって作りだされた雄大な景観が美しいフィヨルドの国、ノルウェー。
オーロラや夏の白夜など、高緯度に位置することで紡ぎだされるダイナミックな自然とそこに溶け込む人々の暮らしが魅力的な国です。
また、国を挙げて環境・気候変動対策にも力強く取り組んでおり、首都オスロが2019年の「欧州・緑の首都(European Green Capital Award)」に選定されるなど、国民に「自然と生物多様性」が根付いている国でもあります。
今回、地球規模で悪化している森林劣化の問題と日本の野生のクマが直面している問題に関して会談させていただきたいと大使館に連絡したところ、「是非おいでください」とすぐに返信をくださいました。
デンマーク大使館に続いて、ノルウェー大使館に訪問、公使参事官(Minister Counsellor)のリーネ・アウネ氏(Ms. Line AUNE)、広報担当官(Information Officer)の土山亮子氏と貴重な意見交換をさせていただきました。
対談そして意見交換
会談では、現在の日本は、拡大造林政策によって全森林の半分近くが実をつけない人工林に変わった上、さまざまな開発により、生息域を奪われたクマたちが人里に降りて来ざるを得ない状況になってしまったこと、それにもかかわらず山の中にまで罠にかけ、かかったクマを子グマにいたるまで殺処分している現状を伝えました。
このような状況が続くと、近い将来、クマが絶滅に至る地域が次々出る可能性があるということをデータに基づくグラフや実際の奥山の森林の状況を撮影した写真を示しながら、室谷会長が説明しました。
さらに近年のミズナラ・コナラの木が枯れるナラ枯れ現象の問題についても話しました。リーネ・アウネ公使参事官は、大変興味を持って私たちの目をしっかり見ながら熱心に話を聞いてくださいました。
その後、アウネ氏は、ノルウェーの森林管理に関してはEUのフレームワークに沿って行なっているが、森林の劣化問題は常に注視していかなくてはいけない問題であること、またナラ枯れについては初めて聞いたので、本国の状況を確認したいと話されました。
今後、ノルウェー大使館から本国の環境問題に関わる団体と日本熊森協会が連携を取れるよう働きかけてくださることになりました。
日本ではまだまだ野生動物の危機や森林の危機が浸透していません。どのようにすればいいかと質問すると、生物多様性や森の保全は大変重要な課題であり、その重要性の観点からアピールしてはどうかとアドバイスくださいました。
最後に、ノルウェーを訪れたことがある熊森会員に「オスロからフィヨルドに向かう車窓からノルウェーの豊かな森を見ていただけましたか?」と質問されました。その温かい笑顔に自国の自然や森への深い愛情と誇りを感じました。
別れ際、大使館の外まで見送ってくださったアウネ氏と土山氏に「在任中に日本の水源の森をぜひ見てください。ご案内します」と伝えると「ぜひ!」とおっしゃってくださり、再会を約束して大使館を後にしました。

ノルウェー大使館Twitterでもご紹介くださいました
世界初森林皆伐禁止令の国ノルウェーより学ぶこと
ノルウェーは岩山(フィヨルド)が多いため、森林率自体は33%と高くはありませんが、森林保全への国民の関心が高く、2016年、生態系保護をめざして、国内の全森林の皆伐を禁止するという世界初の決定を下しました。
それと同時に、熱帯雨林地域での違法な森林伐採とそれにより生産された商品(木材だけでなくパーム油、大豆、牛肉など)を調達しないことも約束しました。
さらに世界の森林保護のプロジェクトに資金提供し、森づくりに関わる人の人権擁護にも乗り出すことを発表しました。
会談を終えて
このように自然保護への関心が高いノルウェー大使館での面談も大変意義深いものとなりました。貴重な機会をいただき心から感謝しております。デンマーク大使館に続いてノルウェー大使館にも温かく迎えていただいたことで、地球環境問題は各国が協力し合うことで解決への道が開けるのではないかと希望を抱くことができました。
次世代へ向け、汚染されていない自然を残すため我々がするべきことは、環境への配慮です。それにもかかわらず、今、日本中の山間部で、メガソーラーを建設するために森を数十ヘクタール、ときに百数十ヘクタールも切り開く工事、つまり森林の「大規模皆伐」が頻発しています。
さらには、バイオマス発電の燃料調達や、風力発電の巨大風車建設のために森の木を伐る例も増えています。森林減少を大問題だととらえ皆伐を禁止し、世界の森林伐採についても力強く取り組むノルウェーの政策と比べると、日本人の危機感のなさに愕然とします。
我が国でも、野生動物の危機や森林破壊の問題に、早急に取り組まなければなりません。もっと多くの国民が関心を持ってくれるように、森林破壊や劣化の流れを食い止められるように、思いを新たにさらに取り組んでいきます。