くまもりNews
熊森山形県支部、吉村美栄子県知事にクマ捕獲数半減の要望書を提出
- 2020-02-01 (土)
- くまもりNEWS
以下は、2020年1月28日山形新聞記事
山形県支部長から
山形県では2019年度、359頭ものクマが捕殺されました。
1月27日午後「山形県特定鳥獣保護管理検討委員会」が開催され、来年度のクマの 捕獲について捕獲「水準」を340頭、春季捕獲を184頭とする案が出されました。案とはいえ、すでに捕獲数は決まっており、私がいくら意見を言っても毎度のことながら変わりません。
今年は雪が異常に少ないので、春先の雪解けも早いでしょう。これは春季捕獲するみなさんには不利な条件となります。今年度も、春季捕獲206頭に対して「実 績」は77頭でした。
できるだけ捕殺数が少なくなることを願っています。
私はいつも委員会で、農業被害や人的被害がないことが望ましいのだか ら、何頭捕獲してよいなどを目安にするのではなく、農業被害をどれぐらい減らすのか、被害防護柵をどれくらい設置するのかなどを目安にすべ きだと意見を述べています。
これであれば、被害が 何%減った、柵が何km設置されたと、目標が具体的になります。
<地元の方の声>
私は山形市に住んで25年以上になりますが、昨年夏に初めて、熊、イノシシ、サルに家庭菜園(トウモロコシやカボチャなど)をやられました。
当初、何にやられたのか解らず、市役所に連絡したところ、猟友会の方が見に来て、熊とイノシシだと判断されました。近くの果樹園でも熊被害が発生し、隣組で緊急注意のチラシが配布されました。
すぐに罠が仕掛けられ、2頭の熊が捕獲されたようです。上の畑では栗の枝がおられる被害がその後もありましたから、まだ熊がいると思います。
数年前は果樹園や畑だった所が、高齢化で放棄され、荒れ地が増えてきました。それに伴って、イノシシや猿の目撃も増えてきました。
森林保全はもちろん大切ですが、耕作放棄地の草刈りや樹木の伐採等々の必要性を感じます。
隣の地主さんに雑木の伐採をお願いしましたが、高齢で無理とのことで、私が人を頼んで伐採しました。今年の春も再度伐採する予定です。(荒れ地のままにしておくと野生動物たちが来ますので、自費で伐採です。)
野生動物たちが山から下りてくる原因を探り、棲み分けを復活させるようにしていかないと、これからの高齢化社会では、安易な捕殺がますます主流になって行くと思います。
正直なところ、クマが捕殺されたと聞いた時は、ほっとしました。
<山形県支部から>
個人の問題として行った樹木伐採には公的な財政支援は出ません。
ただこうした問題は、地域の問題でもあり、地域ぐるみで解決してゆくべき面もあると思われます。「地域からの要望」ということで、まとまって対策を要望すれば、財政支援も検討していただける余地があります。
目の前の被害問題と、長期的な視野の中での野生動物たちとの共存の問題は、区別して考えることが必要なのではないかと思います。
山形県支部では、酸性雨や酸性雪で弱った森の木々の根元に毎年炭を撒いて土壌を中和するなど、長期的な森林保全につながる活動も継続して行っています。
熊森山形県支部長が県の救護所で保護中の衰弱子グマを見舞う
- 2020-02-01 (土)
- くまもりNEWS
(記事要旨)
1月19日午前7時ごろ、住民の80代男性が、米沢市の住宅が点在している地域の住宅の軒下で、衰弱して横たわっていた体長約50センチで1歳未満の子グマを発見。近くに親がいないか捜したが見つからず、地元猟友会が袋に入れて捕獲し、保護しました。
子グマはやせていましたが、保護後はリンゴを食べるなど安定した状態。親が駆除されたか、親とはぐれたかのどちらかとみられます。山形県にはこのような弱ったクマを春まで保護して、山に戻したり動物園などに送ったりする救護所があります。
(熊森本部注:全国にこのような救護所が必要です。衰弱した野生動物を保護することは、今やアメリカでも当たり前の行為になってきています。しかし、日本では、クマは人を襲う狂暴動物という間違った情報がマスコミによって国中に広まってしまっている上、行政が、クマに害獣というレッテルを張ったため、子グマであっても撃ち殺されることが一般的になっています。無知は、本当に罪深いです。)
救護所の方によると、親子のクマは早い段階で冬眠するため、「今回の子グマの出没と暖冬の関連性は低い」そうです。一方で「暖冬と雪不足の影響で、例年は冬眠している若いクマが現在も動いているようだ」と話されています。
熊森山形県八木文明支部長から
例年なら長井市は1メートルの積雪があるのだが、今年は積雪ゼロの異変。
このためか、1月になってもクマの目撃が相次いでいます。
1月23日に救護所を訪れ、子グマに会って、目に優しさがある救護所の方ともいろいろ話し込んできました。
救護所の方によると、これまでもクマを保護して、時期を見ては山に放獣してきたそうです。野生のクマが人になつくことはまずない。これまで山に放獣したクマで里に居ついてしまったクマはいないということでした。
この子グマは、まだものをかみ砕く力が弱く、熊森本部から送られてきたドングリは、まだ食べられないようでした。今は、牛乳をぺちゃぺちゃなめたり、牛乳に浸したパンや、規格外のリンゴのスライスを下の歯ですくうようにして食べていました。この辺りは規格外のリンゴがたくさん入手できる上、県や市からの助成もあるので、エサには困らないとのことです。
救護所の方のお話で一番印象に残っているのは、以前と比べて、森や里山の様子が激変しているという話です。以前は、かなり山奥に入らなければクマを見ることができなかったが、最近は人里でも当たり前に見られるようになった。原因は重機を山奥に運び込んで、チップにするために広大な森林を伐採しており、野生動物たちの生息地がますます狭められていることと、中山間地の過疎化など。山間の休耕田に飼料用のデントコーン畑が作られたりしているが、これもクマを里へ引き寄せている原因と言われていました。
人間の活動の変化が動物たちの行動に変化をもたらしているかもしれないのに、私たちは相変わらず、「出てきたら捕殺する」という、モグラたたきのような対応を続けています。
目先の被害対策ももちろん重要ですが、遠回りのようであっても時間をかけて、共生のための環境づくりを進めてゆかなければならないと思いました。この子グマが、いつかまた元気に山に戻される日が来ることを願います。(完)
中国四国地方環境事務所が2月12日から四国の8カ所でツキノワグマについて説明会開催
- 2020-01-29 (水)
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環境省の出先機関、中国四国地方環境事務所(岡山県:TEL 086-223-1561)の野生生物課は、今年の2月12日から2月21日まで、四国の8か所でツキノワグマについて地域説明会を開催するそうです(事前の申し込みは不要)。
地域にお住いの皆様、ぜひお出かけください。
熊森協会が誘因物を使わず撮影した四国のツキノワグマ=2019年
説明会では、指針などの詳細を説明するのではなく四国のツキノワグマの現状を主題とするようです。
地域説明会開催日程(クリックすると、表が大きくなります)
中国四国地方環境事務所は平成28年度、『ツキノワグマ四国地域個体群の保全に係る広域協議会』(以下、広域協議会)を設置しました。
広域協議会では、四国地域ツキノワグマ個体群保護の今後の方向性を示す『ツキノワグマ四国地域個体群広域保護指針』と、もしツキノワグマが集落に出没した場合や、ニホンジカやイノシシ捕獲用檻への錯誤捕獲などが発生した場合を想定した『ツキノワグマ出没対応ガイドライン』の策定を進めているそうです。
「保護指針」に関しては、案という形で今、インターネットで公開されています。
昨年末、上記、指針について広く意見募集をしたそうです。
<意見募集期間:令和元年11月29日(金)~令和2年1月6日(月)まで>
募集した意見を元に作成しなおして、発表、公開するそうです(時期は未定)。
ガイドラインを元に各県でマニュアルを作成するらしく、いつできるかは時期未定。
ガイドラインの公開予定はないとのことです。
熊森から
熊森は小手先の対策よりも、まずクマたちの餌(えさ)場を四国の山に早急に復元すべきだと主張し続けていきます。動物が生きていくためには、日々の食糧こそが必要です。
四国のクマ絶滅回避に向けた熊森の奥山餌場づくりが朝日、愛媛の新聞2紙に掲載
- 2020-01-29 (水)
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皆さんご存じのように、四国のツキノワグマの生息地はクマの食料にならないスギやヒノキの人工林で覆われているのが現状です。広大な餌(えさ)場を破壊されたツキノワグマは残り16頭と推定されており、絶滅は時間の問題となっています。
四国のツキノワグマを調査研究して論文を書く人たちは何人かいますが、動物にとって一番大切な餌場を復元して絶滅を止めようとする人が、なぜか事ここに至っても一人も出ていません。
そこで熊森本部と熊森愛媛県支部は昨年11月21日、22日に高知県トラスト地の人工林伐採を開始し独自で初の餌場復元にとりかかりました。
この活動が2020年1月6日の愛媛新聞、1月25日の朝日新聞高知版に相次いで掲載されました。
熊森から
2紙で記事となったことはうれしいです。今年もえさ場復元に取り組みます。
毎日新聞コラム 「窓をあけて」に熊森が紹介されました
- 2020-01-25 (土)
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「森の民主主義」を広げよう!
毎日新聞編集委員の元村有希子さんのコラム「窓をあけて」に、「森の民主主義」のタイトルで日本熊森協会と室谷会長が紹介されました。(2020年1月25日毎日新聞全国版)
記事には、熊森本部・支部で進めている<森林環境譲与税で放置人工林を天然林化しよう>という取組みも紹介されています。
とても素敵な記事なので、ぜひ、ご覧ください。
森林環境譲与税は今年から倍増されます。
1月22日、室谷会長ら熊森本部は東京都支部とともに、保坂展人世田谷区長を訪れ、森を持たない自治体は、森林環境税をその町の水源となっている他の自治体の森の保全に取り組むことに使ってほしいという要望書を提出しました。
森林環境譲与税で豊かな森を再生するためには、多くの住民が自分の住む自治体にそのような使い道を要望することが必要です。
熊森では、自治体向けのパンフレットも作成しています。
議員さんに配布したり、活用したいという方は本部までお声かけください。
梅と備長炭の町 和歌山県みなべ町森林組合主催の環境シンポジウムで室谷会長と吉川代表が講演
クマやニホンミツバチも棲める豊かな森再生をめざそう
2020年1月18日(土)、みなべ・田辺の梅システムとして、世界農業遺産の認定を受けている和歌山県みなべ町のみなべ川森林組合主催の環境シンポジウムに呼ばれ、日本熊森協会の室谷会長とBee Forest Club の吉川浩代表が講演しました。
世界農業遺産は、伝統的な農業とそれに関わる技術、文化、景観、それを取り巻く生物多様性の保全を目的に、国連食糧農業機関(FAO)が認定するものです。みなべ町の主力産業の梅と高い評価を受けてきた紀州備長炭(ウバメガシの炭)を、多様性のある豊かな森と一緒に守っていきたいという、みなべ川森林組合のみなさんの思いのこもった企画です。
熊森は、クマから、Bee Forest Clubはニホンミツバチから始まりました。ともに日本の森林環境の危機と豊かな森の再生の必要性を訴えています。
クマの異変もニホンミツバチの異変も、私たち人間に森の危機を知らせてくれているという共通点があります。豊かな森の象徴であるB&B(Bear&Bee)のタッグでの今回のシンポジウム開催を企画されたのは、熊森会員でもあるみなべ町の真造賢二(しんぞう・けんじ)町議と、ビーフォレストクラブの会員でもある森林組合の松本さんです。
室谷会長は、日本の森が放置人工林により荒廃している現状を伝えました。
和歌山県の人工林率は61%、紀伊山地全体で6割を超えています。もちろん動物たちは暮らしづらく、紀伊半島のツキノワグマは四国の次に絶滅してしまう可能性が高いとされています。
荒廃した人工林は、平成23年(2011年)の台風12号による紀伊山地豪雨の際に大災害をもたらしました。生きものの棲めない森は、人の生命や財産も奪います。
2019年成立した森林環境譲与税などを使って、放置人工林を広葉樹林に再生し、みなべ地域のみなさんが大切に育んできた梅や備長炭を守ってほしいと話しました。
次に、Bee Forest Clubの吉川代表は、花の受粉を助けるニホンミツバチに代表される昆虫たちにより、森がつくられていること、ニホンミツバチが増えていくには、生物の多様性が保たれた森が必要であることを話されました。
ニホンミツバチやクマに象徴される豊かな森を背景に、世界農業遺産であるみなべ・田辺の梅システムを、自然と一体となったシステムとして作りあげることが、付加価値を生み、これからの農業のモデルとして発信できるはずだと話されました。
最後にあいさつされたみなべ川森林組合の田中昭彦組合長も、今年の異常な暖冬が農業に与えるダメージを心配されながら、世界規模で環境問題がクローズアップされてきている中、私たちも何か行動しなければならないと力強く語られました。
みなべ川森林組合のみなさんは、今後、熊森協会と放置人工林の広葉樹林化を進めていきたいと強く願っておられました。また、森を育てるニホンミツバチの巣箱も、さっそく森に設置しようということになりました。
ただ、この地域では昨年、皆さんが大切に育てて来られたニホンミツバチが、一斉に大量死するという深刻な事態が初めて発生しており、何が起きたのか、どうしたらいいのかなどの深刻な不安も生まれています。
実は、みなべ町は、日本熊森協会の活動が生まれるきっかけとなった重要な町なのです。1992年1月に、現在の和歌山県みなべ町清川村で、やせてガリガリのツキノワグマが山から出てきて捕殺されました。この新聞記事を見て、熊森の前身である兵庫県尼崎市の中学生たちが、クマの絶滅を止めようと動き出したという経緯があります。
みなべ町で、ニホンミツバチやクマをシンボルに豊かな森再生の動きが始まろうとしていることに、何か運命的なものを感じます。ご尽力いただいてるみなさんに、心から感謝いたします。
みなべ町のみなさん、ビーフォレストクラブのみなさんと一緒に、熊森も豊かな森再生を進めていきたいです。
日高日報と紀伊民報の記者さんは非常に真剣に最後までシンポジウムに耳を傾けておられました。ありがとうございました。
都市の森林環境譲与税で奥地の水源の森再生を 熊森が保坂展人世田谷区長と懇談
- 2020-01-22 (水)
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東京都支部とともに保坂世田谷区長に要望書提出
人口が多い都市部にたくさん分配される森林環境譲与税を、区民の水源の森再生や生物多様性保全、災害防止に使ってほしい。日本熊森協会、室谷会長、川崎東京都支部長、伊藤世田谷区会員、本部の水見職員が、世田谷区の保坂展人区長を訪問し、要望書を提出しました。
昨年成立した森林環境税・森林環境譲与税法は、2024年度から住民1人につき1000円徴収する森林環境税を森林環境譲与税として、各自治体に交付し、森林整備等、森林の公益的機能の強化に充てるというものです。
税の徴収より先に、森林環境譲与税が今年度、既に全国の市区町村に交付されています。昨年末、内閣府では、森林環境譲与税を来年度は、倍増させると閣議決定しました。
熊森は、森林環境譲与税は、日本の森の最大の問題である荒廃した放置人工林を、生物多様性豊かな水源の森に再生するために使ってほしいと全国の自治体に訴えています。
今年度、世田谷区が交付を受けた森林環境譲与税は、約3400万円。来年度は、6800万円が交付される見込みです。
世田谷区は、今年度の森林環境譲与税を、群馬県の川場村での小学生の2泊3日で自然と触れ合う移動教室や、川場村の区民の森での交流事業に使用しました。
川場村は利根川源流に位置し、世田谷区の水源でもある地域です。
森林環境譲与税が倍増される来年度は、この地域交流を水源域の森林保全・生物多様性保全という観点からさらに深め、川場村と提携して水源の天然林再生に取り組んでほしいと熊森は訴えました。
昨年、区議会で、森林環境譲与税の使途について質問をしてくださった高岡じゅん子区議会議員も、区長さんにお話されました。
関東地方でも、戦後の拡大造林政策によって造られた人工林が手入れ不足で放置され、保水力低下や土砂災害の発生など、深刻な問題をもたらしています。
昨年の台風15号や台風19号でも人工林の倒木や土砂災害など、甚大災害が発生しており、水源の森再生は急務です。
今や、日本人のほとんどが森林のない大都市に住んでいますが、都市の繁栄は奥地に豊かな森があってこそ、持続可能です。
日本熊森協会は、多くの人が住み、多くの化石燃料を使用し、森林の公益的機能の恩恵をより多く受けている大都市の市民こそ、豊かな森の再生や生物多様性保全の流れを作るために積極的に取り組んでいくべきだと考えています。
保坂区長は大変協力的で、「川場村での交流は、2021年で40周年になります。森林環境譲与税も増額をされるので、これまでの事業にさらに何か付け加えられないか考えたいので、ぜひ、提案をしてください」と、言ってくださいました。
熊森としては、川場村での天然林再生のための具体的な取組みを提案できるように、東京都支部、世田谷区会員や群馬県支部みんなで、一度、川場村へ行ってみようという話になりました。
世田谷区にお住いのみなさんが、森林環境譲与税の使途について思いを伝えることが大切です。ぜひ、世田谷区役所に、野生動物たちのために、次世代のために、水源の森再生に使ってほしいという声を届けていただきたいです。
森林環境譲与税が、人口が多いという理由で、森林のない都市にたくさん交付されることについて、熊森としては、修正する必要を感じます。
国民が納める大切な税金を豊かな森再生のために、本当に必要なことに使ってほしいというのが、私たちの思いです。
これからも、本部、支部とも、都市部の自治体にこのような申入れをしていきたいと思います。
とよ、1月5日から冬ごもりに入りました
- 2020-01-13 (月)
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信じられないような暖冬が続いています。
新潟でも北見でも、いまだに雪がゼロだそうです。
例年、初積雪の次の日からストンと冬ごもりに入る大阪府高代寺のとよですが、今冬はいつまでたっても雪が降りません。
いつから冬ごもりに入ったらいいのか、彼も困ってしまったのではないでしょうか。
12月29日のとよ
どうなるのだろうかと皆で心配していましたが、1月5日から運動場での姿も糞も全く見かけなくなりました。
万一に備えて、いつでも食べられるように運動場には水とドングリを用意してありますが、食べたり水を飲んだりした形跡はもう全くありません。
雪が降らない暖冬の2020年、とよ君の冬ごもり開始記録は、1月5日となりました。
とよの姿が消えた獣舎
南魚沼の親子グマは山に放しても戻ってこん ーークマ放獣の実績者が断言ーー
- 2020-01-13 (月)
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熊森は2012年7月、東北のある県からの依頼で長年さまざまな野生鳥獣を保護飼育され、元気になったら野に戻しておられる猟師さんを訪れました。東北の山は一見緑でいい森が残っているように見えますが、昔と比べるとナラ枯れなどで内部がどんどん劣化しており、クマが棲めなくなってきていることを嘆いておられました。
思い出して、あの時の猟師さんに電話をしてみました。81歳になっておられましたが、すごくお元気なお声でした。
南魚沼の親子グマのことを説明してから聞いてみました。
熊森「この親子グマを春に山に放したら、戻ってくると心配される方がおられるのですが、どう思われますか」
猟師「戻って来ん」(経験者はすごい。単純明快です)
熊森「どうしてそう思われますか」
猟師「人間を怖がっているじゃないか」
熊森「そうですね。ちょっとのぞいただけで、ものすごい勢いで母グマに威嚇されました。」
7年前に訪れたときのことを思い出して、まとめてみました。
(写真はいずれも2012年当時のもの)
ご自宅付近
いろいろな野生鳥獣と共に、クマも3頭飼っておられました。
保護飼育中のクマ
クマに関しては、母グマを殺された後の子グマの保護飼育が主だと言われていました。
一定期間保護飼育した後、山に返していると言うことでした。
私たちはびっくりしました。
熊森「そんなことをしたら、ここに帰ってきませんか」
猟師「一頭も帰って来ん」
熊森「ここだと餌がもらえるでしょう。なぜ帰ってこないのでしょうか」
猟師「檻の中より、山を走り回っている方がええんじゃろな。アハハ」
熊森「山で生きられなくて、死んでいるということはありませんか」
猟師「ちゃんと生きとるよ。放すとき発信機を付けているからな。山の中で生きていることが分かる」
お手製の発信機を見せてくださいました。
発信機付き首輪
猟師さんの座っておられる後ろには、電波受信用の機器が並んでいました。
後ろに電波受信機
放獣したクマが、今、山のどこにいるのか、地図で見せてくださいました。
猟師「ほらな、どんどん移動しているじゃろ。生きとるよ」
<後記>
猟師さんは、熊森からの久しぶりの電話をすごく喜んでくださいました。
南魚沼の親子グマをどこにどうやって放したらいいか、いろいろと相談に乗ってくださることになって、後日、本部担当職員らが、お邪魔することになりました。
知られざる真実 人間の居住圏でのヒグマによる人身事故、55年間ゼロ
- 2020-01-13 (月)
- くまもりNEWS
北海道野生動物研究所所長 門崎允昭(まさあき)先生が遺言のつもりで書かれた著書「羆(くま)の実像」(北海道出版企画センター、2019年)は非常に貴重な本です。
明治政府は明治2年(1869年)に、当時全道面積の98%が未開の地であった北海道を、本州以南から開拓民を移入して開拓するために、開拓使を設置しました。
開拓というのはヒグマたちの棲む森林原野を伐開し、農地、牧地、宅地などに改変することです。当然、先住民だったヒグマとの間に軋轢が生じ、人身事故が発生します。
明治10年、開拓使は、全道全域に対し、ヒグマを害獣に指定し、人間が追いかけまわして、絶滅させるべく銃での駆除を大展開しました。
以来、ヒグマは人間による銃撃を恐れ、市街地はもちろん市街地周辺にも出て来ない時代が続きました。
平成10年(1998年)頃から、ヒグマ駆除は、里近くでは銃ではなく、誘引物を使っていったん箱罠に捕獲してから後、銃で殺処分する方式に変わりました。
(熊森:クマ狩猟では、獲り過ぎる恐れがあるため、罠使用が禁止されている。有害駆除も罠使用を規制すべきではないのか。罠使用が広がってから、クマの大量捕殺・過剰捕殺問題が全国で起きている)
銃で追いかけまわされて撃たれる恐怖がなくなったヒグマは、主に人間に遭遇することの少ない夕方から明け方にかけて、里や市街地に徐々に出現するようになってきて、現在に至っています。
(絶えず新天地を求めて移動しようとするのは動物の本能で当然のこと:横田博氏)
2019年札幌に出てきたヒグマ。8歳メス、罠にかけて射殺。
ヒグマが出て来る目的は、4つです。
1親から独立した若いヒグマが、自分の生活圏として使えそうかどうか見に来て帰る。
(若いヒグマが人身事故を起こした例はこれまで皆無)
2森から森に移動する途中、道路を横切る。
(このようなヒグマが人身事故を起こした例はこれまで皆無)
3農作物や果樹養魚など、食べ物を狙って出て来る。
(電気柵や有刺鉄線で被害防除する必要あり)
4力の強いヒグマに追い出されて、子グマなどが逃げ出て来る。心配した母グマが付いてくることがある。
いずれにしても、人間の居住圏にヒグマが出て来ると、人身事故が起きるのではないかと、人々は過剰反応を示してきました。
しかし、「羆の実像」によると、1964年以来55年間、
人里や市街地に出てきたヒグマが人身事故を起こした例はゼロ!
なのだそうです。
ヒグマによる人身事故は、全て、ヒグマの生息地に足を踏み入れた人間に対するもので、近年50年間の平均事故は、一般人に対しては年1.2件、猟師に対しては年0.5件という少なさです。(ツキノワグマの場合と大違い)
2018年度資料から
ツキノワグマによる人身事故被害者50人(突然人間に出会って驚き、人間から逃げようとして引っかいたりしたもので、ほとんどが軽傷。死亡事故ゼロ)
ヒグマによる人身事故被害者3人(死亡事故ゼロ。山菜採り中2件、キノコ採り中1件)
熊森から
昨年、札幌の町に夜な夜な出てきたヒグマが駆除されたニュースは、衝撃だった。このヒグマをほおっておくと、そのうち人身事故を発生させるかもしれないという不安が人々にあったので、駆除したのだと思う。
しかし、門崎先生の50年にわたる調査研究では、市街地に出てきたヒグマが人身事故を起こす可能性は、皆無であることがわかる。マスコミは、人々の不安をあおって大騒ぎするのではなく、このような事実こそを報道して、人間側が冷静に対応するようにもっていくべきだっただろう。
それにしても、ヒグマという動物をどう理解すればいいのか。ヒグマは、人間との棲み分けをきちんと理解しており、人間の居住圏では、人間優先を意識しているのではないか。
一方、山にいるヒグマは、ここは自分たちの国だと思っているから、入ってきた来た人間が良からぬ行動をとった場合、権利として一撃を加えるのであろうか。
もしそうであれば、ヒグマはなんとすごい動物であることか。
それにしても、山間部における年間のヒグマによる人身事故件数は0~2件程度。
ヒグマは人間と争おうと思っていない動物だと言えるのではないか。
門崎先生の研究は、ヒグマは危険という私たちのイメージを、180度くつがえすものだ。
以前、知床に行ったとき、ガイドの男性が、「ヒグマはね、すごく大きいでしょう。どうも、自分より小さい私たち人間をかわいいと思うようなんです。
ヒグマは好奇心旺盛ですから、観光客が来ると、どれどれどんな奴が来たのかってササ藪から背伸びして顔を出し見ようとするんですよ。観光客の中には、キャー、クマだ、怖いという人もいるので、ヒグマには顔を出さないでほしいのです」と言われていたのを思い出した。
人間は、こんなヒグマを害獣として様々な誘引物を入れた罠に掛け、今も1年中駆除し続けているのだ。
2018年に北海道で駆除されたヒグマは879頭となり、統計が残る1962年度以降で最多だ。これに狩猟数を加算すると、年間1000頭近くのヒグマが毎年人間に殺されていることになる。人間のしていること、ひどすぎないか?
北海道にも熊森の支部ができて、ヒグマと人との共存に向けて活動が開始される日が来るのが待ち遠しい。北海道支部を立ち上げて活動してみようと思う方は、熊森本部までご連絡を!