くまもりNews
2017年 官・民で兵庫県のクマ対応を振り返る
12月25日、お互い年末の忙しい時期ではありましたが、熊森本部の会長、クマ担当、森担当の3名は、兵庫県庁の農政環境部環境創造局局長と鳥獣対策課課長を訪れ、約45分間、今年度の兵庫県のクマ対応を共に振り返る時間を持ちました。
(1)県土はどのようにゾーニングされたのか
兵庫県は今年から、環境省が昨年度出した指示に従い、クマのゾーニング管理を導入しました。
県土を、[保護地域]、[緩衝帯]、[人の生息する地域]などに分けて、それぞれの場所でのクマ対応を決めていくのです。
足で歩いて現地の様々な状況を見て、その場所をどのゾーンにするか検討しなければなりません。
想像しただけでも頭が痛くなるほど、むずかしい作業です。
これまでずっと、「まだ、ゾーニングは、できていません」という県の答えでした。
一体、県土はどのようにゾーニングされたのか、今日こそゾーニング地図を見せていただこうと思いました。
県の答えは、<集落から200m以内にクマがいてはならない>ゾーニングの中身は、たったひとつそれだけでした。
(あまりにも機械的。こんなゾーニングなら、一瞬にしてできるのではないでしょうか)
熊森:集落の裏がクマの生息に適した自然林で、これまでクマがそっと棲んでいた場所であっても、集落から200m以内ならば、捕殺対象ですか?山中に罠を仕掛けたんですか。
兵庫県:そうです。地元から駆除申請があればね。
熊森から
今年勝手に人間が集落から200mにラインを引いたのです。
クマにそのようなラインができたことを伝える努力は何一つしていません。
これまでは、山の中にいるクマまでは獲らないという共通認識があったのに、このようなゾーニングは保護体制の大後退です。
かつて兵庫県は、日本一のクマ保護先進県として、他府県の行政からも称賛されていたのに、今の状況は残念の一言です。
(2)有害捕殺32頭
熊森:どんな罠を仕掛けたのですか?
兵庫県:箱罠や、ドラム缶罠。シカ・イノシシ用に掛けた罠に、クマという名札を付けて共に獲ったりもしました。
熊森:誘引剤は何ですか?
兵庫県:まだまとめていません。
熊森:今年32頭も、有害駆除されましたが、200m以遠のクマまで罠の誘引物がクマを誘引してしまった結果ではないでしょうか。
兵庫県:そういうこともあるでしょう。今年は、春・夏の目撃がすごく多かったです。
熊森:春や夏は、どんな食べ物を食べようとして、人里までクマがやってきたのですか?その食べ物を除去したり、電気柵で防いだり、クマを追い払ったりされましたか。
兵庫県:何を狙って出て来たのかわかりませんでしたから、できませんでした。
熊森:そういう時は、熊森が調査に駆け付けるから、クマを捕獲する前に連絡してほしいと、毎年、県にお願いしてきましたが、今年も1回の連絡もいただけませんでした。
兵庫県:・・・
クリックするとグラフが大きくなります。注:11月に狩猟1頭あり。
有害捕獲は全頭殺処分。錯誤捕獲は全頭放獣。
秋の山の実り:豊作 センターは、春や夏のクマの餌は何で、なぜ山で得られなくなったのか究明されていますか?
熊森から
兵庫県はとにかく、クマが爆発増加している。何とか捕殺して頭数低減を図らなければならないという考えに憑りつかれているように見えます。
奥山生息地を人間が壊したために里に出て来ざるを得ないクマの哀しみや、山にハンターが捨てた無数のシカ駆除個体にクマが付いていることなどを何故考慮されないのか、不思議でなりません。(熊森は指摘し続けてきました)
山中のクマ数が爆発増加していると言われる割には、昨年度のクマ狩猟数4頭、今年度のクマ狩猟数1頭をどう分析されるのか、まだまだ聞きたいことでいっぱいでした。
昨年度お願いした情報公開請求の件も、まだ終わっていません。
時間がないということなので、これらの意見交換は来年に回させていただくことにしました。
12月12日 水道水はどこからくるの?神戸市の保育園で今年最後のくまもり環境教育
吐く息の白い、身体が震えるような日でしたが、
子どもは風の子!元気いっぱいにお出迎えしてくれました。
今回の環境学習のテーマは「水」。3~5歳の園児が対象です。
海や川の生きものはもちろん、私たち人間の暮らしを支える水が、
森から来ていることを、学んでいただきました。
水道の水って、どこから来るのかな?と聞くと、「雨?プール?海?川?」と、意見は千差万別。
そこで紙芝居「ぴっちゅんのぼうけん」を通して、森に降った雨がゆっくりと土の中を旅し、いずれ川の水となって、お家の水道までやってくることをお話しました。
水は森からです。
「わたしはだれでしょう?」では、水に扮したスタッフが、
水の精(?)になりきって!クイズを出しました。
子どもたちは、迫真の演技に大笑いです。
面白い・楽しいという感情は、ずっと心に残ります。
子どもたちの心に学びが残る、
そんな授業をめざしたいです。
この園は法人会員として、日頃より、くまもりの自然保護活動を支えてくださっています。
最近、自然体験や食育の一環で、栽培体験を導入されている保育施設が多くなっていますが、この園では、四季折々の作物を育てており、子どもたちはほぼ毎日、畑を訪れます。
収穫した野菜は、その日の給食で使われたり、時には子どもたち自身で調理したりするそうです。
今や、多くの野菜が1年中スーパーで買える時代ですが、園児は、野菜にも季節があることや、本当の意味で自然の恵みをいただくということを日々学び続けており、本当に素晴らしい取り組みだと思いました。
因みに、毎日畑作業をするうちに、子どもたちの目は肥え、今ではおいしいイチゴの見分け方もマスターしているそうです!
☆☆☆
今年の環境学習は、これで最後となりました。
お世話になった関係者の皆様、本当にありがとうございました。
来年も、子どもたちと自然を繋ぐ懸け橋となれるよう、環境教育チーム一同、がんばってまいります!
2018年が、全ての生きものにとって、良い年となりますように♪(SY)
くまプラネット、見てね!
- 2017-12-16 (土)
- くまもりNEWS
くまもりHPのトップ下段から、「くまプラネット」をのぞいてみてください。
そこには、「くまくま日記」のページがあります。
くまもりが飼育支援しているクマたちの心あたたまる話題でいっぱいです。
ほっと一息つきたいとき、子どもと話題を共有したいとき、ぜひ見てください。
ちなみに、お世話日12月14日(木)の高代寺は、うっすらと雪でした。
最低気温マイナス2℃、最高気温8℃。
いつもなら飛び出してくる「とよ」が、寝室から出てきません。
声をかけると、寝室内でちょっと頭をもたげました。
自分で藁を寝室の入り口に積んだらしく、冬籠りモードになってきています。
寝室の扉の隙間からのぞくと「とよ」が、頭をもたげた。
与えたドングリも、3割ぐらいしか食べていません。(春、冬籠り明けには、残りのドングリをまた食べます)
この1週間のフンの量がぐんと減りました。
昨年、一昨年と、冬籠りに入ったのは1月の後半でしたが、今年は冬籠りが早いかも?
クルミをあげると食べに出てきました。
目が充血しており、少し赤いです。
これは、冬籠り前の兆候です。
お世話隊の面々は、みんな、「とよ」を孫のように思い、かわいがっています。
「とよ」が冬籠りに入ったら、くまマプラネットでもお知らせしますよ。
12月6日 森林環境税の使途を巡って、久し振りの国会議員会館めぐり
この度新しく設置されることになった「森林環境税」は、全国規模で恒久的に徴収する新税としては、1992年に導入された「地価税」以来のものです。
くまもりは、約9割が市町村に配分されるという「森林環境税」が、内部が大荒廃した放置人工林を温存することに寄与することになるのではないかと危惧しています。
久し振りに国会議員を回って、税を、<荒れた林を豊かな森に戻す>ことにも使っていただけるようにお願いしようと思いました。
この日の議員アポはなかなか取れませんでした。
それもそのはず、この日は、官僚のみなさんと議員の皆さんが部屋に入りきれないほど集まって、来年度の税制を決める最終日だったのです。
まず議員会館の入り口で、飛行機に乗る時のような身体と荷物のチェックを受けてから、受付でどの議員に会いに来たのか紙に書いて提出します。敷地内撮影は禁止されています。
窓口の方が、その議員の事務所に電話をして、この人物を中に入れてもいいのかどうかたずねます。OKが出たら、いただいた入館証を首からかけて、議員会館の中に進みます。
一部の議員や秘書にお会いすることが出来ました。私たちに対する秘書の対応を見ていると、議員に会わなくても、議員が国民の方を向いている方かどうかわかるような気がしました。どんな人を秘書にするかで、議員の運命が決まるなあと感じました。
森林環境税は、地球温暖化対策として市町村が森林を整備・管理する財源に充てるために、ひとりにつき年間1000円を徴収するものとされています。
●森林の整備・管理は、ほんとうに地球温暖化防止に役立つのか
森≠林
まず、森と林が別物であることがわかっていないと、この話は混乱します。
砂漠や荒野に木を植えるのなら、二酸化炭素の吸収源が新たに誕生することになるでしょう。
しかし、日本のように大部分が温暖湿潤気候に属する国では、基本的に国土は森におおわれています。
戦後、森の木を大量に伐採して、スギ・ヒノキ・カラマツなどの人工林を延々と造林し、国土は緑色をした超過密な林の木々に覆われているのが現状です。
一部の地域をのぞいて、材の搬出が進まないのは、林業が業として成り立たなくなっているからです。
なぜ林業が成り立たなくなったかというと、この50年間に、人々の生活様式がすっかり変わり、国産材の需要が低下し、材価が暴落しているからです。
延々と放置された人工林の内部は、真っ暗で、草1本生えていません。
この日本の林に、「森林環境税」を投入して、どのように地球温暖化を防止しようというのでしょうか。
ある議員の秘書によれば、与党内でも都市部選出議員のなかには、選挙区に山がないとして、「森林環境税」の新設に反対したり無関心な議員が多いということです。
郡部選出議員は、林業促進や、災害に強い山づくりをめざして、人工林を間伐することに「森林環境税」を使うべきだと言われているようです。
間伐しても、5年もすれば、残された木が成長して、また、内部が真っ暗になります。
その間、残された木が二酸化炭素を吸収して成長していくのだと言われても、間伐した木を、今はやりのバイオマス発電やストーブ用ペレットにしたり、地面に放置して腐らせた場合、二酸化炭素を発生しますから、地球温暖化防止にはなりません。
人工林を皆伐して、再び、スギ・ヒノキ・カラマツなどの苗木を植えるための道づくり等の土建工事、苗木代、人件費、維持管理費用に「森林環境税」使うという案も出ていましたが、伐採した木が二酸化炭素を排出しないよう、保存されているかどうか調べねばなりません。
長時間お話を聞かせていただいて思ったのは、今のところ、「森林環境税」は、森のためには全く使われようとしていないということです。
やはり、「林業振興税」だと思いました。
一人1000円の税徴収は決まったけれど、導入目的や使途は、来年から議論していくようでした。
自分たちの出した税金が何に使われるのか、市町村民がしっかりと考えて声をあげていかなければ、不正の温床となったり新たな自然破壊を生むことになるだけです。
税の新設が決まってしまった以上、行政はしっかりと情報を公開していただき、国民はしっかりと使い道をチェックし声を挙げ続けていかなければならないと思います。
来年は多くの国会議員さんに会って行きたいと思います。
日本国が存続するために、「森林環境税」を、水源の森であるクマたちが棲む生物の多様性が保たれた<森の復元・再生に多く使うべきだ>と訴えるために。
みなさんも、国会、都道府県、市町村の議員のみなさんにどんどん会いに行ってください。
クマ狩猟終了 兵庫1頭、岡山0頭 これを見ても、まだクマ絶滅の危機に気づかない行政とは!
今年の11月15日から1か月間、兵庫県と岡山県は、クマが爆発増加しているという若い研究者(=現在、野生動物捕獲会社社長)の言葉を信じて、狩猟を推奨しました。
岡山県:上限30頭 狩猟者は誰でもクマを撃って良い。 結果0頭
・・・・11か所でクマ狩猟講習会を開催
兵庫県:上限は100頭 クマ狩猟許可取得者154名 結果1頭
・・・・3か所でクマ狩猟講習会を開催
兵庫県は今年、ドングリの実りが良かったため、一部のクマが里から山に帰っていることが、熊森のクマ痕跡調査からわかりました。
この1か月間「山中にいるクマまでも殺さないでほしい」という思いでいっぱいでした。
熊森本部は、兵庫・岡山の両県行政にほぼ毎日電話して、クマの狩猟状況を聞いてきました。
11月26日に、兵庫県朝来市で1頭のクマが狩猟された時は、山の中に潜んでいただけなのに、絶滅が危惧されるのにと、胸が痛みました。
12月15日付の神戸新聞によると、このクマはシカやイノシシを追い込む狩猟中に出て来たために銃で撃たれたということです。
12月14日の兵庫県知事定例記者会見で、兵庫県井戸敏三知事は、クマ狩猟数1頭の結果に対して、次のように答えられました。
「率直な感想として、昨年発生したハンターの死亡事故が起きたことでちょっと慎重になりすぎたと思う。
だけど、1頭では困る。適正頭数よりも130-140頭オーバーしているはずなんで、さらにどういう対応をとるかというのも考えないといけませんね。」
2016年5月10日、熊森本部は井戸知事にお会いし「クマは爆発増加などしていません。山が大荒廃したので、餌を求めて生きるために里に出て来ただけです。狩猟再開ではなく、昔のように人間とクマの棲み分けができるよう、奥山の生息地復元に取り組んでください。」と、多くの資料をお持ちして説明しました。
その後も、全国から同様のメッセージを井戸知事へ何度も送りました。にも関わらず、知事からクマの生息地復元の話は全く出ず、出てきたのは「狩猟数をもっと増やすにはどうすればいいのか」というものでした。
兵庫県は、来年度以降も、クマ狩猟を継続する方針だそうです。
生息地を失った兵庫県や岡山県のクマが爆発増加しているのなら、その原因を聞きたいです。研究者の計算ミスであったことに、もういい加減に行政の皆さんも気づいてほしいです。
今こそ、「王様は裸だ」という、子供の登場が必要な、両県です。
なぜ、「クマは、もう山におらん」という、猟師たちの声を信じずに、有名大学出ではありますが、現場経験の少ない若い研究者のコンピューター計算の結果に、優秀な行政マンたちが引っかかってしまうのでしょうか。残念の一言です。
クリックしていただくとグラフが拡大します。
兵庫県が重用している若い研究者によると、1992年にクマが絶滅するとして、兵庫県猟友会が狩猟を自粛し、1996には兵庫県も正式に狩猟を禁止したため、60頭だった兵庫県のクマが爆発増加し始め、20年後の2016年には、約16倍の940頭にまで増えたそうです。
ならば、単純計算としても、狩猟自粛前の1991年の狩猟数である15頭の16倍にあたる240頭のクマが狩猟されねばなりません。現在は、昔と違って、クマ生息地の多くが下層植生が消えて遠くまで見渡せますから、以前よりはずっと狩猟しやすいはずです。
昨年、大阪から来たハンターが兵庫県で死亡事故を起こしましたが、兵庫県担当部署は、クマ狩猟とは関係のない事故だと言われました。関係あるのかないのかどちらなのでしょうか。
ちなみに、人里に出て来たからとして、今年兵庫県は有害駆除したクマ数は、32頭です。クマは本来の山に棲めない、集落周辺に潜んでいるという熊森の主張がこれからも確認されたはずですが・・・
熊森の見解は、兵庫のクマが現在仮に940頭いるのなら、昔はもっといたのではないかというものです。何頭いてもいいのです。山の中に棲んでいてくれたら。人間には、山中にいる野生動物の生息数を調整する権利も能力もありません。
人間がしなければならないのは、人間が破壊したクマたちの棲息地を復元してやり、かれらが山中に棲めるようにしてやることです。
12月4日 本部 奥山の生き物調査 (兵庫県)
登り口となった標高650m付近は、まだ雪がありません。
頂上に近づくにつれて数センチ程度の積雪が現れてきました。
この日は地下足袋ではなく長靴で来ていたので、雪対策はバッチリでした。
ブナにつけられた新しい爪痕を発見しました。
爪痕が深いので、幹が柔らかい春につけられたものだと思われます。
花か若葉を食べに来たのでしょう。
山中でのクマの痕跡は、以前と比べると激減です。
そんな中、まだ山にクマが居るかどうか、各地で奥山の生き物たちをチェックし続けている熊森のなかまたちの存在は貴重です。
昆虫も、いなくなったと言っていいほど、激減しています。
以下、一般社団法人「ハニーファーム」代表理事 船橋康貴氏の言葉(みやざき中央新聞12月11日号より )
私たちが食べている作物の70%が、蜜蜂の受粉に基づくものです。
ネオニコチノイド系農薬が近くで撒かれた時、私の育てていたミツバチ40万匹が、一夜で全滅しました。
地球温暖化もミツバチが少なくなった原因の一つではないかと言われています。
よく、クマやイノシシが人里に下りて来て畑を荒らしたり、人間を脅かしたりしていると言いますが、あれは、ミツバチが少なくなって森の中の植物が受粉できなくなって、木の実が実らなくなっているからです。お腹がすいて里へ下りてくるのです。
15時、自動撮影カメラには、イノシシが雪の中を寂しそうに歩く姿が写っていました。
見たところ、餌らしきものは、ありません。
午前7時、オスジカが座り込んでいました。ここで寝ていたのでしょうか。
この辺りは、これまでも何度かヤマドリが写りました。メスですね。
今回、ツキノワグマは映っていませんでした。
この辺りの積雪は3m~4mにもなるそうです。
雪の間も生き物たちが撮影できるように、木に登って高い位置に自動撮影カメラを設置し直してきました。
この国で、共に生きるなかまたち。
熊森のブログを通して、多くのみなさんに野生動物たちを身近に感じてもらえればうれしいです。
今後も奥山での生態調査を続けていきます。
第7回ストップ・リニア!訴訟口頭弁論 訴訟が各地で起き、反対の声が増大していく必要あり
11月24日、東京地裁傍聴100席の抽選に、143名が並びました。熊森会員も6名参加。
陳述1 川本正彦氏(愛知県の原告。「春日井リニアを問う会」事務局長。以前、リニア市民ネット・大阪の勉強会で講師として招聘。)
(要旨)主に家庭用燃料として使用していた亜炭の採掘は昭和40年ごろまで名古屋でも行われていた。その後、鉱山は閉鎖された。しかし、一部柱を残す形で地下の亜炭層を採掘したため、空洞になっている場所が多く、昭和50年代ごろから亜炭鉱跡地で陥没が起きるようになった。亜炭鉱跡地にトンネルを掘ることは危険。坑道の中に地下水が充満していることで安定を保っている場所もあり、リニアトンネルの掘削によってその地下水が抜けて陥没が発生することも予想される。
(くまもりから)公園に出来た直径5m、深さ2mほどの陥没写真を見ました。住民の不安は相当のものだと思います。
陳述2 大沼淳一氏(元愛知県職員 愛知県公害調査センターで、長年水質汚染について調査研究)
(要旨)飛騨外縁帯と領家帯との間に分布する美濃帯を掘り起こしたことで、過去に水質汚染が何度も起きている。
リニアの話を聞いた時に、「またか!」と思うとともに、「再び、水質汚染を起こしてなるものか!」と思った。
美濃帯を掘り起したことから発生した公害事件
①<愛知県犬山市でカドミウム汚染米が発生>採石された岩石中に存在する黄鉄鉱が、水と空気に反応して硫酸を生成し、採石場からの溶出水が強酸性をおび、カドミウムや鉛などの重金属類を溶かした。
②東海環状自動車道(愛知県豊田市-岐阜県-三重県四日市市をつなぐ幹線道路)建設残土ストックヤードで、2003年にその下流で放流されたマス、アマゴ1000匹が死んだ。
住民が知らない間に、安心して生活できる環境が壊されようとしている。このような水質汚染問題は、沿線各地で起こる可能性がある。
リニア中央新幹線建設事業の環境影響評価が大変ずさんであることは毎回、口頭弁論の傍聴に行くたびに感じてきた。ここまで沿線住民の生活を危険にさらし、日本の自然環境を大きく破壊してまで作らなければならないものなのか、国民のみなさんに考えてもらいたい。
(夢の超特急リニアは、土建国家日本の大手建設会社にとって、国土を壊滅破壊すれば巨額の利潤が得られる夢のプロジェクトです。
それ以外の人や生物にとっては、取り返しのつかない環境破壊を引き起こされるだけの悪夢のプロジェクトです。)
(くまもりから)
口頭弁論終了後、シンポジウム「リニア新幹線隠された真実」が衆議院第一議員会館で行われました。
リニアの採算性や経済効果の予測が過剰であることや、トンネルを掘るために本来しなくてはいけない調査がなされていないことなどそれぞれの専門家の方々よりお話を頂きました。
会場から、「実際に測量が始まり、工事が始まって、既成事実がつくられようとしている。どうすればいいのか」という質問がでました。
弁護団の山下弁護士は、「各地で起きる様々な現象に対して、各地の権利を侵害される人たちが各地で個別に訴えを起こしてくれるよう期待している」と答えられました。
ストップ・リニア!訴訟だけでは、リニアは止まりません。
リニア事業に対する訴訟が各地で起き、リニア反対の声が市民の間でどんどん大きくなっていかねばなりません。
次回以降の口頭弁論は、
2018年 1月19日 第8回口頭弁論 品川・川崎からの陳述
2018年 3月23日 第9回口頭弁論 町田・相模原からの陳述
です。どうぞご予定ください。
阪神間でもクマの目撃 人身事故が起きないか心配 熊森本部はその度に現地に急行
今年は、都市近郊でもクマの目撃が相次ぎました。こんなところにクマが?というほど住宅地の中であったこともあります。熊森本部は現地へ何度も足を運び、クマによる人身事故が起きないよう地域にお住まいの方に注意喚起して歩きました。
2017年5月3日くまもりNEWS「なんと姫路市にクマ、熊森本部が急行」
◎クマではなく、イノシシだった猪名川町のクマ目撃地点
今年の7月~9月にかけて、兵庫県の西宮市、宝塚市、猪名川町、隣接する大阪府の能勢町、豊能町などでクマの目撃が相次ぎ、本部のクマ保全担当が現場へ駆けつけました。いずれも、早朝や夕方にクマが目撃されており、目撃場所はどこも雑木林や竹林などが近くにありました。
9月、猪名川町の住宅地で、夜にクマらしき黒い動物の目撃情報が寄せられているという情報を得ました。人身事故が起きると大変なので、すぐに現地へ足を運びました。
住宅地の周囲は300~400m程の小高い山々に囲われており、クマらしき動物が出たのは山裾に近い家の裏であるとのことです。近くの方にお話を伺いに行きました。
【山裾に近い家にお住まいの方のお話】
・9月3日の夜に、家の裏にある山の繁みから大きな動物が枝葉を踏むような足音が聞こえてきた。家の窓からのぞいてみると、繁みの中に黒くて大きな生き物がいるように見えてクマだと思った。これまでにも何度か大きな動物が茂みの中を歩くような音が夜に聞こえてきたことがあったので心配。
熊森本部は、付近の山の中でクマの痕跡がないか探し回りましたが、見当たりませんでした。そこで、家主に許可をもらい、家の裏の繁みの中に自動撮影カメラを設置して観察することにしました。
1か月後の10月上旬、クマらしき動物がまた現れたので、カメラの確認に来てくださいと家主さんから連絡が入りました。現地へ行き、家主さんがクマらしき動物を見たという日時の写真を確認してみると、そこには大きなイノシシが写っていました。
クマではなくイノシシだったことを、家主にお電話でお伝えしたところ、安心されていました。クマの目撃情報は、必ずしもクマが現れたとは限らないのだと改めて思いました。
◎11月20日、21日、早朝の住宅地をクマが横切った
11月に入って、兵庫県の川西市でクマの目撃が相次ぎ、熊森本部は現場へ駆けつけ、地元の方に詳しい状況についてお話を伺いました。
【地元の方のお話】
・11月20日、朝の6時半ごろに、近くに住む方が出勤途中に目撃したときいている。黒くて大きく、間違いなくクマだった。交差点になっており、クマが東の角から出てきたという(地図参照)。クマとの距離は10mほどで、大きさは立ち上がったら170cmくらいありそうだったという。クマは男性に気づくと、交差点を西の方へ横切り、一目散に走って山の竹林へ逃げていったという。
・この地域でクマが出たのは初めて。他の地区では、時々クマが出たと聞くので全くいないとは思わない。4日ほど前にクマが出てから、一人で外を出歩くときはクマ鈴をもって歩くようにしている。
・普段から集落の中にイノシシが出てくるので、生ごみを外に置くということはこの地区ではほとんどない。ゴミ捨て場も、かなり頑丈に作っている。
・3.4日前にクマが近くで出たというのは、回覧板を見て知った。集落の中にある雑木林や竹林に大きなけもの道が1本通っていて普段はイノシシがよく見られるが、クマもその獣道を通って移動してきたんじゃないかと皆言ってる。
・11月21日にもクマが川沿いの堀を山の方へ歩いて行ったと聞いている
熊森から
クマは、朝と夕方の薄暗い時間帯に出ているので、その時間に一人で出歩く際はクマ鈴を携帯するなど、早めにクマに人間が来たことを伝えてくださいということと、狭い路地や見通しの悪い場所を歩くのはなるべく避けてくださいと、聞き取りに応じてくださった方々にお伝えして歩きました。
目撃されているクマは、人間を見たら確実に逃げており、人間を避けて行動していることがわかります。目撃しても、えさを与えたり、人間のほうから攻撃をしたりしないで、そっと後ずさりして離れてください。
大型野生動物が都市近郊を徘徊する状況は、まずいです。熊森も悩んでいます。都市近郊には昔里山薪炭林だったころのクヌギ林などが結構残されており、大量のドングリが落ちています。クマにとっては人工林で埋まる山奥よりも、えさが豊富かもしれません。12月15 日にクマ狩猟が終了したら、すぐ山に帰って冬ごもりしてほしいです。
中山間地を抜けて都市周辺までクマが出て来るようになった問題は、国が乗り出さねばならない大きな問題だと思います。奥山に大型野生動物たちのえさ場を早急に復元すべきです。多くの国会議員にも訴えていきたいと思っています。
今の所、地元のみなさんは冷静にイノシシやクマを見守ってくださっているようです。これが日本文化だと思いますが有り難いことです。
県境超えて移動するツキノワグマ対策で広域タッグ 兵庫・京都・岡山・鳥取が検討会 目撃相次ぐ大阪も参加へ
以下、産経新聞より
人を襲うなどの被害事例が相次ぐツキノワグマについて、対策に悩む兵庫県が隣接する京都、岡山、鳥取の3府県と共同で広域的な保護管理計画を策定する方針であることが11月13日、分かった。府県境を越えてクマが移動するため単独での対策が困難なことが背景にあり、今年度中に検討会を立ち上げ作業を始める。クマの目撃情報が相次ぐ大阪府も検討会に参加の方向で、生息地把握や駆除計画などで「広域タッグ」を組む。
兵庫県などによると、4府県以上での保護管理計画策定は珍しいという。
従来は各府県が個別に保護管理計画を策定しているため、「対策してもクマが県境を越えれば台無しになる」(兵庫県)との側面があった。生息数も各府県で調査方法が異なり、正確に把握できていないという。
このため検討会では保護や管理について府県で認識を共有し、共通の方法で生息数を調査。広域的な駆除の方向性などを盛り込んだ保護管理計画の策定を目指す。重点地域としては、クマの目撃情報が多い兵庫北東部から京都などの「近畿北部地域個体群」の西側部分と、兵庫北西部から鳥取、岡山の「東中国地域個体群」を設定する。
近年になってクマが住民と遭遇するケースが増加。検討会に参加方針の5府県の昨年度の目撃情報は3214件で過去5年で最も多かった。クマに襲われたとみられる事例も11件発生。クマが生息していないはずの大阪府でも平成26年度以降は毎年目撃されている。
こうした現状を受け、保護を続けてきた兵庫県は昨年、20年ぶりにツキノワグマの狩猟を復活。今年も15日から狩猟を解禁する。岡山県も今年、17年ぶりに狩猟を解禁。京都府も解禁に向けた検討を進めるが、鳥取県は現在のところ解禁は考えておらず、各府県の足並みをそろえるためにも広域の保護管理計画が重要な役割を担うことになる。
(熊森から)
地域個体群全体でクマを見ていくというのは、とてもいい方向だと思います。
しかし、それは人とクマが共存するためにであって、<駆除計画などで「広域タッグ」を組む>(上記新聞記事より)ためであってはなりません。
クマが山から出て来るようになって、地元の方々が被害や事故に悩まされるようになっていますが、原因はクマたちの奥山生息地を破壊し続けてきた人間にあります。
上記記事から、兵庫県は相変わらず、物言えぬ弱者であるクマにクマ問題の全責任を負わせようとしているのが伝わってきて、残念に思いました。4府県がタッグを組むことで、このようなものの見方にも変化が起きることを期待します。
もう一つ期待できるかもしれないのが、クマに関する情報の公開が進むことです。兵庫県は森林動物研究センターができて、兵庫県立大学の先生がクマの調査をするようになってから、ほとんどのクマ情報が非開示となりました。
熊森は、昨年度、兵庫県鳥獣対策課に対して、クマの捕獲日時、市町村、集落、雌雄、年齢、体重、何回目の捕獲か、胃内容、行動圏等の情報公開願い文を提出しましたが、当初、全面拒否されました。
理由は、将来、世界的なクマの論文を書こうとされている先生の知的財産を守るためということです。
県民の税金で調査したことが、ひとりの研究者の財産にされてしまうのはおかしいと思った私たちは、昨年度、知事や情報公開・個人情報保護審議会に、せめて他府県並に情報を公開してほしいと訴えました。私たちが知りたいのは先生の知的財産などではなく、単なる基礎データ(生データ)だけです。
この問題は今のところまだ全面解決には至っておりませんが、4府県が合同調査することで、このようなことも改善されてくるかもしれません。
今後は、調査員の中に、将来、世界的なクマの論文を書こうとされている先生を入れないようにしていただきたいと願います。そういう方は、やはり情報を非開示したいと願われるだろうと思うからです。
11月23日 政府・与党 「森林環境税 」1人1000円 2020年度以降に徴収を発表 くまもりは、年間620億円の使い道を問題視
昨年秋、政府・与党は二酸化炭素(CO2)の森林吸収量向上による温暖化対策や国土保全の安定財源として、林野庁などが創設を求めていた「森林環境税」の導入を発表しました。
集まった財源は、市町村の森林整備財源に充てるとされていました。
しかし、すでに37府県と横浜市が独自の「森林税」を導入しており、地方自治体から「二重課税」を理由に反対の声が上がったため、発表直後に早々と先送りが決定されてしまいました。
しかし、本日、「森林環境税」について、1人当たり年1000円を徴収する方向で政府・与党が調整に入ったことが発表されました。個人住民税を納める約6200万人が対象で、年約620億円の税収が見込まれます。
12月中旬にまとめる2018年度与党税制改正大綱に盛り込まれるということです。
熊森としては、戦後の森林政策の失敗で、日本の山を大荒廃させてしまった、もうどうしてよいかわからないと林野庁の職員の方々が嘆いておられるのを裏で聞いてきたので、林野庁が責任を感じて、何とかこの国のために豊かな森や林業用として活用できる林を取り戻そうとされるなら、国民として大いに協力したいという思いがあります。
しかし、問題は、そういう方向で、お金が使われるのかどうかなのです。しかも、国が中央で決めた一律のお金の使い方を指示しないだろうかという不安もあります。南北に長い日本です。豊かな森の顔は、地域によってかなり違っています。その地域に合った森造りをしないと、またまた失敗してしまうでしょう。集まった財源を、県ではなく市町村に渡すしくみとなっている訳もよくわかりません。
「森林環境税」には、環境とか、森とかいう言葉は一応入っていますが、実質は無意味な「林業振興税」に使われるだけになるのではないかという心配があります。
時代がすっかり変わっているのに、もはや需要もなく日本の山に取り残された哀れ膨大なスギ・ヒノキ人工林の維持や再造林を進めるための「林業振興税」なら、まっぴらごめんです。人工林の2割間伐などしても、5年もたてば残された木々が成長して、また内部が真っ暗で死んだ山になってしまいます。税金の無駄遣いです。
森と林は全く別物です。一緒にして森林としてしまうから、わけがわからなくなるのです。
今、日本がしなければならないのは、今後も林業として需要や利用が期待できるスギ・ヒノキの単相林は残したとして、伐り出しが不可能な場所にあったり、もはやバイオマスなどにしか使い道のない、しかも豪雨で崩れやすい針葉樹の単相林を樹種転換し、保水力豊かで野生鳥獣たちが棲める災害にも強い雑木林(=森)を、全生物のために、鳥獣被害に悩む地元の方のために、次世代のために、復元することなのです。そのような「森林環境税」となるよう、熊森は声を挙げていきたいと思います。