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減る人口、〝 新設〝より〝 減築〝こそが、今、必要

以下、山梨日日新聞に掲載された、鉄道関係の著書や監修多数の今尾恵介氏の文章です。

 

  リニア計画進めるべきか 

   減る人口、リニア新設より〝 減築〝こそが、今、必要

 

JR東海は「リニア中央新幹線」を2027年に品川―名古屋、そして2045年には新大阪まで開通させるという。東京五輪の開催も決まったことだし、リニアがもたらす「バラ色の経済効果」の夢に酔っている人が多いようだが、このプロジェクトは本当に進めていいものだろうか。

国立社会保障・人口問題研究所の2012年推計によれば、27年の生産年齢人口は、現在より12%減少する。新大阪まで完成するはずの45年には実に32%減(出生・死亡とも中位推計)だ。

平日の新幹線の乗客の多くがビジネスマン(ウーマン)であるが、彼らが激減する中で、いったいどんな勝算があって、新幹線と同等に近い輸送力を持つ別線を追加するのだろうか。東海地震に備えたバックアップ用にしては、約9兆円(新大阪まで)の投資額はあまりにも大きい。

東京と名古屋の間の需要予測にはだいぶ景気よい数字が出されているようだが、これからは高齢者が毎週のように新幹線で旅行して回る世の中が来るとか、通勤客の減少で今後確実にすいてくる電車をしり目にリニア通勤をする人が激増するとか、そんな想定で数字を積み上げたのだろうか。

いずれにせよ、インフラを造る際に出される需要予測より、人口推計の精度の方がはるかに高いことは、数々の実績が証明している。

もちろん便利な交通機関が需要を喚起する現象は、歴史的に各地で起きた。阪神電鉄が開通した明治の終わり、それまでのたまにしか来なかった官営鉄道だけの時代よりはるかに多くの人が電車で都会へ出かけるようになった。電車がライフスタイルを変えたからだ。

私事だが、横浜に住んでいた幼稚園時代、2両編成だった相模鉄道の電車は、高校生のころに10両に増えていた。ダイヤ改正ごとに増えて便利になる特急、伸びる新幹線。これまで輝かしく発展する鉄道の魅力を、私も大いに味わってきたことは確かだが、今後確実に訪れる生産年齢人口の激減という状況を考えれば、同じように浮かれてはいられない。

これからの日本は、世界でも未経験レベルの「減築の時代」に突入する。リニアを待ち望むワクワク感に水を差すのは申し訳ない気もするけれど、冷静に考えてみれば、これからはインフラの上手な手入れと撤退のモデルケースを世界に先駆けて示すことこそ、日本という国の役割ではないだろうか。

「そんな後ろ向き思考が経済をますます停滞させる!」とのお叱りも聞こえてきそうだが、家人が減った豪邸にいつまでも住み続けるのではなく、身の丈に合った家に造り直して生活の質を高めるのである。

先日、認知症のお年寄りが線路に立ち入って電車に接触して死亡、列車が遅れたことについて、JR東海が遺族に損害賠償を求め、名古屋地裁が720万円の支払いを命じたとの報道があった。そのお年寄りも、かつては新幹線のおとくいさんだったかもしれない。

この話は何かを象徴していないだろうか。リニアという「大風呂敷」を広げることで株価は上がるかもしれないが、子や孫の世代にとって本当に住みやすい将来を考えるならば、誠意をもって「国の減築」を支える企業こそが評価されるべきだと思う。

 

<熊森から>

今尾氏の視点を面白く読ませていただきました。要するに、リニア新幹線は採算など取れるはずがないと言う訳ですね。

取り返しのつかない自然破壊となるリニア中央新幹線の建設を止めるには、このように自然保護団体と違う視点からの反対の声も大切だと思います。

これからは、その国の自然やエネルギーだけで生き残れる人口に落ち着かせるように、各国が長期計画に基づいて人口を調整していく時代だと思います。そうなれば、他国を侵略する必要がなくなるので、人類が夢にまで見た世界平和も実現すると思います。まさに、人類という動物が今後も地球上で生き残れるための確実な進歩の一つだと思います。

 

 

 

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