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「アントロポセンに生きる」20周年くまもり全国大会プログラムより

アントロポセンに生きる            会長 森山まり子

現代人は利口なようにみえて、実はもっとも愚かなことをしています。私たちの生存に必須の清浄な空気と清らかな水、安全な食べ物を与えてくれる地球環境を、目先の欲や快適さのために、あらゆる科学技術を使って年々その規模を大きくさせながら破壊し続けているのです。

 

地球46億年の歴史の地質年代表を見ると、現在私たちは最終氷期を終えた約1万年前から始まった完新世という地質時代に生きていることになります。ところが最近、「現在はもはや完新世ではない。20世紀の中ごろから、人類という動物が、物理的にも化学的にも生物学的にも、地球を完新世とは全く別の惑星に作り変えてしまった。現代は、アントロポセン(人新世)と呼ばれるべきであり、もはや完新世の地球に戻すことは不可能である」という説が出されています。

 

熊森20年の活動を振り返って、私が確信するようになったことは、どんな最先端の科学技術をもってしても、人間に自然をコントロールすることは不可能であるということです。最初、奥山に、動物の棲める森を復元してやろう(!)と思って活動を開始しました。しかし、多くの人に参加してもらって何度実践しても、自然界は、人間の思うようになど何一つなりません。私の中で、年々人間というものが小さくなっていきました。人間が自然に対してできることは、破壊だけです。研究者が野生動物の数をコントロールしようとするのは、かれらが本当の自然を知らないからです。アントロポセンに生きる私たちは、このことを知って、自らの生存をかけ、地球上に最大限の手つかずの自然地域を残していくようにしなければなりません。

 

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