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無被害のクマが大量殺処分されているその訳は 

今年も連日、全国的にクマの目撃や捕殺、人身事故のニュースが絶えません。

そんななか、県内どこにでもクマがいると言われているある県の県民から、無被害のクマが大量に殺処分されているという訴えが熊森本部に入りました。

 

公式な行政発表がないかとネットで探したところ、平成30年度にその県の県庁で開催されたツキノワグマ出没対策連絡会の記事が見つかりました。

それによると、平成29年度捕獲されたクマ83頭のうち80頭を殺処分した。捕獲されたクマの9割を占める72頭がシカとイノシシの有害捕獲のためののくくり罠に間違って(錯誤)捕獲されたものだったとありました。

 

錯誤捕獲されたクマを殺処分するのは、鳥獣保護管理法違反です。各地でこのような法違反が常態化している実態があります。しかし、行政がごまかして発表するため問題が闇に葬られているだけです。そんな中、この県が、正直に実態を発表されていることは評価できます。

 

どうしてこのようなことになるのか、電話で担当者に聞き取りました。

 

熊森:シカ・イノシシの捕獲罠は、山の中にもかけられているのですか。

:森林被害対策のためにかけています。

熊森:おたくの県は、県内どこにでもクマがいるのですから、山の中に罠を描けたらクマが次々と掛かるのは当然ですね。クマが掛かるのは、くくり罠だけですか?

:箱罠にはクマ脱出用の穴を上部に完備しているので、箱罠にクマが掛かることはありません。

熊森:錯誤捕獲されたクマは鳥獣保護管理法で放獣することになっていますよね。なぜ、放獣できないのですか。

:県に麻酔銃はあるのですが、使える人がいないのです。T市だけには麻酔銃を使える人がいて、わずかですがその市では放獣できています。

熊森:どうしてそんなに次々と山中にいる無被害のクマがくくり罠に掛かるんでしょうか。くくり罠直径12センチ規制を守っていたら、子熊はともかく成獣グマは掛からないはずですが。

:直径12センチと言っても、真円ではありません。

熊森:弁当箱型というやつですね。そのようなくくり罠を禁止すべきです。

:環境省が認めているんですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

弁当箱型くくり罠(短い部分が12センチ)

 

 

 

 

 

 

 

 

真円12センチくくり罠

 

 

皆さんはどう思われますか。

山の中でひっそりと暮らしており、何の被害も出していない無実のクマを次々と殺し続けることは、道徳面から、倫理面から、生態系保全面から、人として許されるのでしょうか。しかも、法違反です。

この県はたまたま、正直に発表しており、担当者も正直に答えておられますが、他府県ではごまかしがとても多いのです。

 

何とかしてほしいので、久しぶりに環境省の野生生物課鳥獣保護管理室に電話しました。

 

熊森:錯誤捕獲されたクマが大量に殺されている問題について何とかしてほしいです。

環境省:そのような事実はないです。(昨年、熊森に言われて錯誤捕獲の実態を調べましたが)クマの捕殺許可も出ていたから殺処分したと聞いています。

熊森:だから、去年も言いましたが、環境省に聞かれたので、みなさんそういうことにされたんです。しかし、正直に発表している県もあります。

環境省:何県ですか。

熊森:○○県です。一つは、くくり罠の12センチ規制が守られていないことが原因です。環境省は、くくり罠の12センチ規制について真円12センチを明記してください。私たちがくくり罠は残虐な上、誤捕獲がものすごく多く、誤捕獲された動物は人が近づくと暴れるため罠が外せない。結果、皆殺しにされている。使用禁止にすべきだと、以前、激しく運動した時、環境省の担当者から、使用禁止にはできませんが直径12センチ規制をかけますのでとりあえずこれで我慢してくださいと言われました。その時は当然、真円12センチだったと思うのですが、いつから弁当箱型に規制緩和されたのですか。

環境省:いつからか知りませんが、現行鳥獣保護管理法では、12センチ規制は、内径の最大長の直線に直角に交わる内径を計測するとなっています。

熊森:だから、それだと捕獲する必要のない無被害グマまでどんどん掛かってしまうのです。放獣できる人がほとんどいない現状で、闇から闇へと殺処分されています。くくり罠12センチ規制は、真円12センチですと規定しなおしてください。

以前、ある県の猟友会のトップの人に会ったことがありますが、その方は、真円12センチでシカやイノシシは十二分獲れる。獲れないという人は腕が悪いというか素人ですなと笑っておられましたよ。

今年も、クマの錯誤捕獲の実態調査を至急してください。その時に、都道府県の担当者に、嘘ごまかしなしに教えることと、念を押してくださいね。公務員が嘘ごまかしなど、許されるものではありませんよね。

9月24日に検討会が予定されているなら、そこでデータを発表して、専門家と言われる人たちの意見を求めてください。一番いいのは、検討会の委員に、結成以来24年間、嘘ごまかし一切なしでやってきた熊森を入れることです。

環境省:私の権限で委員を決められません。

熊森:上司にお伝えください。それと、ナラ枯れがものすごくて、山の中に動物たちの秋の食料がありません。クマにとって一番重要なミズナラだけでもいいので、いったい何割ぐらいのミズナラが枯れ残っているのか、およそでいいので、各都道府県に聞き取りをして発表してください。お願いします。私たち自然保護団体は、環境省にお願いするしかないのです。

 

熊森から

野生動物保護管理と言っても、日本の実態は保護ではなく管理がほぼ100%です。管理というのは頭数削減であり、殺すことです。

日本は今、国を挙げて野生鳥獣を大量捕殺し続けているのです。年々エスカレートしていく一方です。

今年8月の環境省主催の検討会をネットで見せていただきましたが、国を動かしている野生動物の専門家と言われる人たちの発言の99%は、いかに捕獲(=捕殺)するかでした。

そのせいか、多くの日本人は以前とすっかり変わってしまい、野生鳥獣を殺すことにマヒしているのかもしれません。(専門家の罪は大きい)まだマヒしていない人は、国が壊れていく前に意思表示をしてください。一番簡単な意思表示は、熊森の会員になってくださることです。

わずかに残された野生鳥獣の生息地のど真ん中にまで大量罠を仕掛けるのは、やり過ぎです。

人里に出て来る野生動物が悪いと言いますが、山の中の彼らの食料が激減したのは人間活動が原因であることを忘れてはなりません。

 

9月29日夕、熊森は新大阪ワシントンホテルプラザで、「クマが教えてくれた日本国の危機」という環境講座を持ちます。

害獣というレッテルを張られたクマサルシカイノシシだけではなく、すべての野生鳥獣の生存権を認める方向に国を転換させないと、野生鳥獣はもちろん人間にも近い将来、水源枯渇など取り返しのつかないことが起きます。

その仕組みをわかりやすく語らせていただきます。

参加費2千円。コロナ対策につき限定30名。利益ゼロでやります!

 

 

当協会東京都会員が9月11日、以下の論文を紹介してくれました。

日本哺乳類学会2020年度論文

「錯誤捕獲問題から目をそらし続けることはできない」

山崎晃司:東京農業大学森林総合科学科教授

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