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オンライン全国クマ部会 環境省のガイドラインを、捕殺を抑止してクマと共存できるものに

1月30日に開催された、本部主催2021年度第1回オンライン全国クマ部会に、全国から50名が参加しました。

 

2019年、2020年と全国のクマ駆除数は6000頭を超え、過去最多を更新しています。狩猟による捕殺以外に、この2年間で、1468頭のヒグマ、1万1078頭のツキノワグマが許可捕獲により殺処分されたのです。このような捕殺を続けていたら、クマが絶滅する地域が出てくるのは時間の問題です。

 

熊森は、2020年11月、全国の皆さまからいただいたクマの捕殺に規制をかける署名約27000筆を、環境大臣政務官と農水大臣政務官に提出し、放置人工林を早急に広葉樹を主体とする水源の森に復元し、大型野生動物との共存・棲み分けを復活してほしいと要望しました。

 

環境省は、2021年前半に、全国のクマ生息都道府県に策定させている特定計画のうち、クマ保護計画及びクマ管理計画についてのガイドラインの改定を予定しています。熊森は、この2年間の大量捕殺でクマ絶滅の引き金が引かれたと危機感でいっぱいになっています。今回のガイドライン改訂を、クマ大量捕殺に歯止めをかけるガイドラインにしてもらうため、環境省や国会にさらに大きく働きかけていこうと思います。

 

今回のオンライン会議は、環境省に何を訴えていくべきかを会員のみなさんに伝え、ご意見を求めるために開催しました。ガイドラインができて、パブコメが募集されてから変更してもらうことは難しいため、今のうちに早めに環境省に声を届けてください。

環境省〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館 TEL 03-3581-3351(代表)小泉進次郎環境大臣

 

 

【以下、学習会の内容要旨です】

 

第1部「クマと共存するため、2021年熊森はこれをする!」

日本熊森協会 会長 室谷 悠子

制度をつくるのは環境省、クマの捕獲権限を持っているのは都道府県で、都道府県が権限を市町村に降ろしている場合は、市町村です。

制度を変えるには時間がかかりますし、それだけでは解決しません。都道府県や市町村に、できる限りクマを捕殺をしないように訴えることが重要です。

地元が捕殺をしなくてもクマ問題を解決できるよう、本部・支部をあげて、地元を回り、地元の皆さんと力を合わせて、クマと棲み分け、共存できるように自分たちでもできることを次々と進め、それを全国に広げていきましょう。

 

第2部「クマを絶滅から救うために環境省に提言したいこと」

日本熊森協会 野生動物保全担当 水見 竜哉

 

去年、一昨年と、日本のツキノワグマは前代未聞の年5000頭を超える駆除が続き、地域絶滅が起こりうる危機的な状況です。現行のクマガイドラインの内容では、クマ生息数の調整ばかりで、生息地が荒廃し、クマたちの食料が激減している最大の問題にふれていません。(奥山を調査している人はほとんどいないので、このような現実が国民に知られていません。)冷温帯である生息地がクマを養える環境でなければ、いくら捕殺を繰り返してもクマは里に出て来ます。

 

【奥山がクマを養えなくなっていることを前提に、

 できる限り捕殺を抑えるガイドラインに】

1 クマの個体数調整捕殺は行わない。実際の農作物被害や人身事故の恐れを前提とし、限定的にしか捕獲許可を出さない

2 出没被害のため、出没しただけでは、捕獲許可を出さない

3 具体的な被害がない中での、長期かつ大量のクマ捕獲罠の設置は認めない

4 誘因物の除去、被害防除、追い払いをまず行う

  ここに十分な予算をつけること!

5 親子グマ、子グマは原則捕獲禁止

6 捕獲後は、できる限り放獣をする
 すべての都道府県でクマの放獣体制を整備する

7 シカやイノシシ罠に錯誤捕獲されたクマが、法に反して大量に殺処分されているが、放獣を徹底させること

錯誤捕獲が生じた場合、有害捕獲へ切り替えてクマを殺処分するのは違法であることを明記

8 錯誤捕獲が生じないように、クマがいる都道府県では、シカ・イノシシ捕獲用檻を、囲いわなかクマスルー檻にする。くくりわなは真円12㎝以下のものしか認めない

9 山の実りが凶作で大量出没した年は、過剰捕獲にならないように特に注意する

10 生息環境の復元、山菜・昆虫・木の実などの食料激減問題の解決が必要なことを明記し、解決策を具体的に進めていく

11 集落の被害防除、棲み分け対策に十分な予算をつけ、徹底すること

 

 

 

各都道府県が定める捕獲上限を超えた捕殺が多くの地域で起こっている。→行政の捕殺の抑制ができておらず、過剰捕獲が起こっている。

 

第3部「推定生息数の出し方とその問題点について」

日本福祉大学 教授 山上 俊彦 氏(統計学)

 

クマが何頭いるのか、正確な数を出すことは不可能ですし、どんなやり方でも誤差は必ずあります。全国の自治体のクマの生息数推定の計算方法を検証していますが、計算過程を非公開としている科学的検証にたえないものや、目撃や捕獲数が増えれば数が増える数理モデルとなって生息数が過剰に推定されていると考えられるものが多くあります。

生息推定数は、それを使う人がどう使うかが大切で、あくまでも推定で、真実はわからないことを前提に使うべきです。どのような指標をもとにどのようなモデルで計算しているのかの外部検証が不可欠です。生息数推定に用いたデータ・モデル式・プログラミングを全て公表すべきです。

 

 

【参加者の感想より】

●水源の森確保の提案も: 殺生禁止令が出ていた1200年間の間、日本にはオオカミも棲んでいました。棲み分けは重要ですが、四国では山が荒れて、特に餌のない冬場に谷の水が枯れています。その昔は水があったのでそこに魚や植物資源も少なからずあり、餌場になっていたとも考えられますが、餌場復元と同時に、水源の森確保も同時に提案してください(徳島県Iさん)。

 

●日本はクマをすぐ捕殺しすぎ: 私は、昨年夏に自宅近くの山の中でクマとばったり遭遇し、引っかかれたり噛まれたりして軽傷を負いました。直近でその近くでコグマを見ましたので、恐らく母グマがコグマを守るために行った行為だったのだと思います。私は、事故当時、クマ鈴などを持たずにいましたので、原因は自分にあるのだと反省しました。役所に報告をしたところ、すぐにクマを捕獲すると言って罠を現場に設置しました。私は、今回の事故の責任はクマではなく自分だから、捕獲しても殺処分しないでほしいと伝えました。しかし、役所はクマを捕まえて殺処分してしまいました。

私は20年前にアメリカから日本に移住してきた者ですが、母国ではこんな簡単にクマを捕獲して殺処分することなんてなかったです。捕まえても山に返していました。日本は、クマなど動物を簡単に駆除しすぎです(群馬県Cさん)。

 

●絵本などで子どもたちにも伝えたい: 野生動物との共存を子供にも伝えるものとして、絵本や説明文を作家や著作家とタイアップして作るのはどうでしょうか。教科書に載ることがあれば、かなり多くの子供たちに何年にもわたって読まれるので、これからの世代へ考え方のもとになっていくと思います。

 

●都市に住む人へのアピールを:自分は関係ないと思っている都市住民に、水源の森を守ることを意識してもらえるようなアピールを考えていきたいものです。「水源の森を訪ねる、守る、造る、美しくする、楽しむ」というような方向に発展させていくような活動はどうでしょう。地方の重要な河川、関東なら多摩川上流や丹沢、利根川などの源流にたどり着くような、楽しい企画にするのです。支部は独自にいろいろなことができますが、活動づくりのひとつとして例示したり、他支部のおもしろい源流ツアーを紹介したりするのも、いいかもしれませんね(兵庫県Mさん)。

今回のズーム会議を運営した本部スタッフ 於:熊森本部事務所

 

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