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20歳の私が京都のクマ生息地現場をのぞいてみて感じたこと

私は自然のことを学びたいので、少し前に、熊森協会の顧問である北海道釧路の安藤誠さんのところへ行ってきました。安藤さんは北海道でネイチャーガイドをされている写真家で、北海道の原生林、二次林、人工的に作られた自然など様々な現場を案内してくださいました。

 

(熊森本部から) 安藤誠顧問は、 4月8日木曜. NHKラジオ第1. ラジオ深夜便に出演されます!午前4時05分 ~

 

そして、この度、私の都合で4日間だけでしたが、日本熊森協会本部にインターン生として受け入れていただきました。

ここでもまた、原生林、二次林、人工林など様々な現場に連れて行っていただきました。とても充実した4日間でした。感謝しています。

 

今日は、熊森協会の顧問である昆虫研究者の主原憲司先生が京都府の佐々里峠や福井県境にある五波峠を案内してくださったときのことを報告させていただきます。

まず、京都市にお住いの主原先生の家を訪れました。家じゅうが本だらけでびっくりしました。

          一角だけでもすごい量の本

 

去年の京都府のブナは凶作でしたが、五波峠のブナ林に、去年の秋のクマ棚が残っていました。

クマ棚

 

あんな高いところまでクマが上がったんだとびっくりしました。少しはブナがなっていたのでしょうか。

登った時の爪痕はもう消えてしまったということで、残っていませんでした。

大きくてとても立派なブナの木がありました。

樹齢400年ぐらいでそろそろ寿命だそうです。

 太いブナの木

 

ブナの木は朽ちやすいということで、近くの朽ちたブナの木を触ると、本当にボロボロに崩れました。

 

木なのにボロボロに崩れたブナの朽木

 

このブナ林のどこがおかしいかわかりますか。

 下層植生がすべて消えたブナ林

 

そうです。ブナの木の下にあったササなどの下草が一切消えているのです。近年、ブナの実が成っても殻だけで中身が入っていないシイナが増えており、原因の一つが温暖化にあることを教えていただきました。この10年は、シイナどころか、ブナに花が付かなくなっており、シイナ以前の問題だそうです。また、地球温暖化によって植生の成長速度と虫の成長速度に差が生まれて、虫が食料を求めるタイミングに若葉や花はなく、植物が受精したいタイミングに虫がいない状況になっていることを知りました。その結果、昆虫の大量絶滅が続いているそうで、恐ろしくなってきました。昆虫がいないと、虫媒花は実りませんから、山から虫媒花の実りが消えてしまったそうです。

 

さらに、かつては豪雪によってシカの個体数が調整されていたようで、冬に飢え死にしたシカの死骸がよく折り重なっていたという谷を見せてもらいました。今では、温暖化でシカがあまり死ななくなり増加してブナ林の下草を食べてしまうこと、また積雪量の減少で、冬季、雪に埋まって守られていた下草がなくなってしまったこと、地面を抑える下草が無くなることが土壌表面の流失に繋がっていることなども教えていただきました。

山が地球温暖化の影響を受けている実態を確認することができました。

 

 

このような変化は、ふだんからずっと山を見て調べていないとわからないことです。現場に行き自分の目で見て自然から学び続けることがどれだけ重要であるかを感じました。

以前、大学の座学で2050年までに表土の90%が失われると習ったことがあって、何が原因なのか疑問でしたが、今回、現場を見て納得しました。

 

また、山を見るとき、歴史的な知識が必要なことも教わりました。

この山にかつてどのような人為攪乱がなされたか

 

手前の針葉樹で青々した部分が、この土地の元々の植生だそうです。奥の落葉広葉樹の多い山はかつての薪炭林で、原生的な森を皆伐してコナラに植え替えた山です。ところどころの緑色は、豪雪地帯に元々あった裏スギです。裏スギは、葉も枝も下方を向いており、雪を受け流します。裏スギは、伏状更新といって、垂れ下がった枝が雪によって地面に押さえつけられ、そこから根が出て次々と新しいスギの命が誕生していきます。気候と植物の生態が一体になっていることがわかり驚きました。

裏スギの伏状更新

 

今回、自然が持つエネルギーの素晴らしさも、味わいました。長時間移動で疲れていた体も、ブナ、ミズナラ林を歩き、きれいな空気の中で過ごすことでとても元気になりました。私は、行きより帰りの方が元気になっていました。

 

また、どんぐり運びの重要性・必要性も学びました。ドングリ運びだけでは山を守れませんが、緊急避難措置としては有効であることがわかりました。熊森協会の方々はこれからも山や野生動物たちを守るために様々な活動を展開されていくと思いますが、私も参加したり支援したりしていきたいです。

 

安藤さんに、本物を見ないとだめだ、本物に接することで嘘のない人間が育つと何回も言われましたが、今回のインターンでも、本の知識だけではなく、本物に次々と接していって学ぶことを教わりました。この日教わったことだけでも書ききれないほど多くのことを学びました。主原先生がお元気なうちに、もっともっと一緒に山を歩いてもらって、現場から学ぶ本物の勉強を教わりたいです。希望する大学生が数名集まれば、熊森本部として、そのような講座を夏にでもセットできるということでした。

 

主原先生と一緒に山に入って現場で自然のことを学びたい大学生がいたら、熊森本部に申し出てください。

 

今回、とても短いインターンでしたが、貴重な勉強ができました。主原先生と熊森協会の皆さんにはとても感謝しています。どうもありがとうございました。(完)

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