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⑮ これまでの豊能グマ問題の総括 大阪府はどうしてクマ1頭の命も助けられないのか

野生動物たちとの共存本能を失っていない子供たちはもちろん、ほとんどの大阪府民や国民は、豊能の誤捕獲グマをさっさと山に返してやればすむことなのに、行政は何をもたついているのかとイライラしていると思います。行政が大多数の国民の願いと違うことをしているのは問題です。(ただし、豊能町の町民は、山に返さないでほしいと思っている人も少なくないでしょう。)

 

今回の大阪府行政を見ていて、初めてのクマ捕獲であり、どうしてよいかわからなかっただろうという同情はあるものの、(だから、熊森としてはできる限りの協力をしようと思ったのですが)大変大きな問題を感じました。

 

<大阪府動物愛護畜産課にくまもりが感じた主な問題点>

1、生命尊厳・動物愛護の欠如

・・・今思うと、地域住民のために放獣しなかったというのは言い逃れで、自身の無知と保身ばかり。本当に地域住民の為を思うなら、今回のことで何回も地域勉強会を持ったはずです。初めから、この誤捕獲グマの命を何としても助けてやろうという気などさらさらなかったように思えます。決定権を持っている人間が、囚われているクマを見に来ないから、その状況がわからず、人間的な判断が下せなくなっています。

 

2、クマという動物は危険であるという誤解

・・・勉強不足。(わたしたちみんなの問題でもある)

 

3、クマを放獣するということは人身事故につながるのではないかという誤解

・・・勉強不足(わたしたちみんなの問題でもある)

 

4、野生で大人になったクマでも普通に飼えると思う誤解

・・・勉強不足。(わたしたちみんなの問題でもある)

 

5、近隣行政との協力関係を築く力がなかった

・・・今後は、大阪府と近隣行政の双方に、生態系保全のために協力する姿勢が必要。

 

● 他に気になったのは、行政の秘密性です。

2か月以上も囚われの身となって劣悪な環境に苦しんでいるクマを、大阪府も豊能町も、マスコミに見せないように隠してきました。町民も府民も、一体何が起きてどうなっているのか全くわからないため、野生動物とどう付き合っていくのかという大変重要な問題について、大人も子供も学べる大変いい機会であったにもかかわらず、誰も何も学べませんでした。マスコミ発表は、行政発表のみで、「クマは保護飼育されており、元気です」と出るだけです。元気なわけがないでしょう。

 

人間なら小さな穴だけの豊能のクマが突っ込まれていたドラム缶檻に入れられたら、精神が持たないでしょう。一番残酷な拷問は、狭い所に突っ込んで出さないことです。もし、自分だったらと、ちょっと想像してみればわかるはずです。熊森が登場して大阪府と闘い、やっとのことで13日目にドラム缶から出してやることができました。熊森という組織がなかったなら、間違いなく死ぬまでドラム缶に入れられていました。他者がいつ死んでもおかしくないようなひどい目に遭って苦しんでいるのにいるのに、元気ですという行政発表を垂れ流すだけのマスコミの軽さを恐ろしく思いました。

 

今回のクマ問題だけでなく、他の問題でも、国民は、今この社会で何が起きているのかわからなくされているのではないでしょうか。こうなると、弱者がどんどん切り捨てられていく社会になっていきます。児童虐待がうなぎ上りに増えているそうですが、根は全て同じところにあるような気がします。

自分だけの幸せなどこの世にはあり得ないのです。見ない言わない聞かない、このような国民でいると、結局は自分もいつか不幸になります。

 

<くま森のこれまでの取り組みの反省点>

①命を大切にする社会をめざして、精いっぱい取り組みましたが、今回豊能のクマを山に返してやれませんでした。まだまだ経験不足、力不足を感じました。これからも、誤捕獲グマは山に返すように訴え続けます。一方、劣悪な環境下に置かれているため、このクマの命が心配です。早急に、熊森が引き取って保護飼育できるように動きます。この準備だけでも、簡単なことではありません。

 

②くま森には応援団がバックにたくさんいるのに、そっと山に返すことを狙ったため、その人々を活用できませんでした。HPにも、くわしい情報を流せませんでした。

 

③騒ぐと、このクマが今も生きているからだとして、厄介払いのために大阪府によって早期に殺処分されるのではないかという恐れが常にあり、マスコミへの連絡もできませんでした。現在、熊森は、大阪府に、このクマの引き取りを文書で正式に申し出ました。命の尊厳と共に、誤捕獲グマを殺せない流れを守るためです。引取るためには、何が必要なのか、すべてこれから交渉です。

⑬ 8月21日 クマという言葉を出すと、大阪での土地の購入は、すぐにはむずかしい 

8月21日、熊森本部は大慌てで、クマの保護飼育施設を造るための土地探しに出かけました。行った先は、大阪の北海道と呼ばれている大阪府豊能町と大阪府能勢町です。行く前に、ネットで売り土地一欄表を見ましたが、ほとんど物件は出ていませんでした。

 

大阪府箕面市を抜けると、豊能町の標識が出てきました。ここからが豊能町です。

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お隣の能勢町にも行きました。

クマの棲めそうな、ササや下草の生えた、いい森があちこちにありました。

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森の奥では、ハッピーハウスやアークという動物愛護団体が、行き場を失ったたくさんの犬猫の保護飼育をされていました。犬が多くいることによって、この辺りにはシカが寄って来ないため、シカによる食害がない昔ながらの森が残っているということでした。

 

能勢町には、大阪府のキャンプ場であった98ヘクタールの森がありました。去年、キャンプ場がつぶれたため、無料ですべて、能勢町に払い下げられたそうです。現在、何にも使われていませんでした。他にも、歩いていると、大阪府の標識がついたいい山林が見つかりました。

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こんなところを売ってもらえたらなあと、思いましたが、大阪府は、「土地も山林もすべて大阪府にとって必要なものばかりで、熊森に売ってもいいような場所は一つもありません」という答えでした。

 

地元の方の話では、この辺りは田舎なので、先祖からの土地を皆、守っている。他人に売り渡すようなことはまずないだろうということでした。まして、クマの保護飼育場にしたいというと、クマのような怖い動物を…ということになって、売る人はいないだろうということでした。(クマが生息しない大阪府では、府民はクマという動物に接してこなかったため、優しく臆病で争わないという本来のクマの姿が伝わっておらず、人を見たら襲い掛かってくる凶暴動物であると言う偏見にとらわれている恐れがあります。全国民にも共通して言えることです。クマに接するのが、ニュースの人身事故報道のみという実態が問題です)

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豊能町の町長さんには、今回のクマのことで、以前、面会を申し出ましたが、断られています。

能勢町の町長さんにお会いできないかと、役場を訪れましたが、会議で出ておられると言うことで、お会いできませんでした。

 

熊森は、大阪でクマが捕獲されることを予測していなかったので、大阪には土地を所有していないし、地元とのつながりも持てていません。8月25日が期限と言われると、やはり、これまでの人間関係ができている兵庫県のクマ生息地だと思いました。

 

 

 

⑫8月20日、大阪府から入った豊能のクマ殺処分決定の電話と熊森の対応<概要>

大阪府:豊能のクマですが、もらい手も放獣先も見つからなかったので、殺処分することに決まりました。

 

くまもり:そんな(絶句)、長期間、劣悪な環境に閉じ込めて動物虐待です。最後は殺処分ですか。あんまりです。もらい手も放獣先も見つからなかったのなら、大阪府が、終生保護飼育をしてください。野生のクマを生涯、檻に閉じ込めてしまうことは、このクマにとっては大変かわいそうなことですが、大阪府民にとっては、自然環境の保全について学ぶ貴重な場になりますよ。

 

大阪府:そのようなことはしません。

 

くまもり:どうしてですか。大阪府はお金がなくて飼えないのですか。

 

大阪府:飼えないのではなく、飼わないのです。

 

くまもり:なぜ飼わないのですか。

 

大阪府:飼わないと決めたからです。

 

くまもり:答えになっていません。とにかく殺すのをちょっと待って下さい。(思わず)くまもりが飼うので、殺処分を止めてください!

 

大阪府:どこでだれが飼うのですか。

 

くまもり:今思ったばかりですから、まだ決まっていません。

 

大阪府:熊森は飼えないんですね。では、殺処分します。

 

(熊森が、大変な思いをして移送檻を秋田から取り寄せて提供した時も、豊能のクマを放獣していただけるように近隣府県にお願いに回るなど必死で動いた時も、今回のように、一大決心をして、保護飼育すると申し出た時も、大阪府動物愛護畜産課は一言のお礼も言わないどころか、このような失礼な対応です。人として、信じられない思いです)

 

くまもり:ちょっと待って下さい。熊森は大阪府に土地を持っていません。とりあえず、大阪府として、保護施設を建設する土地を斡旋をしてくださいますか。

 

大阪府:大阪府は、一切の支援、協力をしません。

 

くまもり:大阪府は、このクマのもらい手を一生懸命探してきたと言われてきましたが、一切の支援、協力をしないという条件だったのですか。

 

大阪府:そうです。

 

くまもり:そんな大きな態度では、もらい手など見つからないでしょう。本当にもらってもらいたかったのなら、わずかであっても、大阪府はこういう支援・協力ならさせていただきますとして、頭を下げなければならないのではありませんか。命を大切に思うあまり、熊森が飼うと思わず言ってしまいましたが、個人見解です。この後、会議を開きます。

 

大阪府:飼うのなら、(どこでだれが飼うのか)具体的な話を出してください。期限は、8月25日(月)です。約束しましたよ。約束の期日は守ってくださいね。

 

くまもり:そんな(絶句)、あまりにも一方的です。日が足りません。とにかく早急に保護施設を建設する土地を探しに行きますので、殺処分は絶対にしないでくださいよ。

 

 

8月21日、熊森本部では緊急会議が持たれました。熊森はなんとしても、このクマの命を助けるということで意見がまとまりました。

 

もちろん、このクマ1頭の命はかけがえのない大切なもので、何一つ被害も出していないのですから、尊厳されなければなりません。

他にも、熊森をはじめ、多くの人たちが、この国にクマやクマの棲む森を保全しようとして、長年にわたり大変な苦労の上に築き上げてきた、「誤捕獲グマは即放獣する」という鉄則を、大阪府によってつぶされたくないという思いがあります。

 

⑪ 大阪府、誤捕獲されたクマの殺処分を決定

  大阪府は、もらい手も放獣先も見つからなかったとして、8月20日、豊能のクマの殺処分を、当協会に通告してきました。誤捕獲されたクマは、即放獣して山に返さなければならないことになっていますから、鳥獣保護法違反です。行政が法違反を犯していいのでしょうか。

 

 当協会は、6月19日以来、大阪府環境農林水産部動物愛護畜産課の動きを見てきましたが、動物愛護精神の完全なる欠如、その他もろもろのことに、大変な憤りを感じています。

 

 現在、このクマは、狭い檻に入れられ、2か月半以上も暗い場所に置かれたままです。水飲み場も糞尿処理もないという大変劣悪な状況下にあります。クマに とっては大変なストレスで、わたしたちは、このクマはいつ死んでもおかしくないと考えています。当協会は、このクマの命を最優先に考え、当協会が引き取る ことを大阪府に申し出ました。

 

 当協会は、クマを保護飼育するための施設を持っていませんので、現在、その準備のために走り回っています。

 

 

 

 

 

 

 

⑰ 9月5日 豊能グマ、今からでも遅くない、誤捕獲現場で放すべし <現場訪問> 

9月5日、大阪府豊能町の誤捕獲現場を探しに行きました。

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誤捕獲現場を探しまわる熊森スタッフたち

 

田んぼ道を、山へ山へと上がっていくと、棚田地帯に入り、やがてその棚田もなくなり、放棄田が現れます。その奥は、人工林ですが、シカ除け柵が張り巡らされ、それより奥には人間は入れないようになっています。そこの扉を開けて山の中に入っていくと、ついに、豊能グマ誤捕獲現場が見つかりました。こんなところまで来て柵を開け、山中に入っていく町民は、猟友会員以外にはいないと思います。(重要:クマは、一般町民がいる所に来たわけではない)

 

ここで、檻のふたを開け、逃がしてやればよかったんだ!

 

今後、このクマを飼育し続ける大変な労力や出費を思うと、気が遠くなりそうです。

誤捕獲現場を見て、確信を持ちました。今からでもここへ連れてきて放してやるべきです。クマを放すと集落に入って来るかもしれないと大阪府がそんなに怖がるのなら、放す時にクマに発信器を付けて放し、そうならないことを確かめたらいいと思います。

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クマ放獣の専門家たちを呼んで来たら、みんな、ここで放せると言うだろうと、テレビ局に訴える森山会長

 

このあたりはヒノキの人工林地帯ですが、人工林の林縁は、コナラ、シバグリ、アベマキなどの実のなる大きな木がたくさんあり、今年のドングリがびっしりと実っていました。ドングリは豊作です。

あちこちに清水が流れており、たくさんのカエルや虫が跳びまわっていました。

わたしたちが普段調査しているブナ・ミズナラの奥山原生林は、なぜか、最近、一気に、虫もいない沈黙の森に変化しています。

それと比べたら、このあたりの山の林縁の方が、ずっと生き物たちの命あふれる場所です。このクマが豊能町に何日滞在したのか知りませんが、クマが滞在できる自然が残っている町として、豊能町は誇りを持つべきだと思います。

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 クマがやって来るだけの豊かな自然が残されていた、すばらしい町豊能町

豊能町役場に入っていく熊森スタッフたち 2014,7,1

 

 

イノシシ檻にしかけられていた誘引剤は米ぬかでした。わなにかかったクマは、檻から手を出して周りの小枝等を檻内に取り込み、無邪気に遊んでいる感じだったと、猟友会の方が語っておられました。

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この後すぐに麻酔をかけられ、熊森が救出するまでの13日間、真っ暗なドラム缶に突っ込まれた4歳オス豊能誤捕獲グマ 猟友会 提供 (人間ほど凶暴な動物はいませんね)

 

再びこんなクマが出たら、大阪府は次回から、その場で殺すことにしたのです。命の尊厳など全くわからない人たちが作った、とんでもない間違った方針です。

大阪府の担当者が、クマやクマを放獣することに対する知識がないあまり、必要以上に恐怖心を抱いてしまったことには同情しますが、日常茶飯事としてクマを放獣している隣接府県行政に、クマや放獣の勉強に行くなどして、もっと現場で勉強していただきたいです。残念ながら、大阪府担当者には、クマとの共存に向けて勉強しようという姿勢が見られません。

 

 

まだ実が青いのに、集落近くの柿の木にクマが来ています

地域によって違いますが、兵庫県但馬地方にあるこの集落の裏山では、7月28日に行くと、まだ実が青い柿の木に、今年ももうクマの爪痕がついていました。7月2日に調べた時には、付いていませんでした。いつきたのでしょうか。7月29日から8月13日まで自動撮影カメラをかけてみました。

 

 

8月13日に行くと、7月31日の早朝にやってきた若そうなかわいいオスグマの動画が撮れていました。8月1日の夜にも、クマが撮れていました。

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7月31日早朝自動撮影

 

クマが、実り調査に来たのかもしれません。青い実をかじって味見したかもしれません。8月13日に行くと、かじられたような跡がある青い柿の実が、柿の木の下に落ちているのが見つかりました。柿の木には、青い柿の実がたくさんついたままでしたから、クマは、まだ柿の実を食べないことにしたのだと思います。

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8月13日撮影

 

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8月13日撮影

 

8月2日から13日までの約2週間は、クマが撮れていませんでした。このクマは、広い範囲を歩いて、他の柿の木々の実りを調査して回っているのでしょうか。

次にこのクマが、この柿の木を再訪するのは、いつでしょうか。

 

 

⑨小さな檻に閉じ込められて60日間 宙に浮いたままの大阪府豊能町誤捕獲グマ 一刻も早く山に返してやって 大阪府庁に熊森が提案と要望書を提出

6月19日、兵庫県・大阪府・京都府の2府1県が接する大阪府豊能町で、山林に仕掛けられたイノシシ罠に、1頭のツキノワグマが誤ってかかってから2か月が経過します。4歳のオスグマと推定されていますが、最初の13日間は密閉されたドラム缶に突っ込まれたまま、その後は狭い移送用檻に入れられたままで、今日を迎えます。

 

誤捕獲された場所から目と鼻の先にある京都府内又は兵庫県内での出来事であったなら、鳥獣保護法にのっとって、兵庫県や京都府で作成されたルールに従い、即、同一市町内の山に放してもらえました。しかし、たまたま、クマが生息しないと言われてきた大阪府内での初誤捕獲であったため、兵庫県も京都府も引き取り放獣を拒否。大阪府にはクマ対応ルールがなく、このクマは、行き場を失い、宙に浮いてしまったのです。

 

8月6日、熊森は、本部から4名、大阪北地区長、大阪南地区会員2名の計7名で、大阪府庁の本庁を訪れ、担当部署である動物愛護畜産課の課長さん達に面会しました。そして、このクマが体力的にも精神的にも弱り切って野生で生きることができなくなる前に、一刻も早く山に返してやってほしいという要望書を提出。日本で最大のクマ保護団体として、2時間にわたり、当協会ができる最大限の提案や協力を申し入れました。

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 大阪府動物愛護課の担当者たちに申し入れる熊森メンバー(於:大阪府庁本庁舎)

大阪府としては、飼育してくれるところを探しているが、まだ見つからないということでした。熊森は、いったん野で大人になってしまったクマを飼育することのむずかしさを、幾つかの実例を挙げて訴え、このクマを不幸なクマにしないためにも、野のものは野に返すことを、強く要望しました。また、熊森は、このクマを絶対に殺処分しないことを、改めて申し入れました。相手はモノではなく生き物です。スピード感を持って対応して下さるように、改めてお願いしてきました。

 

要望書は検討していただけるということでしたが、あれから2週間、今の所、大阪府庁からの返答はありません。巨大な組織をもち、優秀な人材を多く揃えておられる、大阪府、京都府、兵庫県の行政のみなさんです。関西広域連合の出番として、力を合わせ、生き物の命を大切にする解決法を国民にお示しくださるようにお願い申し上げます。子どもたちも、大人たちがどうするか見ていますよ。

 

尚、熊森はこの件で、環境省にも何度も、クマに初めて対応する大阪府に対して、国が支援に乗り出してくださるようにお願いの電話をかけています。国の担当者としては、心配して下さっているようですが、今の所、具体的な動きは見られません。

 

 

NHKスペシャル 『ヒグマ・運命の旅』 圧倒される知床の大自然と、ナレーターの断定表現への不安

8月7日の再放送を見ました。さすが、NHK。知床半島の自然の空撮はすばらしく、映像に圧倒され続けました。まるで目の前で知床の森や海を見ているような気分を味わうことができました。

 

知床・ルシャの渚は知床の世界遺産の中でも特別保護地域に指定された、日本で唯一のヒグマの楽園です。ここで暮らしていた30頭のヒグマたちのなかから、母子グマと老齢のオスグマに焦点が当てられ、4年間にわたり記録され続けた膨大な映像をまとめた番組だそうです。

 

番組の途中から、非常に気になりだしたのは、ナレーターのヒグマたちに対する決めつけ言葉の数々です。ヒグマたちの世界のことは4年間と言っても、ずっと見ていたわけではないのに、また、ヒグマたちがインタビューでそう答えたわけでもなく、想像の域を出ない事柄だらけのはずなのに、ナレーターは次々と断定表現をされていきます。これは危険だと感じました。

わたしたちの経験からしても、自然界は、調べても調べてもわからないことだらけであり、ヒグマたちの行動についても、できることならクマに直接インタビューしてみたいと思うほどわからないことだらけのはずです。

どうしてあのように断定できるのでしょうか。

これではまるで、ドキュメンタリーではなく、作られた物語になってしまっていると感じました。

 

知床にヒグマを見に行き、番屋の人たちと語り合った経験からすると、感性の違いでしょうか、どうもナレーターの方の言葉に同意できない箇所がいくつも出て来るのです。知床やヒグマを全く知らない人は、ナレーターの言葉を真実だと錯覚して、知床観やヒグマ観が形成されていくでしょう。どうしてそんなことが決めつけられるのか、人間による全くの誤解かもしれないのに、大変怖いと思いました。

 

以前、NHKテレビに出していただいた時、現地に行ってインタビューを受けようとすると、すでに台本が全部出来上がっており、台本と違うことを答えると、何回もやり直しをさせられて、泣きそうになったことがあります。その時のことを思い出しました。ふと、この番組も、初めから、全部台本が出来上がっていたのではないかと感じました。

 

最後、人馴れして集落近くの海岸などに何度も出て来るようになったからとして、子グマ達は、あっけなく、有害獣として人間に撃ち殺されて終わります。

熊森本部に来たメールの中には、意外な顛末に驚いて、ひとり号泣してしまったという男性もおられました。

NHKが、過酷な運命の旅と気取って言ってみても、これは人為的に造られた結末であり、クマ射殺は運命でも何でもありません。

海岸で射殺されたクマには、人を襲ってやろうというような悪意は全くなかったと思われます。

あのクマたちが、どうしてあそこまで人馴れして、特別保護区から集落に近い所まで出て来たかというと、NHKのスタッフたちが4年間もこのクマたちを愛情を持って撮り続けたからだろうという声もありました。もしそうなら、このヒグマたちが殺される原因を作ったのはヒグマたちに近づきすぎたNHKということになります。

 

感動的ないい番組を作りたいというNHKのスタッフのみなさんの気持ちもわかるし、このような大自然の中に生きる動物たちを追った番組を見たいという視聴者の皆さんの気持ちもわかります。しかし、その結末が、ヒグマ射殺では・・・人間は何をしているかです。この番組を見ていろいろな声が熊森本部に届きました。

 

・後半は見るに堪えず、 番組終了後、何とも後味の悪い耐えがたいおぞましさに襲われました。

・ あのような安易なヒグマ殺傷は 、将来の子供達にも、決して良い影響は与えないと思った。

・いかに安易にヒグマ駆除の許可を出しているか、良く分かりました。

・2頭の子熊・シロとクロが成長し た後、厳しい自然の中で食べ物を求めて人里に下りてきた後、『駆除』(殺処分) されてしまった画面になんとも言えない怒りと悲しみを覚えました。ものう少し動物愛護の視点が欲しかったと思います。

 

 

4年間成長を見続けてきたシロとクロが 、人馴れしたからと殺されるのを知った時、冷静にその場をカメラで撮影できる人もいますが、何分間かシロとクロの映像に親しんだだけで、まず、シロとクロの命を助けてやりたいと思うようになる人たちもいます。人間いろいろです。

 

視聴後、知床財団の方に電話でいろいろお話を聞かせていただいたり、北海道庁の方に、資料をFAXしていただいたりしました。熊森はこれからも、北海道のヒグマたちにも、可能な限り目を向け続けていきます。

 

●NHKのこの番組作成責任者に、質問と意見を送りました。

⑧大阪豊能町クマ誤捕獲されて40日目、殺処分の選択肢はないと大阪府庁 早く山に返してやろうよ

このクマは、大阪府豊能町でイノシシ罠に誤捕獲されて40日目。誤捕獲後、ドラム缶檻に13日間閉じ込められていました。現在、このクマは、とりあえず、間口1.5メートル、奥行き2メートルのクマ移送檻に、7月2日に移され、今日に至ります。この檻は、前面と後面が4センチ間隔の鉄格子となっています。鉄格子檻に入れると、クマは逃げようとして鉄格子をかじって、歯を全部折ってしまうのではないかとか、逃げようと暴れて、手の爪を全部剥してしまうのではないか等と、いろいろ危惧されましたが、今の所、そのようなことは一切起きていません。(良かった)

 

ただ、檻が狭い上、飼育用に作られた檻ではないので、この檻では長期飼育はとても無理です。一刻も早くこの狭い檻から出してやってほしいです。いつまでも拘束していると弱ってしまうので、もう、山に返してやってほしいです。クマの放獣を多く手掛けてこられた専門家の方に聞くと、もらい手が見つからなかったのだから、あとは、山に放してやるか、大阪府が保護施設を建設して終生保護飼育するか、二つに一つの選択肢しかないということです。

 

ところが、A新聞とB新聞には、大阪府が、「殺処分するという選択肢も消えていない」と言ったことになっています。これによって、助命嘆願の電話やメールが1日数件担当部署である、動物愛護畜産課に届いているということです。

大阪府動物愛護畜産課

電話 06-6210-9619  

 Fax:06-6613-6276

dobutsuaichiku-g04@sbox.pref.osaka.lg.jp

 

クマは兵庫県では絶滅危惧種、京都府では絶滅寸前種、滋賀県では希少種として、誤捕獲グマは、全て山に返されています。こんな中、大阪府だけが、殺処分してしまったら、法違反となり、大変な問題になるでしょう。

 

さっそく、大阪府庁担当責任者に確認してくださった方がいます。その方の報告では、「大阪府は殺処分など全く考えていません」という答えをいただいたということです。当然の答えだと思いますが、ならば、野生で大人になってしまったクマを飼うことの困難さを、このクマを観察することから確認し、一刻も早く、山に返してやってほしいと思います。罠にかかったクマ1頭も、山に返す力がないなんて、大阪府行政のメンツにもかかわると思うのですが。

 

大阪府行政に、再度お願いします。相手は生き物です。いつまでも狭い檻に閉じ込めておくのは、動物虐待です。いろいろと困難はあるでしょうが、どうかスピード感を持って、山に返してやっていただきますよう、お願いします。クマの放獣に手馴れている隣接府県の行政のみなさんは、初めてのクマの放獣に戸惑っている大阪府を見て見ぬふりするのではなく、どうかあたたかい協力の手を差しのべてあげてください。道徳教材として、子どもたちにとって、これ以上のお手本はありません。

 

(以下、産経新聞から)

近畿大学先端技術総合研究所の宮下実教授(野生動物医学)は「理想はツキノワグマの生息地での放獣。野生動物に県境はなく、各府県が広域的な課題として議論すべきだ」としている。

 

(くまもりから)

宮下実教授の上の言葉を、このクマに関わる全ての方に、かみしめてほしいです。

⑥誤捕獲されたクマが一時保護されている大阪府豊能郡豊能町て、どんなところ?

6月19日、大阪府で初めて、クマが捕獲されました。イノシシ罠に誤ってかかってしまったのです。このクマは、現在、豊能町で、職員から水やえさを与えられて、一時保護飼育されています。

クマが捕獲された場所から約1~1.5キロメートル行くと、京都府亀岡市であり兵庫県川西市です。京都府庁と兵庫県庁に電話で問い合わせたところ、今回このクマが、府内または県内で誤捕獲されていたなら、自分たちはすぐに放獣したと断言されました。

 

豊能町はというのはどんなところか。熊森本部スタッフたちは、6月末に、大阪府北西部に位置し、京都府亀岡市と兵庫県川西市に隣接する豊能町を車で訪れました。

 

【問題が起きた時はすぐに現地へ】というのが、熊森活動の鉄則です。

 

現地は、大阪府にこんな田舎が残っていたのかと信じられない思いがする、山々に囲まれた農村風景の町でした。小川にはいろいろな魚たちが泳いでおり、懐かしいふるさとに帰ったような気がしました。山並みは、北摂山系です。この辺りはかつての薪炭林で、現在は、アカマツ、クヌギ、コナラ等の放置里山林となっており、最近は、野生シカによる林業被害が起きているそうです。

 

豊能町は大阪府の自然景勝地であり、標高は400m~600m。大阪の中心地より気温が約3度低く、大阪の北海道等と呼ばれています。兵庫県境にある妙見山(660m)は、ブナとアカガシの巨木の混交林です。雪量も多いということです。

 

豊能町の面積は34平方キロメートル。森林率は、64%で、うち51%がスギやヒノキの人工林となっていますが、こちらもほとんどが放置されています。人口は21536人で戸数は8739戸です。

 

クマが捕獲されたのは、山林に仕掛けられていたイノシシ罠であり、クマが市街地に出て来たわけではありません。3歳のオスグマが、京都府または兵庫県のクマ生息地から、冒険心を起こしてそっと遠出してみたのではないかと、わたしたちは豊能町の山並みを見ながら感じました。

 

どちらにしても、一時保護飼育されているとはいえ、クマは小さな檻に閉じ込められているため、このままでは弱っていく一方です。豊能町は、一刻も早く絶滅危惧種のこのクマを、山に帰してやってほしいものです。

 

地図の赤い風船のあたりが、誤捕獲された場所周辺だと思われます。

豊能町野間口

ちなみに、今年の6月、このすぐ近くの京都府では3回、兵庫県では1回の、クマの目撃が報告されています。この辺りは、クマが一時期生存できる自然環境にあるということで、そういう意味で、すばらしい自然環境が残されている町だと思います。

 

 

 

 

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